五島列島Tour19#5
2019/5/1(水)
小値賀島1 笛吹郷→前方郷-1

笛吹郷→黒島→浜津郷→斑島→浜津郷→柳郷→中村郷→前方郷→小値賀空港→前方郷→唐見崎→前方郷 (以上#5小値賀島1-1)
(以下#5小値賀島1-2) 区間2 (以上#5小値賀島1-2)
(以下#5小値賀島1-3) 区間3 (以上#5小値賀島1-3)
(以下#5小値賀島1-4) 区間4 (以上#5小値賀島1-4)
(以下#5小値賀島1-5) 区間5
43km ルートラボ

赤は本日の経路 濃い灰色は既済経路と航路

 13:05、小値賀着。そのまま走り始めるのがあまりに簡単すぎて、太古とフェリーターミナルにしばらく紐で結んどいて欲しい気分だ。しかしもう海の上じゃないし積載室の中でもない、自由の身なのだ。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町笛吹郷 笛吹港 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 13時出発で宿まで予定コースは33km。手持ち時間にかなり余裕がある。一方、明日の宇久島は41kmで10時過ぎ到着13時発。計画時はこれでも行けると思っていたが、風景を見るのに立ち止まることを含めて考え直すと、かなり厳しいんじゃないかと思い始めていた。またその後、宇久島から中通島に戻ってからも、予定していた海岸集落へのピストン行程を省略して、代わりにさっき眺めた西岸の林道に向かえるかもしれないと思い始めていた。
 実はもう手持ち時間と可能性の狭間でいろいろ検討し、
   1 明日の朝の便を佐世保市営船から津和崎丸に変更し、可能な限り早めの時刻に来てもらう
   2 宇久平の出発時刻も早めてもらう
という方針で津和崎丸にはお願いしてある。津和崎丸の他のお客さんの都合もあり、結論は今日の17時過ぎにわかる予定だ。こちらもこの方針に備え、今日の進行次第で明日の分も消化しておきたい。今日と明日の小値賀島コースは比較的近くを通る区間があるため、馬鹿正直にすぐ隣の道を経由したりせずに多少合理化するだけで、今日のコースの後に明日のコースの大半を追加できるんじゃあないかと思っていた。
 というわけで、今日と明日の予定トラックを別の色で表示させておく。今日のコースから明日のコースに乗り換えやすいように。

 フェリーターミナルから、道沿いの商店の位置等を確認しつつ西へ笛吹港を回り込んでゆく。

 太古で「小値賀で何か食べよう」と思っていたのに、更に「空から日本を見てみよう+」で見覚えのあるスーパーを確認しつつも、何となく他人事のようにそのまま通過してしまった。我ながら空腹感はあまり差し迫ったものではなかったのかもしれない。

 湾に架かるそう長くも無い橋を渡って、笛吹港の中にあるような黒島へ。これだけ本島から近いと、半島も島も風景の何が違う訳じゃない。小さな島の湾内側、集落とその周辺のごく限られた範囲の道の先端には、決定的に本島とは違うもの寂しさが感じられるような気もする。しかしそれでも、港町外れの漁村と畑と茂み以上の何かがあるわけではない。
 未だに空が曇っているからかもしれない。海の色も岸辺の緑も、更に気温自体、何となく薄ら寒いのである。

 笛吹に戻って、小値賀島を時計回りに進んでゆく。

 GPSトラックに従い、県道161から狙い定めて海岸部の断崖際へ微妙に傾斜する大浦、浜町の畑へ、裏道を繋いでゆく。

 田圃、野菜畑の他、麦と牧草が目立つ。麦は五島うどん、牧草は五島牛、それぞれ思い出すのは五島列島の名産だ。

 県道161を経由して竹崎の漁村、漁港を海岸沿いへ。

 浜辺から海と空へ拡がる空間感覚が、丘陵部の畑とは全く違い、その広さというより大きさにしばし脚が停まる。
 遠浅の海全体が鮮やかになり始めていた。見渡す空は未だ曇っているものの、次第に雲全体が明るくなっている。晴れるにはもう少し時間は掛かりそうではあるもののもう15時の桝だし、連休後半に向けて早く晴れてくれ。

 斑大橋を渡って斑島へ。橋の上から眺める海も、軽やかで鮮やかに変わり始めていた。振り返ると、斑大橋手前の小値賀島、松林裾の草地に黒牛が放牧されていた。明日訪れる宇久島とともに肉牛の放牧が盛んなのだ、と思った。五島列島は仔牛の放牧が盛んで、通常の300kg程度の仔牛が1頭50万円程度のところ、五島牛は1頭70万(〜100万)で佐賀や松阪に売られてゆくとのこと。初日、2日目に宿で食べた五島牛の陶板焼きはその通りに大変美味しい霜降りだったことを思い出す。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町斑島郷 県道225 斑大橋 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 時計回りに斑島を1周してゆく。住宅が密集する港を横目に、まずは南岸から西岸へ。

 斜面の森を、木々の間に東シナ海をちらちら眺めつつ、10%超ぐらいの登りであっという間に標高70m。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町斑島郷 斑島西岸 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 再び下り始めると海岸へ一気に急降下してゆく。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町斑島郷 斑島西岸 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 海沿いの棚田、牧草地、ごろごろごつごつと黒い石、岩と、漂着発泡スチロールが目立つ海岸を過ぎ、港へ戻って来た。

 あまり大きくない島なので当然のように、あっという間という程でもなくボリュームたっぷりという訳でもない1周であった。登りはそれなりに厳しく、港町は静かで板張の家並みが美しかった、斑島であった。


五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町斑島郷 県道225 斑大橋 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 小値賀島へ戻って浜津郷へ。

 県道62から集落の細道へ入り込む。細道の周りの小さい空間が楽しい。

 海や畑の拡がり、その間に断続する森や集落。初日の福江島で見た陸地に拡がる農地を思い出す。海岸から山の急斜面が切り立つ中通島とはもちろん、中通島より里っぽかった福江島(の初日通った場所)に比べても、小値賀島はもう少し里っぽい。それは都市近郊でもなく山裾の狭さとも違う、里の営みの人なつこい雰囲気だ。

 集落から、ややひっそりした、しかし生活感溢れる浜津漁港へ降り、再び台地上へ。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町浜津郷 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 浜津後目から板に拡がる半島には、牧草地主体の畑が拡がっている。防風林に囲まれた牧草地で刈り取りのトラクターが忙しそうに動いていて、刈り取り終えた区画に牧草ロールが並んでいる。つい十勝辺りの牧草地を思い出す。そして、初日と2日目に夕食で食べた五島牛をまたもや思い出す。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町柳郷柳西 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 小長崎からの帰りに、宇久島への佐世保市営船が発着する柳港を確認しておく。

 入り江の漁村に囲まれた小さな港に、小さい浮き桟橋が浮かんでいた。明日、万が一津和崎丸の都合が付かなければ、ここから市営船に乗る必要があるのだ。

 柳郷からは小値賀島最高峰の番岳へ。最高峰とはいえ、最高地点でも100mちょい。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町柳郷柳西 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 コンクリート含みの舗装が続く畑と田圃の畦道みたいな細道が、山裾溜池のダム堤を掠めて森に突入。しかし森はどこかの公園の上手のようで、やはりどこか里の山っぽい雰囲気が感じられる。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町柳郷 番岳(登り途中) #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 最高地点辺りで海側の展望が開け、黄砂の影響でややシルエットっぽい納島、宇久島を眺めることができた。

 なんだかこれで満足してしまったのと遠景がやや霞んでいるため番岳徒歩3分の看板訪問は見送り、その後は森の中を道が唐突に下り始めて唐突に大浦の県道161に合流。

 辺りは再び農村まっただ中である。さっき通ったばかりの見覚えのある道が目の前にあった。


 初日の島巡りも後半である。

 しばらく続いた森の中から外に出てみると、薄日が射し始めて辺りが明るくなってきた。3日間、待ち望んでいた日差しである。
 まだ15:20。小値賀島初日のコースとしては、もう宿へ向かうパートが残っているだけだし、そろそろGPSの画面に、2日目予定コースのトラックが現れていた。

 農村と畑を行き来しつつ柳郷から中村郷へ。途中、こども園、中学校、高校が桜並木沿いに建つ、小値賀島の文教地区を経由。

 中村郷の途中で明日予定コースのGPSトラックに、唐突にコースを切り替える。

 裏道ばかり右往左往するようなコースだが、切替という行為には何かを操作しているような気分の良さがある。

 船瀬で南岸の海岸線に出て、2日目の目玉だった小値賀空港へ。

 あまり考えずに描いたトラックは、運動公園みたいな場所の外側から、小値賀島南東の半島を横断する桜並木の1本道へ。

 愚直な直線で山裾に乗り上げて海岸近くに降りるという、大変直截な1本道である。或いは空港アクセス用途で作られた道なのかもしれない。2006年まで中通島同様ORCの定期便が来ていた小値賀空港、地元の期待は高かったことだろう。現在空港は休止中であり、全く車が来ない道の見事な一直線っぷりが夢の跡のようだ。

 桜並木の新緑が、ますます瑞々しく見える。

 山裾から下った道が田圃、続いて牧草地の中へ。茂みの向こうがそろそろだなと思っていると、順当に小値賀空港のフェンスが現れた。やや狭い滑走路は多少草生しているものの、しかし小型機なら今すぐ使えそうである。中通島も含めて定期便、あると便利なんだけどな。

 GPSトラックは、空港手前側の道と、滑走路をくぐって海岸へ出る道だけ行き止まりになっている。そこまでしか道を拾えなかったのだ。しかし空撮では、空港周囲を通路っぽい幅と色のエリアが囲んでいるのが認められ、現地では問題無く通れるかもしれないと思っていた。

 まずは空港のフェンス際の犬走り的通路を南岸へ。すると、滑走路のフェンスと防波堤の間にコンクリート舗装の通路が続いていた。この時点で、これは全周大丈夫なのかもしれないと思った。
 南岸の通路をそのまま進み、南東の角で少し海を眺めてみる。すっかり雲が去ってしまって真っ青な空の下、赤みを帯び始めた強い日差しが海、島々を明るく眩しく照らしていた。明るい濃紺の海上、緑の森と赤茶色の岩の野崎島が切り立って、比較的間近に浮かんでいる。野崎島の向こうに中通島も、ややシルエット気味ではあるものの意外な程近くに見える。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町前方郷殿崎 小値賀空港南岸 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 島までの距離は近くても、その間に海が、やはり立ちはだかっている。海は日差しの中で明るく明快な濃紺で、見るからに粘性高く力強く、引き込まれそうな畏れ多さが感じられた。思えば自転車なんて道が無いとどうにもならないし塩分で錆びるし、人間なんて寒かったり暑かったり脚の下に地面が無いだけでどうにもならなくなってしまうのだ。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町前方郷殿崎 小値賀空港東岸 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 そのまま次は東岸へ。滑走路の長辺に沿った通路が先の方で行き止まりになっても、滑走路の下のトンネルをくぐって戻れそうなのは、さっき空港手前で確認済みだ。しかしここまで通路で来れた以上、メンテナンス場ぐるっと1周できるように造られているに違いない。

 海岸にせり出した草地に、猟師さんか誰かの軽自動車が停まっていた。相変わらず野崎島は、正面一杯に構えるように大きく見えていた。日差しに照らされた空も緑も海も岩も、鮮やかで軽やかだ。しかし防波堤の外の岸辺、不自然なほど黒っぽい色の大きな火山岩の中に、数多くの漂着ゴミが溜まっていた。鮮やかな明るい色の海と岸辺の黒い石中で、尚更白っぽい発泡スチロールやプラスチック、ビニールなどの質感が目立つ。掃除する人がいないと、海岸は漂着ゴミで一杯になってしまうのだと思った。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 小値賀島-1 笛吹港→前方郷 長崎県北松浦郡小値賀町前方郷殿崎 小値賀空港北岸 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 北海岸で今日の宿の民宿愛宕がある漁港、その先の唐見崎の半島を見渡して、結局全く問題無く小値賀空港を周回することができたのだった。


 海岸沿いの道から宿のすぐ近くを経由、前方漁港へ。

 それでもまだ16時過ぎ。最後に唐見崎まで脚を伸ばしておく。これで明日予定のコースの主な部分を、今日のうちに消化できたことになるのだ。

 唐見崎では畑の中を周回しておく。

 畑の中に松の立ち枯れが目立つのは、今回福江島でも見かけたように思う。或いは虫害かもしれない。

 GPSにポイントを入れておいたにも拘わらず、前方漁港に面して密集した集落では、民家の中に建つ宿を探すのに少し手間取ってしまった。17:00、前方郷「民宿愛宕」着。

五島列島Tour19#5 2019/5/1(水) 中通島-3 小串郷→青方 長崎県北松浦郡小値賀町前方郷 民宿愛宕前から前方漁港を望む #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 荷物を降ろして一服後、津和崎丸に電話してみると、明日の朝は全く問題無く来て下さるとのことだった。やった!これで明日は9:00笛吹港発となった。佐世保市営船より50分ほど到着が早くなるだけではあるが、いやいやこれは大変大きい。
 ついでに津和崎着が早まると尚有り難い。既にルートラボでチェックし、今日太古から眺めた中通島西岸の林道を経由するコースが、かなり現実的な距離と獲得標高差で成立することがわかっている。そのためにも全体を前倒しして、宇久島より中通島で時間を見ておく方がいい。直前になってしまったが、とにかく津和崎丸には午後の時間変更のお願いをしておく。

 夕食の魚は味付けが家庭料理風の薄味で大変美味しい。ここまでの旅館味に比べ、口がヒリヒリせずに一杯食べられる。しかも刺身が全体的に一回り大きくて新鮮だ。さすがは小値賀島だ。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

記 2019/6/2

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Last Update 2019/6/30
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