北海道Tour18#6
2018/8/14(水) 仁宇布→浜鬼志別-1

A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路 濃い灰色は既済経路

仁宇布→上徳志別 (以上#6-1)
(以下#6-2) →中頓別 (以上#6-2)
(以下#6-3) →飛行場前 (以上#6-3)
(以下#6-4) →浜鬼志別 133km ルートラボ

ニューサイ写真 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 4時に起きて窓を開けてみると、雨が上がって空の一部が晴れ始めているではないか。いいぞ。今日は希望が持てる、かもしれない。
 いそいそうきうきと5時に積み荷を開始し、5:30に朝食へ。朝食中、遂に青空が見え始めた。いかにも道北らしい伸びやかな空、堂々と静かに拡がる畑や山々の眺めが感動的だ。ファームイントントの食堂から青空の仁宇布を眺めるのも、何だか久しぶりだ。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
 

 朝食を終えてまだ6時前。6時台の道道120は熊が怖い。それにどうせ今日の終着は浜鬼志別。天気予報の15時、つまり13時半〜16時半、内陸部と浜頓別町は雨予報なので、知駒峠へ行くとその後が雨に降られそうだ。このため知駒峠には行かずに、なるべく早い時間に浜頓別町を通過できる短縮行程のつもりなので、朝に多少うだうだするのは予定通りの行動なのだ。
 とりあえず7時台まで。と思って宿で待機する間、あっという間に雲が拡がったのみならず、牧草地に霧まで漂い始めた。霧の中は全体的に明るく、まあ昨日みたいな雨にはならないだろう、とは思える位ではあるのだが。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 7:15、ファームイントント発。仁宇布の交差点に下る間に霧は消えたものの、空には相変わらず雲が拡がっていた。霧が無い分、雲の薄暗さとかなかなか消えてくれなさそうな雰囲気もよくわかるようになってしまっている。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 まあ、こんなもんかもしれない。さっき仁宇布で青空に出会うことができただけでも、仁宇布に来た価値があったというものだ。それにまだ、帰りにもう一度仁宇布には寄ることになっている。

北海道Tour18#6 2018/8/14(水) 仁宇布→浜鬼志別 北海道中川郡美深町仁宇布 道道120 - Spherical Image - RICOH THETA

 自分で自分に語りつつ、仁宇布の盆地から西尾峠への谷間に入ると、それまで高かった雲が低くなり始めた。空も更に暗くなり、もはや薄暗いとしか言えない。

 むしろごく普通に雲が濃い日の7時台として、適切な曇りである。天気予報通りの展開であり、まあ、こんなもんかもしれない。

北海道Tour18#6 2018/8/14(水) 仁宇布→浜鬼志別 北海道中川郡美深町 道道120 西尾峠 - Spherical Image - RICOH THETA

 8:00、西尾峠通過。

 峠を越えて上徳志別側へ下るとともに、空中に水滴を感じ始めるようになった。路面もところどころでしっとり濡れたり乾いたり。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 雲は雨が降るような低さには無く、そういう暗さでもない。一見心配は無さそうではあるものの、ここはオホーツク内陸山中。いつ、急に雲が濃くなって大雨が降り始めても不思議じゃない。実際には雨に変わってない状態がしばらく続いていて、安心できているというだけの崖っぷちなのかもしれない。

 それに脚を停めると、8時台とは言えまだ周囲の山々には押しつぶされそうなの圧迫感が感じられる。まずは少しは天気は好転しそうな歌登まで下らねば。

 フーレップ川の谷をどんどん下り、天の川トンネルを過ぎて織姫橋休憩所辺りまで、雨が降る雰囲気は全く無かったものの、路面は乾いたり、濡れ跡が現れたりしていた。

 大曲の下り辺りで、突然というか満を持したように急に水滴の密度が上がり、辺りの路面も目立って濡れ始めた。これはもう雨と認めざるを得ない。上徳志別の盆地入口で、雨はしとしとからちょっと強いぐらいに密度を増し、空も何だか目に見えて暗くなってきた。盆地までおりてきてこれか。ちょっと雨宿りしてやり過ごすべきかもしれない。

 8:50、上徳志別着。元小学校のキャンプ場前に庇のある集会所を発見できたので、軒下で雨宿りさせていただく。庇下は狭くやや蜘蛛の巣っぽいものの、雨から逃れて雨具を着るには全く問題無く、個人住宅の玄関先や納屋をいきなり無断突入してお借りするより随分気が楽だ。

 西尾峠から20km、ほとんど下りに任せて進んできたので気付かなかったが、停まってみると意外にも弱い追い風が絶えず吹いているようだ。風のせいで雨が吹き込み、小さい軒下の雨避け有効面積が更に狭くなっているのに、庇下空間の脇は周囲の茂みと一体化するように大きな蜘蛛の巣が竪に張られているので、あまり雨粒シフトで軒下の端に寄る訳にはいかない。そうこうするうち、ゴマフアブがお出まししていた。さすがは山間の牧草地まっただ中だ。気温が低いので彼奴らの動きは鈍くなっており、わざと靴下の上に止まらせて、ムシペールを直撃してやったりする。人の血を吸うならず、凄まじい痒みと腫れを残しやがって。しかし彼らは悪気がありそうな面構えにも拘わらず、悪気でやっているわけではなく、そういう進化をしてしまっているのだ。自分の報復行為は純粋に憎しみと悪気である。こういう行為により、おれもあの世で罰せられ、ゴマフアブに転生する日が来るかもしれない。
 ずーっと途切れずに続いているはずの、風やら雨やら虫の声が聞こえてくる。時々車も通り過ぎてゆく。ちょっとクロワッサンを食べてみる。もうひとつ。クロワッサンが賞味期限を越えているせいか、バターの匂いが多少きつくなり始めている。おれもちょっと疲れているかもしれない。そのちょっとした疲れのせいか、体内は妙に落ちついている。走っているのとまた違う、自分の周りの空間や風景が停まっている感覚、時間の感覚がいい。


 雨がなかなか弱くならないので、いい加減しびれを切らし、9:20、上徳志別発。歌登の盆地では雨は上がるはずだ。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 しかし、上徳志別とは8の字型盆地の南北関係にある北側の志美宇丹で、早くも雨が綺麗に上がってしまった。のみならず、道道120で数少ない自販機ポイントのバス停で雨具を脱いでいると、急に蒸し暑さが感じられ始めた。気温が上がり始めている。道北も北部まっただ中だというのに、20℃は越えているかもしれない。ひょっとして、これから急に天気が好転するかもしれない。

 とは思ったものの、結局その後空が晴れることは無かった。

 志美宇丹峠を下った歌登の盆地北端の辺毛内でも、道は乾いているものの雲は全体的に濃いのであった。

 

 9:55、歌登着。とにかくセイコーマートへ。

 しっかり朝食は食べたので簡単に、それでもいろいろ食べたり飲んだりする。道北ももうまっただ中、ここまで来れたという感覚が嬉しい。空を見上げてみると、内陸方面の空は、明らかに重い色で、その辺の山のすぐ上まで下がってきているように見える。今、ここ歌登では、なんとか保っているだけなのかもしれない。しかしどこへ行っても、こんな感じなのかもしれない。
 歌登からは再び道道120で、標高230mの兵知安峠を越えて中頓別へ向かうのが、今日は都合が良い。その先まで含めて、一番静かな道で最短経路を経由できるからだ。それに私的道北縦貫道道の基幹をなす道道120、折角仁宇布から歌登まで下ってきたのだ。ここは更に中頓別まで辿りたい、という気持ち上の理由もある。
 他の選択肢はどうか。道道12・小頓別・国道275の内陸側経路は、やや大回りだしここ2〜3年何度か使っている。道道12・枝幸・国道238の海岸沿い経路は、大分長い間使っていないし久しぶりならそう悪い選択でもないと思うものの、やはりやや大回りだし、好き嫌いで言えば道道120兵知安峠の方が断然好きだ。
 必要性と空模様を勘案してみたつもりだが、結局は好き嫌いなのかもしれない。今日はこれ以上天気は悪くならないでほしい、というやや一方的なお願いを込めて、今日は兵知安峠へ向かうことに決定した。
 その間、何だかこちらをずっとちらちら眺めているライダーに気付いていた。だって、話しかけたくて仕方無い雰囲気を全身で発散しているのである。新手のスタンド使いなら失格だ。そしてやっぱりそのうち、人が物を食べている真っ最中に話しかけてきて、聞きもしないのにオホーツク海沿岸の道の状況を話し始めた。行かねーよそんな方と思いつつ、適当にあしらっておく。私は旅人には意外と冷たい男である。地元のお婆さんお爺さん子供達は大好きなのだが。

 10:15、歌登発。町の西側で道道120へ。

 谷間の牧草地から茂みのような森へ次第に高度を上げ、谷のどん詰まり手前で一気に高度を上げ始める、典型的道北最北部の峠である。兵知安峠の標高は230m。丘のような高さだが、峠手前で斜度ががつんと上がる。また歌登・中頓別間は30kmとやや距離があり、毎回通過にはそれなりに時間がかかる。

 更に峠周辺、特に中頓別側の山間には、意外な程の山深さが漂う。中頓別側に比べると穏当な歌登側でも、谷間両側の山が低いため「切り立った谷」というより「浅い谷」という印象が勝つものの、道の周囲を覆う森や茂みは山深くブキミだ。対岸の川岸にいつヒグマが現れても不思議じゃない気がしてならない。

 11:00、兵知安峠通過。

 今日のように雲が低く空が暗いと、中頓別側はまた一段と山深い。相変わらず山は低いのに、歌登側とは段違いに谷の狭さが迫ってくる。ずっと標高が高い、美深松山峠や西尾峠の上徳志別側より山深いのではないか、と思わせられる。

 キタキツネなども路上に現れ、折しも空がますます暗くなって水滴などぱらつき始めると、何だか壮大に化かされているのではないかという気になってくる。とにかく、早く通り抜けてしまいたい。

 谷間から放り出されるように兵知安の牧草地に出て、ほっとした。相変わらず雲が低く薄暗いものの、空間が一気に拡がる、静かな開放感が毎度感動的である。

 兵知安で道道647が合流し、中頓別まで更に9km。

 この間緩い下りではあるものの、なかなか辿り着かなくて毎回馬鹿にならない、道道120の最後の区間だ。

 

 12:05、中頓別セイコーマート着。歌登から2時間かかっていない。仁宇布から歌登までは時間が掛かったし、上徳志別では疲れていると思っていたが、意外に普通ペースではないか。
 時間はすっかりお昼。昼食的な物資をセイコーマートの軒下で食べながら国道275を眺めていると、山方面から降りてくるオートバイは全て完全雨具装備である。兵知安峠が雨じゃなくて助かった。国道275は道北の名峰敏音知の裾を通っているため、雨が降りやすいのかもしれない。
 こういう状況だと、今日はもうこの後知駒峠などという選択肢は全く無く、終着鬼志別へ直行ということになる。オホーツク沿岸部で国道238経由とかじゃなくてずっと裏道経由だとしても、まあ直行と言っていい。ならばあと60kmぐらい。普通にずっと地道に脚を動かして浜鬼志別まで3時間。天気予報は浜頓別で15時枠が雨、猿払村はずっと曇りだったから、余裕で回避できるだろう。
 時間に余裕があると思うと、何となく急に眠くなってきた。やはり疲れているのかもしれない。セイコーマートの軒先からぼうっと眺めていた国道275の反対側に、何と都合良く屋根付きのバス停小屋があるではないか。
 早速小屋へ行って時刻表を見ると、次のバスまで2時間。これならバスのお客さんにも迷惑は掛からないだろうと思い、この際自転車を中へ入れさせていただく。扉を閉めれば、昼寝にこれ以上の場所は無い。

 結局12:30〜12:50まで昼寝20分。どんなだったか忘れてしまったぐらいの軽い夢から覚めると、そこはすっきり爽やかな現実世界だった。


 13:00、中頓別発。

 しばし国道275を浜頓別方面へ。強向かい風から横風、強追い風まで何でもありの風に、良くも悪くも影響されることが多いこの道、今日は僅かに向かい風だ。寿で9600と国産戦闘機を横目に眺め、旧天北線をオーバークロスしていた陸橋でがくんとペースが下がる。やっぱり多少疲れているかもしれない。もう鉄道は無いのだから、オーバークロス陸橋なんて撤去して平坦にしてほしいのだが、もう長いことこの無意味橋はそのままだ。ここを自転車や徒歩で通過する人の数を勘案すると、解体費用を掛けるほど橋を無くすことに意味は無いのかもしれない。そして道内各地にこういう陸橋は多い。昨日通った二の橋でも、名寄本線を越えていた橋がそのまま残っている。

 下頓別で国道275を離れ、既知の裏道で常盤へ。牧草地の中に続く細道農道では、やはり車が少ないことそれだけで、自分の周囲の空間が牧草地、そして雲の低い空へ続いてゆくのを感じる。これが国道275だと、いくら交通量が少なくても所詮幹線国道、自分の外側30cm以遠は警戒すべき車のエリアであることが感じられる。意識しなくても、やはり身体が緊張する交通量なのだと思う。
 のんびりした農道に油断したのか、舗装路面上にたまたま一つだけ転がっていた小石を踏んでしまった。ごりっという感触があり、案の上500mぐらい走ってタイヤがずりっと来始めた。スネークバイトのいつものパターンだ。おとなしく自転車をひっくり返してパンク修理とする。これでまた15〜20分ロスだ。
 しかし所詮、今日は浜鬼志別終着でもう中頓別まで来ている。焦る気はしない。上徳志別での雨宿りの時のように、再び風景が停まって、自分の周りに静かに落ちついた空間が充ち、走っているときの風景との一体感より濃密に、自分が風景に溶け込み始める、そんな気になってくる。何も狙い定めた絶景ポイントじゃなくてもいい。ごく普通の田舎道こそ、こういう感覚を普通に味わえるのがいい。鉄道を撮っていた高校性の頃、線路脇から線路が見える田舎道で列車を待つ時、こういう感覚を何となく意識し始めていたことを、最近思い出し始めている。その時間と感覚が好きで、鉄道写真そのものからどんどん離れていったのだっけ。
 チューブを替えてタイヤをチェックしながらこんなことを考えていたら、もうのんびりするしかない。結局14:00までのんびりした後、再び出発。

 20分足らずの間に、雲はどんどん低くなり始めているではないか。そう言えば、散々のんびりした結果、天気予報で雨マークだった、浜頓別15時の場所と時間帯に、もう入っているではないか。ということは、いつ雨が降り始めてもおかしくないのだった。まあ、今日はもう緩めに行こうぜ。

 前回声を掛けていただいた牧場農家を横目に眺め、農道で常盤へ。

 オホーツク沿岸まで、去年通った経路の逆走である。国道と浜頓別を経由しない、内陸の静かな道道による最短経路。天気が冴えない今日は特に、これが最善の経路だろう。

 段丘を一登り、牧草地が拡がる台地に乗り上げて丘を一越えし、しばし迷走のように農道を辿る。14:30、ポン仁達内着。クランクで道道84を経由、次は浅茅野への道道710へ。

北海道Tour18#6 2018/8/14(水) 仁宇布→浜鬼志別 北海道枝幸郡浜頓別町ポン仁達内 道道84・道道710分岐 - Spherical Image - RICOH THETA

 牧草地と牧場とその間の森が、緩やかな丘にとともに広々と続いてゆく。道はそういう地形を無視して一直線に谷や丘を横断したり、俄然地形沿いに谷筋や丘の頂部に沿って曲がったりして続いてゆく。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 時々、右側の霧と薄暗さで霞み気味の牧草地の向こう、クッチャロ湖の湖面が液体金属のようになんだか非現実的に、意外な近くに光って現れていた。左側の内陸側には低山が続いているはずだったが、低い雲で山裾の森から上は地形のボリュームが全く伺えない。

 雨が一気に落ちてこないというだけの、ますます低く濃い雲の下、拡がる低地の緑は灰色の空と路面とともにほぼモノトーンであり、わずかな他の色を押しつぶしている。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 こういう天気だと気温は低い。風もあまり強くない。何も今日みたいな天気が珍しい訳ではない。もともとこういう天気の日ばかりなので畑の作物が育たないから、道北オホーツク沿岸部は酪農が盛んになったのだ(という話をどこかで読んだ)。今日の天気は冴えなくても、過去の訪問時には晴れて爽やかな日もあった。雨っぽく風が強かったりする年もあり、まあそういうのを含めて北海道の旅なのである。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 まあしかし、こう薄暗いと風景に鮮やかさが全く無く、少々気が滅入ることも確かなことではある。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 クッチャロ湖岸の低地から海岸内陸部の丘に乗り上げ、15:00、飛行場前着。相変わらず雲は低い。

 元国鉄天北線の北オホーツク自転車道の、いかにも元踏切っぽい道道交叉部の車止めに、丸い通行止めの標識が張り付けられていた。車止めの少し先には熊の顔が描かれた通行止め看板も立っていた。両側を鬱蒼とした密林に挟まれて一直線に続いてゆく、舗装自転車道の霞んだ彼方が、野生動物達の縄張りに戻りつつあることを想像してしまう。私も10年ぐらい前までは、この道を好んで通っていたのだ。静かで時々拡がるクッチャロ湖の眺めが大変素敵で心に残るいい道なのだが、確かに当時から、かなり高い確率で熊が出そうではあった。そのうち実際に浜頓別周辺で熊目撃情報が出始めてから、この道は通らなくなってしまったのだった。

 15:15、浅茅野通過。道端に珍しく自販機を発見したので、少し表敬訪問しておく。

 缶コーヒーをぐいっと呷ると、電線のカラスが頭上でカア、カアと2回鳴いた。何だか意味ありげな鳴き方にぴんと来て、自転車を少し動かしたら、案の上カラスが電線から糞を垂れやがった。奴ら、他の生き物の頭の上に糞を落とすとろくなことにならないということを知っていて、警告したのかもしれない。等と思わせられる、湿原と森の中の薄暗く人気の無い集落における、人間と野生動物の行きずりの出来事だった。事程左様に、ここでは野生動物が人間の営み近くで息づいているのかもしれない。

 浜鬼志別までの北上経路は毎度のエサヌカ線ではなく、久しぶりに元天北線跡の道道1089を通ってみた。以前通ったのは確か2012年。今日と同じように薄暗い霧の日で、仁宇布から道の駅さるふつへソフトを食べに来て、折り返して浜頓別へ向かったのだった。その時には浜頓別への南下がひたすら蛇足だったような気がして「ホテルさるふつで泊まれば良かった」などと思っていた。仁宇布からオホーツク沿岸へ出てホテルさるふつで泊まるという今日のコースに、その時の経験が活きているとも言える。

 さっき通行止めだった北オホーツク自転車道と同じく元天北線の道道1089。道そのものは普通の今時道道風にぱりっとした表情で幅も広いのだが、道を取り囲む森や茂みは鬱蒼と沈黙していて、空も相変わらず低く暗い。

 道が浅茅野の集落から200mも離れると、もう熊が出そうにワイルドな雰囲気が路上にまで漂い、その圧迫感に押しつぶされそうに怖い。熊鈴前後2個を念力でパワーアップしつつ、とぼとぼと進んでゆく。

 16:00、芦野通過。この先もう浜鬼志別まで集落は無い。丘の間にちらっと見える、芦野開拓(という地名)方面には大きな農場が見えた。一方、道沿いの集落には芦野市街という名前が付いているものの、かなり閑散としている。恐らく原野で牧草地を拓いた開拓者が、努力の末成功し、大農場を築いたのだろう等と想像する。

 こちらは相変わらず道道1089を進んでゆく。鬼志別までもう約10km。海岸沿いから次第に内陸へ、丘陵を微妙なアップダウンとともに進んでゆく緩いカーブと緩い勾配が、いかにも鉄道そのものであり、走りやすい。しかし開けてはいる道幅の頭上は、雲が低くて辺りは薄暗い。両側には相変わらず森、茂みが、やや不気味な雰囲気とともに続いている。

 風景も相変わらず、いや、ますます緑のモノクロームである。もしかしたら、晴れていると印象が一変する道なのかもしれない。ひょっとしておれは、野生動物を始めとした生き物たちに見物されながら、しずしずと1本道を進んでいるのではないか。押しつぶされそうな不気味さに耐えていると、途中で猿払村境界を越えた。何とか天気予報の雨からは逃げ切れた、と思った。

 芦野から4kmの間およそ分岐というものが無かった道に、やっと現れた右側への農道分岐が、浜鬼志別方面への分岐である。

 森と茂みから逃げるように農道へ曲がると、やっと浜鬼志別へ続く牧草地が、一気に拡がった。遠くにはもうホテル猿払が見える。あそこまで直線で道が通っているといいのだが、残念ながらそういう道は無く、四角形の1辺と3辺の関係で浜鬼志別経由の大回りをしなければならない。いや、いずれにしろ今日は浜鬼志別へ立ち寄り、明日の朝食をセイコーマートで仕入れておく必要があるのだ。

 16:20、浜鬼志別着。セイコーマートで明日の朝食を補給しておく。今日は8/14、お盆の前日である。漁協のホタテ売店も漁も休みだろう。ホテル直行が適切だ。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 オホーツク海岸の国道238のもの凄い向かい風だ。そして寒い。空はますます暗くなっていた。一刻も早く宿に着きたい気分である。

 16:45、ホテルさるふつ着。意外に売店の物品が充実しているのをすっかり忘れていた。わざわざセイコーマートに寄らなくても、最低限の物資は確保できたかもしれないが、まあセイコーマートがあるに越したことは無い。

 

 風呂に入ってほっとしてから、18時に夕食。定食をたいらげた後、単品ホタテラーメンをプラスしておく。

 明日の天気予報は雨後曇りの後、15時以降サロベツ方面で雨となる。部分的には降られるとしても、極端な山中にさえ向かわなければ、今日と同じく全体としてはまあまあ走れるだろうと思われた。ただ、朝の宗谷丘陵、昼過ぎの有明方面はやや微妙かもしれない。まずは行ってみて、手前で身の処し方を考えよう。最短距離で中川へ向かえば、大した距離ではないのだ。

記 2019/2/10

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Last Update 2019/3/3
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