北海道Tour18#5
2018/8/13(火) 生田原→仁宇布-1

生田原→遠軽→丸瀬布→鴻之舞→立牛→濁川→札久留→瀬戸牛→西興部→下川 (以上#5-1)
(以下#5-2) 区間2 (以上#5-2)
(以下#5-3) 区間3 (以上#5-3)
(以下#5-4) 区間4 (以上#5-4)
(以下#5-5) 区間5
127km ルートラボ

ニューサイ写真 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8 A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路 濃い灰色は既済経路
 

 夜が明けて、空が明るくなってきた。雲は空一杯に拡がっているものの、今回の道東みたいな重たさは無く、比較的高く薄く、雲の中が明るい。生田原駅の向こうの山は青みがかった影の中、しっとり落ちついた朝特有の色だ。夜に少し雨が降ったようで、外の路面は乾ききる前ぐらいにしっとりしていた。
 ここまで雨に悩まされたが、やっとこの景色に会えた。こういう風景に出会うために、ツーリングに来ているのだよな、という気になってくる。今日は終着の仁宇布まで、予定通りに走れるだろう。経路自体は毎度のパタンではあるものの、生田原発仁宇布着のパターンは今回が初めてだ。毎年同じようなコースと日程を続けた結果、起点終点が同じなら途中の通過時刻だけ守っていれば確実に走りきれるのだが、それ以外のパターンに対する自分の感覚にはあまり自信が持てなくなってしまっている。ましてや今日のコースは、オホーツク内陸の小峠連発コース。しかも、最後の美深松山峠が一番大きいのに一番(というよりダントツで)山深くて熊の危険が危ない。このためなるべく、というより極力、早い時刻に美深松山峠を通過したい、というのが今日のコースの大きな制限事項である。
 大丈夫、計算上は毎度のペースなら充分明るい内に仁宇布に着けることになっている。まずは着々と出発準備を進めねば。

 5:45、生田原温泉ホテルノースキング発。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 ただでさえ少ない国道242の交通量は、早朝のためか更に一段と少ない。道端の畑には、熊出没の看板すら見かける。さすがに道に漂う雰囲気が国道っぽいのは如何ともし難いものの、そのこと自体はツーリングの気分を損ねること無く、充分に落ちつけている。

 安国で国道333と合流すると、路上の交通量は意外に増えた。国道333は田舎道だった昔と違い、東峠・ルクシ峠等山間トンネルばんばん系の北見・遠軽間メインルート、交通量も多いだろう。去年石北本線の特急大雪から眺めた、旭川紋別自動車道の賑わいを思い出す。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 6時過ぎ、豊里の遠軽への分岐に、既知のセブンイレブンが登場。ここで少し休憩しておく。せっかく早朝から行動できているというのに、朝っぱらからレジにお客さんが列を作るほど多く、更にお客さんの買い物がことごとく多くて、結局会計に15分も掛かったのは誤算だった。国道333がいかにのんびりしていようとも、こういうところはいかにも国道沿いのコンビニであり、国道ツーリングの常識というものを思い出させてくれる。
 セブンイレブンから出ると、晴れていた空が曇り始めていることに気が付いた。まあ、これぐらいが適度に陽が隠れて、サイクリングにはちょうど良いだろうという気はする。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 6:30、豊里セブンイレブン発。
 豊里で国道242が遠軽へと分岐し、こちらは国道333単独区間となった道を西へ向かう。湧別川の谷間は平地と呼べるような拡がり、その反対の親しみやすい居心地良さも無い。目立って斜度を上げてゆくわけでもなく、畑も里も森も断続はしても延々と続くわけでもない。いかにもJRの本線と国道が通る、ややフォーマルな表情の大味な谷間であり、1日の行程中、間違い無く印象の薄い風景が続く。

 道の交通量は豊里でがくんと減り、更に野上、瀬戸瀬と段階的に減っていった。生田原から安国の国道242と同じく、国道ながら間違い無く静かな落ちついた道と言っていい。ただし、その表情は国道なりに多少埃っぽい。そしてツーリング実用上全く問題無いとは解っていても、どうしても、そういう埃っぽさには身体の落ち着きが悪いような先入観が、私にはある。

 瀬戸瀬からは旭川紋別自動車道が並行し始め、山間に2本の道が淡々と続く状態となった。まだ朝早いためか、あちらも交通量はほとんど無い。あまり車が通らなくてひっそりしているので、道として本当に供用されているのかどうか疑わしく思い始めた頃、やっと大型車が大きな音をさせて通り過ぎてゆく、それぐらいの交通量だ。そしてこの谷間を行く全ての大型車があちらを走っているわけではないようで、こちらの国道333にも時々大型車はやって来た。

 次の分岐は瀬戸瀬の先、ぐらいに思っていたが、位置としてほぼ丸瀬布の手前なのだった。丸瀬布と言えば、2002年に訪れて以降それっきりの湯の山峠の、丸瀬布への長い長い下りと、同じく丸瀬布から登った丸立峠を思い出す。両方ともダート峠にやや長い峠区間が印象深く、その後現在まで16年間舗装されることは無く通行止めが続いている。


 道道305へ分岐すると、交通用はほぼ皆無になった。国道に比べるとやはり車がたまにしかやってこないし、車が通った後の空気というか、周囲の音が再び蘇って身体の周りを充たしてゆく、そんな時間感覚が国道の落ち着きの悪い路上とは全く違う。身体も気持ちも落ち着けるような気分が嬉しく、少し立ち止まって一息入れてみたりするものの、地図替え以外にあまりネタも無いし、まだ峠らしい峠は一つも越えていない。先へ進まねば。

 7:30、丸瀬布発。次は金八トンネルだ。かなり狭い谷底の狭い空間を150m程登り、おもむろにトンネルを抜けて紋別の山奥に抜ける、今日のコースでは峠カウントの一発目だ。
 丸瀬布側の谷間はかなり狭い。トンネルの手前まで、終始森の山肌が茂みっぽい谷底に迫り、道の他に小川がちょろちょろ流れているだけ。北海道でこれほど狭く、空間と風景の変化に乏しい谷間はすぐに思い出せない。まあ、熊が出そうなこと以外には、取り立てて印象的という訳でもない。

 今のところまた谷底の道は山影の中だが、空は雲が薄くなって再び明るくなり始めていた。前方にトンネルが見えてきたのとほぼ同時に、茂みに埋もれて廃道化した旧道の分岐が右側に登場。思えば長らくダート旧道の金八峠は通行止めであり、遠軽・滝上間の未済経路として金八峠を意識していながら、結局通ったことは無かった。ダートの距離と登り総量から、前記の湯の山峠・丸立峠に比べて通行止め難度が高いという気がしていたのだ。トンネルが開通してこの道は名実ともに丸瀬布と紋別を最短で直結する道に変身し、その最高地点のトンネルが嬉しいことに難所だった「金八峠」の名前を継いでくれた。しかしもともと丸瀬布・紋別間の交通量そのものが少ないためか、これだけ最短ルートができても、道道305の交通量はかなり少ない。金八トンネルが無かった頃は、この丸瀬布側舗装区間は今より更にさぞかし鬱蒼とした谷間だっただろう。

 8:00、金八トンネル通過。トンネルの向こうは紋別市である。「紋別」という地名には、旧名寄本線時代からオホーツク沿岸の主要都市であるというイメージがあるため、海岸から離れたこの内陸の山中で紋別の文字を眺めると、何だかオホーツク沿岸に来ているのだ、と改めて思わされる。実際にはオホーツク岸の紋別市街まで、約40kmもある。

 丸瀬布側の登り同様、紋別側もだらっとした、直線基調の下りが続く。谷間に平地は無いものの山が迫っているわけではなく、谷間全体にせせこましさはあまり感じられない。谷間が広いせいか、金八トンネルの紋別側に出てから、日差しが顕著に路面と周囲を照らし始めていた。

 しかし多少下って谷間が拡がるとか、そういう実際の地形とは無関係に谷間は山深い。鬱蒼としていた雰囲気が道を覆うようだった丸瀬布側と比べても、がらっと段違いな気がするぐらいに、山深いのである。谷間空間が開けている分、深い茂みと森が谷間を埋め尽くしていて、道以外に人の営みが全く無いからだ。
 道東の、あの山深かった津別峠の麓辺りとも異なる表情の山深さだ。大雑把に言えば道東と道北の違い、もう少し細かく言えばオホーツク沿岸東部と北部のような違いがあるような気がする。そして、その境が遠軽辺りにあるような気がする。まさにここはオホーツク内陸まっただ中、と思わせられる。

 鴻之舞の文字を道端に見かけ始め、廃墟が道端の木立の向こうに伺えるようになったところで、8:15、道道137分岐通過。次は180mぐらいの狐沢橋越えだ。私的幹線道路(実態は交通量ほぼ皆無のツーリング専用道路)のわかりやすい登り返し地点は、今日の行程進行上の目安のひとつであり、ここで8時過ぎということはなかなか快調な進行であると言えた。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 新道らしい整った線形の道を谷底から山腹へ。斜度7〜8%位の淡々とした登りがしばらく続くものの、昨日津別峠から展望台への10%超200mを登っている者としては何も怖いものは無い。いや、谷底には沢が並行していて、鬱蒼とした背の高い茂みが続いている。ヒグマ確率はこちらの方が遙かに高そうで、それは怖い。実際、過去には鴻之舞でヒグマの大きな足跡を見かけている。

 尾根の凹みを通ってもう稜線近くだと思っていると、意外にそれからが長いようにも思える。登るにつれて茂みの谷底は山肌となり、道の片側は開け始めるため、ヒグマの恐れは少なくなるような気がする。ヒグマは急斜面がニガテ(らしい)からだ。しかし、そんなことは気休めかもしれない。

 時々雲の間から日差しがかっと照りつけ、周囲期の気温が一気に上がるものの、まだ空に雲は多く、うっすらでも日が翳ると森からの涼しい風が空気を覚ましてくれていた。やっと北海道の夏っぽいツーリングができている。

北海道紋別市鴻之舞 道道137 狐沢橋 北海道Tour18#5 2018/8/13(月)生田原→仁宇布 - Spherical Image - RICOH THETA
   RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 8:45、狐沢橋着。狐沢橋は切り立った稜線近くのがけを飛び越える橋であり、道道137の鴻之舞から立牛への最高地点が、狐沢橋の立牛側となっている。
 道道137の、というより鴻之舞・立牛間の旧ルートに相当するウチャンナイ林道・上古丹4号沢林道の最高地点には白樺峠と名前が付いていたが、白樺峠より130mも高い位置にあるこちらには名前が無い。白樺峠を含む旧ルートを通ったのは2000年。その時もいつも空が翳ることが多いこの紋別の山間で、過去の訪問中1、2を争うような晴れだった。その後何回もこの区間を訪れているが、今日は初訪問時2000年以来の晴天である。
 狐沢橋から見下ろす、もりもり生い茂り視界の彼方へ続いてゆく大森林が、青い空の下明るい日差しに明るく照らされている。暑かったその日や、その後の雨天や通行止めを思い出しながら、こういう日も来るのだと思った。

 中立牛への下りは意外に長い。

 道は谷底に早めに降りてしまい、その後の狭く長い谷底には鬱蒼と森が生い茂り、熊が潜んでいそうで怖い。

 緩い下りに任せて、谷底をどんどん下ってしまう。

 下りきって放り出された山間には、あまり広くないものの纏まった平地が拡がっている。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 何だか久しぶり見たような気がする民家には、廃屋もやや目立つ。畑や牧草地自体は比較的整っていて、ここまでの野生の迫力漂う大森林とは打って変わった、静かな表情の人里だ。丸瀬布から24kmの無人地帯が終わったのとともに、遠軽まで続いた北見地方から、いよいよ道北の最南部に到達したという気になってきた。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
北海道紋別市中立牛 道道137 北海道Tour18#5 2018/8/13(月)生田原→仁宇布 - Spherical Image - RICOH THETA
 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 立牛の交差点まで、更に緩い下りが続く。のんびりと下りに身を任せていると、流石紋別の山間、風が涼しい。空にはますます雲が少なく、青空の部分が多い。日差しが当たるこの谷間を眺められるのも、近年はあまり記憶に無い。日差しの中では気温が途端に上がり、あまり照りつけられてもこの谷間には自販機が無いのに、などと思ってしまうほど日差しは鋭いものの、暑くなってきたと思う辺りで日差しは良い具合に雲に隠れてくれ、のんびりと流すには都合が良い。


 9:25、立牛発。次は濁川、滝上への西立牛トンネルだ。本日3つめ、180mの登り開始である。

 道道137は農家や廃屋、畑の間から山裾の森へ。やはり熊が潜んでいそうに鬱蒼とした森の谷間を折り返し、山腹へ、法面の芝生を眺めて山服の森をトンネル入口へ登ってゆく。毎回翌年には必ず風景を忘れる、あまり印象的ではない風景が続く。

 斜度は本日標準の7%前後。登り総量は多くないものの、北海道の峠としては中の小か小の大、というポジションではないかと思う。

 9:50、札牛トンネル通過。山間を滝上の谷間へひと下り。

 谷底で1本道と合流し、畑が拡がる谷間を更にしばらく下る。立牛側の印象の浅い森と茂みとは対照的に、そう広くはないが静かでのんびりした人里の雰囲気が優しく印象深い。突如狭くなった谷間の渓谷をくるっと回り込んで、更に広い平地へ出た。10:15、濁川着。

 「濁川」「滝上」の二つの町は、僅か数100m程度の渓谷を挟んで相対している。ほとんど一続きの町と言っていいぐらいなのだが、やはり二つの町の間には短いながらも渓谷があり、渓谷を挟んだ町にはそれぞれ別の地名が付いている。そして上手の滝上の方が、町として栄えている。かつては国鉄渚滑線の終点であり、現在も紋別、更に旭川からのバスの終着となっている。セイコーマートや宿もある。
 私の行程の区切りとしても、渚滑川とサクルー川の二つの谷の分岐点であり、国道273と道道61の分岐点でもある滝上の方が何かと把握しやすい。今日も行程進行の目安として、滝上、西興部、下川の到着希望時刻を考えていた。生田原6時前発で滝上10時半前着、タイムリミットとして美深松山峠が17時台とすると、下川は15時には出発しておきたい。ならば西興部は12時半〜13時、ということになる。この目論見に対して、今のところのんびりながらまあ順当に、というよりやや快調に進めている。西興部まで2時間見込むとして、西興部着は12時半。
 一方、西興部から下川へは、確か2時間半ぐらい見込んだ方がいい、という記憶がある。すると、下川で15時半か。これだと美深松山峠は17時台後半、仁宇布着は18時〜18時半ぐらいになってしまうかもしれない。仁宇布が夜になってしまう訳じゃないが、ちょっとぎりぎりでもある。もう前倒しにしておきたい。まだあまりうだうだする余裕は無い。
 しかし、そういう各区間積み上げによる想定到着時刻より、この区間毎回の実績値だけで言えば、いつものあまり無理をしないのんびりペースで、仁宇布着は17時頃のはずなのである。
 まあ、こういう時には何を考えても解決しないので、粛々と進むしか無いのである。あと9時間後には19時になっていて、ファームイントントで夕食を食べている。そのためにできることをするしかないのだ。
 今はとにかく、一息付いたら出発せねば。

 10:20、滝上着。珍しくセイコーマートではなく、道道61沿いの町中に建つスーパー中川で休憩。まだ腹は減っていないし、フロントバッグにクロワッサンはあるし、どうせ西興部にセイコーマートはあるし、何となく滝上の町中で少しでも先に進んでおく方がいいように思えたのだ。
 それにしても、陽が出るとじりじりと日差しが熱い。汗を拭いて早朝以来の日焼け止めをべたべた塗っていると、買い物に来たおばあさんが「暑いねえ」と声を掛けてくれた。

 10:45、滝上発。町外れを抜け、サクルー原野から札久留の台地に乗り上げると畑が拡がった。

 正面には上紋峠を含む、道北南部中央の山地が立ちはだかっている。珍しく今日は上紋峠日和ではある。かつては滝上14時台発で下川着19時前に着いたこともあったから、今から上紋峠に向かったら、下川に15時に着けるかもしれない。行って行けないことは無いかもしれない。等と妄想してしまうぐらいに、谷間と前方の山の眺めが堂々と見応えがある。まあ、今日はまだ先が長いので、当初の計画通り札久留峠経由としよう。

 札久留で道道137の分岐を曲がると、一直線の谷間正面に、もう札久留峠が見えていた。

 峠とは言え登りたかだか130m、朝や夕方は熊が怖ろしいものの、もう真っ昼間の時間帯。それよりも、開けた頭上から時々照りつける日差しが暑くて仕方無い。

 11:10、札久留峠峠通過。標高305m。峠自体標高は低い。そして峠8つのうちまだ4つめだ。

 藻別側は、少ない標高を峠下までで70mも下ってしまった後、次の分岐である標高130mの瀬戸牛まで12km、ほぼ一方的な緩下りが続く。道としてはその先も、オホーツク海岸まで23km、最後まで淡々とだらだらと延々と下りが続くのである。典型的な、道北南北横断系峠毎度の地形だ。


 札久留峠からずっと下りが続いて身体がすっかり落ちついたためか、たかだか標高差80mの瀬戸牛峠では、再び面白いほど一気に汗が吹き出てきた。

 滝上で油断して補給しなかったボトルの水も飲み過ぎ気味で、もう残り少なくなっているものの、所詮は標高差80m。12:05、瀬戸牛峠着。

 毎回、峠の少し向こうで見下ろせる西興部の町の眺めは楽しみなのだが、下り途中の道端懐的展望台風のスペースでは、斜面下側から背を延ばした木々が、いつの間にか眺めを遮るぐらいに生い茂っていた。思えばここ何回か興部からバスでやってきてここは通らなかったり、雨の中あまり景色を眺める余裕が無い訪問が続いていたな、と思い出す。いずれ木が伸び放題になって眺めは完全に遮られるか、或いはまた役場かどこかが見るに見かねて枝が刈り取られるのかもしれない。そうやって年月が経ってゆくのだ。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成
北海道紋別郡西興部村字西興部 道道137 北海道Tour18#5 2018/8/13(月)生田原→仁宇布 - Spherical Image - RICOH THETA

 12:10、西興部セイコーマート着。出発以来6時間経過として、あと6時間。175kmのコース中の97kmだから、行程的にはなかなか順調である。というより、思っていたより残りの距離が少ないんじゃないか。ツーリング中の目論見で、都合の良いことはあまり無いはずなのだが。とにかく下川のタイムリミット15時発に向け、引き続き気を抜かずに脚を進め続けなければならない。確か西興部から下川までは、50kmは無いが、40kmは確実にあったはず。

 12:30、西興部発。国道239で下川へ。

 町外れで登場した標識には、下川まで28kmとあった。なんだ、下川まで40kmどころか、30km無いのである。我ながら自分の記憶は相当にいい加減だなと思ったものの、まあ、実際が記憶より短い方で良かった。後で調べ直すと、前回の2012年には、確かに2時間半かかっていた。

 再び日が照りつけ始めていて、上興部までの緩登り区間ではかなり暑さが感じられた。雲に陽が隠れてくれるのが有り難くて仕方が無い程だった。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 しかし天北峠を越えると、空気はやや涼しくなった。空が曇り始めたせいもあるかもしれない。何だか今までの晴れ基調と違って空一杯に拡がった雲がやや厚く色が濃い。この後下川から先の山間で、雨にならないといいのだが。

 峠から一下りで一の橋、更に下り基調で二の橋へ。

 山間から平地に出て下るに連れ、再び空は明るくなり始めた。さっきまで下川着15時ぎりぎり一杯を覚悟していたのに、現状の行程はかなり好調だ。

 これなら美深松山峠を17時過ぎ頃には通過し、18時までに仁宇布ファームイントントに着けそうだ。今日やっと、最後まで余裕を持って行けそうな気になってきた。なかなか気分が良い。

 14:05、下川着。何と下川に14時に着けてしまった。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 でもそもそも、これなら毎回のコース所要時刻通りである。積み上げ計算で少し余裕を見込みすぎたかもしれない。毎年同じコースを通っているとコース検討能力が減退してしまい、同じコースでも分割地点を変えた途端にこういう状況である。


 下川から終点仁宇布まで約50km。完全に無人地帯の行程となる。そこで今日の宿ファームイントントに電話しておくことにした。この先の様子を確認しておきたいというより、どちらかと言えば順調に進んで17〜18時には着けそうだという報告のつもりだった。

 ところが、女将さんのお話は、大変思いがけず今後の見通しを覆すものだった。 「こちらは土砂降りで、けっこ〜う降ってますよ。天気予報も朝は晴れだったのがいきなり雨に変わってます。」 「わかりました。とにかくそちらまで確実に行ける方法を考えます。」 と答えてまずは天気予報をチェック。確かに終日晴れと曇りだった天気予報は、下川町、美深町、江差町のどこも15時の桝から後が雨、しかもけっこうしっかり降りそうな予報に変わっていた。
 この先確実に雨、とみる方が適切っぽい。雨に降られただけで死にゃあしないとは思う人はいることだろう。私の知っているけっこうなベテランツーリストでもそうだ。しかし、低温、体温の下降、不安定な路面に見通しの悪さ、薄暗くなって現れる動物(特に熊)、落雷。平地でも嫌なのに、あの山深い山間で土砂降りに降られたらどうなるか。
 しかし今から仁宇布へ輪行するのに、名寄→美深の宗谷本線は頼れないし仁宇布までバスは無い。解決策はただ一つ、タク輪である。とすぐに思ってしまう程、出発から4度のタクシー・バス・乗用車輪行を経て、私の心のハードルは下がっていたのであった。

 何はともあれ下川でタクシーをなんとか捕まえねば。名寄辺りのタクシー営業所があるかもしれない、と思って向かったバスターミナルへの途中、そのものズバリ「下川ハイヤー」の営業所を発見することができた。何と下川にはタクシー会社があるのだった!そして更に幸運だったことに、ちょうど空いていた介護タクシーの3号車に、自転車を解体せずに載せてもらうことができたのだった。
 まあ、下川ではずっとサンルダム工事中だったので、タクシー会社位あっても不思議ではない。とは言え、女将さんとの電話が終わってからここまで10分強。まるで仕込んでいたかのようにスムーズな展開だったのは、運命だったのかも知れない。

 14:30、下川発。下川ではまだ空は明るかったものの、道道60の谷間に入るとすぐに雲が低くなった。ソバ畑の終端からダム新道へ登るのは毎度の通り。しかし何と、工事中だったサンルダムが既に完成していた。

 いや、ずっと2018年完成予定ということは知っていた。2003年に初めて付け替え道路が工事中であることを旧道から発見して以来、ずっといつかは完成するんだろうなと思っていたサンルダム。そのサンルダムとの初対面である。しかも、それが毎度の自転車ツーリングではなく、何と乗用車の中から眺めているのである。そして何年もいつかは感慨とともに完成したサンルダムを眺めるのだろうと思っていた割には、完成して水を湛えたサンルダムとダム外周道路は、まるでずっとそこにあったかのように力強く落ちついて静かな、普通に巨大な土木建造物なのであった。完成するまでの年月が生んだ感慨に浸るより、やはりこれから完成したサンルダムを眺める機会を大切にすべきなのかもしれない。

 
 

 サンルダムの新道区間から幌内越峠まで雨は降らなかったものの、辺りはいつ日が暮れるのかというぐらいに薄暗く、1時間以内ぐらい前には雨がけっこう降っていたぐらいに路面の生乾き状態が続いた。
 上幌内から美深松山峠への登りに入った途端に道の濡れ具合が増し、美深松山峠から仁宇布ではもう完全に黒々ぬらぬら路面だった。雨も、とりあえず水滴が空中に舞い続けていた。降っているのか止んでいるのかわからないぐらいの状態が続いたものの、終始いつ本格的に雨が再び降り降り始めても不思議ではなかった。そして実際に、松山湿原入口から先では小雨が降り始め、仁宇布の交差点が見え始める最後の白樺直線区間で本格的に雨が降り始めた。何となくここまで、車が通っている間は雨が降っていない区間は多かったものの、やはり一番山深い美深松山峠区間でこの状態。自転車で走っていたら、どんなに不安だったことか。

 15:30、早々とファームイントント着。
 到着段階で一旦弱まっていた仁宇布の雨は、その後風呂から上がると、牧草地の遠景や山が見えないぐらいの土砂降りに変わっていた。サンルダムから続いた空の暗さだと、むしろこの降り方が自然である。やはりタク輪にしてよかったと、心から思った。
 などと、こんなに早い時間から牧草地を見渡す食堂でビールを楽しめている。かなり緩い旅だが、まあいいではないか。何も好き好んで過酷な環境に身を置く必要は無いのだし、何よりも今年も仁宇布に来れているからこそ、この時間が持てているのだ。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
 

 明日の天気予報は、中頓別町、中川町、幌延町、浜頓別町が12時まで曇りで15時以降雨、猿払村は終日曇り。こういう状況だと、できれば15時には猿払村に入っていたい。そして猿払村に15時に着いているために、知駒峠を始めとした内陸の奥に深入りする訳には行かない。
 結局、明日も仁宇布→歌登→中頓別→浜鬼志別の最短経路だ。確か計画時には130kmぐらいだったはずだ。それなら、道道120での熊の出没を避けるためにも5時台に出発する必要は無い。全130kmなら、7時に出発しても安心だろう。
 女将さんは、それでも朝食を5:30に作って下さるとのこと。こちらもお言葉に甘えることにした。旅の朝はとにかく早い方が何かと良いのだ。

記 2019/1/26

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Last Update 2019/3/3
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