仁宇布→上幌内
(以上#10-1)
→下川
(以下#10-3)
→十和里
(以下#10-4)
→愛別
(以下#10-5)
→当麻→大村
155km
RIDE WITH GPS
意識せずに登ると6%位の坂はあっという間であり、あっという間と思っていると冗長に感じられる。そういう捉え方とそれなりの距離感覚とともにこの道を通ることができる程度に、私はこの道を訪れることができている。
谷間を挟む対岸の山はそう高くない。谷間はややだらっとしたボリュームの空間として感じられる。しかし道の外、木々の向こうに伺える谷間の森には、山深い迫力がある。2002年に訪れたピヤシリ越林道を思い出させてくれるこの眺めは、毎年毎年成長している道端の木々が遮り、近年明らかに眺めが悪くなっているのは残念なことだ。
峠周辺に近づくにつれ、前方に霞みのようにガスが漂い始めた。そして空の色が急に濃くなり始めた。
7:30、幌内越峠通過。
「幌内越峠」という小さい標識がある前後、ほぼ平坦な区間が数百m。道がおもむろに下り始めてから50mも下ると完全に谷間に降りてしまい、下り斜度そのものが一段落してしまう。
上幌内側のやや大きな谷間とは打って変わった、なだらかな地形である。
峠の向こうで雲が引くことを期待していた。しかし道が原生林の山肌を緩緩と下り始める辺りから、雨粒がぱらつき始め、すぐに止んだ。意識してここまで考えないようにしてきた今朝の判断は、やはり間違いだったのかもしれないという気がしてきた。
峠付近の原生林から谷間に下る途中、周囲は植林っぽい森となってしばし続き、その後更に斜度が緩くなってからサンル牧場が断続し始める。
まだ8時前。牧場の間に現れる森は深く、相変わらず大型野生動物が潜んでいるような不気味な雰囲気が漂っている。
昔はあまり意識しなかったこういう雰囲気を、近年はとても強く感じるようになった。ただ、思い出してみると、昔から熊の糞は道端に落っこちていたように思うし、オホーツク内陸部のこの一連の道で、舗装路面にかなり巨大な熊の足跡を見つけてびっくりしたこともある。
それに実際、鹿ぐらいはしょっちゅう見かける。やはりそういう特有の雰囲気は、漂っているのかもしれない。
谷間には、かなり緩い下りが安定して続く。登り返しのようなものは殆ど無い。あまり何も考えずに脚を間欠的にくるくる回していれば、それなりに一定のペースで下ってゆけるので、ツーリング的には都合が良い。
ただ、下川から登りで訪れるときより通過速度自体は速いにも関わらず、下りの方が登りより距離(というより時間か)はやや長めに感じられるのが面白い現象だ。
旧道がサンルダム貯水池周囲の新道区間に移行する辺りから、雲が急に低くなり、向こう側の山が霞み始めた。
それまでも小雨ぐらいは降っては止んでいたのだが、いよいよ文字通り雲行きがあやしくなってきたようだ。しかしもう何が降っても、少なくとも下川までは勢いで中央突破しちゃえ、という段階ではある。
道はしばらく山裾の森を進んだ後、おもむろに山腹へ高度を上げ、サンル大橋へ登り始める。将来の湖面はどうせ水平なのだから、あまり湖面から高く登っても仕方無いのに、とも思う。しかし湖岸の道と、湖面を渡る橋では、湖面からの規準高さは違うのかもしれない。ならば多少の登りはこの手の道では避けられないのだろう。それに今日この後通過する予定の岩尾内湖の唐突で露骨な登りに比べると、大分ましとも言える。こういうところはいかにも平成っぽいダム湖だ。
サンル大橋の上で谷間を眺めている間、一旦雨は上がった。天気は安定していないのだと思われる。
いずれこの湖も、岩尾内湖のような風格を帯びる日が来るのだ。そして私も湖がそんな風格を帯びる頃、湖を見下ろして「昔の旧道もけっこういい感じでねえ」などとつぶやけるぐらいに北海道を訪れることができていると有り難い。行く手の天気があまりすかっとしないので、思考は妄想気味に展開してゆく。
雨具を脱ぎ、サンル大橋を渡って対岸に向かうと、再び雨が降って止んだ。
そして何度目かのサンル牧場辺りから、今度は路面がここまでとは違うレベルで濡れ始め、サンルダム堤体から路面はもうすっかりぬらぬらに変わってしまった。明らかに今までけっこう盛大に雨が降っていたようだ。
下川到着間近だが、この辺で雨具を着込んでおく。
ちなみにサンルダム堤体は、何と大体できあがっていた。それもそのはず、サンルダムは遂に来年2018年完成予定なのである。
9:15、下川着。
下川手前から既に、路面は濡れているどころか黒々ぬらぬら、道の轍に大きな水たまりが目立つ。ここ下川では、明らかについさっきまで盛大ににわか雨が降っていたようだ。今この下川では空は明るいものの、雲自体はかなり低く、早く動いている。そして下川盆地を囲んでいるはずの山は、低く濃い色の雲に完全に隠されていた。明らかにあの辺では雨が降っていそうな雰囲気だ。
仁宇布からここまで南下する間、何とかあまり本格的に雨が降ることは無かった。しかしこの先、早朝仁宇布で決めた通りに山間の道道101を南下すれば、糸魚峠まで少なくとも10km以上山間を通ることになる。その間、間違い無く雨に降られると考えるのが自然だ。そしてその雨は、少し前下川に降ったのと同じぐらいの、というよりけっこうな大雨である可能性が極めて高い。
今日はここでいっそ撤退し、名寄から輪行するのがいいだろうかという気になってきた。そこでセイコーマートの軒下で天気予報を確認すると、士別市と愛別町に12時以降、何と晴れマークが付いていた。その先の旭川盆地も、雨の印などどこにも見当たらない。ほんとか。
ということは、今この山間でこんなに雨が降っていても、中広域的には次第に晴れへ推移するということなのかもしれない。ならばこの先多少降られることがあっても、そう長く続かないのかもしれない。折角山間コースをここまで来たのだ。この先1時間ぐらい雨の中を走れば旭川盆地へ自走で到達できるなら、もう少しこのまま進んでみよう。仮に想定外のもの凄い大雨で撤退を余儀なくされたとしても、その時点で名寄まで下れば美瑛へは充分に早い時間に着ける。
というわけで、ここはとりあえず、そのまま更に進むことにした。
記 2018/1/28
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