塘路→(道道221他)阿歴内→(道道1128他)太田
(以上#2-1)
(以下#2-2)
→(道道813)高知→(農道)茶内西→(道道123)上風連
(以上#2-2)
(以下#2-3)
→(道道123)別海→(道道831)豊原→(農道)緑町南
(以上#2-3)
(以下#2-4)
→(町道)開陽台→(町道)開陽
(以上#2-4)
132km
ルートラボ
目覚ましが鳴った。もう朝なのか。まだ2日目というのに、もっと寝ていたい。東京の暑さで疲れが溜まっているのかもしれない。明日は自動的に4時に目覚めることができるだろうか。朝が早い北海道、しかも道東とはいえ、4時では辺りは真っ暗だ。その真っ暗な窓の外に、霧が溜まっているのがよくわかる。4時半を過ぎて辺りが次第に明るくなると、その霧の濃さがよくわかってきた。今日の天気予報は晴れなので、いずれ朝のある時点でこの濃い霧も消えて晴れとなるのだろう。晴れで気温が上がった翌日によくあるパターンだ。そしてそういう現象が起こる場合は、晴れの周期もそろそろ後半に入っている場合が多い。
5:30、塘路YH発。霧の塘路で自販機を探し、コーヒーを飲む。コーヒーがあるのならまずはコーヒーだ。コーヒーを飲まないと自分は何もできないのか、とも思う。甘えのようなものかもしれない。
森と牧草地が、100mぐらい向こうが見えないぐらいの霧に包まれている。以前森の中に少しは見えたはずの、塘路湖の湖面が殆ど見えない。
薄暗い霞で風景は灰色で、霧の中からおもむろに現れる少々のちょい坂が、出発したばかりの身体にやや鬱陶しい。
過去の訪問での、晴れの風景が思い出される。もう少し爽やかな1日の始まりであってほしい。
せっかく実際の道を走っているのに過去の訪問に思考が向いてしまうのは、多分薄暗いからかもしれない。人間にはつくづく明るい朝の光が必要なのだと思う。
今日の天気予報は晴れだったので、晴天への期待は高い。多分すぐ晴れるのではないかとも思う。
薄暗いので、北側の農道経由ではなく、このまま道道221を継続して南側の阿歴内を経由することにした。
北側の農道方面は何となく茂みから熊が出てきそうで怖い。そして阿歴内経由の方が道が道道だけあって起伏が多少小さく、楽に通れる気がした。何より阿歴内にはしばらく行っていない。
牧草地の霧とカーブの向こう、茂みに人里の雰囲気が漂い始め、民家が登場して阿歴内に到着。
まだ早朝で人気は無いものの、以前何度か立ち寄った自販機で缶コーヒー休憩とする。自販機があると無いでは、脚の停めやすさが全然違う。しかし、薄暗くて出発せねばという気持ちとまだ何かと動きにくいような気もする身体が一致しない現状に対し、缶コーヒー休憩という大義名分に逃避しすぎているような気もしないでもない。
ささっと出発しよう。根釧台地に入ったら晴れるかもしれないのだ。と思っていると、やや大粒の雨がぱらぱらっと降り始めた。雨かよ。話が違うな。雨具を着込む間、放し飼いっぽい小柄な犬が寄ってきたきたので、少し遠くの玄関先をうろついている風のおじさんに「何とかしてくれ」とお願いすると「それ、うちのじゃないんだ」と返事が返ってきた。まあそんな時間が過ぎてゆく、早朝の阿歴内なのだった。
台地上から国道272の谷間へ下り、東阿歴内の愛らしい「おはか→」看板を眺めてまた台地上へ登り返す。
道道1128で、以前経由した片無去経由の農道との分岐をのぞき込んでも、まあ事前の想像通りに霧が掛かっている。農道は細く静かで、距離もアップダウンも道道1128とそう変わらない。魅力的な道なのだが、以前の訪問時に道道1128は晴れているのに農道区間だけ妙に雲が出てきたことがあった。やはり道道の通る台地上の方がより天気は安定する傾向にあるのかもしれないと勝手に思っていて、今日の所は道道1128へ。
雨がほぼ上がって空が多少明るくなってきた。分岐の標識に自転車を立てかけ、ここで雨具を脱ぎおにぎりを食べておく。この先太田のA-COOPに寄らないとすると、少なくとも50kmぐらい先まで自販機すら無い。
初の経路となる高知→東円あたりの地図を予習したり、もう1個おにぎりを腹に入れておく間、再び雨が降ってきた。小粒で密度が高く、いつのまにかじっとり服に浸みるタイプの嫌な雨だ。再び雨具を着込む間にまた時間を食う。
ひとつひとつは必要なことなのだが小さな出来事の積み重ねが、何となくだらだらと脚を重くしてけだるい時間となり、気が付くと7:20になってしまっていた。ここまで1時間40分もかかってしまっている。せっかく宿を5時台に出発したのに。
案の状、走り始めると霧の水滴が上着に張り付いてくる。霧と寒さのせいか、走っては停まってを繰り返していた。路面はぎりぎりで乾いていたり、所々水たまりにもなっている。
しかし南片無去辺りから、今までそこそこ明るかった霧の中がやや薄暗く、雨粒も大きめに変わってきた。もう本格的な雨だ。
立ち止まってフロントバッグに突っ込んでいるGR2をフロントバッグの中に仕舞いつつ、どんよりと低い雲を見上げてみる。
話が違う。今日は晴れじゃなかったのか。ペースも明らかに低調だ。全体的に低調になってしまっている。
大回りの恵茶人で、太平洋を眺めるコースも望み薄な気がしてきた。ただでさえ、内陸部の根釧台地が晴天でもどんより曇りの場合が多い太平洋岸、今日の天気はますます望み薄だ。ならば、早めに民宿地平線に着いて、夕食前に町営温泉に連れて行ってもらおう。早く温泉に入ってビールでも呑んでゆっくりしよう。等と考えると、町営温泉の食堂の中札内地鶏唐揚げで頭が一杯になる。唐揚げのイメージで雨を耐えるのも悪くないな。
太田の外れで道道13を横断。道道13沿いの少し南のA-COOPに寄れば自販機がある。何か飲んだりするなら、今がそのチャンスだ。いや、ここまで散々ゆっくりしているし、物資に不安は無い。粛々と先へ進もう。
8:05、大別発。幸い再び雨が途切れ、空が明るくなり始めている。ここは天気が変わる場所、台地上の片無去から低湿地を囲む別寒辺牛の丘陵部の境界だ。まあいつもは片無去で晴れていて丘陵部で雲が出るのだが。
牧草地が拡がる大別から、植林の森が拡がる別寒辺牛の丘陵部へと、周囲の風景は移行する。
整然と植えられたカラマツの植林が続く丘陵は、アップダウンはそう厳しくないものの全く牧草地や人の居住地が途絶え、植林の森と比較的幅が広い道なのに、何となく人気を拒絶するような雰囲気が漂う。
薄暗い今日のような日は尚更だ。
湿原を横断して別寒辺牛川を渡る低地、次々毎度の立ち寄りポイントで脚を停め、霧に霞む景色を眺めながら思う。恵茶人まで足を延ばさなければ、今日はかなり楽目の行程だ。もうのんびり行程でいいよ。
道がするするっと台地裾に登り、糸魚沢への町道と合流。別寒辺牛湿原から茶内原野へ続く牧草地へ、いよいよ根釧台地の中核とも言えるエリアがここから始まるのだ。遠景はまだ霧っぽいものの、空気中の水滴は完全に消えていた。
9:05、別寒辺牛着。明日また根釧台地202kmコースでここまで来るのだ。あれほど来たい根釧台地なのに、来れるときには毎日来れてしまうのだと思うと、何だか奇妙な感じがする。
さっきの登りで少し汗をかいていた。登りのせいもあるが、あの高性能レインジャケットが蒸れている。間違い無く、出発前の洗濯時、撥水剤浸け込み後に横着して乾燥機入れずに自然乾燥させてしまったのが原因だろう。我が家には乾燥機など無いので、いつもレインジャケットを乾かすためだけに地元コインランドリーに行かなければならないので、それが面倒でついベランダ干しに頼ってしまったのだ。今後はちゃんと乾燥機に入れることにしよう。コインランドリーがある銭湯でお風呂に入るのも楽しいしね。楽しんでしまえばいいだけだろう。この天気だって楽しんでしまえばいいだけだ。
というわけで、反省しながらレインジャケットを脱ぐついでに、牧草地が拡がる台地上でまたもや少し休憩することにする。遠景、というより少し遠くの防風林からして未だとっぷりと濃厚な灰色の霧の中だ。平坦に拡がる牧草地には、丹頂鶴のつがいが戯れ、時々ギャーッと鳴いていた。鳴かなければ大変優美な鳥なのだが、等と思うのは人間の勝手である。
霧はかなり濃く、相変わらず頭上の雲はかなり低い。でも、あまり雨が続きそうな気はしない。そもそも今日は晴れ予報、降水確率も低かったし、さすがにもう雨は降らないだろう。でも、たとえこの後根釧台地が晴れても、海岸から海上には雲がどんより溜まっているパターンかもしれない。過去にはそんなことは何度もある。太平洋岸の恵茶人へ向かうと中標津到着が遅くなるが、とりあえず今のところは予定コースの未済経路で東円朱別へ向かい、その後は恵茶人海岸を省略、直接上風連へ向かおう。行程が短くなって楽になったら、いい加減晴れているであろう夕方に、開陽台でたっぷり時間を取れるかもしれない。開陽台到着が早ければ、売店で何か食べることもできる。
高知小学校を過ぎ、南側へ入り込む道へ。さすがは毎年来ているこの辺の未済経路、農道分岐は今まで見落としていた程のさりげなさだ。
コースとしては、明日も訪れる道道813の1本南、道道123へ向かうのに、未済経路を使うのが今日のポイントだ。上風連方面に向かうには、この南回りだとやや大回りとなる。そして過去の訪問では、道道123方面や浜中、太平洋岸へ向かうのに、もう少し北で南に向かう道道807を使っていた。何故かというと、今回のコースは私が持っている地形図では道が繋がっていないからだ。それが今回出発前にルートラボでコースを描いてみたら、道が牧草地で数百mつながっていないだけであることがわかった。そしてそういうときの必殺技、空撮写真拡大の状況では、何だか全く問題無く道がつながっているようなのだ。おまけにその辺に、「北海道牧場」などという大変すてきな名前が見られた。試しに行ってみる価値が、十二分にあるように思えたのだった。
しばらく町道然とした狭い幅の舗装が続いた後、牧草地のど真ん中で道はダートに変わった。この先が、ルートラボで強引にトラックの線をつなげた区間だ。もしかしたら牧草地の途中で、何か柵があるかもしれない。そうなったらそうなったで、道道813へ戻って円朱別まで進んでから、また南下して道道123へ向かえばいいと考えていた。何と言っても「北海道牧場」を一目見るのが楽しみである。
ダート区間では道両脇の茂みは高くなり始め、牧草地の眺めは途絶えた。しかし結局、その破線区間をあっけなく通過することができた。
ルートラボでコースを拾えた区間に入ってもしばらくダートは続いていたが、農場が現れ、その先から舗装が復活。道道813からの南回りルートを阻んでいた高知からのアプローチが、(私的に)開通したのだった。まあしかし、たかだか平地ダート数百mの話ではある。そして結局、「北海道牧場」の文字は見そびれてしまった。
一直線の道が10km以上も丘陵を横断しながら続く道道813と違い、こちらの南回りルートでは牧草地のグリッドを区切る道が時々ずれたり、微妙に曲がって続いている。こちらもクランクや交差点の標識の度に立ち止まり、地図確認や交換して、やや大きめの起伏に続く牧草地の中をのんびり進んでゆく。脚を停める度に費やす時間は、1回当たり数分に充たない。しかし停車回数はやや増え気味で、その度に自分の周りを動く景色と風が停まり、何となく移動している時間が分断されている気になってくる。気分も実態も、明らかにペースに乗れていない。
霧はすっかり晴れ、遠景も鮮明に眺めることができている。終始厚い曇りではあるものの、空は次第に明るくなり始めていて、朝に見舞われたような雨の心配は薄れていた。恵茶人へ向かうとすると、そろそろどこかで南に向かう必要がある。それがさっきから地図を時々眺めている理由でもあった。しかし根釧台地でこの調子だと、曇り確率が非常に高い太平洋沿いの恵茶人では、きっと鉛色の海上に厚い雲が広がっていることだろう。
もう今日は恵茶人は止めよう。天気だけじゃなく、片無去からここまで時間が掛かりすぎている。一方で天気にひと安心したせいか、そろそろ疲れを感じ始めていた。ここまで食料品店で休憩できていないからかもしれない。東京での暑さ疲れが出ているのかもしれない。まあ歳だしな。セイコーマートに行きたい。この辺りに誰かセイコーマートを始めてほしい。儲かるかどうかはわからないが。
等と悶々と進むうち、交差点の角に「浜中簡易軌道」の文字が描かれた立て札を発見。初めて浜中や歌登の地名を知ったのが、中学生の頃に読んだ鉄道ファン誌の軽便鉄道の記事だった。そのため、私にとって浜中の地名と簡易軌道は切っても切り離せない。それに、葛藤中の中高年には止まり木が必要だ。止まり木が繁華街の盛り場である必要は無い。
刈り込まれた草むらの中のレールを少し眺めて再び走り始めると、牧草地に続く道の脇、茂みに埋もれつつある土手が並行しているのに気が付いた。これも簡易軌道の跡だと思われる。
その後、空は更に明るくなっていった。
更に上風連手前で道道123が道道813と合流する辺りでは、そろそろ日差しが現れ始めていた。
11:20、上風連着。明日の朝、というより24時間以内にもう一度ここに来る予定だ。今のところはA-COOPで缶コーヒーを飲んでおくことにする。明日の朝は交差点近くの森重商店の自販機にお世話になろう。
缶コーヒーの後は、水を貰いに小学校へ。小学校で水をもらうのは、伝統的なサイクリングの補給方法である。それに高知や東円の小学校が閉校してしまったので、水をもらえそうな小学校をこの辺りで見つけるのは一苦労なのだ。
人口密度が少ない土地のイメージに反して、小学校の校庭は小学生の野球で賑やかだった。見知らぬおやじが休憩していると怪しまれそうなので、水を汲んだら小学校を出て人気が少ない集会場へ。こちらもお年寄りがゲートボールを楽しまれていた。もう構わず建物の軒下ベンチで補給食のパンを全部片付けてしまう。
まだ雲は低いものの、勢いよく流れる雲はもうすっかり明るい。明らかに予報通り、天気は晴れへ向かって推移している。この先のコースが悩ましくなってきた。もし晴れるなら、道道150や開陽台を訪れる千載一遇のチャンスだからだ。当初予定の東回り標津方面経由より、西側へ向かう方がいいかもしれない。もし可能なら、養老牛へ足を延ばせれば言うことは無い。
などと考えるうち眠くなってきた。もう11時半過ぎ、少しぐらい居眠りしてもいいだろう。
11:55、上風連発。
走り始めてすぐ、居眠りする前より劇的に晴れていることに気が付いた。雨の心配が全く無くなったのは有り難いが、急激に暑く、いや日差しが熱くて照り返しが熱くなっている。
もう少し涼しいとこの先助かるんだけどなー、等と思いつつ北へ脚を進めてゆく。
道道123は別海方面へ一番オーソドックスな道だ。2000年代後半ぐらいまでの私的幹線だが、実は最近あまりこの道を通っていない。いつの間にか、1990年代後半辺りに比べて交通量がやや増え、道自体も大分改修が進み、何かと物々しく立派な道になった気がする。
上風連から別海へは、ひたすら連続する丘と低地に牧草地と防風林と牧場の緑が続く。一直線で道の方向はほぼ南北、ちょうどお昼頃に路上に森の影が全く無く、日差しと照り返しがつらい。
丘越えの高低差が別海へ向かって次第に少なくなってゆく間、国道243まで丘越えがあといくつ、交差する町道の番号は何線だ、いまどの辺だ。この道を通る間中、毎回そんなことばかり気になっている。
12:45、別海で国道243を渡り、そのまま道道831を北へ。ここまで道の方向は北西向きに、そしてもう何回かアップダウンが続いた後、道は起伏が少ない台地上に乗り上げる。
改めて地図を見直すと、というよりここまでののんびり行程で何となく覚悟していたが、改めて地図を見るとここから養老牛は思っていたより遙かに遠い。中春別14時、西春別15時、計根別で16時前、養老牛で17時。開陽台着は18時過ぎか。空は晴れているから夕方の開陽台も悪くないが、途中食事すると更に30分以上延着となるだろう。昔はこんなこと当たり前のようにやっていたが、51歳になったワタクシとしてはもう少し宿に早めに着きたい気はする。それに明日のコースや既済経路と重複する道を通ることになるし。
結局このまま中標津に向かうことにした。多少余裕がありすぎだが、どうせ養老牛へは行けないのだ。そして、余裕がある分開陽台で余裕を持って過ごすことができる。
別海・中標津間は、旧標津線沿いでやや交通量が多い幹線道路道道8以外、南北方向の道のつながりが大変に悪い。別海と中標津で道の直交グリッドの角度が違うため、その間で道が途絶えてしまうのだ。
そして更に中標津側の豊原では、南北方向の道に舗装道路が無く、今時根釧台地の地域間道路としては珍しくダート区間まで現れる。
空はますます晴れ渡り、特に正面に武佐岳、西別岳がよく見える。近年曇りばかりだったこの根釧台地で、晴天ツーリングが楽しめているのがとても嬉しい。
さっき諦めた山裾の道道150に行きたかった、とも思う。きっと最高に気分がいい道道150の風景を楽しめたことだろう。上風連までのだらだら行程を反省。
振り返って太平洋岸方面に目を凝らすと、空の地面との境界に近い辺りが何となくとろーんと雲っぽい色になっている。海上には相変わらず厚い雲が溜まっているのかもしれない。そうでないかもしれないが、どっちにしてもあり得ることだ。そして今日はもう、恵茶人へは向かっていないのだ。後悔ばかりしても仕方無い。
茂みの中に新しめの住宅や施設が点在し始め、次第に密度が増えて、辺りがいつの間にか中標津の町外れに移行して、国道272に合流。路上はここまでの静けさが嘘のように車が多い。1986年に初めて中標津に訪れてからもう30年。その間、中標津は北海道のこの辺りにしては意外な程に町が拡がった。むしろ根室より大きくなったらしい。
14:45、国道沿いに期待通り発見できた蕎麦屋「わかもり」で休憩とする。かしわ南蛮を注文、切れと香りが良くてなかなか美味しい。
15:05、中標津発。
やっと木陰が涼しくなり始めた俣落直交の町道を北上してゆく。
夕方っぽい日差しに牧草地の緑が鮮やかになっている。時刻も上々、今日は開陽台でゆっくりしよう。
15:50、俣落着。意外に早く着けた。
しかし、町道北19と開陽台入口道路の登りはやはり汗だくである。
16:10、開陽台着。前回が何時だったか忘れてしまったほど久しぶり(2011年以来だった)の、晴れの開陽台だ。
駐車場の定位置に自転車を停め、そそくさと展望台へ階段を登る。まずは売店でサンドイッチにソフトを瞬殺。いつもこの売店では、いい歳をして自分でも可笑しくなるぐらいに食べ物がすいすい腹に入ってしまうのだ。
食べ物を食べた後は、展望台の屋上へ。
360°上空に開けた、北海道有数の展望スポットである。今日の開陽台は空に雲はあるものの、根釧台地のはるか地平線まで良好な眺めである。いやー、近年出会えていなかった、なかなかの開陽台だ。やはり開陽台は素晴らしい。素晴らしいとしか言いようが無い。裏手のキャンプ場にはバイクも多い。今日はここで極上の一夜を過ごすのだろう。少し羨ましい。
この時間、どんどん日が傾いてゆく。そして今日は雲の動きが早い。根釧台地を照らす日差しは雲に遮られ、大きな影が次第に動き、また明るい日差しに照らされてゆく。僅か5分ぐらいの間に、風景のニュアンスがどんどん変わってゆく。
こういう日も来るのだと思わせられる、間違い無く当たりの開陽台である。思えば朝はどんより暗く霧と雨に行く手を遮られそうだったが、途中からぐんぐん晴れ始めて暑くなり、印象としては暑かったことしか残っていないほど晴れてしまった1日だった。そして前半の余韻か東京での暑さ疲れのせいか何となくだれた行程の1日ではあったものの、いい時間に開陽台に着けて、近年全く遭うことが出来なかった晴れの根釧台地を眺めることができている。曇りの日も、霧の日ですらそれぞれ味わい深い表情を見せてくれる開陽台ではあるが、この晴れの日の風景こそ開陽台にやって来る理由となっている風景とその体験なのである。
16:55、開陽台発。
町道北19号から少し脇道に入り、1987年から私的な定点撮影地となっているダートで夕方の風景を少し眺めた後、17:20、民宿地平線着。
宿に着いてすぐに町営温泉へ。早めの到着が効いて、午前中からの目論見通り夕食前に風呂に入れたのはいいが、町営温泉の私的名物中札内の地鶏から揚げを生ビールと共に味わう望みは叶えられなかった。地鶏から揚げはボリュームたっぷり過ぎて、夕食前に食べてしまうと夕食を残しそうでどうしても食べることができないのだ(しかし今考えたら、残して持ち帰りにすればいいだけかもしれない)。
夕食時には、宿主の石川さんに新コース、2年前から構想を伺っていた根釧台地100kmの完成版を見せていただいた。明日は晴れ予報なので、問答無用で初の晴天202kmだが、石川さんが満を持して組み上げた第2作、100kmコースもきっと素晴らしいコースに違いない。いずれ辿ってみたい。
一方、「明日は大丈夫でしょうけど明後日はまた嘘みたいに雨でしょうね。台風も心配ですし、今年の夏はこれで終わりでしょう」と石川さん。長年の実績と経験で、総合的に見て間違い無いらしい。ならば明日は心置きなく202kmコースを楽しみ、明後日の弟子屈までの屈曲コースをどうするかは明日の予報で考えよう。
記 2016/12/19