北海道Tour15#14 2015/9/22
鹿追→西達布-1

鹿追→(道道416・町道9号)北笹川→(道道771)南大牧 (以上#14-1)
(以下#14-2) →(町道西9線)北誉→(道道133他)駒場 (以上#14-2)
(以下#14-3) →(道道337)共進→(町道21号・22号他)瓜幕 (以上#14-3)
(以下#14-4) →(国道274・道道593)岩松
→(道道718・町道)新内→(国道38)ルーマ
(以上#14-4)
(以下#14-5) →(町道・農道)北落合→(農道・町道)幾寅
→(国道38)西達布
 141km  ルートラボ

ニューサイ写真 RICOH GR GR18.3mm1:2.8 A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路 濃い灰色は既済経路
 

 夏と違って、ツーリング中でも4:00に起きる必要は無い。しかし、5時前に起きて、辺りはやや薄暗い。霧が掛かっているようだ。そしてかなり肌寒い。昨日まで2泊したセキレイ館は海岸沿い、ここ鹿追は内陸で狩勝の山々が近いからかもしれない。
 朝食は6時からというのも、6時には車のお客さんが朝食を食べずに殆ど出発してしまっていたのも、いかにも町の宿らしい。決して居心地の悪い宿ではないが、お客さんも短期間で工程をこなすのに必死なのだろう。自転車と事情はあまり変わらないのかもしれない。私にとっては、走り始める前のこの時間、朝食を食べておけるのが大変有り難い。10時頃に何か食べなくてもお昼まで体力が保つので、朝食のお陰で1日の行動全体が変わるとすら言えるほどなのだ。

 

 6:45、鹿追福生館発。朝食は食べたものの、まずは補給食を仕入れに町の南のセイコーマートへ。続いて給水のために再び町中心部の役所・公園施設を蛇口を探してうろつくと、オートキャンプ場でも何でもない広めの駐車場がオートキャンプの車でぎっしり一杯であることがわかった。やはりけっこうな数の人々が、この連休中十勝に繰り出しているのである。昨日の鹿追福生館だってごく普通の町の宿なのに、かなり探して何とかやっと確保できたぐらいなのだ。そして、ここには以前確実に訪れたことがあるのを思い出した。2008年、計画ミスで大幅な下方修正を余儀なくされた日だ。朝9時台にしてそろそろ「なんだかやばそうだなあ」と思い始めていた、そんな不安な印象と共に、この景色には記憶がある。もちろん鹿追自体には何の問題も責任も無く、今は実に平和で静かな秋晴れの朝である。もうああいういい加減な計画だけはしないように心がけねば、と思いながら給水を完了。なんだかんだで出発までに25分もかかってしまっていた。

 7:10、鹿追発。まずは道道416で町中から北上。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 町外れで同じ直線上のまま、道は道道から町道9号に替わる。交通量皆無の静かな細道沿いには、畑や牧草地、牧場が続く。空気は爽やかを通り越してやや冷え込んでいて、時々指を首筋で温めなければならない程だ。防風林の西側に沿いなので、道は朝日でまともに木陰の中で、レッグウォーマーが有り難い。

 空は真っ青、木陰や防風林の影が青く見えるほど。こういうのんびりした道が人里にある安心感が、十勝のいいところだとつくづく思う。

 こういう道はのんびり進みたいものだ。今もけっこうのろのろだ。しかしのんびり進みたいものというより、緩い登り基調のため前に進みづらいのが現実なのだった。開けた場所なので視覚的には全く上り勾配が感じられず、ペースが全然上がらないのに身体に負荷を感じていて、俺はかなり疲れているのだなどと焦ってしまう。落ち着け、「自分のペースでのんびり進みゃあいいんですよ、自転車なんて」といつも語ってるじゃないか。一昨日、セキレイ館でのライダーとの会話を思い出せ。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 笹川北で自衛隊鹿追駐屯地の脇を過ぎ、北向きから東向きに曲がって町道北14号へ。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 ここまで森の影の中を走ってきたのから一転して、真正面の太陽が大変眩しい。そして標高200mの鹿追から笹川北では290mまで登ってきていたのが、一転して下り基調に変わった。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 笹川まであんなにのろのろでしか進めなかったのに打って変わって快調ペース、毎度ながら大変に現金である。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 道の両側には、十勝を象徴するような風景が続いていた。北側は十勝外周の山々と山裾へ続く牧草地に畑、南側は拡がって下ってゆく牧草地と畑、そしてこれらをグリッドで区切る防風林。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 相変わらず真っ青な空の真っ正面に日差しが眩しく、風景全体が鮮やかで、何が現れてもばっちり決まる。

 町道北14は厚生で道道771に合流。名前が替わっても相変わらず同じ直線上の道ながら、いつの間にか、というより厚生から、風景に見覚えがあるような気がしていた。そういえばコーヒー休憩した厚生にも、なんだか以前立ち寄ったかもしれない。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 消去法で検討してみると、朝の鹿追同様2008年の可能性が高い。確か鹿追から厚生まで今日の経路と四角形の左上二辺と右下二辺の関係で別ルート、厚生から先は確かに今通っている道だ。思えば2008年の経路は、一昨日昨日のコースとも被っている。アドリブで選びやすい道を選んでいると、こういうことになるのだろう。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 この先向かう町道中音更9は、セキレイ館で同宿の方に教えていただいた道だ。
「一直線で他の道から完全に独立して南下する細道がある。車でそこを走るのが大好き。他にちょっとない、道なので、近くに行ったら絶対行ってみてくれ」
とのこと、昨夜眺めた地図には、確かに十勝種畜牧場の中、周囲のグリッドに並行して南下する道が描かれていた。この道で広大な十勝種畜牧場を南下し、帰りは少し東から、やはり十勝種畜牧場の中を南東から北西へ、斜めにたすき掛けに遡る道を使えば、とりあえず一筆書きはできあがる。特に斜めの道は、十勝を区切る直行グリッドのど真ん中に描かれた線をかつて意識したことが無く、とても興味をそそられていた。しかし手持ちの地図はやや古く、往路の町道中音更9号はともかく、斜めの道は現地での現状確認が必須だと思われた。まあその程度に細道として描かれていたのだった。

 案の状、道道771終盤の交差部分で偵察すると、その道は畑の向こうで茂みの中へ完全に入り込んでいた。そして、どう考えても茂みの先へ道が続いているようには見えない。昨夜は町道中音更9号線とセットでかなり良い道を発見したと思っていたが、こりゃあ諦めた方がいい。
 町道中音更9でも、序盤で前述のたすき掛けの道との交差がある。こちらも、やはり入り込むのはためらわれる程度に、難儀しそうなかなりあやしめの泥道っぽい道が茂みの中へ消えていた。恐らく牧場の中で道が消失しながら断続しているのかもしれない。


 町道中音更9は、道道771から北誉で道道133に突き当たるまで8km、標高差は100m。

 川を渡るアップダウンの他は、比較的安定した下り基調で推移する。地図では牧場のまっただ中なのだが実態はしばらく牧場の低木林、道の両側はフェンスになっていて、ほぼ外界と隔絶されている。時々横断する道は全てオーバークロスであり、途中から周囲の森が牧草地に替わるものの両側のフェンスはそのままで、つまりひたすら家畜改良センター十勝牧場の中だけをまっしぐらに南下する道なのだ。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 間違い無く、他では見かけない雰囲気だし、静かな道だ。帯広から意外に近くにこんな道があるのだ、と何だか得した気分になった。一昨日昨日の太平洋沿岸の漁村や昨日の山裾区間など、まだまだ未済経路には新たな発見がある。

 後半には帯広18kmの標識も登場、帯広から輪行する自分をちょっとだけ想像するが、こんなに天気がいい快適な日に輪行する選択肢は無い。それにまだ朝8:30だ。

 最後はフェンスが途切れ、周囲がようやく開放的になってひと安心。台地の端の牧草地を下り、北誉で道道133に合流。

 道道133の周囲には、十勝種畜牧場の建物や畜舎が目立つ。ここまで車が殆ど来ない道を来たためか、この辺りの道道にしちゃ大型車が多いように思う。あるいは鹿追方面から帯広への幹線道道なのかもしれない。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 折り返し地点の駒場では、十勝種畜牧場の入口が登場。

   RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 一直線に続く白樺の並木道には「独立行政法人 家畜改良センター十勝牧場」と掲げられている。そうか、独立行政法人なんだな。地形図にはこういうことは描かれていない。前述の斜めの道は、ここから牧場へ入り込まないと通れない。しかし入口から中は関係者以外立入禁止のため、当初の予定コースは最初からあり得なかったことになる。或いは近年口蹄疫で牧場のセキュリティが上がるまで、通れば通れる道だったのかもしれない。

 それはそれとして、この並木道はツーリングマップルに載っている。確か以前も訪れたことがある。「美林」という小さな看板が立っている通り、白樺並木が高く優しく道の上に梢を延ばしていて、意外に他では見ることができない素敵な雰囲気だ。帯広近くの意外な名所だと思う。私のような中年男性でもつい脚を止めて見入ってしまうし、私が訪れている10分ぐらいの間、車から降りてただ外から並木を眺めてゆく観光客が絶えない。ざわつく木の葉を眺めていると、並木の木立が語りかけてくれるような気がする。そして周囲は変われど、昔からこの道の風景はこうだったのかな、などと想像させてくれる。そんなことを想像するのは、今は通れない道でコースを計画してしまったためかもしれない。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 帰りのコースが直角二等辺三角形の長辺から短辺2辺に延びてしまった。粛々と進まねば、と出発すると、後輪がスローパンク気味である。9:05、目に付いた駒場小学校でチェック、確かにスローパンクだった。
 たとえチューブ交換でも、だらだら作業したり、ついでに給水、補給食等食べたりして時間がどんどん過ぎてしまう。その間、やや受動的に今後の予定について考えてみた。ここ駒場は標高115m。道の駅がある瓜幕は標高325mなので、200mずっと緩登りである。登りであればがくっとペースが落ちるのは毎度の事、行程距離の伸びと相乗して見込み行程からの更に遅延が増えてしまう。要するに、余裕綽々のつもりだったのが、想定内ながら意外に余裕が無くなってきたのだ。しかし何ができるということは無く、先も長いので無理無く進めるペースで着実に進むしか無い。
 とりあえずこの先、家畜改良センター十勝牧場を大回りで迂回するには、北回りと南回りが考えられる。そしてより風景の良さそうなのは、より山裾に近づいて走る北回りだろう。


 9:30、駒場発。道道337で北上を始める。流石に音更、鹿追から通ってきたどの道より交通量は増えていて、案の状僅かに登り基調、更に向かい風も感じられ始めた。頭では理解していても、思うように動けないストレスと焦りで、気持ちが疲れてしまう。そしてこの道、過去2回通ったことがあり、その時に「次は別の道を選ぼう」と考えていたことも思い出した。焦っても無駄、地道に続けても結局は目論見違いの既済経路、何だか報われない気分で一杯だ。

 そして今日もそろそろ10時前。日影が無い路上は朝からのかんかん照りですっかり空気が熱せられ、結構汗が出ている。まあこれが夏なら多分くらくらする程暑く、秋だからこの程度で済んでいるのだろうとも思う。

 東中音更で町道21へ。やっと西へ向かい始めることができる。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 町道21は、朝の道道771より1本だけ山寄りの道。場所的にはかなり近いにも拘わらず、しばらく道道771で感動的だった十勝山裾の雰囲気は薄い。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 どちらかといえば十勝中央部そのものの風景は、然別湖方面の山々がまだ遠いためかもしれない。

 西大牧で町道21が西11線に突き当たって終了するので、もう1本北の22へスライドしてみた。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 この辺りから北側の風景に、然別湖方面の山々が俄然存在感を表し始めた。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 ただ、北側に山裾の風景、南側に下手へ下る緩斜面の両方を眺めることができた町道14に対し、こちらはどちらを向いても山裾台地の景色であり、景色自体は十分感動的だが、変化にはやや乏しいように思われた。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 あるいは、更に強くなっていた向かい風と登り基調で、多少意識が薄れていたかもしれない。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 11:10、道の駅うりまく着。道の駅としてはややこぢんまりしたスケール感の小さな建物に乗馬コース、ここにも確か以前来たことがあるのを思い出した。小さな道の駅だというのに、そしてこの辺の交通量の印象にしちゃあけっこう混んでいる。やはりこの連休、十勝の人出が多いことをここでも実感。軽食コーナーは小さくても、サイクリング中の補給食程度には不自由しない。ソフト、唐揚げ、馬蹄型ソーセージを、やや風が強い外のテラスで集中的にいただいておく。


 11:30、道の駅うりまく発。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 いよいよ十勝も縁の十勝川段丘部だ。やや掘りが深く分節的な地形は距離感の掴みにくさに直結し、アップダウンと共に気持ち的にはややしんどい区間だ。

 しかしこの道を通りたい理由は、やはり変化のある地形と風景の移り変わりだ。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8  パノラマ合成
 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 国道274から道道593へ乗り換えて、その後上幌内の段丘へ、標高370mまで登る間に、姿を現し始める北側の谷間には、牧草地や狩勝の山々がダイナミックに展開する。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 そして次は十勝川の谷底、標高230mの岩松へ急降下。標高差140mとはいえ、大きく落ち込んだ谷底への下りは、昨日今日ずっと走ってきた十勝の平地とは明らかに異質のもの。十勝エリアもそろそろお別れなのだ。

 12:00、岩松着。

 谷底から少し南下、屈足の台地からまた標高320m上佐幌の台地を越え、13:00、新内で国道38合流。

 やっと新得の谷間、狩勝峠越えだ。つくづく十勝は段丘ばっかりである。まあ景色がいいので、毎回後悔はしていないのだが。

 まだ標高230m。狩勝峠の登り始めという位置付けか、「1合目」の看板がある。確か10合目で峠だったか。狩勝峠は標高650m弱、それ程の標高じゃないだろうと思っていると、僅か標高差40mちょっとで次の看板が現れていた。

 SLホテルの敷地を過ぎた辺りから、道は次第に離陸し始め、次第に周囲のサホロの山々の姿が近づいてくる。

 正面から周囲に立ち上がる斜面が大きく、道が通っているのは山肌であり狭い谷底ではない。大きな平野に面しているわけではないのに、空間感覚が広々としていることが、狩勝峠の大きな特徴なのだと気が付いた。

 狩勝の山々に近づいたせいか、空には雲がやや増え始めていたものの、相変わらずの晴れ基調。思えば近年、狩勝峠で天気が良かった記憶が無い。途中所々で丘陵を見下ろす度、今日は本来の狩勝峠の風景を楽しめていると思う。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 途中から連続するスノーシェッドの向こうにも、ずっと周辺の山々や谷の見晴らしが続いていた。大型トラックや観光バスは通るものの、狩勝峠、これはこれでなかなかいいではないか。
 だだっ広い道幅の国道38でさえなければ、もっと印象のいい峠なのかもしれない。

 13:55、狩勝峠着。標高644m。
 ここまでずっと昼食を食べずに来れているのは、峠のあくつ天空館で蕎麦でも食べたい気分になっていたからだ。しかし、この5連休に何とあくつ天空館はお休みである。幾寅まで補給食でごまかすしか無い。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 天気がいいので、久々に道端の元展望台の場所や、少しだけ上に設けられた現展望台からの拡がりを眺めてみた。近年の訪問では、雨は降っていなくても、辺りが雲に包まれて眺めが全く見えないことが多かったのだ。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8  パノラマ合成  RICOH GRU GR18.3mm1:2.8  パノラマ合成

 果たして眼下には、1986年、初めてこの峠で眺めた景色の印性を思い出させてくれる風景が拡がっていた。丘陵の森や畜産試験場が、その向こうで十勝川の段丘らしい谷へと続いてゆく。そしてその彼方に十勝の平野が、霞の中で空の下端と曖昧に混じり合っていた。狩勝峠では十勝平野を見下ろすという印象があったが、こうして改めて鹿追から丘と谷間をいくつか越えてから振り返ると、これはあくまでサホロ高原とか狩勝高原とか呼ばれる丘陵であり、十勝の風景は更に遠いことが実によくわかった。


 下りの途中、というより下り始めて峠のすぐ下、道が西へ大きく方向を変えるカーブから眺められるはずの、旧狩勝信号場跡も楽しみにしていた。というより、最近は年々風化しているような印象があったのだ。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8  パノラマ合成

 結論から言えば旧信号場はちゃんと残っていて、除雪車展開広場から落ち着いて眺めることができた。山裾の間に設けられた平場には元より、峠部分を抜けるトンネルの痕跡までちゃんと残っている。何やら小さい立て札が立っていて、茂みが定期的に刈り込まれているようだ。その刈り込みが、元線路跡の散策道っぽい筋に続いている。恐らく何らかの遺構として、今後も手入れされてゆくのだろう。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8  パノラマ合成
 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 信号場の痕跡そのものは初めて眺めた1986年より風化しているものの、これなら私が生きている間は痕跡が消失するようなことは無いだろうと思われた。

 

 14:30、ルーマ着。時間も天気も全く問題無い。迷わず北落合方面へ向かう。
 ルーマから農免農道に抜ける細道沿いのログハウスの前を通ったところで、「手打ち蕎麦」の幟が目に入った。さっき狩勝峠で蕎麦にありつけなかった残念な気分が、無意識のうちに蕎麦の文字を自動スキャンしていたと言ってもいい。それぐらいに、気が付いたら自転車を停め、ややひっそりしたログハウスの中に入っていた。

 

 毎回前は通っても、何となく宿泊営業してるのかな〜ぐらいにしか眺めていなかったこのログハウスでは、ちゃんと手打ち蕎麦を食べることができた。しかも北落合産の蕎麦粉らしい。もりそばで頂くその手打ち蕎麦は、太めで短め、濃い素朴な味と香りが一杯で、北落合の感動的に美しい畑が思い出された。そして、やはり幾寅まで引っ張るには、かなり腹が減っていたことにも気付かされた。これから狩勝峠より標高が高い北落合を前に、北落合の神様か何かのお引き合いかもしれない。有り難いことだ。

 14:55、ルーマ発。

 農免農道北落合線を6km。道には意外にも車が時々通る。夏の訪問時とあまり変わらないどころか、むしろ賑やかな気すらする。その大部分はラフティングの人々であり、それっぽい小屋も近年更に増えた気がする。

 しかし周囲の風景からは、進行中の秋が感じられる。まだ夏の面影が伺えた十勝の低地と違い、さすがにこの山間、9月下旬にして谷間の木々は色づいている。夏より空気が澄んでいるのか、大雪も正面にはっきり見える。9月下旬といえば、あの山々にいつ初雪の知らせがあってもおかしくない時期である。

 秋の北落合は始めてだ。そして今日の天気は過去訪問中最高である。

 初訪問の1998年以来、定期的に訪れることができる幸せに感謝しつつ、まずは最初の畑へ。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8  パノラマ合成  RICOH GRU GR18.3mm1:2.8  パノラマ合成

 前回立入禁止だった畑は、多少事情が緩和されたのか、畦道に歩いて入れるようにはなっていた。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8  パノラマ合成

 有り難い、畑に踏み込まないように気を付けながら、少し写真を撮らせていただく。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 今日もそろそろ夕方、真っ青な空の明るさが少し落ち着き始め、風景全体が赤みを帯び始めていた。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 16:05、北落合680m地点着。
 今回も遂にこの場所に来ることができた。夏の最終日、優柔不断なゲリラ豪雨に断念せざるを得なかった北落合なので、尚更嬉しい。
 到着して自転車を停めたところで、それまで出ていた日差しがすぐ雲に隠れてしまった。狩勝山間だけあり、雲が頭上近くで動きが速い。出そうで出ない太陽が再び雲から出るまで20分以上、その間に太陽は次第に低くなり、辺りの風景はますます真っ赤っかに推移していた。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 もうすっかり肌寒い。ここから幾寅へ下って日没、三の山峠を越えて西達布へ降りてちょうど真っ暗になるという潮時かもしれない。

 16:35、北落合680m地点発。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 行きに同じ1本道で一杯立ち止まったとは言え、下りは下りでまた別の風景が拡がる。北落合中央手前、とある脇道の私的ポイントで写真を撮っていると、軽トラの方に声を掛けられた。幸い「みだりに写真を撮らないでくれ」というというお叱りではなかったようで、北落合が好きで来ている旨答えると、喜んで下さった。少し安心したのみならず、「一番上までは行った?」「あそこ北落合で一番好きなんです」「あそこからうちの牧草地が見えるんですよ、いい景色でしょう」などという会話も。北落合最後の最後で、また北落合の神様にご褒美を戴けたようで、何だか嬉しい気分で北落合を後にすることができた。

 17:00、幾寅着。セイコーマートで明日の朝食代わりのパンとゼリーを仕入れ、そのまま次第に薄暗くなっている国道38へ。

 夕暮れで急いでいても、やはり三の山峠では大樹海に脚が停まる。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8  パノラマ合成

 しかしもう秋の釣瓶落とし、日が沈むと暗くなるのは恐ろしく速い。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 17:45、西達布「ダラムサラ−」着。明るいうちの最後の時間帯に、何とか西達布に着くことができた。

 

 「ダラムサラ−」は、昔ながらの木造の商人宿をそのままとほ宿に使っている。今まで訪れる機会がなかったが、実は麓郷から西達布へ抜けるときに毎回前を通っていて興味津々だった。なかなか静かで北海道の旅を感じさせてくれる、いい宿だ。
 十勝から少し外に出ただけで、宿の予約にも一苦労だった十勝の混雑が嘘のように、今日の夕食は私一人だ。本当は私が寝てから着く素泊まり客がいたらしいが、全く記憶に無い。一人で食べる夕食は、本格的トマトカレーだ。トマトの酸味だけではなく出汁が十分活かされていて、昔レシピを見て自分で造っていた頃のカレーを思い出す、大変美味い夕食だった。

記 2016/3/6

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Last Update 2016/3/7
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