晩成→(国道336)美成→(町道)芽武→(道道55)大樹
(以上#13-1)
(以下#13-2)
→(国道236・道道622・1022)尾田→(道道55)中札内
(以上#13-2)
(以下#13-3)
→(農道)上清川町→(町道他)北八千代
(以上#13-3)
(以下#13-4)
→(町道他)御影
(以上#13-4)
(以下#13-5)
→(道道718他)清水大橋
→(道道75)熊牛→(国道274)鹿追
139km
ルートラボ
夜明けから既に激晴れだ。明るく、しかし深みのある空の青が、雲や霧の存在を全く感じさせない。
二度寝して起きると6時過ぎ。日差しが明るく影はくっきり。メリハリのある景色が外へおいでよと誘っているようで、ライダーの皆さんも、早朝から起き出して前庭に出て忙しそうだ。とほ宿に魅せられ始めた30年ぐらい前、こういう風景をよく眺めたような気がする。
再び外に出た7時過ぎには、もう寒さを感じない。こういうのを夏も含めてずっと待っていたのだ。思えば夏の北海道で、こういう爽やかな朝に久しく出会えていない気がする。今年の夏が全滅に近い状態だったことが大きな理由だが、昨日走ってつくづく思ったのは、きりっと涼しい朝に暑さを感じる昼、こういう爽やかなサイクリングこそが、私が夏の北海道に求めているイメージなのだ。もしかしたら温暖化で北海道の夏は以前と比べて高温多湿へと推移し、秋の今ぐらいがかつての夏に近くなっているのかもしれない、等と思ってしまった。いや、昔から十勝の夏は異常なほど暑いと評判だったし、昨日は確かに暑かったが、やはり夏ほど暑くはない。
朝食は昨日と同じく自家製パンとスープがとても美味しい。出発前に、ツーリストでもある女将さんと2ショットを撮っていただく。更に女将さんとピンクの愛車を撮らせていただいた。今朝こそは8時に出発するぞと思ってはいたものの、出発前にやっておくことは何かと多い。いや、急ぐまい。どうせ140km。気持ちの余裕が新鮮な気分につながっている。
8:30、セキレイ館発。晩成の丘を降り、国道336から逸れて海岸沿いの浜大樹へ。
昨日と同じく、国道336の海側寄り道シリーズである。
浜大樹訪問は大当たりだった。海岸までの道には、いかにも海岸近くらしいちょっと寂しいような雰囲気が漂っているのに、海岸の漁村に意外な賑わいがあるのは、昨日の大津に似ている。
国道沿いにあまり人が住んでいない国道336周辺の、港町の特徴かもしれない。あるいはナウマン国道として拡幅され、丘陵の森を突き進む新しい国道の表情が、この土地本来の風景とは違うのかもしれない。
集落を抜けた外れから、道は海岸沿いのダートとなる。再び内陸へ向かう分岐までほんの短い区間のこの道が、また素晴らしかった。一直線の細道の正面に日高の山々を遠望、南側は海岸の丘から見渡す太平洋。今日は頭上が真っ青な空なので、シンプルな景色がよりシンプルに映える。すぐ先で南側の丘が低くなり、砂浜が見え始めた。
誰もいない海と山と空、一直線の砂利道。これ程単純な風景は、最近北海道でもあまり見かけないような気がする。
そして、昨日の昆布狩石にそういうイメージを求めていたのに、何となく片すかしを食ったような気になっていたことに、今気が付いた。ダートばかりだとすぐうんざりするだろうとは思うのだが。
道がすぐ先で行き止まりなのはわかっているので、次の分岐から大樹へ向かう。
森、牧草地、畑、牧場が次々登場。北海道のいい田舎道が続く。
真っ青な空に眩しい日差し、涼しい木陰とともに、左から正面にかけて日高山脈の青いシルエットがよく見え、気分が盛り上がる。
10:05、大樹着。セイコーマートで少し立ち寄りとする。セキレイ館で朝食をたっぷり頂いたので、あまり何か食べる気は無い。この後しばらく商店はほとんど無いというのに、中札内の道の駅や八千代牧場のレストランと、グルメポイントには事欠かないのだ。
大樹から今日の宿がある十勝北部の鹿追へは、十勝西部縦断道を使う。「十勝西部縦断道」はワタクシの私的な呼称で、その実態は大樹から十勝清水手前までの裏道系山裾ルートである。以前は縦断道道を謳っていたが、近年訪問の度に道道の区間が減りつつあり、農道や町道村道の区間の方が多くなっている。通しで通ったことも実はあまり無く、部分的に使う機会が多い。今回は2015バージョンとして、これまで大樹近くで使っていた道道55ではなく、歴舟川の山側の道道622へ足を向けてみた。
大樹を出発すると、日高山脈のシルエットがぐっと近づいてきた。道が山裾に移行しつつあるのだ。地形も道の線形も、十勝ではごく普通の極端な平面の一直線ではなく、山裾に拡がる平地に、山の凸部を結ぶように適度に屈曲しながら続いてゆく。周囲の牧草地、畑など、根釧台地辺りより人里っぽく親しみやすく、北海道の里ともいうべき風景だ。
歴舟川沿いの山裾の森に入り、神居大橋で歴舟側を渡って河岸段丘を登り、対岸の尾田に向かうところで思い直し、もう少し山側を回り道してみた。どうせ時間の余裕はあるのだ。引き返して尾田橋を渡り、再び歴舟川の山側の、幸徳から相川の高台へ向かう。
歴舟側の渓谷に2つ橋が掛かる光景は、北海道では余り見かけないように思う。さっきまで里っぽい風駅のまっただ中だったのに、何だか山深さすら感じさせる渓谷だ。森の中から集落へ、河岸段丘の登り返しで最高200m弱まで登らされる。しかしこちらを回らなくても、尾田の合流地点だって標高160強。どっちにしてもそろそろそれなりに登り始めるのである、今日の行程としては。
そして登りのご褒美として、高く眩しい日差しの下、日高山脈の遠い山並みへ牧草地が遡ってゆく風景を、ちらっと拝むことができた。
相川橋で再び歴舟川を渡り、尾田で道道55に合流。そのまま北上を続ける。
開けた見晴らしからは想像しにくいぐらいに脚が重い。尾田から登りが始まっているのだ。
最終的には、段丘の上の更別村村営牧場でまさかの標高300m超となる。しかし周囲の平地は、自分が疲れてきているのかと心配なぐらいに、平地まっただ中の風景だ。
昨日も思ったが、更別村は意外なほど標高が高い場所にある。300mといえば、北海道ではもう立派な高原と言っていい。
十勝は広大な平野という印象があるが、その実態は事程左様に河岸段丘が多い盆地である。その中でも更別村は高原なのだ。
村営牧場を過ぎると、麓の上札内まで一目散の下りとなる。
上札内もそのまま通過、更に9km先の中札内へ、僅かな下りに乗じて一気に進む。
上札内から先、道はそれまでの山裾らしく起伏や風景の変化に富む地形から、一気にどことなく人里っぽい平野部まっただ中の風景となってきている。高原麓の中札内が周辺の高原より栄えているのは、世の習わしだ。
12:10、道の駅「なかさつない」着。まあ普通の道の駅ぐらいの敷地一杯に、車が一杯に停まっている。道の駅でこれほど混雑している状態に、過去あまり記憶が無い。特別なイベントなどではなさそうだ。やはりこの連休中、どこもかしこももの凄い人出である。
中札内は様々な農産物が有名である。特に地鶏は道内でも有名であり、カントリーサインが鶏になっているし、昨日訪れた晩成温泉や遠く道東の中標津の町営温泉でも、「中札内地鶏」の唐揚げが出されている。最近はじゃがいも「インカの目覚め」が有名だ。断面が黄色くて、ジャガイモの香りとまるでサツマイモのような甘さを両立させている凄いジャガイモなのだ。
私はと言えば、2008年に食べて以来忘れられなかったカレーを食べなければならない。「サルバトール」のチキンカレー、お店の場所もメニューも記憶と違わないので、多分以前と同じお店とカレーだろう。味も記憶が蘇るもので、混雑のため注文と出てくるまでにやや時間は掛かったものの、確かにとても美味しい。そして量がけっこう多く、他に何か食べようと思っていたのに、カレー1杯で満足してしまった。折角の訪問なので何か食べておきたいという気持ちだけが先走り、何となく地元物産店をぶらつくと、新じゃがが目に入った。前述の中札内名産、「インカの目覚め」が新じゃがで安い。母への土産に送っておいた。
12:50、中札内発。
中札内から上美生へは、縦断道も中盤といえる区間である。まずは広域農道で札内川、戸蔦別川を渡って西北へ。
山裾からやや離れた平野の1本道なのだが、防風林のグリッドを次に進む度に新たな視界が開け、穏やかながらとても魅力的な風景が眺められる道だ。以前2008年に通った時に、八千代YH到着を目前になかなか前に進まなくて困った程だ。十勝でもこれほど平野の拡がりと山々の遠望のバランスがいい道は少ないと思う。そして今日は、絶好の青空で風景が更に際立っている。
上清川町から広域農道を離れ、早々に山裾へ移動。直進すると、まだまだ景色がいい道がしばらく続くのはわかっている。しかし、山裾方面経由だと単純に回り道になってしまうので、今後この辺りを通る時には広域農道を使うケースが多いだろう。今日は山裾の道へ向かうチャンスである。清川の有名な「ジンギスカン白樺」もここから数kmだ。しかし目指す方向とは完全に逆だ。そしてそもそもさっきの道の駅の混雑ぶりからして、まあまともな事態は想定されない。十勝も奥の方の縁だというのに、意外にこの辺りには食事所が多い。
戸蔦からは再び山裾、戸蔦川岸辺の雑木林へ。
再び上八千代の台地上に出て、森、牧草地、畑の中を八千代へ、再び標高300m手前まで登り基調となる。
開けた風景の中に山々が近づき、今日のコースの中を象徴するような魅力的な風景が続く。中札内までの道より農道やらローカル道道やらがのんびり推移し続けるこの辺り。大きな山裾の開けた緩斜面を登る経路なので、視覚的にあまり坂に見えない。
しかし確実に登りで脚が重い。視覚と実態の乖離は、頭で登りだとわかっていても、「こ、こんなはずでは」と気が急いてしまう。
そして八千代と言えば、私的にはこのコースで中札内の道の駅と並んで楽しみな八千代牧場のレストラン「カウベルハウス」が建っている。更に谷地YHの昼に営業している食堂も、機会があれば絶対に寄っておきたい。どこも美味しくてボリューム満点だ。つまりこのコース、大樹の先は羽帯や芽室に下るまでコンビニ皆無なのに、中札内・八千代辺りで食堂が充実しているのだ。
しかし今の私のコンディションとしては、さっきのカレーで腹が十分すぎるほど満ちてしまっていて、これらのお店に寄る理由が全く無くなってしまっていた。
13:50、八千代牧場通過。カウベルハウス、そして八千代YHも今日はそのまま通過である。
十勝ももっと訪問せねば。そしてこの辺りで食事を複数箇所で楽しむために、道の選択も含めてもっと計画を寝る必要がある。八千代YHで泊まれると良かったのだが、生憎今回は満員で予約できなかった。
戸蔦以降、北岩内、八千代町、北八千代と、一貫して牧草地と森、小さな川を渡る一直線アップダウン、連続していない道の乗り換えと分岐が続いていた。
特に雄馬橋から先、川渡りの登り返しが増え、上美生、太陽では40〜80mの段丘越えが登場。
開けた風景の中に現れるこれらの下り登りは、過去訪問でのややしんどい記憶とともに把握はしていて、「あ、ここでこれが登場するのか」という具合に、次々と降りかかる火の粉のように粛々とやり過ごし、登り切った台地上で再び拡がる風景を味わう区間である。
それにしても、大樹からもうかなり走ってきている。今日のように北上しても、十勝清水や御影辺りから南下しても、十勝西部の山裾としては中程にすぎないこの辺り。今回も十勝の広さをつくづく思い知っている。
空にはやや低めの、しかし勢いよく流れてゆく雲が増え始めていた。日差しが厳しい今日のような日だと、やや涼しくなってむしろ都合がいい。
そして適度な存在感の雲は、光と風景に変化を付けてくれる。
一方、戸蔦辺りから道は次第に山裾へ近づき、山の表面がはっきり見えていた。
風景の拡がりの中、迫り来る聳え立つ山々の姿は進むと共に形を変え、景色と空間感覚を刻一刻と変える。そして時々、道ばたの木々の隙間から下手の平野方面を一望できた。
15時を過ぎた辺りから、そろそろ風が涼しくなり始めた。いくら日差しが厳しくても、こういうところは夏と根本的に違う。
そして傾き始めた午後の日差しで、緑、特に草原の明るい緑が輝くように鮮やかで、風景全体が赤味を帯び始めていた。
剣山の円山牧場手前で、今回は十勝西部縦断道は終了。畑、防風林のグリッドの間を、羽帯へ向かう。
途中から登り基調が続いただけあって、羽帯へは一方的な下りが続く。しかし、同じ十勝西縁から中央へ向かう下りでも、八千代から帯広への下りに比べると、下っても下っても道はのんびりしているところが羽帯らしい。
「けっこう下ったけど、前方の交通量の多い道はいくらなんでもまだ国道38じゃないよなあ」と思っていたら、気が付いたら前方に踏切が登場。考えるまでも無く根室本線だ。やはり前方の道は国道38だったのだ。
15:45、御影着。更に段丘を降りて、十勝川を渡る。
この先は鹿追手前まで河岸段丘を越えねばならない。羽帯でも相変わらず十勝の田舎らしくのんびりしていた周囲の風景が、十勝川を越えて道道75に合流すると、一気に普通の幹線道道っぽくなってしまった。
谷間の平地を少し遡ってから、屈足で国道274へ。鹿追の段丘を越えたらもう鹿追だ。たかだか標高差100mのもうひと登りだが、慣れない国道の交通量のせいもあり、そろそろ辺りが薄暗くなり始めているせいもあり、もうあと10kmと思っていると気が急くのか、自分で自分がじれったい。
しかし怠けネタには敏感で、坂の途中道ばたの展望台を見つけてつい立ち寄ってしまう。
屈足の開けた谷間と、日高山脈〜狩勝の山々の青い影が、夕焼け空の下に拡がっていた。
鹿追の丘陵では、もう景色が真っ赤っかで影が青い。16時以降の暮れ方は想像以上、夕方の早さはやはり9月のサイクリングである。そして風がかなり肌寒い。鹿追への下りで身体が冷え、脚を回して何とかバランスさせる。
それにしてもよく晴れて、ツーリングとして、終始完璧に近い風景の中を走れた1日だった。
17:00、鹿追「福生館」着。
町中の商人宿みたいな宿である。お客さん同士の会話が賑やかだったセキレイ館とはまた違う雰囲気で、こちらはこちらで休めるし、気楽だし、隣には酒屋もある。こういうのもまた旅の楽しさである。
一昨日セキレイ館で、お客さんに教わった十勝北部のコースを地図で探してみると、すぐに見つかった。セキレイ館では地図をじっくり眺める余裕が無かったのだ。宛が無かった3日目の午前中の目玉が決定し、早速ルートラボで検討、程良いボリュームの十勝北部ポタコースが完成した。小型PCの面目躍如である。
記 2016/3/5
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