仁宇布→(農道・道道49他)美深→(国道275)美深峠
(以上#9-1)
(以下#9-2)
→(国道275)政和
(以上#9-2)
(以下#9-3)
→(国道275)幌加内→(道道48他)下幌加内
→(道道72)江丹別
(以上#9-3)
(以下#9-4)
→(道道72)共和→(道道915)嵐山
→(道道98)江神橋→(市道他)西御料→(国道237)西聖和
→(国道452)五陵→(農道)大村
169km
ルートラボ
仁宇布→(農道・道道49他)美深→(国道275)幌加内→(道道48他)下幌加内(道道72)共和→(道道915)嵐山→(道道98)江神橋→(市道他)西御料(国道237)西聖和→(国道452)五陵→(農道)大村 169km ルートラボ
ファームイントントの食堂から、雲みたいな濃い霧に覆われている早朝の牧草地がよく見える。しかし霧の上空は澄んだ晴れで、つまりその霧はこちらには届いていない。辺りは未だ完全に明るくなっていないが、これなら出発する時間ぐらいにはすっかり晴れそうな気がした。
しかし次に荷物積みに降りてきた時、空一杯に濃く低い雲が拡がり、青空はすっかり見えなくなっていた。少なくとも朝のうちはこの空が続きそうな気がする。仮に30分以内にここ仁宇布で晴れ始めたとしても、山間にはまだ雲が残る可能性が高いだろう。ということは、山深い美深松山峠方面へ向かうより、美深盆地へ下ってから、国道275で美深峠へ向かうのが良さそうだ。
などというのはある程度想定内の話であり、さっさと荷積みを終えて朝食とする。窓の外、薄暗い牧草地に厚い雲は、これもまたよくある道北の朝の風景だ。そして道北最後の朝、仁宇布で美味しい朝食など頂きながら、その風景を見ることができることこそが素晴らしい。そもそもこの早朝に朝食を準備してくれるだけでも有り難い。これだから、ファームイントントを道北最後に持ってくる近年のパターンが止められない。
6:20、仁宇布「ファームイントント」発。
霧っぽい牧草地の中、まずは仁宇布の交差点まで一気に下ってしまう。開けているので視覚的には登りも下りもわかりにくいが、下ってみるとどんどん速度が上がり、行きになかなか思うように進めなかった理由がよく理解できるのは毎度のこと。ファームイントントまで意外に登っているのだ。
続いて道道49。途中集落が全く無いペンケニウプ川の谷を、美深盆地へ21km、標高差約200m。
かつて「日本一の赤字線」として大変有名だった美幸線は、美深の次は班渓、班渓と次の終点仁宇布との駅間距離は20km弱。美幸線という路線は、開通した区間だけでもかなり極端な路線であり、美幸線を走ったキハ22気動車にとって、約200mの標高差はなかなかしんどかったと思う。
しかし自転車で下る場合、21km標高差200mはかなり緩い下りである。そして谷底の風景は単調だ。下り斜度が緩くなった挙げ句、軽い登り返しが現れたりもする。
おまけに今日かなり強めの向かい風が吹いていて、下りといえども思うように進めない。そうでなくても長い谷間は、行けども行けども行く手の山影が途絶えず、なかなか狭い谷を脱出できない。
その間、雲はそう高くないが、次第に雲が濃くなって落ちてきそうな雰囲気でもない。しかしやはり、美深松山峠方面へ向かったらあまり好ましくない事態に陥ったかもしれない。
前方の山影が切れ、茂みみたいな木の中に建物の影が見えた。班渓発電所だ。地図を確認するまでもなく、ようやく美深盆地だ。気が付くと仁宇布出発から1時間近く経過していた。盆地中程に出て国道40に合流。ようやく青空の色が見え始めた。路面の隅の方はまだしっとりしているような気もするが、いい傾向だ。今日はこれから次第に、そして旭川で暑すぎない程度に晴れて欲しい。
7:30、美深セイコーマート着。少し缶コーヒー休憩をしておく。朝食を食べてくると、朝のうち補給時間を食わずに助かる。
美深の町中、十字路の分岐で国道275を幌加内方面へ。去年、国道275で雨に悩まされた挙げ句、幌加内で遂にバス輪行となってしまった。今年は空に青い色が見えているので、少なくとも去年のようなことは無さそうだ。
しかし六郷の谷間辺りまでは雲がどんどん薄くなっていたのに、玉川から南下が始まると、空は再び雲で覆われてしまった。まあ、雲は明るいし、そう簡単に晴れるとは思っていないし。
玉川、泉と農村が続き、泉の一番奥で美深峠への登り区間が始まる。
国道275は国道だけあり、標高160mの泉の一番奥から標高439mの美深峠まで登り280mを、均等な斜度で登ってゆく。
5kmという区間距離とその均等な斜度より、実際の登りはしんどい。道が豪快な直線基調なので、一直線の道を見てうんざりしてしまうのだ。
しかし泉大橋、うるべし橋など何カ所かの橋で、眼下の谷底から天塩山地へ続く大樹海を見渡せる。
その眺めには全道でもあまり類を見ない迫力があり、しんどい登りで立ち止まる口実としてもとても有り難い。
9:20、美深峠通過。
尾根を回り込むと、母子里方面に青空が見え、下る途中で陽差しも登場。いい傾向だ。
そのままささっと下ってしまう。
▼動画46秒 母子里到着
母子里交差点脇のホクレンスタンド自販機で缶コーヒーだけ飲み、そのまま出発。
牧草地で何回かのアップダウンをバウンドした後、数10m登って朱鞠内湖外周区間へ。
特徴的な白樺の森の中、ストレスにならない程度のアップダウンが続く。
美深峠やこの後の朱鞠内以南に比べて道の線形はやや変化に富み、ところどころで湖面が見え、時には対岸から天塩山地まで見渡すことができる。
そこそこ山深く景色も行ける、こういうタイプの湖岸の道は、実は北海道には少ないように思う。美深峠やソバ畑とともに、幌加内町の道を魅力的にしている大きな要素のひとつが、この朱鞠内湖湖岸区間だ。
湖を巻いて南岸へ向かう間、雲は一旦低くなった。南岸では再びかなり高くなり、道道251との分岐辺りの平場で青空が登場。毎回ここで天気が変わるのだ。
▼動画46秒 道道251との分岐辺り
青空に期待はしていたが、陽差しが現れた途端に突然かっと辺りが明るくなり、照り返しでかなり暑くなってきた。
同じ道北でももう南部。昨日走っていた宗谷丘陵とかサロベツ原野辺りとは、根本的に違う。やはり走ってきただけの距離は移動しているのだ、と実感した。
最後にちょっと登ってから、朱鞠内の谷間へまっしぐらに下り、湖岸区間が終了。
途中のえんじん橋辺りで、緑に埋もれそうな湖畔の集落が見渡せる。
1986年、まだダートだったこの道から見下ろした、同じ場所の景色を眺めることができるのは、とても嬉しいことだ。湖畔には、当時よく泊まっていた「しゅまりの宿」があったし、母子里だけではなく湖畔でも牧草ロール積みのバイトを紹介していただいた。思い出多い場所なのだ。そして、走りながら昔を思い出すことが増えたことに気が付く。歳である。
10:50、朱鞠内着。えんじん橋で思い出に浸った後なので、除雪センターやその辺の公営住宅っぽい住宅辺りに、やはりついつい今は跡形も無い深名線朱鞠内駅の佇まいを思い出してしまう。冬に来たとき-20℃の朝に出発して、まつげが凍ったこともあった。もちろん非自転車である。しかも当時この道はやはりダートだった。国道275沿いに建つ万屋には、当時朱鞠内湖名産のわかさぎ佃煮が売っていた。今も売っているかもしれない。
等と思いつつ、またもや自販機缶コーヒーで表敬訪問。
朱鞠内から続く谷間では、湖岸とは打って変わって曇りが続いた。しかも雲が厚く低くなっている。
雲の動き方は速いが、今すぐ雨が降りそうな気はしない。添牛内で政和の盆地へ出れば、また次の展開があるのだろう。
ここはあまり寄り道せずに、狭い谷間をひたすら下る。
11:20、添牛内着。有名蕎麦店「ほろほろ亭」の前にはバイクが一杯停まっている。以前立ち寄ったことはあったが、今日はまだ先が長い。蕎麦を食べられる余裕をまず作らねば。そのまま先へ。
添牛内を過ぎても、空の雰囲気は雲が若干高くなったぐらい。相変わらずの曇りだった。盆地へ出てからは弱い向かい風が吹き始めている。ここは着実に脚を進めておかねば。
そんなわけで行く手の天塩山地を眺める自転車写真ポイントも、今日はささっとこなすだけにしておく。
盆地一杯のソバ畑が眼下に開ける政和の展望台、去年は単管で組まれた展望台と出店が登場して驚かされた。今年は去年より出店が増え、何と蕎麦屋まで登場している。
この蕎麦生産量日本一の地幌加内で、盆地一面のソバ畑を眺めつつ食べる蕎麦は大変魅力的だ。数年前まで道北から南北に50kmもある幌加内町は、プライベートビューポイント同然だったのに、という気が無いと言えば嘘になる。しかし、いい景色を多くの人が楽しめるのは喜ばしいことだし、国道275の交通量はこんなことで増えたりする訳が無い。
私も一度ここの蕎麦を食べねば。きっと香り高い美味しい蕎麦に違いない。と思って今日は先へ。 ▼動画31秒 政和のソバ畑
12:00、政和の南端、道の駅「森と湖の里ほろかない」到着。ここまで粛々と進んだお陰で、何とかお昼にここまで着けた。とりあえずYHで夕食前に風呂に入るための希望ペースに乗れている。
ここにも蕎麦屋があって、美味しいのはわかっているが、今はまだ立ち寄るわけにはいかない。でもソフト速攻喰いぐらいなら大丈夫だろう。というか、ソフトの誘惑に我慢できなかった。冷たい食感で身体がほっと落ち着くのと同時に、けっこう気温が上がっていることに初めて気が付いた。位置としてはもう名寄や下川の南であり、いつも下川では急に気温が上がるのを実感している。この辺りで暑さを感じるのは順当だ。この分だと旭川盆地は更に暑いのだろう。
道の駅「森と湖の里ほろかない」で政和の盆地は終わり、再び幌加内盆地が開ける上幌加内まで、辺りはやや狭い谷間となる。
狭い谷間の常で、雨竜川は幌加内へ向かって下っているのに、あまり意義を感じない軽い登り返しまで現れる。毎回このアップダウンのお陰で、朱鞠内からここまでの順調ペースがやや崩れる区間でもある。
いつも天気がやや不安定な印象があるこの谷間、今日は曇りのままで持ってくれているのが有り難い。
上幌加内で幌加内盆地に出ると、広々とした盆地が、一面ソバ畑と田んぼだ。明らかにもう道北とは違う風景だ。
向かい風が更に厳しくなり、毎回甘く見る上幌加内から幌加内の距離が、大変長くつらく感じられる。
12:35、幌加内着。
お昼まっただ中。タイムリミットではなく、できればこの時間に通過できるとこの後が楽になる希望通過時刻の13時に対してかなり余裕がある。そして、目の前の幌加内バスターミナル1階には、香り高く歯切れ抜群の蕎麦屋「せい一」があることがわかっている。ここまで蕎麦屋をいくつも見送ってきたが、いい加減にお昼を食べねばならない大義名分ができた。ここは満を持して立ち寄らねばならない局面だが、「せい一」はお盆休みなのだった。大変残念だが、旅程をこなすには都合がいい。先へ進もう。
とはいえ幌加内から沼牛を経由して江丹別峠下までは、幌加内屈指の風景が続く。山裾に近づき地形が波打ち始め、一面にソバ畑や田んぼが拡がるのだ。
更にこの辺りの大きな特徴は、点在する小山や集落が、里の親しみやすい雰囲気を加えていること。雄大で広々とはしていても、やはりどこか厳しい表情の北海道の風景としては、やや異色の魅力が感じられる。
ここで立ち止まらないと、何のためにこちら方面に来ているかわからない。幌加内での蕎麦屋先送りは、この観点からは好都合だった。
しかし、沼牛辺りで一度青空が見え始めたものの、さっきまでの幌加内以北と同じように低い雲が空の中を次々動き、あまり綺麗にすかっと晴れてくれない。
▼動画46秒 沼牛〜下幌加内の細道
▼動画1分37秒 下幌加内 細道が続く 私的に幌加内盆地ソバ畑のハイライト
やはり脚を停める必然性はあまり見いだせない。粛々と江丹別峠へ向かうことにしよう。引き続き江丹別峠の登り区間では、あまり気温を上げずに推移してほしいと思いつつ。
▼動画40秒 下幌加内 江丹別峠への道道72に向かう
下幌加内で道道72に合流し、江丹別峠の登りが始まった。
標高478mのこの峠、意外にもさっきの美深峠より高い。下界からの標高差は300m程度だが、基本斜度は7%。毎回登れてしまうものの、ボリューム感はそれなりにある峠だ。
しかしここを越えれば、もう旭川市。峠の「旭川市」の看板に、いよいよ道北から道央に戻ってきた気にさせてくれる、道北と道央の境界なのだ。
14:00、江丹別峠通過。
峠手前辺りから、雲が切れてからっと明るく濃い青空が見え始めていた。これこそ夏の北海道の色、道北から帰ってきて何だかほっとした気になれた。
晴れの中を走れそうで嬉しい。一方でこれから暑い旭川盆地なのに、暑さが多少心配でもある。
まあもう14時を過ぎた。これからの涼しくなる時間帯に期待だ。
西里、拓北と山の南北に拡がるソバ畑を見下ろして、森の中をどんどん下る。
下りきる手前辺りで、かなり盛大な拡幅ルート変更工事現場を発見。おそらく数年後には切り替わるのだろう。江丹別峠の寂れた静けさと、美しい拓北のソバ畑が少し失われるような気がして、ちょっと残念。
下りきった拓北の農場スタンドで、ソフト休憩とする。
以前はひっそりしていたここも、近年は訪れる度に必ず営業していて、お客さんが増えている。だってここのソフトはとても美味しいし、江丹別の景色はいい。旭川からのプチドライブに都合がいいのだろう。
14:25、江丹別中央着。
2003年に訪れた「そばの里 江丹別」が営業中だった。幌加内に引き続き30分以上行程の余裕もある。生産量は幌加内に譲るものの、最近では都内の蕎麦屋でも江丹別産の文字を見かけることが多い程のソバ処江丹別。そして江丹別を通る度に毎回再訪のチャンスをうかがっていたこの店、実際にはいつも時間に追われていた。そして今を逃すと、旭川市街まで昼食に寄りたいような場所は思い浮かばない。申し分無い相手に対しタイミングと大義名分が揃った。これ以上のチャンスは無い。
幸い店内は先客が1組。あまり待たずに出てきた蕎麦は、きりっと冷たく香り高く、しっかりした舌触りがとても美味しい。それにしても、蕎麦の冷たさに改めて旭川の暑さを感じてしまう。そして、前回の訪問から11年経ってしまったのだとつくづく思う。次はいつになるのだろうか。
「そばの里 江丹別」から出ると、空の低い雲がすっかり消えていた。14:55、江丹別中央発。
谷間の影は意外なほど長くなり、日なたがそろそろ赤みを帯びている。
旅程も9日目、もう8月15日。まだまだ暑いものの、確実に秋は近づいているのだ。
下り基調の道道72〜915は、追い風でかなり順調に通過。
静かではあるが何か展望が開けたり渓谷美が展開するような谷ではなく、ここは下り基調に乗じてどんどん工程をこなしてしまう。
嵐山を過ぎると道央自動車道が見え、すぐに石狩川の土手と江神橋が登場。
15:30、江神橋通過。唐突に、そしていよいよ旭川盆地に到着したのだ。行程の余裕もまだ30分ある。今日は美深峠経由のコースでその後が上手くいったと言える。
旭川の町中は、裏道をGPSトラックに沿ってクリア。あまり車に悩まされず、中美瑛川沿いに自転車道なども経由。
近年旭川は、このパターンでストレスを感じずに、楽々通過できるようになったのが有り難い。
16:15、西御料着。ここからしばし我慢の国道237だ。極力裏道を通るようにしていても、この区間だけどうしても国道が残ってしまう。合流点で目の前を通り過ぎる車の列に、ちょっと気が重い。
16:25、西神楽着。ここで国道452へ分岐。
国道とはいえ流石に400番台、交通量が一気に減って田んぼの中の田舎道となる。
途中で美瑛の丘へ向かう農道へ分岐、丘へ登る狭い谷間が始まった。
夕方で観光客が少なくなった美瑛の丘は本当にいい。少し進むと景色が少しづつ変わる、美瑛の風景が存分に味わえる。 ▼動画1分36秒 夕方の美瑛をてれてれ
そして今日も夕方になってみれば、夕焼けの中を走れている。
この期に及んで10%以上の登りが頻発するものの、まあそんなに長い登りではない。
17:35、大村「美瑛ポテトの丘YH」着。
四万十市出身で、いずれ自分で宿を開きたいというヘルパーさんが自転車を見て話しかけてくれた。四国の話で盛り上がる。いつだったか、大洲YHで北海道の話を延々と続ける同泊者に辟易したことを思い出し、自分だって北海道で四国ネタで盛り上がっているではないかと少し可笑しくなった。
美瑛ポテトの丘YHは人気のYH。今日も食事が美味しく、宿泊者は多彩で賑やかだ。旅程最後の宿(明日の札幌はもう大都会なので除外)が賑やかなのが、人の少ない道東や道北から、次第に人々の間へ帰ってきた気にさせてくれる。昨日泊まった道北最後の宿が道北らしい牧草地の中の仁宇布。その後にこのYHが、旅程終盤に向けていい流れを作っている。仁宇布→美瑛のコースは私的に2通りあるが、どっちにしても仁宇布発で美瑛着のパターンを、序盤の道東巡りと共に崩すことが難しい。
そして明日はいよいよ最終日。ベベルイ基線、麓郷、西達布、北落合と私的名所のメドレーだ。暑すぎず、適度に青空が見えてほしい。
記 2015/3/21
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