浜頓別→(天北南部広域農道・村道エサヌカ線他)
浜猿払→(国道238)東浦
(以下#7-2)
→(道道1117・889)清浜
(以下#7-3)
→(国道238)富磯→(農道・道道1119)沼川
→(道道121)有明→(農道・国道40)豊富
(以下#7-4)
→(道道444他)稚咲内→(道道106他)天塩
168km
RIDE WITH GPS
4時にはまだ軒先から水滴の音がしていたが、5時前になって次第に辺りが明るくなってくると、風とともに雨は止んだようだった。外に出てみるとまだ空気中に水滴は感じられ、地面はじゅくじゅくしている。しかし、空の雲は低いながら動きが速い。昨夜の天気予報では、今朝は8時頃から晴れ。現状は、前倒しで天気が良くなりつつあるということかもしれない。一昨日もそんな感じで、16時過ぎには青空が出てきたではないか。
バッグを積みに外に出ると、早起きのライダー2人が空を見上げて「まあこんなもんかもしれないですねー」とのこと。3人ともこの早朝に水滴ぱらつく空を見上げ、考えることは同じである。希望を持って出発せねば。
5:30、浜頓別「トシカの宿」発。
セイコーマートが2軒もある浜頓別で、出発前にセイコーマートに立ち寄らないのは何だか勿体無いような気はする。しかし必要なものは昨日夕方全部買ったし、そもそも浜頓別のセイコーマートは両方とも6時開店だ。
などと考えつつ、国道238からおもむろに天北南部広域農道〜村道エサヌカ線へ。
今朝のように雲が低く濃厚だと、早朝のこの時間はまだ辺りが少し薄暗い。開けた牧草地の中とは言え、どこまでも無人の1本道、しかもけっこう細い。
所詮は町道なので、国道や道道に比べて路盤レベルが低く、草原と人間の移動のための専有空間は一体化している印象がある。
特に人が少ないこの時間は、植物や茂みに潜んでいる(かもしれない)獣の圧迫感に押しつぶされるような気分だ。
▼動画1分1秒 村道エサヌカ線 何も無い雨の早朝、ハードボイルドなツーリング(笑)
さっきの国道238を思い出し、この時間だと車はほとんど来ないから国道でもいいじゃん、などとふと思う。そんなことを考えていると、行く手や後ろからオートバイや自動車が通り過ぎていき、その度に少し安心したりする。
人の少ない道を選んでいるからこうなるのだが、あまりに寂しいと人恋しくなってしまうのは、現金なものだ。灰色の空の下、360°構成要素が少なくて彩度が低い景色に包まれていると、思考は次第に内向きになってゆく。
途中から雨が降り始めていた。弱く粒も細かいが、べったりと身体を包むような、いつも甘く見ているうちに気が付くと全身しっとり濡れてしまうような雨だ。単調な景色の中では、立ち止まる理由を見つけにくく、なかなか雨具を着込むタイミングは難しい。
頭上と行く手の空は次第に暗くなり、雨はその後消えそうになったりしとしと降りに変わったりしつつ、結局浜鬼志別まで降り続いた。
村道エサヌカ線が終わった浜猿払の集落には、真新しい住宅が建ち並んでいた。これがウワサのホタテ御殿か、と思った。
国道238に乗り換えて北上が続く。天北南部広域農道辺りから吹き始めた風は、けっこうな向かい風に変わっていた。空は暗く空気中は雨っぽく、脚を回しても全然前に進まない。波の打ち寄せる音に右を見れば、鉛色の空の下に泥水色のオホーツク海が拡がっている。かといって前方を見ても、一直線の国道と左手に冴えない緑色の段丘と、やはり鉛色の空と泥水色のオホーツク海が拡がっているだけだ。
景色が単純なので、こういう天気の時は気分が盛り上がらない道だ。しかも寒い。まだ早朝なので国道にしては車が少ないのが救いだが、国道っぽい雰囲気と先入観だけで、何となく居心地も悪い。広々と北海道らしく雄大で静かな風景なのには疑いは無いが、何となく気が急いてしまう。
7:40、道の駅さるふつ着。トイレ休憩と称し、缶コーヒーで暖を取ったりして合計30分ぐらい雨宿りとする。しかし、一向に雨は止む気配は無い。今は先に進むしか無いのである。
幸いここ浜鬼志別では、雨宿り以外にお土産のホタテを仕入れるというミッションがある。再び立ち寄ったセイコーマートで必要物資を仕入れるとともに、店のおばさんに、少し先の漁協ほたて売店の営業状況を尋ねてみた。このお店でだけ買える格安規格外ホタテは、知る人ぞ知る人気商品なのだ。
今日は8/13、お盆期間であっても不思議は無いし、道の駅で横目に覗いた漁協はお盆休みだったので覚悟していたが、やはり今日から漁協は休みらしい。他に民間のホタテ売店も浜鬼志別周辺にはあるものの、やはりお盆休みか、少なくともこの時間ではまだ営業していないようだった。最後にこのお店で直接ホタテを買ったのは、確か2009年。その後2012年の訪問時には、やはり漁協のお盆休みと重なって売店でホタテは買えなかった。その時は「格安」は諦め、ホテルさるふつの売店でホタテを買った。今、この時間にホテルさるふつはまだ営業していない。1986年以降北海道Tourの実績で、お土産として一番好評なのが猿払村のホタテなのだが、今年は遂にホタテを諦めないといけない、と思った。
しかし次におばさんは、かつて想像だにしなかったホタテ問題の解決方法を教えてくれた。何と「日本全国FAXで買える」らしい。つまり、東京に帰ってから漁協営業期間内にFAXで注文すればいいのである。お土産としての意味はやや希薄になり、格安ではない普通の規格品になってしまうものの、ホタテのお土産発送や品質で悩む必要は全く無いのだった。まあよく考えたら、ものの売り方として今時当たり前の話ではあるし、更に帰ってからググってみたら、普通に当たり前にWebフォームでの注文が可能なのだった。
重要ミッションが解決でき、やや拍子抜けしつつセイコーマートの前でいろいろとむしゃむしゃ食べていると、北方面からもう一人自転車ツーリストが登場。雨具にモンベルサイクルレインジャケットを着ていて、私とオソロである。定番雨具として評価が高いこのジャケット、最近はブルベなどでもほとんどユニフォームのように各休憩ポイントで見かける機会が増えているそうだ。
浜鬼志別では結局1時間ぐらいうだうだしてしまった。8:40、浜鬼志別発。
更に国道238の北上が続く。休んでいる間に路面と空気は乾き始め、空の中には青い色が見え始めていた。地道に努力を続けるもので、今日も有り難く運が開け始めつつある。しかし、向かい風は相変わらず強めだ。向かい風は坂より質が悪い。負荷の具合が見えないから、脚を動かしても思い通りに走れず、ストレスが溜まるのだ。
まあしかし、そんなことを考えていても始まらない。とにかく少しづつでも前に進まねば。それに、思い通りに進まず気分的に疲れるものの、一応15kmぐらいの速度は出ている。そんなに悲壮になることはない。
シネシンコ、知来別。まばらな漁村が、地図上の見慣れない地名とともに、海、道、緑の土手、空だけの景色の先に現れてどんどん大きくなり、やがて通り過ぎてゆく。かったるくてもしんどくても、脚を回してさえいれば、時間と共に先に進むことができるのだ。
そして今日は、時間と共に青空が少しずつ増え、路面も更に乾きつつあった。
記 2015/3/8
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