北海道Tour14#7
2014/8/13 浜頓別→天塩-1

浜頓別→(天北南部広域農道・村道エサヌカ線他)
浜鬼志別→(国道238)東浦
(以上#-1)
(以下#-2) →(道道1117・889)清浜 (以上#-2)
(以下#-3) →(国道238)富磯→(農道・道道1119)沼川 (以上#-3)
(以下#-4) →(道道121)有明→(農道・国道40)豊富 (以上#-4)
(以下#-5) →(道道444他)稚咲内→(道道106他)天塩
168km  ルートラボ

ニューサイ写真 RICOH GR GR18.3mm1:2.8 A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路

 

 4時にはまだ軒先から水滴の音がしていたが、5時前になって次第に辺りが明るくなってくると、風とともに雨は止んだようだった。外に出てみるとまだ空気中に水滴は感じられ、地面はじゅくじゅくしている。しかし、空の雲は低いながら動きが速い。昨夜の天気予報では、今朝は8時頃から晴れ。現状は、前倒しで天気が良くなりつつあるということかもしれない。一昨日もそんな感じで、16時過ぎには青空が出てきたではないか。
 バッグを積みに外に出ると、早起きのライダー2人が空を見上げて「まあこんなもんかもしれないですねー」とのこと。3人ともこの早朝に水滴ぱらつく空を見上げ、考えることは同じである。希望を持って出発せねば。

 5:30、浜頓別「トシカの宿」発。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 セイコーマートが2軒もある浜頓別で、出発前にセイコーマートに立ち寄らないのは何だか勿体無いような気はする。しかし必要なものは昨日夕方全部買ったし、そもそも浜頓別のセイコーマートは両方とも6時開店だ。

 などと考えつつ、国道238からおもむろに天北南部広域農道〜村道エサヌカ線へ。

 今朝のように雲が低く濃厚だと、早朝のこの時間はまだ辺りが少し薄暗い。開けた牧草地の中とは言え、どこまでも無人の1本道、しかもけっこう細い。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 所詮は町道なので、国道や道道に比べて路盤レベルが低く、草原と人間の移動のための専有空間は一体化している印象がある。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8
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 特に人が少ないこの時間は、植物や茂みに潜んでいる(かもしれない)獣の圧迫感に押しつぶされるような気分だ。
▼動画1分1秒 村道エサヌカ線 何も無い雨の早朝、ハードボイルドなツーリング(笑)

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 さっきの国道238を思い出し、この時間だと車はほとんど来ないから国道でもいいじゃん、などとふと思う。そんなことを考えていると、行く手や後ろからオートバイや自動車が通り過ぎていき、その度に少し安心したりする。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 人の少ない道を選んでいるからこうなるのだが、あまりに寂しいと人恋しくなってしまうのは、現金なものだ。灰色の空の下、360°構成要素が少なくて彩度がひくい景色に包まれていると、思考は次第に内向きになってゆく。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 途中から雨が降り始めていた。弱く粒も細かいが、べったりと身体を包むような、いつも甘く見ているうちに気が付くと全身しっとり濡れてしまうような雨だ。単調な景色の中では、立ち止まる理由を見つけにくく、なかなか雨具を着込むタイミングは難しい。

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 頭上と行く手の空は次第に暗くなり、雨はその後消えそうになったりしとしと降りに変わったりしつつ、結局浜鬼志別まで降り続いた。

 村道エサヌカ線が終わった浜猿払の集落には、真新しい住宅が建ち並んでいた。これがウワサのホタテ御殿か、と思った。

 国道238に乗り換えて北上が続く。天北南部広域農道辺りから吹き始めた風は、けっこうな向かい風に変わっていた。空は暗く空気中は雨っぽく、脚を回しても全然前に進まない。波の打ち寄せる音に右を見れば、鉛色の空の下に泥水色のオホーツク海が拡がっている。かといって前方を見ても、一直線の国道と左手に冴えない緑色の段丘と、やはり鉛色の空と泥水色のオホーツク海が拡がっているだけだ。

 景色が単純なので、こういう天気の時は気分が盛り上がらない道だ。しかも寒い。まだ早朝なので国道にしては車が少ないのが救いだが、国道っぽい雰囲気と先入観だけで、何となく居心地も悪い。広々と北海道らしく雄大で静かな風景なのには疑いは無いが、何となく気が急いてしまう。

 7:40、道の駅さるふつ着。トイレ休憩と称し、缶コーヒーで暖を取ったりして合計30分ぐらい雨宿りとする。しかし、一向に雨は止む気配は無い。今は先に進むしか無いのである。

 幸いここ浜鬼志別では、雨宿り以外にお土産のホタテを仕入れるというミッションがある。再び立ち寄ったセイコーマートで必要物資を仕入れるとともに、店のおばさんに、少し先の漁協ほたて売店の営業状況を尋ねてみた。このお店でだけ買える格安規格外ホタテは、知る人ぞ知る人気商品なのだ。
 今日は8/13、お盆期間であっても不思議は無いし、道の駅で横目に覗いた漁協はお盆休みだったので覚悟していたが、やはり今日から漁協は休みらしい。他に民間のホタテ売店も浜鬼志別周辺にはあるものの、やはりお盆休みか、少なくともこの時間ではまだ営業していないようだった。最後にこのお店で直接ホタテを買ったのは、確か2009年。その後2012年の訪問時には、やはり漁協のお盆休みと重なって売店でホタテは買えなかった。その時は「格安」は諦め、ホテルさるふつの売店でホタテを買った。今、この時間にホテルさるふつはまだ営業していない。1986年以降北海道Tourの実績で、お土産として一番好評なのが猿払村のホタテなのだが、今年は遂にホタテを諦めないといけない、と思った。
 しかし次におばさんは、かつて想像だにしなかったホタテ問題の解決方法を教えてくれた。何と「日本全国FAXで買える」らしい。つまり、東京に帰ってから漁協営業期間内にFAXで注文すればいいのである。お土産としての意味はやや希薄になり、格安ではない普通の規格品になってしまうものの、ホタテのお土産発送や品質で悩む必要は全く無いのだった。まあよく考えたら、ものの売り方として今時当たり前の話ではあるし、更に帰ってからググってみたら、普通に当たり前にWebフォームでの注文が可能なのだった。
 重要ミッションが解決でき、やや拍子抜けしつつセイコーマートの前でいろいろとむしゃむしゃ食べていると、北方面からもう一人自転車ツーリストが登場。雨具にモンベルサイクルレインジャケットを着ていて、私とオソロである。定番雨具として評価が高いこのジャケット、最近はブルベなどでもほとんどユニフォームのように各休憩ポイントで見かける機会が増えているそうだ。

 浜鬼志別では結局1時間ぐらいうだうだしてしまった。8:40、浜鬼志別発。

 更に国道238の北上が続く。

 休んでいる間に路面と空気は乾き始め、空の中には青い色が見え始めていたのが有り難い。地道に努力を続けるもので、今日も運が開け始めた。しかし、向かい風は相変わらず強めだ。向かい風は坂より質が悪い。負荷の具合が見えないから、脚を動かしても思い通りに走れず、ストレスが溜まるのだ。まあしかし、そんなことを考えていても始まらない。とにかく少しづつでも前に進まねば。それに、思い通りに進まず気分的に疲れるものの、一応15kmぐらいの速度は出ている。そんなに悲壮になることはない。

 シネシンコ、知来別。まばらな漁村が、地図上の見慣れない地名とともに、海、道、緑の土手、空だけの景色の先に現れてどんどん大きくなり、やがて通り過ぎてゆく。かったるくてもしんどくても、脚を回してさえいれば、時間と共に先に進むことができるのだ。そして、今日は時間と共に青空部分が少しずつ増え、路面も次第に乾きつつあった。

 知来別でいよいよ猿払村から稚内市へ。


 東浜で国道238とお別れし、道道1117で上苗太路川の谷間へ。内陸に入ると風はぴたっと収まってくれた。

 確か2000年代前半、いや、それ以前からだったか、ツーリングマップルの宗谷丘陵内陸部に、破線の途中が途絶えていた道道1117と道道889。それが近年ようやく全通した道道1117の峠越え部分は、一昨年いかにもまだ新開通の道らしい雰囲気が一杯だった。一方以前から地図に載っていたオホーツク側のこの辺は、ややくたびれた路面と路肩、草が生い茂る無人の沿道など、長らく未開通だった雰囲気がぷんぷん漂っている。

 内陸へ向かう道としては、何だかかなり平坦な道なのが、いかにも道北内陸の道らしい。登りがいつの間にか始まっていたのを意識し始めた辺りで新開通区間に入り、次第にペースが落ち始める辺りで道道889への分岐が登場。こんなに下の方だったっけ、などと思いつつ、行程が楽で予定コース通りなのに全く問題は無く、ありがたく道道889へ向かう。

 宗谷丘陵の丘や谷、濃厚に密生する原生林を、道道889は切り通しや橋とともにあまり大した起伏も無く、宗谷岬手前まで北上してゆく。さすが開通まで時間が掛かっただけのことはある、と思わせられる。

 カーブは多いものの道の線形が緩やかでなだらかなせいか、雰囲気は開放的で、原生林が拡がる丘陵の見通しは悪くない。

 時々行く手の道が坂を直登のように登っているのも見えて気が萎えるが、谷間に拡がる森は堂々と逞しく、足下の笹原は鬱蒼と深い。

 道道1117からずっと続いている無人の森林、何となく漂うワイルドさには、道東太平洋岸の道道142に通じる独特の最果て感が感じられる。この道ができたことでこの場所を訪れることができているのだ、とつくづく思う。

 周囲に笹原が拡がった辺りで、原生林に混じって次第に植林らしい整った杉林が現れ始めた。丘と道の起伏は彫りが深くなり、丘陵が下ってゆく東側にはオホーツク海も見え始めていた。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成
 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 丘の向こう、何本も頭を出し始めた風力発電の風車は、宗谷丘陵ウインドファームである。
▼動画1分34秒 道道889 ウインドファームの風車が見えてきた

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成
 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 宗谷丘陵のこの辺は、2006年に訪問している。当時ツーリングマップル北海道版の表紙になったばかりだったこの辺の風景は、再訪してもなかなか見応えがある。

 その頃、ここまでの道道887は、まだダートか未開通だった。長年念願の未済区間を消化できた気分を、伸びやかに拡がる笹原と共に味わえていることが嬉しい。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 欲を言えば、もう少し青空が拡がっていると更に嬉しいのだが。いや、文句は言うまい。
▼動画45秒 道道889 宗谷丘陵まっただ中

 宗谷丘陵ウインドファームの風車に囲まれて辺りを睥睨する、標高167mの丸山の下を通過すると、丘陵は次第に宗谷岬方面へ下り始める。
▼動画46秒 道道889 丸山や宗谷肉牛牧場を眺めつつ宗谷丘陵も終盤

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8
 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 宗谷岬は丘陵の段丘に隠れて見えない。その段丘の手前に、確か宗谷牛の焼肉を喰わせる店があった筈。というか、平屋の細長い建物がよく見える。宗谷牛はブランド牛肉として有名で、ここの牧場はその名も宗谷岬肉牛牧場というのだ。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8
 RICOH GR GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

 今日もまたいつの間にか思考が空腹ネタに変わっているが、まだ先が長い。ここは脚を進めることにする。
▼動画39秒 道道889 オホーツク海がよく見える

 丘陵の溝を、切り通しの向こうに拡がる宗谷湾へ一気に下りきり、11:00、清浜で国道238に再合流。


 3日目からここ宗谷丘陵までずっと北上してきた今回の行程は、今後あと3日半強、最終日まで南下してゆくことになる。今日で7日目、旅程も残り1/3となってしまった。

 しかし直近の現実としては、かなり向かい風が激しい。富磯で最北のセイコーマートにわざわざ立ち寄ってみるものの、ややうんざりする宗谷湾海岸である。

 11:30、富磯の南で内陸へ向かう農道へ分岐。

 下増幌でさっきオホーツク海岸から内陸へ入り込んだ道道1117の終点が合流、中増幌で道は道道1119に合流。

 上増幌までだだっぴろい平原の中、遠い先の曲がり角へ直線基調で続いてゆく。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 この間、海岸から内陸へ向かえば、さっきの海岸の強風が少しはマシになるだろうと期待していた。しかし、一旦向かい風からは逃れられたように思えたものの、多少内陸へ入っても、実は風向きが横風気味に変わっただけで、風自体は全く収まらなかった。

 総体的にはやはり相変わらず向かい風成分が高く、しかも南下するにつれその割合が増えそうな方向へ道は向かっていた。そして、内陸に入ってから再び雲は厚く低く、空を覆い尽くしていた。脚と気持ちの疲れは、ぱっとしない天気とともに、道北の平べったい地形とやや単調な緑をますます単調に思わせてしまう。

 上声問辺りから地形は緩やかに起伏し始める。緑の丘と共に次第に増える道のアップダウンを、道道1119は更に南下してゆく。丘の効果で風は少しは弱まっていたが、今度は標高差10m前後のアップダウンと風の相乗作用で、しんどいのは相変わらず。

 この緩やかに隆起する緑の丘は、2012年の訪問時に印象的で、今日も楽しみにしていた。2012年の進行方向は北上、下り基調と追い風の快調な行程で、曇りではあったが伸びやかな風景を存分に楽しめた。しかし、その時の好条件は今日ことごとく悪条件に変わっていて、緑の丘が砂丘のようにすら思えてしまう。まあ、今日は天気もあまり良くない。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 こういう時、勢いよく下ってその勢いを使ってしんどくない程度に脚を回せば、ある程度の所まで登れる。せこい経済走行が私は得意である。何とかそんなしのぎ方で脚を先へ進めてゆくうち、もう今回ここはこれでいいや、という投げやりな気持ちが頭をもたげ始めていた。

 13:00、沼川着。このルート上のオアシスA-COOPと、悪天候時の待避に嬉しい屋根付きバス停がある。ここから先、コースは少しづつ登り基調となる。距離配分からも、豊富までの休憩地点に決めていた場所だ。
 さっきの宗谷湾から1時間半。同じ稚内市でもあるし、沼川なんてすぐだと思っていた。しかし、けっこう時間が掛かってしまった。平坦な道北内陸部は地形を把握する手がかりが少なく、事前に距離感を掴みにくいのだ、と思った。向かい風もかなり効いている。
 今日はこの先、有明、目梨別辺りまで南下してから、折り返して兜沼まで北上し直し、日本海沿岸の道道106へ行くつもりだった。しかし13時過ぎの段階で沼川だと、宿がある天塩到着は19時頃になりそうな気がしてきた。今日の宿は公営の温泉施設なので、別に19時でも夕食には間に合うのだが、夕方遅くまで強風の中で揉まれると思うともううんざりだった。兜沼から抜海へは去年通った道だし、報われない気分のアップダウンが続く。
 今、豊富へショートカットし、20km弱先の豊富から道道444でサロベツ原野を横断すると、サロベツ原野や日本海沿岸で景色を眺めてのんびりできる。サロベツ原野から利尻島が大きく見えるのは、道道444の大きな魅力であり、また訪れてみたい。日本海沿岸道道106の、海と空と平原だけのほぼ同じ風景も、確かにここでしか味わえない風景だ。しかし、それが抜海から天塩までの50kmが稚咲内からの25kmになったって、十分すぎるぐらいだ。
 行程の下方修正は確かに後ろめたい。しかし、走行距離なんてちょっとぐらい短くなったっていいじゃないか。コースがツーリングとして楽しくなるなら。などと、言い訳は瞬間的にまとまってしまった。


 13:20、沼川発。

 川西、曙と丘陵部のアップダウンが続くのは、元々の有明方面でもショートカットの豊富方面でも変わらない。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 しかし、豊富までもう10数km。ノルマが激減したことにより、相変わらず向かい風ながら気持ちはだいぶ軽くなっている。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 幌加、豊瑞、福永と、道北の丘陵部からサロベツ原野の豊富へ、次第に高度を下げてゆくのも気分が楽な大きな要因かもしれない。

 そう考えると、沼川から豊富へは未済経路を含むこともあり、何だか風景まで目新しく思えてきた。つくづくツーリングには適正距離というものが必要なのだと思う。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 14:25、豊富着。町の北側のセイコーマートでしばし休憩。さっき沼川で休んだばかりだし、今日の終着天塩にはセイコーマートがある。明日の物資はまだ買う必要は無い。補給ポイントが多いのは、道北と道東の根釧台地辺りとの大きな違いだ。


 14:40、豊富発。

 稚咲内へは道道444。サロベツ原野のど真ん中を日本海へ向かう、大変見晴らしの良い道だ。前回通ったのは2010年。正面間近に見える利尻島に、度肝を抜かれたのをよく覚えている。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 今日は雲がやや多く、陽差しも利尻岳のぎざぎざの稜線も雲に隠れている。しかし、広大なサロベツ原野を眺めるには、サロベツ原野を横断するいくつかの道のうち、この道が一番好ましいと思う。そして途中から海岸部に近づいたためか、利尻の裾がはっきり間近に見え始めた。
▼動画46秒 道道444のサロベツ原野 まだ利尻は見えない

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 途中、サロベツ原野豊富ビジターセンター辺りで景色を眺めていたら、後ろからやってきた若いツーリストに道を聞かれた。これからキャンプ場のある稚内辺りまで向かうため、国道40へ行きたいとのこと。彼はドコモスマホのGoogleマップだけで走っていた。思い切りの良さにも、ドコモ通信網の広さにも脱帽だ。ちなみに私のスマホだと、電波状況と電池の持ちの両面から、まず無理だ。
 今この場所なら、豊富以北でアップダウンがある国道40より、日本海海沿岸の道道106の方が車が少なく景色が良く、しかもほとんど平坦だ。だめ押しで今日は北上方向だと多分追い風になる。特に国道40を経由しなければならない理由が無ければ、道道106の方がツーリングとして楽しいに違いない。

 若いツーリストとそんな話をしたり、時には立ち止まって利尻やサロベツ原野に感動しながら、2両編成で道道444を稚咲内へ。

 稚咲内で道道106に合流。稚内へ向かう彼は手を振って、稚内方面へ走り去っていった。こちらはやっぱり強い向かい風の中を南へ。
▼動画46秒 道道106 稚咲内出発直後

 15時を過ぎて陽差しは次第に傾いてきたが、一方で雲は更に高く少なくなり、青空基調と言っていいまでに天気が良くなっている。さっきサロベツ原野から利尻島がよく見えていた通り、日本海上の天気はいいのかもしれない。

 右には日本海、左には草地が、少し離れた低い丘まで拡がっている。開けた行く手と空が広々と、特に今日のように天気が悪くないと、風景の開放感は比類が無い。そして空と地面が接する視界の先へ、道道106はどこまでも続いてゆく。

 時々海側の丘が開けて海面が見えたり、砂浜が見下ろせたりして、ともすれば単調になりがちな行程のアクセントになってくれるし、振り向けば利尻島が相変わらず間近にでっかく見える。特徴的なぎざぎざの稜線は、やはりまだ完全に雲に隠れているが、裾はさっきのサロベツ原野よりますますはっきり見え、思わず立ち止まってしまうほど見事だ。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

 旅程終盤にして、明らかに空気中が澄み始めている。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 向かい風はつらいものの前へ前へとのろのろ進んだり、脚を停めて景色を見回しているうちに、稚咲内から既に遠くに見えていたオトンルイ風力発電所の風車群が、少しづつ少しづつ次第に近づいて、横を通り過ぎてゆく。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 日本第3位の大河、天塩川の河口部を大きな橋で渡ると、もう天塩の外れだ。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 16:55、天塩着。過去何度か使っている町外れのセイコーマートで明日の物資を補給し、17:15、天塩温泉「夕映え」着。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 やや早めの到着だ。ショートカットがやや効き過ぎて距離は168kmと短めだったが、まあこういうのも安心感があって悪くない。

 早々に温泉の大浴場で汗を流すことにする。熱すぎずぬるすぎず、海岸らしく塩っ辛く、湯船で一息付くのに向いている温泉だ。まだ明るい夕焼け空を眺めながら、今日1日を思い出してのんびりお風呂に浸かっていると、つくづく幸福だ。もう7日目の行程も終わった。旅程全体として、残り1/3を切ったことになる。ということは、旅程がもう終盤に入っているということだ。明日も朝のうち雨っぽいみたいだが、まあ何とかなるだろう。嫌でも時は過ぎてゆく。
 露天風呂から内風呂に戻り、そろそろ上がるかなと思っていると、「高地さん」と呼ぶ声が。何と釧路空港でお会いした、BikeFriday乗りの方との再会だった。そう言えば確かに、私と同様旅程後半に道北に向かわれると仰っていた。今日は隣のキャンプ場泊で、併設の温泉に来たら、入口に見たことがある自転車が置いてあった、とのこと。普通風呂の中や脱衣所でいきなり会っても、予備知識がないとまず誰だかわからないと思う。自転車で誰だかわかっていたというのがいかにもサイクリスト特有の現象で、大変可笑しい。
 その方には謝らないといけないことがあった。釧路空港で相手の行き先も考えずに、自分目線だけで「これから晴れますから」などと口走ってしまったのだ。しかも私の方角は予報通り晴れたものの、その方が向かった阿寒方面は、やはり雨だったようだ。恐縮しきり。しかし笑って許していただけて、そんな話もとても楽しい旅先の話なのだった。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

 夕食後まで海上の夕焼けが見事だった。しかし道北全体に、夜から明け方に掛けて雨との天気予報が出ていた。明日は昼前から天気が回復し始めるようだが、内陸部には雨が残るかもしれない。明日予定の知駒峠は、断念しなければいけないかもしれない。2日連続ショートカットになってしまうが。

記 2015/3/8

記 2014/1/

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Last Update 2015/3/23
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