置戸→(町道・道道211他)勝山
→(道道1050)常元→(道道88)町界
(以下#5-2)
→(道道88)芽登→(国道274)上士幌
(以下#5-3)
→(道道337・農道・町道他)瓜幕
→(道道593)岩松→(道道718他)新内
(以下#5-4)
→(国道38他)幾寅
166km
RIDE WITH GPS
前夜見た天気予報は晴れ時々曇りだったが、4時に目覚めてみると、まだ薄暗い夜明けの空は紛れもない晴れ。辺りがどんどん明るくなるにつれ、空の色は明るく透きとおった色に変わっていた。
今日は久しぶりの道道88。長大無人区間を擁する、十勝と北見を結ぶ道である。十勝へ出たら、これまた久しぶりの十勝北部横断コースから狩勝峠越え、そして夕方の北落合を眺めて、幾寅へ向かう見所一杯のコースだ。北落合は、今日夕方と、明日早朝のW訪問の一発目だが、十勝も含め、各展望ポイントでは是非ともおちついて風景を味わいたい。また幾寅では、宿の夕食の代わりに、大好きななんぷ亭のなんぷカレーを食べるというミッションもあり、今日の営業も確認済みだ。
雨が続いてぶつ切り気味の今回の行程、思えばまともに150km以上走るのは、今日が初めてなのだ、5日目にして。迷うこと無く出発しよう。今日は幾寅まできっちり走らねば。
5:25、置戸発。周りは朝日で真っ赤っか、町中であっても鮮やかだ。
空気はきりっと冷ややか、風も無く爽やかとしか言いようが無い。空には夜の霞の残りのような薄い雲が漂っているが、むしろ今日の晴天を予感させるものに見える。
基本的に進むべき方向は道道211沿い方面だが、周りの麦や背の高いトウキビ畑が赤みを帯びて鮮やかなのを見ると、どうしても畑の中を走りたくなって、町外れから谷間の反対側に並行する町道を経由。
静かな道をてれてれ流しながら、早出によるまだ自分自身が寝ぼけているようなのんびり感を味わいつつ、むしろこういう景色が一昔前の道道だったよなあ、と思う。道道は近年拡幅が進んで、冬の暮らしには間違い無く便利なのだと思うが。夏の自転車ツーリングには高規格になりすぎた。
谷間が次第に狭くなって再び道道221に合流すると、この谷間最後の町、勝山に到着。
勝山で十勝へのメインルートは道道1050と名前を変え、同じ谷間を進んで常元へ向かい、道道88と分岐して小さな丘を越え、一つ南の谷間で十勝へ向かう。一方道道211は勝山で終わりなのではなく、勝山から分岐するその一つ南の谷間を峠無しのダートの春日林道として遡り、最後は道道88に合流する。つまり、新ルートの道道1050の方が現在はメインルートなのだが、谷筋として道道211〜春日林道の方が、連続している谷間なのだ。
この道道211〜春日林道は、私にとって長年の懸案となっている。初めてこのルートを通った2000年、既に道道1050を経由した全舗装コースは開通済みで、当時道道211〜春日林道は長い間通行止めだった。その後も通行止めだったり時間に余裕が無かったりして、毎回通りそびれていたのである。
今日は特に通行止め表示は無い。何となく道道211へ向かおうかどうか、さっき置戸で飲んだばかりなのに、ちょっと缶コーヒーを飲みつつ悩んでみる。しかしまだ6時。狭い谷間の森では熊が怖いような気がする。2005年ぐらいに全国で熊が里でも目撃されるようになって以来、もう以前のように気軽にダートに突入するわけにはいかないのである。まあちょっと脚を停めるネタが欲しかっただ、などと思いつつ、取り急ぎ勝山を出発。
常本手前の鹿の子温泉には2002年に泊まったっきり。その後営業をやめたとの情報を耳にし、時々通る度に様子を伺っていた。
毎回営業しているとも閉鎖されたとも確信は持てなかったが、今回は建物にもう完全に人気が無く、茂りつつある草の中で次第に朽ちつつあるのが確認できた。
常元で道道88、芽登方面へ分岐。隣の谷への丘越えは標高差160m程度だが、毎回そう思っていると7%基調の登りはなかなか堪える。
取付の一登りが一段落する頃には、早くも汗だくになった。今日も木陰はまだ爽やかなのに、早くも陽差しは高く上り、厳しくなり始めているのだった。
勝山で道道211へ向かっていれば回避できた坂だなどと思ったりもするが、たかだか160m。誰が考えても熊の危険を避ける方が優先する。
丘からちょっと下ると、峠へ続く山間の谷間が眼前に開ける。あまり無駄は無いのが心の救いの丘越えである。なだらかに前方へ向かってゆく谷間には高いカラマツが広がり、道はその中を直線基調で延々と、標高711mの峠へ向かって登ってゆく。カラマツの大森林が拡がる谷間はこの先峠を越えた十勝方面にも続き、谷間には小山がぽこぽことアクセントを効かしてこの道の特徴ある景色となっている。
芽登まで47km、非常に長いこの道の峠には、名前が付いていない。峠の名前があるにも無いにもいろいろな理由があって、どちらが偉いということは無いのだとは思うが、この峠には何だか名前があってもいいような気はする。しかし一方、名前が無いのも、いかにも延々続く無人のカラマツ大森林を単純に登って下るこの道らしいような気もする。
そんなとりとめないことや、普段の生活のどっちでもいいようなことが頭の中に浮かんでは消えつつ、カラマツの森と長い直線の行く手のカーブ、周囲の山を眺めながらのんびり進む。北海道の山中らしい大樹海の中、延々と続く1本道の俯瞰をイメージすると、その中心にいるのは、かなり緩い坂でも坂というだけでペースががくっと落ちる自分であり、雄大な景色に一気に哀愁が漂う。目の前の景色は素晴らしく、いつもツーリング中考えるのは、今考える必要の無い下らないことばかり。無人で単調な景色が、混沌たる思考を更に助長する。
まあ早出すると、たとえ20分の余裕であってもこういう状況下での心理状態が全然違って、のんびりと落ち着いた気持ちで進めるのだ。気持ちだけの問題ではないかとも思うが、いや、こういう気持ちの問題はとても大切なのだ。
辺りの陽差しが急に消えて気が付いた。いつの間にか空には青空が無くなっていたのだった。いや、時々辺りが再び明るくなったり、青空が雲の切れ間から現れて消えたりしていたが、雲はもう頭上の低い位置を素速く動いていて、前方下手から一気に空の低い位置全体に押し寄せた。峠手前辺りでは何だかその色が白から明らかな灰色に変わり始めた。あまり良くない傾向だ。
7:50、峠着。7時台に峠を通過できた。間違い無く早出効果が大きい。しかし峠部分はもともと景色が拡がることは無く、だだっ広い駐車帯と、ガだらけのあずまやがあるだけだ。おまけに今朝は先客の車がいる。ここはそのまま通過しておく。
記 2014/1/26
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