四国Tour11#2-5 2011/4/30 旭→木頭出原

旭→(県道16他)谷口→(剣山スーパー林道)旭丸峠 (以上#2-1)
→(剣山スーパー林道)ファガスの森高城 (以上#2-2)
→(剣山スーパー林道)川成峠 (以上#2-3)
→(剣山スーパー林道)日奈田峠
(以上#2-4)
→(剣山スーパー林道)平→(国道195)木頭出原
104km  RIDE WITH GPS

 RICOH GR DIGITAL 3 GR6.0mm1:1.9 A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路

 日奈田峠を越えて尾根をくるっと回ると、景色が変わった。峠だけあり、次の谷間に移ったようだ。しかし拡がる大空間の絶景という点では相変わらずだ。それにしても、新たな稜線に沿って道が続き、彼方の上方の尾根を回り込むところまで一気に見渡せるのが凄い。あんなところまで本当に行けるのか。いや、行程計画上は行かなければならないのである。

 

 地図上では、道が詰まった等高線に沿って、標高1400mから1100m台後半まで高度を下げているように見えたこの区間。しかし、事前のプロフィールマップによる標高差スタディでは、さっきの最高地点からほんの少し低いだけの剣山トンネルまで、まるで鋸のような形だったのを覚えている。恐ろしくて「きゃー」とか言って余り真剣に見ていなくて、山の数はよく覚えていないが、総量としてはさっきの川成峠から日奈田峠までの3回のアップダウンだけで済むはずがなかった。


 ファガスの森高城から先、道の砂利が明らかにそれまでにも増して増えている。登り途中の押しの割合が増え、疲労も溜まり始めていて、さっきあれほど超大盛りカレーで腹一杯になったのに、もう腹が減り始めている。こういう状況下、気温があまり高くなくて、水の心配をあまりしなくて良いのは気分的にほんとに助かる。いや、それもさっきのファガスの森高城で、水の補給ができているからだ。

 RICOH GR DIGITAL 3 GR6.0mm1:1.9 パノラマ合成

 結局日奈田峠から先は、アップダウンが3回。登りも下りもあきれるほど遅く、遅々として進まない行程と、15時、16時とどんどん進む時間、それ以上に次第に雲が増えて薄暗くなってきた空にかなり気を揉んだ。

 槍戸川までの300m下りに入ったときには嬉しかった。この分だと17時前には槍戸川まで下りきり、剣山トンネルまでの登り返しにめいっぱい時間が掛かったとしてまあ18時、というストーリーが可能になる。

 18時ならまだ明るい。国道195側出口までの10数kmの間に日は暮れるだろうが、最悪でもこれならぎりぎりで何とかなる。

 ただし、パンク他のメカトラを起こさないことが大前提だった。頼む、ツーリングの神様、パンクだけはしないように!

 RICOH GR DIGITAL 3 GR6.0mm1:1.9 パノラマ合成

 とか考えたり、時々剣山の脇に聳える一ノ森の頂を意外な近さで眺めつつ、谷底へ下り、16:55、槍戸川到着。

 何とか17時前に着けた。あと標高差300mちょっと。ここまでのペースで考えると、18時までには剣山トンネルに着ける。大丈夫だ。と、喜んでいると、何と谷底から分岐し、県道295へ下る林道入口には、かなり念入りにバリケードで通行止め措置がなされていた。通行止めとなっていたのだった。ご丁寧に「通れません」と書いてある。まあここまで来るぐらいの人は、これぐらいじゃないと諦めてくれないのだろう。
 正直15時頃からここまで、この槍戸川で谷間に降り、穏当な時間に宿に着こう、等と考えたこともあった。しかし、剣山スーパー林道の、最後の300m強ひと登り以外の選択肢は、最初から無かったことになる。

 RICOH GR DIGITAL 3 GR6.0mm1:1.9 パノラマ合成

▼展望180° 槍戸川へ下って行く道 画像上でマウスをドラッグしてください
 最後の登りは、何だか今までにも増して斜度が厳しい。最初は乗って登れたものの、すぐ砂利が増えて小石で来るようになり、山肌に張り付いた屈曲した道をとぼとぼ押したり押したりちょっと乗ってみたり、また押したり、というぐらいの割合で登ってゆく。

 振り返ると、あっという間に高度が上がり、さっきまでいた谷底周辺や登ってきた道、更にその前の、下って来た道が山を巻いているのも見渡せるようになっていた。やはり斜度が厳しいのである。うん、きっとそうだ。

 笹原になっている剣山の頂が時々上の方にちらちら見え始め、やがて稜線部近くに「山の家奥槍戸」の小屋が見え始めた。ツーリングマップルでは「美味しい山菜そば等軽食可能」となっているので、営業時間の16時までに着いて何か食べるときっと楽しいだろう、等と思っていた。しかしもうこの時間、軽食の営業は終わっているだろうし、そもそもこの時間だと林道区間を出る前に真っ暗になってしまうだろうから、うだうだしている余裕など無い。

A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路

 18:00、剣山トンネル到着。山小屋には何と軽食営業どころか、全く人気が無い。もしかするとまだ今年は小屋を開いていないのかもしれないと思うほどだが、とすると最初からここで補給するというストーリーも無かったことになる。まあ自分の遅い到着が原因なのだが、世の中なかなか厳しいものだ。

 

 トンネルを抜けると、ほわんと明るい空の中に下って行く山々と谷間があった。
 延々と奥へ奥へと続いて行く山々。その山肌を細い筋が横切って、こちらから下っていっているのが見えた。考える間も無く、あれがこれから下る道だ。まだあんなにあるのか、と思った。今日で一番愕然としたかもしれない。

 まだ18時ちょっと過ぎ、今すぐ真っ暗になる気遣いは無いが、本当に今日中に下れるのか。山の中で真っ暗になっちゃったら、下りペースは明らかに落ちるだろう。トンネル入り口の看板で見たら、国道195出口まで19km。真っ暗になってから確実に数km下る必要がある。確か2004年に通ったときには、出口は舗装だった。問題はどこから舗装区間が始まっているかだが、そんなことより一刻も早く下り始める必要がある。
 粛々と、そしてパンクなどのトラブルが無いよう慎重に、途中でうだうだせずに、確実に高度を下げなければならない。

▼展望180° 剣山トンネルの少し先 見下ろす山々と行く手の道 画像上でマウスをドラッグしてください

 RICOH GR DIGITAL 3 GR6.0mm1:1.9 パノラマ合成
 

 さっきトンネル出口で見えていた場所までは、下り初めて10分強ぐらいで着いてしまった。振り返って山肌に張り付いて峠部分へ登って行く道を眺め、あんなに高い遠い所にいたのだ、と思った。

▼動画25秒 しばし下って剣山トンネルを振り返る 展望180°

 RICOH GR DIGITAL 3 GR6.0mm1:1.9
 

 その後の下りはやはり長かった。だいぶ下ったと思っても、GPSを見るとまだ300mも下っていなかったりした。砂利は所々で相変わらず深く、ちょっと調子に乗るとずぶずぶっと車輪を取られそうになったり、リム打ちっぽいいやな感触があったり、冷やっとさせられた。

 辺りがどんどん暗くなるにつれ、一方で木々は芽吹き始め、谷間の周囲は賑やかになっていった。しかし、次々と去って行く景色は手を変え品を変え迫力満点だが、それだけにある意味全く変わらないとも言え、そもそももはやあまり景色に眺め入る余裕は無い。

 辺りが暗くなってライトを点ける。19時を過ぎ、空が少しずつづ真っ暗になってもまだしばらくダートは続いていた。つくづく明るいLEDライトを装着しておいて良かった。私の2丁ライトを見て「ほう、2丁ですか」などと言う人がいるが、明るいライトがあればあるだけいいという状況はあるものなのだ。
 真っ暗な中だが、辺りがもうすっかり生い茂る森になっているのはなんとなくわかった。ここまで粛々と真面目に下っているのだ。真っ暗になった段階で、もうある程度以上まで下っているはずだ。先は見えているはずだ。

 

 それでも、道がダートから舗装に変わったときは本当に嬉しかった。しばらく下って最初の灯りが見えた。何か山間の1軒屋の前で、オートキャンプをやっているだけだったが、無人の山中を延々と下って来て、ようやく人の営みのような者に再会できたのである。
 狭く深くなった谷間を更に下ると、行く手の山が切れ始めたと思ったところで、行く手にナトリウムランプが登場。あまり気を取られずに徒然なるままに下って行くと、そこは橋の向こうで狭めの道に横から合流するT字路だった。相手の道は意外なほど狭かったが、ナトリウムランプには記憶があった。国道195だった。
 19:25、遂に国道195に到着したのだった。剣山スーパー林道、完走である。

A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路  

 間髪入れずに下り方面へ。道は相変わらず真っ暗な谷底を勢いよくどんどん下っていき、国道195ってこんな感じだったかなあ、とちょっと不安にさせられた。しかし、道路脇のおにぎり標識には間違い無く「195」の文字が見えるし、しばし下って登場した集落には、「北川」の文字が見えた。間違い無い。
 あとは転ばないように、車とぶつからないように注意し、粛々と下っていけばいいだけだ。集落がいくつか断続した後、トンネルの名前を見ると「西宇トンネル」とのこと。ちょっと長めのトンネルを抜けて地図を確認すると、今日の宿がある木頭出原はもう1kmちょっと。

 GPSナビを開始し、宿があるらしい場所の辺りで少し迷ったものの、20:10、木頭出原「小森旅館」到着。
 余裕の行程だったはずが、見込み違いでだいぶ難儀したものの、無事に帰って来れた。長い1日が終わったのだった。

 

 こんなに遅くなってもまだ夕食を食べさせてくれる宿には、感謝してもし足りない。しかも翌朝は5時半出発に合わせ、5時から食事を食べさせてくれるとのこと。お遍路さん対応で、早い食事はそう珍しいことではないらしいが、四国ならではの事情である。

記 2011/5/11

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Last Update 2020/3/20
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