北海道Tour10 #8-4 2010/8/13 浜頓別→仁宇布

浜頓別→(道道84)本流 (以上#8-1)
→(道道121)幌延→(道道256)東雄信内→(国道40)国府
→(農道他)歌内→(道道541)佐久橋 (以上#8-2)
→(国道40)咲来市街→(道道220他)歌登
(以上#8-3)
→(道道120)仁宇布  220km

ファームイン・トント到着 夕暮れと共に雲が増えてきた RICOH GR DIGITAL 3 GR6.0mm1:1.9 歌登から志美宇丹経由で大曲へ 赤は本日の経路

 15:25、歌登発。町中の交差点からおもむろに道道120へ。

 昨日は全行程バス輪行になってしまったが、予定では今日と逆向きにこの道を通って浜頓別に向かうつもりだった。道北の南北方向の道は、大きく言えば4本。その4本中、唯一の道道がこの内陸縦断コースである。他の道はと言えば、内陸の国道40は走ってみればまあ毎回何とか問題無いぐらいの交通量、日本海オロロンラインの国道232もオホーツク街道の国道238も近年車が増加傾向だ。今年は交通量極少のこの道を、道北への出入りに2回使う予定を立てていた。行きは雨で中止となっても帰りにこの道を通れて、まあ結果的に雨の影響は少なかったことになる。

 それはともかく、2回通りたい程の、大好きな道であることは間違い無い。

 東歌登の裾野平野から谷間の辺毛内へ入ると、夕方で淡くなり始めた穏やかな空の下、山影も次第に青くなり始めていた。

 でももう先が見えたので、夕方に向かう景色も気楽で楽しい。このままいつものペースでゆっくりのんびり進めば、仁宇布まで確か3時間。18時半には仁宇布の交差点に着き、19時の宿の夕食にも間に合うだろう。

辺毛内から上徳志別経由で仁宇布へ 赤は本日の経路

 辺毛内から歌登の盆地の縁を越え、志美宇丹の盆地へ。北見幌別川から徳志別川へ谷が変わる丘越えだが、たかだか標高差50m程度の登りの後は、越えた向こうで盆地の牧草地が一気に拡がる。典型的な道北のなだらかな地形である。
▼動画50秒 道道120 志美宇丹

志美宇丹の盆地広々 RICOH GR DIGITAL 3 GR6.0mm1:1.9

 牧草地中央部を直線基調で通ってゆく道は、時々方向を変えつつ、茂みに埋もれかけていたり消失したりする国鉄美幸線の建設跡と共に、志美宇丹、上徳志別と進んでゆく。
 空にはすかっと青空という訳にはいかないが、雲はすっかり高くなって雨の心配は無い。

 もう16時。日没にはまだ時間はあるが、空も雲もそろそろオレンジがかって、全体的に色が淡くなり始め、辺りの山々、いや、谷間全体の影が青くなり始めていた。

次は上徳志別 夕暮れが近づく谷間 RICOH GR DIGITAL 3 GR6.0mm1:1.9

 志美宇丹と上徳志別の間、集落の狭間で一度谷間が少し狭くなり、道は徳志別川と別れ、大曲の天の川トンネルへ向けてかなり緩い登りが始まる。

 上徳志別では再び牧草地の盆地が拡がり、牧草地や牧場農家、一度は泊まってみたい、静かなかみとくツーリストキャンプ場が過ぎてゆく。志美宇丹から上徳志別までの、山間の盆地もいよいよ終盤だ。

上徳志別の牧草地 RICOH GR DIGITAL 3 GR6.0mm1:1.9

 上徳志別の谷間が終わると、仁宇布まで20km以上の無人地帯。

 鳶のような鷲のような大きな猛禽類が、付かず離れずでしばらく低上空に迫ってきて、なんだかちょっと恐ろしい山奥の道だ。

 徳志別川屈曲部ショートカットの丘を越え、再び徳志別川の谷間に降りると大曲。周囲の山々はいつの間にか次第に高く険しくなっていて、着実に道北最北部の低山地形から、北海道の真ん中に向かっているのを実感する。

 17:00、天の川トンネル着。腹が減って仕方無いということも無いので、織姫駐車場はもうそのまま通過してしまえ。

 天の川トンネルを抜けると。次の谷間はフーレップ川。進行方向はあまり変わっていないが、またもや谷間が変わったことになる。

天の川トンネルから西尾峠経由で仁宇布へ 赤は本日の経路

 谷間が変わっても、道はもうこのまま西尾峠まで10km弱、140mの登り。登りも下りもだらだらながら、徹底的に距離は長くて山深い道道120である。

 そう遠くない山々は、すっかり青いシルエットに変わっている。

 次第に辺りは昼より薄暗くなっているが、景色の色が濃くなった以上に、何か周囲の森から圧迫感を感じ始めていることに気が付いた。何というか何か潜んでいるというか、生命に包囲されているというか、辺りじゅうから視線を感じるような気がする。ブキミで何か恐ろしい。前方遠くからこちらを伺って、カメラを構えると逃げてゆくキタキツネにも、壮大に化かされているんじゃあないか、等と思ってしまう。森の中に時々現れ、茂みの中へまた埋もれてゆく美幸線未成線跡が、何だか人の営みの主張のようで心強い。

 突然雨まで降り始めた。フーレップ川の谷に出てから空の雲は広がってはいたものの、その雲は高く別に暗くもなく、空気中に微妙なバランスで雨粒の水滴が漂っているようなのだ。さすがは道北中央部の山間、もう何でもありだ。

 今日この時間に湖の道を通るような計画を立てたことを少し後悔するとともに、途中で何か見込み違いやパンク等があって、もう30分遅かったらもっと怖かっただろうと思った。順調で良かった。

 そういうわけで、美幸線跡がするするっと脇の山肌を登り、斜面にぶつかって途切れるのを見たときは嬉しかった。ちょうど坂も厳しくなり始めてわかっちゃいたが、もう西尾峠はすぐだ。

 下りの森の先が開けた仁宇布の牧草地は、やや厚めの雲の下で、もう全体的に薄暗くなり始めていた。

 しばらく下りが続いた後集落が登場、小中学校の脇を過ぎ、道道49との交差点が見えてきた。この道で非常に少ない信号付きの交差点である。

 18:10、仁宇布着。標高280mだけあって空の雲はけっこう低く、辺りも雲の厚みだけ薄暗い。とっとと宿に向かおう。

 18:20、「ファームイン・トント」着。

浜頓別から幌延、音威子府、歌登経由でB地点へ 赤は本日の経路

 見込みより早く着けたが、走行距離を確認すると、220km。幌延から音威子府までの平坦区間で快調だったのが効いている。ここまで下方修正が多かった今回のツーリングだが、やればできるのだ、おれだって、とまた思った。まあ何にしても、あのブキミな夕方の山から無事到着できて良かった。

ファームイン・トントの食堂から 夕闇迫る蒼い牧草地 RICOH GR DIGITAL 3 GR6.0mm1:1.9  

 夕食は18時45分ぐらいから。やや身体べとべと気味ではあるが、お風呂前に夕食を食べてしまうことになった。なぜなら、今日の夕食にはこの宿自慢の羊乳ポテトグラタンが出る。グラタンが冷えてしまう訳にはいかないのである。
 他には家族連れのお客さんが二組、バイク乗りが一組。他のお客さんは長テーブルで、私だけ一人、窓に面したテーブルの席を指定された。何だかグループ客から仲間はずれにされたような気分になった。どうせ一人旅だしね。などとちょっと卑屈になってしまったが、席に着くとすぐわかった。窓というより床から頭上までのガラス戸に面したこの席が、この宿自慢の牧場の夕暮れを目一杯、しかも静かに楽しめる場所なのだ。ならば一番この席で一番景色をゆっくり眺めるのは、一人客の私だろう。グループ客はお話しして楽しんでもらおうということなのだ。なかなか憎い演出だね。

 仁宇布の広い牧草地の一番奥に建つこの宿の標高は340m。山裾なこともあってか、雲はさっきの仁宇布中央部より厚く暗く、時々雨までぱらついている。宿の前は拡がる牧草地、広々と拡がる牧草地と夕焼けを見たかったが、今日の蒼い景色も、それはまたそれでとてもいい。サッポロクラシックの瓶でも開ければ、もう最高にご機嫌な気分である。

 

 夕食中のTVでは、この大雨で函館本線、日高本線が運休中、釧路方面では床上浸水もあったらしいとのこと。もし明日列車で帰る予定だったら、帰れなくなっていたかもしれないのだ。それほどの大雨で、やはり道北はその影響が際立って少ない。今日一応青空の下で走れたことは、とても幸運だったのだ。
 明日の道北の天気予報は朝のうち雨で、雨後晴れとのこと。朝のうちが何時頃までかはわからないが、予定コースの道道49、美深松山峠・幌内越峠・下川は山間コースなので、雨がちょっと心配だ。
 ならばここの席でまた牧場の朝を見せていただいて、ゆっくり朝食を食べて出発するか。前回泊まって以来、いつかはこちらの宿で、牧場の朝を眺めながら朝食を頂こうと思っていたのだ。朝食後すぐ出発すれば、名寄から母子里に入って、国道275で幌加内のソバ畑をたっぷり眺めることができるだろう。経路は明日の天気を見て、大人の選択でもすればいい。

記 2010/9/26

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Last Update 2019/8/1
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