女満別空港→(道道64)女満別→(道道249・町道他)稲富
→(道道102)東藻琴西倉
(以上#1-1)
(以下#1-2)
→(町道・農道)明生→(道道767)音根内
→(道道246)小清水→(国道391・町道)緑
(以上#1-2)
(以下#1-3)
→(町道他)清泉三区→(道道1115)清里峠
→(道道150)養老牛
(以上#1-3)
(以下#1-4)
→(道道150・町道)開陽台→(町道)開陽
118km
サイドバッグを自転車に取り付け、身体に日焼け止めとムシペールを塗りたくって、9:50、女満別空港発。
まずはコンビニを探して「女満別市街」の標識に従うが、空港から続く広めのこの道、手持ちの古めの1/5万には載っていない。そもそも空港ビルの場所自体が、地図と何か根本的に違う。というのは、今走っている道は地図の道とは線形も方位も何だかかなり違うようだし、地図だと女満別の町外れに空港があるはずなのに、少し走ると丘陵のど真ん中に出てしまったのだ。どうやら現空港は、手持ち地図の場所から移転したとしか思えない。初めての場所で地図が全くあてにならないので、気持ちはあまり落ち着かない。まあでも標識に従っていれば、そう激しく遠回りになることはないだろう。頼む。
というわけで、畑の中に大味に続く新し目の道をしばらく進む。空は雲一つ無いと言っていいほど晴れているが、風が吹くとまあまあ涼しい。しかし風が止むと日差しはぎらぎら厳しく、肌に熱を感じるほどだ。朝の気温18℃情報で期待した涼しさではなく、まあ当たり前の暑い網走地方の夏なのであった。
辺り一面開けた畑の丘の上、しばらくカーブや道の方角が明らかにに地図のどこにも見つからない状態が続いたが、丘からするっと下って農家が増え、と思っていると辺りが急に住宅地になった。やっと女満別市街到着である。
一直線の遠い先の方に車が何台も続けて通過するのが見える。どうやら国道に直交する町の中央通りに辿り着けたようだった。次第に近づいてきた国道39の交差点から見えるのはセブンイレブンだ。最初の休憩がセイコーマートじゃないのが少し残念ではあるが、まずはここでいろいろ補給しておかないと。
10:20、女満別発。まずは小清水へ、田舎道をつないで丘陵地帯を東へ向かう。少し南の幹線道路、国道334は絶対通らない、というのが今日の小清水までのコンセプトである。
市街を多少迷走気味に道道249へ入ると、畑の中ですぐ2年前に通った道が合流、巴沢の谷間から長い直登登り返しが続く。
真昼のぎらぎら照りつける日差しの熱と道の照り返しで、干上がりそうになったのが未だに恐怖として印象に残っているので、ぐっと必要以上にペースを落として落ち着いて登ることにする。まあ楽だし。今回の訪問は前回より少し早い時間のためか、辛うじて森の空気が涼しいような気がするのがありがたい。
坂の上は日進の丘。広々と開けた丘陵地帯に様々な畑が拡がっている。▼動画51秒
畑の緑、麦畑のまさに小麦色、森の濃い緑、そして点在する農家。360°見渡す限りの、いろいろな色とテクスチュアの田園風景だ。
女満別から小清水への、藻琴山の裾野がオホーツク海へ降りてゆくこの丘陵地帯、川と谷間は当然の如く南から北へ下ってゆく。丘の畑には主要農道が通り、谷間にも川沿いに道がある。それら南北方向に平行する道同士をつなぐ東西の道は、丘越え谷越え、かなり分節気味にくねくね東西を横断する。▼動画43秒
女満別から小清水へ、西から東へ向かう今日のコースは、勢いこれらの谷間・丘をいくつも横断するということになる。
その原則通りに、日新から稲富、そしてこの辺りで一番広い東藻琴の谷間へ、町道を乗り換えながらアップダウンが連続。道と道の分岐にも気を使う。
東藻琴の谷間では、1989年以来の道道102を少しだけ経由。
道がいつの間にか網走市に入り込んでいて、飛行機のキャラクターがとてもかわいらしいカントリーサインを横目に再び大空町へ。
東藻琴自体は今日は寄らないので、東藻琴西倉で早々に分岐。東側の大進の丘陵へ登り返す。
大進では町道が丘の上から微妙な谷間を迷走。
平面的にも断面的にも振幅の大きい経路で、西から東へ向かうにはかなり効率は悪い。でも、少し南側の国道334は通らないと決めたのだ。
谷間の川沿いの森は風が涼しく、丘の上では丘陵の景色が拡がる。町道だけあって農作業の車が時々通るだけなので、音はギーギーとエゾゼミの合唱と、遠くの農耕機械だけ。楽しい田舎道が続く。
改めて「大空町」なる新自治体の名前を思い出す。広々とした丘陵、遠くの山々、そして広々とした空。1日ここで働いていたら、誰だって「大空」という単語が頭に思い浮かぶ。空から降り注ぐ厳しい日差しで、畑には元気いっぱいの農作物が生い茂る。それにこの地域の空の入り口女満別空港、まさに空とともに活きる人々の土地なのだ。
大合併後の新自治体の名前が唐突に聞こえてしまうのは珍しくないが、訪れないとわからない地名もあるのだ。大空町、いい名前なのである。
明生の外れの丘で、町道の迷走アップダウンは一段落。
一直線の道道767で、丘の上らしく畑が広々と拡がる安定した景色を眺め、12:00、音根内着。
ここから再び東南東へ、2001年以来の道道246、東藻琴までの1本道へ。
豪快に丘陵をいくつも横切りながら一直線に続く道の景色とアップダウン、開けた畑のまぶしく明るい景色とくらくらする暑さ、そして森を横断するときの冷やっと涼しい風が印象的な道だ。
前回は登って下るごとに大きくなっていった振幅だったが、今回は次第に小清水に近づくにつれその逆なのと、何より道を進むにつれ道の状況を思い出して、安心感がある。
事前の計画で時間の余裕は見てあったし、地図で残りボリュームは把握できていたものの、思えばここまでアップダウンとくねくねで行程感覚を見失いがちではあった。
12:50、小清水着。2001年には確かセイコーマートで休憩したはず、と思って町中を流しながらきょろきょろ探すと、国道391との交差点で斜里方面にセイコーマートを発見。迷わず休憩とする。今日はこの先宿までもうセイコーマートは無いのだ。
セイコーマートには、若者の練習ロード隊が休憩していた。カラフルなジャージにどこをどう見ても持っていない荷物、明らかに地元サイクリストだ。自転車ブームでこの片田舎でこういう人々を見かけるようになったことに、感慨というか軽いオドロキを覚える。
おにぎり、サラダ、100%オレンジジュース、ヨーグルトとセイコーマート純正商品でややみっちり気味に休憩を取る。それにしても暑い。熱いというより熱い。厳しい日差しが直射で熱く、照り返しで熱された空気が熱く、改めて網走地方の暑さを思い知る。
13:20、小清水発。次は清里峠越え、まずは国道391へ。
そのまま進むと野上峠を越え、屈斜路湖岸から弟子屈へ向かうこの国道391。国道にしてはかなり交通量の少ない道ではあるが、どうしても小清水まで通ってきた道道、町道と比べてしまうと、やはり交通量は多く埃っぽい。
幅の広い道の上は何か落ち着きが悪く、それだけに気分的にやや単調な行程が続く。
谷間が次第に狭くなり、道が谷底の1本道となったところで狙い定めて緑への分岐へ。漸近線のように近づいて緑の手前で一番近づくこちらの谷間と札弦川の谷間、一番近づいたところで一番低くなった丘を乗り越えるこの町道、清里峠方面と小清水方面へ行き来するのに個人的に重宝している。
札弦側の谷間では清里峠への道道1115が現れるが、ここは札弦川対岸へ進む。道道1115ではなく対岸の町道に、もうずいぶん昔から地図に行程予定の線が引いてあったのだが、いつも何か万屋でもないかとつい緑駅前を通る道道1115へ足を向けてしまい、未だにこちらを通ったことが無いのだ。しかし、道道1115へ行ってみると、その緑駅前には結局自販機1台ぐらいしか無く、結局いつも「前回もそうだった」と後悔するのが恒例になっていた。今回ようやく過去の学習を活かして20年振りぐらいの宿願達成である。
町道はほどよい山に囲まれた谷間の広がりに畑の緑が明るく、当然のように車は非常に少なく、一直線に伸びる道はセミとキリギリスの声、風の音だけ。やはりこちらに足を向けて良かった。それに畑の中、正面遠くの山へ向かうように続く道は、それだけで少し足を停めて見ていたいような景色だ。
牧草ロールを2段も積んだ10t車が脇を通り過ぎるタイミングで、少し足を停めてみる。トラック通過の轟音の後、草埃一杯の風が収まると、辺りは再び静かな畑である。真っ青な青空の中、これから向かう正面の山の上に元気の良さそうな雲が盛り上がり始めている。あるいは清里峠の向こうは曇りなのかもしれない。まあしかし、今はそんなことをあれこれ想像しても、結局今日はあちらへ向かうだけだ。今はこの景色を目一杯眺めておこう。
いい道だったので、その先もそのまま清泉の町道へ。こちらへ向かっても、同じぐらいの距離で清里峠まで最後の谷間を経由し、最後に谷間の奥で道道1115と合流することになるのだ。ならば通ったことが無く、楽しそうなこちらへ向かうのは、何の問題も無い。
静かで色とりどりの畑は、地形の適度な広がり、起伏とともにとても鮮やかで美しい。道はややくねくね蛇行気味で景色には変化があり、もう谷間もそろそろ狭くなって涼しい木陰が増えてきた。結局こちらもとても楽しい道だった。
手持ちの1/5万図を読むと、こちらの道と道道1151は近づくだけ近づいて、実は清泉三区で接する直前で方向を変えて離れてゆく。こんな状態でこっちからあっちの道に移れないわけがないのだが、ちょっとどきどきしながら現地へ来てみると、想像通りに2本の道をつなぐダート細道が登場。
狭い谷間の道道1115は、ひたすら広葉樹林の谷底のままだらだらだらだら本当に少しずつ高度を上げてゆく。
だらだらではあるが、長い峠道だ。それにしてもだらだらで、景色もずっと谷底の森の中同じようで、大変にメリハリが無い。今日の晴天のせいかゴマフアブもさっきから周りをぶんぶん飛び回っている。
空の中に現れ始めた雲に日差しが隠れたり現れたりし始めたが、相変わらず空は晴れ基調のまま。この分だと峠の向こうもそう露骨に天気が変わるということは無いだろう。広葉樹林がカラマツに変わると辺りが開け、斜度自体はあまり変わらないまま何か道が離陸しているような雰囲気に変わり、それでも峠手前で斜度がなんとか峠らしくなるということの無いまま正面に見覚えのあるスノーシェッドが登場。メリハリの無いまま清里峠に来てしまったようだった。
14:50、清里峠着。裏摩周展望台から下ってくる道道150と合流する形で、ここから道の名前は道道150に変わる。標高差たった140m、2001年以来の裏摩周展望台に向かっても良いような気はしたが、以前ここの激坂区間でゴマフアブの大群に襲われた恐怖を思い出した。まあこの道を登って、あまり余裕無く晴れの摩周湖を眺めただけで降りてくるより、何となく今日は養老牛から先の道道150と開陽台に注力し、大好きな景色をのんびり眺めたい。
そのまま下り始めると、やはりこちらも、いや、こちらの方が徹底的にだらだらの下りが続く。▼動画1分34秒
峠区間両端の清泉三区と養老牛はともに標高200m程度だが、養老牛側の方が距離がやや長いのだ。
カラマツ林の中を下るにつれ、斜度が更に緩くなったのも記憶通り。平坦に近い、いや、平坦と言ってしまってもいいぐらいの下りである。
こちら側の天気は薄曇りのようで、日差しの熱射と照り返しの両面攻撃が無いのに加え、森の風がとても涼しい。まあそりゃそうだ、もう酷暑の網走地方から涼しい根釧台地へ移ってきているのだ。等と考えて長い下りのだれ気味の気持ちをごまかしていると、やがてこれも記憶にある牧草地が登場。養老牛手前まで降りてきたのだ。
そろそろ赤くなり始めた光で緑が鮮やかな牧草地は、もうすっかり中標津の景色だ。渡道初日に中標津の景色を見ることができている。思えば過去の北海道旅行で初めてのことである。画期的だ。女満別空港って凄い。まあしかし、ここ中標津にも空港は以前から何の不思議も無く存在している。今まで自分が航空機アクセスのメリットを活用していなかっただけのことなのだ。
15:50、養老牛着。
交差点手前の養老牛小中学校で給水すると、水が冷たくてなかなかオイシイ。その後はとりあえずいつものなかがわ商店で恒例の一休み。店自体はいつも閉まっているので、この店ではいつも清涼飲料で休憩するだけ、食品は全く期待していない。ところが、その自販機の中に缶スープパスタなる非常に珍しい食料を発見した。パスタだけで3種類、他にも豚汁、ラーメン、いろいろある。
物珍しさで試してみたが、油脂が酸化してつーんと臭く、食べることはできなかった。というか食品として不適切なのではないかと思われる。
口を水で濯ぎ、気を取り直して養老牛からは東へ、中標津山裾の1本道へ。方向は90°変わっても、道の名前はそのまま道道150ということになる。
ここから先は毎年来ている道だ。牧草地、牧場農家、カラマツの防風林にアップダウンの順番までもういつも通り。▼動画1分12秒
自分の写真と同じ景色に、昨日来たような気持ちさえ感じるが、やはりここに来れていることが夢のようにウレシイ。▼動画47秒
去年から1年、いろいろあったが、またこの道を走れているのである。
しかも今回は夕方。空は雲っぽいが景色はまだ明るく赤みを帯び、緑鮮やか、知床の山々のシルエットが青くなり始めている。
旭新養老牛、北進と山裾の牧草地とカラマツの中を進み、俣落まで一気に100m下り。その後は開陽台まで再び100m登り返しとなる。
毎年のことだが町道北19から分岐する開陽台入り口は、毎年の北海道の行程で間違いなく最急勾配区間である程のかなり厳しい直登である。
今日はやや曇りっぽいからか、次第に拡がる遠景の展望が霞に隠れてはいるものの、丘陵を少し登っただけで涼しい風が吹いてきて、かなり登りを助けてくれている。
もう17時過ぎ。時間から言って売店のソフトはほぼ絶望的だろう。でもそれだけに車もバイクも少なく、静かな開陽台が楽しめるに違いない。
17:20、開陽台着。
駐車場の良さげな場所に自転車を停め、早速展望台へ。案の定もう観光客は少ない。ソフトをぱくついている人がいたのでダメもとで聞いてみると、やはり16時半で売店は終了らしかった。
とりあえず展望台の一番上に登ってみる。やはり空は雲っぽく、遠くが靄っぽい。夕方のドラマチックな地平線が見たくて今日の行程を組んだようなものだったが、まあこれはこれで満足な今年の開陽台、なのだ。というか、旅程初日にこの景色を見ることができて当惑している自分がいる。何度も言うが、ワタクシ的にはかなり画期的なことである。▼開陽台の展望270°(Quicktime VR) 画像上でマウスをドラッグしてください
この靄っぽさ、あるいはここ数日になってようやく続いている道東方面の晴天によるものかもしれない。晴れが続いて気温が上がったのだ。夕方の展望台には何故かウンカみたいな細かい虫がいっぱいで、場所によっては柱を作っている。こういう開陽台もあまり記憶に無い。
ぐるっと見回すと、西方面は雲がやや少なく、雲の間から指す日差しが山のシルエットと山裾の草原を照らしていた。また、東側の海岸方面は靄がやや少ないようで、淡く消えそうなコントラストの中に確かに海が見えた。曇りなら曇りなりにいろいろ見せてくれる開陽台である。
また明日も早朝開陽台に来よう。今日の宿はこのすぐ近く、1994年から15年ぶりの民宿地平線。夕方と朝の開陽台を連日で楽しめるよう、そういう行程を組んでいるのである。でも、旅の景色は一期一会。今日この景色を疎かにすること無いようにしないと。
その夕日もそろそろ弱くなってきたところで展望台を撤収。自転車に戻ると、なんとカラスが2羽、近くの手すり上に止まっている。時々カラスに荷物の食料をやられてしまう話を聞くが、おおかたそんな狙いでやってきた奴らなのだろう。だが、こちらは今日のところはもう食料は持っていない。フロントバッグはもって来ているし、サイドバッグの蓋はちゃんと閉めているし、幸いというか当然のようにというか荷物も自転車も別状無いが、糞でも落とされたらメイワクなだけだ。
18:05、開陽台発。▼動画2分56秒
開陽台下の町道北19の有名撮影ポイントには、夕方のため順番待ちのライダーはいない。これ幸いと写真を撮ったり、そのすぐ先の個人的定点撮影ポイントのダートに立ち寄ったり、もうすぐ近くの宿まで結構時間がかかるが、まあせっかく来たのだ。こういうことに時間を惜しんではいけない。
18:30、開陽「民宿地平線」着。
開陽台の近くという、最高のロケーションを誇るこの宿は15年ぶり。カラマツの森の中の1軒屋も、1日行動分を満たしてくれるバランス・ボリュームとも満足の夕食も、そして風呂は車で町近くの温泉に連れていってくれるのも15年前と同じである。今日は私の他に客はライダーがもう一人だけ。おかげで部屋は個室で使えた。こんなところにも旅程初日を感じてしまう。
果たして明日の天気予報は晴れ時々曇り、最高気温25℃。万難を排して早朝の開陽台を訪れたい。
記 2009/8/29