花咲港→(道道310)根室→(道道35)納沙布岬
(以上#7-1)
→(道道35)根室→(国道44)厚床
(以上#7-2)
→(国道243)奥行臼→(国道244)標津
(以上#7-3)
→(国道244)伊茶仁→(国道335)羅臼
→(道道87)海岸町 202km
15:10、標津発。町外れから再び海岸際の道となる。
もうこの時間日差しにはけっこう赤みが含まれている。条件反射的に気が急く。落ち着いて粛々と足を進めよう。
伊茶仁で斜里へ向かって分岐する国道244と別れ、海岸沿いの道は名前を国道335と変えていよいよ知床半島南岸の道となり、浜辺から少し離れて低木林の中を進んでゆく。
忠類、浜小多糠と浜辺の森が続き、古多糠への分岐を通過、港町の薫別、崎無異と台地に登ったり漁村に降りたりして北上が続く。
ところが、空にはいつの間にか雲が出始めていた。
というより、知床の山々にこってりした黒い雲がまとわりついていて、なんだか怪しい。
と思っている内に水滴が何回かぱらついた後、峯浜町から羅臼峠への登りに取り付いた辺りで、ついに本降りに捕まった。
羅臼峠自体は、峠と言いつつ標高たったの110m。峠までは海岸から立ち上がる知床の山裾、濃い森の道だ。何度かアップダウンがあるが、いかんせん登り総量が少なく、根釧台地辺りの質の悪い丘とあまり変わらない。その森の道で、山から下りてきた雨雲が行く手の斜面に掛かっているのがよく見える。
雨雲は速い速度で勢い良く降りてきてはいたが、けっこう粗密もあるようだ。雨が厳しくなっても、残り時間から言って基本地に粛々と進む必要はある。あまり長い間休憩するわけには行かない。そう深い山の中ではないし、羅臼峠自体はスノーシェッドの中なので、そこへ逃げ込んで大雨のピークをやり過ごしたら、また出発しよう。
と思っていると、森が切れて見えた海上に大きな虹が見えた。海上は全く降っていないのだった。
羅臼峠のスノーシェッドを抜けると、行く手は見晴らしがいい。やはり海側は雨が降っていないのだ。ここから先は羅臼までずっと海岸際の道、とりあえす一安心だ。
もう17時過ぎ、羅臼まで10kmを切っている。海岸沿いにのんびりと、春日町、麻布町、八木浜町と切れ目無く続く漁村の中をのんびり進む。途中にはセイコーマートも登場。宿到着間近だが、いや、どうせ今日の夕食は野菜不足だろう。サラダを食べておかないと。
大きな家が並ぶ漁村には民宿が多い。予約検討時に見かけた名前もちらちら見かける。料理中なのか宿の中から夕食のいい匂いが路上にまで漂ってきて、ますます腹が減る。腹が減るのは人間だけではないようで、雨上がりの漁村上空には、ウミネコやカモメが大きな輪を描きつつ飛び回っていた。
この辺まで来ると、完全に振り返っても海上に国後島のシルエットが続いている状態なのが凄い。てれてれとしか走っていないようだが、標津からももうだいぶ東に来ているのだ。
羅臼手前の道の駅で某氏へお土産を発送。たぷんたぷんに新鮮ないいキンキが見つかった。
17:40、羅臼着。
そのまま羅臼の町を通過。町の手前で分かれた国道335は国道334と名前を変えて知床峠へ登ってゆく。その谷間を下から覗き上げると、さっき山裾に下ってきた雨雲の続きが、かなりこってりどっしり谷間に座っている。明日の行程がかなり危ぶまれる。いや、正直に言うと、「やった、明日は大義名分付きで輪行だ。休める」という方が近いニュアンスではあった。まあそれぐらい、何か決定的な黒雲である。
羅臼から先の東海岸の道は道道87となる。実はこの道、自転車で来るのは初めてだ。非自転車では1986年の冬にバスで通ったことがある。その時は朝昼夕3本のバスの内早朝の一番バス。まだ薄暗い早朝、バスで終着の相泊まで往復したはいいが、寝ぼけて凍えてバスの中ではほぼ全区間居眠り、終点では有名な海岸の露天風呂に向かう時間も無く、バスの外でちょろっと時間つぶししただけで、ほとんど記憶が無い。
羅臼までと同じく、岸から立ち上がる山の海岸際、ほんの一皮の平地には、漁村が延々と続く。やはり民宿も多く見られるが、なかなか目指す「民宿おじろ屋」はなかなか現れずに気を揉んだ。
何度か地図を見直してしばらく進むと、ついに今日もメーターが200kmを越えた。リハビリ行程で今日は190kmぐらいに抑えるはずだったが、根本的に計画が甘いのかもしれないね。今はそんなことより、とにかく宿でゆっくり休むしかない。
18:15、行く手に唐突に「民宿おじろ屋」が登場。何か掘建系新建材木造アパートみたいな宿である。まあいい、食事さえ旨ければ。どうせ飯を食ったら速攻で寝てしまい、翌早朝には出発してしまうのだ。
その夕食はやはり期待以上だった。リクエストしておいたきんきの煮物をはじめ、ホッケ、ツブ貝等々、ホタテの味噌汁も出た。これらの魚の味が、また食べたことがないほど豊かな塩味、いや、潮の味なのだった。高級魚のキンキが美味しいのは当たり前にしても、ホッケの上品で豊かな味わいと言ったら、もうほんとにホッケと思えない。
「そうですねー、余所のホッケは不味いですよねえ」と宿のおばさん。
「いや、それでもちょっと焼き気味にすると香ばしくって、美味しいって言ってるんですよ」
「うーん、そうなんですか。でもやっぱり臭くて食べられないですよ、私なんか」
「確かにこれ食べちゃうと、あんなの全然別の魚ですよね」
昨日食べた筋子もそうだったが、確かにこの辺りの魚介類は全て種類が違うぐらい美味しい。その豊かな味は、豊かな海によるものだろう。豊かな漁村を支えているのが豊かな海、そして豊かな養分と流氷を運んでくる海流と知床の山々だということを、理解できたように思えた。
しかし食事が美味しいのは良いが、何だか身体中くたくたである。そういう状態で山方面のあんな雲を見てしまい、頭の中が輪行一色。気が緩んで更にくたくただ。
もう明日は走りたくない。できればバス輪行にしたい。でも知床半島羅臼側公道最先端の相泊には絶対行きたい。海岸にあるという無料温泉にも絶対に絶対に入りたい。
果たして夜中に目が覚めると、外は大雨なのだった。
記 2008/9/28
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