海岸町→(道道87)相泊
(以下#8-2)
→(道道87)羅臼 45km
知床自然センター→(道道93)岩尾別 3km
疲れていても、内蔵高地タイマーで4時には目が覚める。いつもより暗い窓の外を伺うと、雲はどんより濃くて厚くて低く、路面は真っ黒ぬらぬらで、一目でやる気が無くなった。しかし、よく見ると雨は降っていない。海岸周辺をうろうろする限り、雨は降らなさそうな気もする。つまり、道道87最東端の相泊往復、そしてその後羅臼へは、自転車で行けそうだと言うことだ。一方で風はけっこう強く、まあもうちょっと明るくなるのを待って判断を下せばいいと思った。
ちょっとうとうとして目が覚めると、雨は明らかに止んでいて、雲も少し高くなったような気がした。何より肝心の路面が乾き始めている。もともと今朝は早朝から相泊に向かう予定で、16km先の相泊に行って温泉に浸かって帰ってくるとちょうど良いぐらいの時間に朝食を頼んである。こういう予定が組めるのは羅臼に泊まっているからで、しかも何をするにしても時間的には全然余裕なのだ。ならば相泊に向かおう。
5:30、海岸町「民宿おじろや」発。
海岸町から岬町、北浜と漁村を通り抜けた後、昆布浜の先は民家が途絶え、岩場の海岸に張り付いて先端部の相泊を目指す。
民家は無いものの番屋は断続し、まだ一般自動車の通行は少ないこの早朝、代わりに漁師さんの車らしい軽トラが活発に通り過ぎる。
大きな家が続いた羅臼までの海岸線を思い出す。改めてこの地の人々が豊かな海と共に暮らしていることを実感した。
道はさっき大雨だったようなぬらぬらの濡れ方だが、雲は低いもののそれほど重そうではなく、時には明るい光が見えないでもない。
それより、昨夜「羅臼から相泊まで3回天気が変わる」と聞いてはいたが、途中雨が降ったかと思うと止み、途中からは少し晴れて、雲の切れ間から山肌に直射日光が照りつけている箇所もあった。
日差しに照らされた緑の鮮やかさは、さすが知床としか言いようがない。ただ、そんな晴れはそう続かず、基本的には低い雲の下、時々顔に水滴を感じるぐらいの天気が最後まで続いた。
瀬石を過ぎると海岸には番屋が増え始め、海岸にも漁師さんの姿が目立ち始めた。
6:15、相泊着。
地図ではここで道が終わっていることになっている。実は道の終わりというのはそう見かけるものではなく、かならず幅や形態を変え、何かどこかへ続いてゆくものがあることが多いように思う。今回も道の終点の実態は、その先の草むらの中に地道が少し伸びて浜辺へと続いていた。浜辺の山陰へ続いていく先は見えないが、まだまだ先に続いていくようであり、番屋も見える。それは道と言えば道なのだろう。でも、この先はもう地元の漁師さんの生活領域だろう。
ちょっとぼうっとしていると、雨がまた降ってきた。次の行動に移らねば。
ほんの少し引き返し、6:30、相泊温泉着。
長い間噂には聞いていた、海岸際の無料露天温泉がこの相泊温泉だ。もうほんの少し南には、漁師さん個人所有の土地の海岸部、満潮時には海水に浸かってしまう程の海岸部に、やはり無料野天温泉「瀬急温泉」がある。豪快なロケーションと、近年は「北の国から」のドラマ中で純と唐十郎が入ったことで、こちらの方が有名だが、生憎繁忙期で今のところ一般公開はしていないとのこと。まあそうでなくてもこの素晴らしい温泉、どちらかに入れば満足である。
海岸の石場に降り、ブルーシート張りの小さな小屋を覗き込むと、男女別にベニヤで仕切られた2m四方ぐらいの小さな温泉と、やはりベニヤで作られた脱衣棚があった。なかなか堪らない雰囲気だ。先客は1名、大阪からの家族連れのお父さんとのこと。お湯が熱くて入れない、と悩んでいた。
私も足の先で湯加減を見ると、なるほどそのまま足を浸けられないぐらい熱い。だが、それはどうも身体が冷えていたためのようで、ちょっと足を入れては出したりしながら少しずつ身体全体を慣らすと、というよりすぐに全身で浸かれるようになった。慣れてしまうと、実はちょっとだけ熱めのほんとにいいお湯である。
湯船の中、適当な石を捜して身体を落ち着ける。2方はブルーシート、女風呂との仕切はベニヤだが、海側は全面的に開放されていて、ブルーシートの屋根の下からの眺めはなかなかいい。いや、素晴らしい。自分が使っているお湯と海面、そして水平線が水平に見え、何かこの海岸、いや、知床半島やオホーツク海と一つになった気分になれるのである。いやー、最高にいい気分である。
そんなわけで、上がってはみたものの名残惜しくて浸かり直したり、なかなか帰り難い。件の大阪の方もほぼ同時に入っていたが、その方がまた明るい方で話が弾み、結局30分も温泉を楽しんだ。温泉30分は当社比ではかなり長い方だ。
記 2008/10/2
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