寝るのは遅めでも、起きるのは4時でいつもと同じである。薄暗いうちから着替えを畳み、昨日買っておいたおにぎり2つで朝食にする。
地図を並べ替えてフロントバッグにしまう前に、今日の行程を確認しておこう。まず根釧台地、上尾幌、太田から別寒辺牛湿原には何が何でも訪れたい。その後太平洋岸の恵茶人にも是非行きたい。何といっても昨日のような天気が期待できるここ数日間、青い空と青い海を見ることができる絶好のチャンスなのである。
太平洋岸までどういう経路があるか、結論から言えば最短経路が何かと妥当だろう。この先リハビリ日は明後日の羅臼から岩尾別へ向かう日だけなのだ。その後は開陽台〜津別峠〜上紋峠と、4日連続内陸の行程が続く。選択に悩むなら、あまり疲れを貯めない方を選ぶべきだ。
となると、阿寒→釧路→上尾幌に決定だ。釧路から上尾幌はできれば海岸沿いの道道142へ向かいたいが、時間的には望み薄のような気がする。まあこれは釧路到着時刻で決めよう。
6:00、上阿寒「赤いベレー」発。
阿寒までは5kmほど、昨夜に引き続き阿寒川の谷間を下る。昨夜は暗闇の中で何と無く牧草地の景色が拡がっていたような気がしたが、道の近くは昨日見たとおり、もう少し遠くは北海道の谷間らしくそう広くない谷間の景色なのだった。
阿寒の町では、3年前道東二期林道訪問時に立ち寄った、町の南側のコンビニで朝の補給を行う。その間、町中で見かけた「阿寒釧路自転車道 全通」の看板がだんだん気になってきていた。1989年、就職して2年目の北海道ツーリングで、鶴居・弟子屈方面へ向かうのに釧路から入り込んだのがこの道だったが、なんだか路面状態があまり良くなかったような印象があり、しかもその日は雨、その上阿寒に到達することなくかなり手前の山花で鶴居へ向かう道道53に移ってしまい、印象が非常に薄い道だった。今回も横目に見た「阿寒釧路自転車道 全通」の看板の前を、何と無くそのまま通過してしまっていた。
しかし地図を見直すと、釧路までの国道240、道道332、道道54沿いのけっこういい場所を通っているではないか。しかも車道と併用区間は見当たらない。難があるとすればエスケープルートが無いことだが、こいつは良いかもしれない。自転車道の釧路川終端は町の北側、もしかしたらたねやんがFCYCLEカムイ会議室に書き込んでいたNobeさんのショップ「Cycle Garage PAZ」に近そうだ。時間があれば立ち寄ると楽しいだろう。
と思って阿寒の町中、看板の立っている細道入口から入り込んだ釧路阿寒自転車道、これが大当たりの良い道だった。
一応「道道834 釧路阿寒自転車道」ということになっていて路面や清掃、標識やフェンスなどの整備状態は良く、木の葉も溜まってはいるが通行に支障を来すほどではない。▼動画45秒
愛称「湿原の夢ロード」、看板を読むと他のサイクリングロードにありがちなパターンで、元勇別炭坑鉄道とのこと。なるほど、森の中、阿寒川沿い、そして牧草地の狭間をすり抜けて行く線形は、何とも穏やかで目立った勾配も無く、いかにも鉄道らしい。廃線転用自転車道特有の、何だか小型の機関車でも運転しているような気分になってくる。
ほどよく狭い緑の道。車などやって来るはずもなく、時々ジョギングの人とすれ違うだけだ。のんびりした雰囲気で、前向きに行程を稼ごうという気にならない。朝の空気、森、そして眩しい日差しと木漏れ陽の中をてれてれ流せるのが幸せだ。
釧路まで26km、こののんびりペースだと1時間半掛かってしまうかもしれないが、もうそんなことはどうでもよくなってしまう。▼動画29秒
森が切れると牧草地の中、自転車道の脇にダートの農道っぽい道がしばらく併走し、突如併用となってまた離れて自転車道は山裾の森へ。こんな景色の変化も、いかにもローカル線の車窓風景そのものだ。▼動画1分53秒
阿寒川沿いの森から、道は平野部に放り出されて再び草原の道となる。
まだ6時台だが、早くも高く昇りつつある太陽が、ほぼ正面から照りつけ始めた。途端に暑くなって目も眩むが、丁寧に植えられた並木が、ひょろひょろではあるが少しはその日差しを遮ってくれる箇所もある。
横を眺めると、輝くような明るい緑の牧草地に、その向こうはさっき離れていった丘陵の丘や、道道322の車、そして道沿いの建物が見え隠れしている。つくづくこっちで良かったと思う。ツーリングだから走っていて楽しくないと意味がないのだ。▼動画1分33秒
道道53とのアンダークロスを過ぎ、地図上は釧路の街がだいぶ近づいたようでもまだ辺りは牧草地だった。が、遠くに眺めていた車道周囲の営みが連続し始めてこちらにも近づき、牧草地の草原に農家とは異なる民家が現れるに至り、唐突に周囲が新興住宅地となった。
サイクリングロードの路面自体も、いつの間にか線がかっちりした都会の自転車道の表情となり、最後に唐突に住宅地の中で広めの車道に突き当たって途切れてしまった。GPS画面の道の配置を見ていると、その先にも何と無く鉄道の痕跡があるような気もするが、もうここから先は車道を行くべきだろう。いやー、良い道だった。
7:40、釧路着。千歳からここまで600km以上、久しく見ることがなかった都市の町中に、いきなり到着してしまったのであった。
釧路での使命はまずセイコーマートを捜して補給休憩、これだけなら余り変わり映えはしないが、Nobeさんのお店「Cycle Garage PAZ」を確認しないと。FCYCLEをチェックすると、何といまさっき渡ったばかり、100mも離れていない新釧路川の鶴見橋袂とのことである。
「Cycle Garage PAZ」はすぐに見つかったが、生憎今日から休業とのこと。まあ開店遙か前の早朝、いきなり押し掛けて「すいません高地です、お会いするのは初めてですね、それではまた!」などという勝手で一方的な押しかけは、単なるお騒がせの迷惑なのである。
お店の場所はわかったので、次回は開店時間帯にお邪魔したい。
記 2008/9/23
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