紀伊半島Tour05#2-4
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(以上#3) |
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国道425へ足を進めてすぐに県道735が分岐。こちらもいずれ一度訪れたい山奥の道だ。もっと言うと、時間があればちょっと入ってみようとすら考えていた。走ってみればそんな余裕など全く無かったのが悲しい。
同じ国道425ではあるが、急に山奥に入っていったさっきの白谷トンネル越え区間とは違い、国道425の谷にはしばらく小さな集落が断続した。
谷間はそう広くないが、だらだら坂に比較的開けた道が続くので、そう奥に入ったという気がしない。こういうところはさっきまでの白谷越え区間とは根本的に異なる。おそらくこちらは、昔からの人の営みに根ざした昔からの道なのだろう。
集落の主役は春の花から新緑に移り変わりつつあり、畑も庭先も賑やかである。その集落や畑の間に森の区間が現れ、その森は奥へ進むと共に少しづつ長くなっていった。
小坪瀬の奥から激坂が断続し始めた。谷の奥まで比較的平坦、その後で一気に急斜面を登るのは、紀伊半島でよくみかけるパターンである。さっきも思ったが、山深さを印象づける丸みのある山の形故だろう。
例によって例の如く凄まじく上に行く手の道が見えた。
桜の花びらが風に舞う迫西川には15時ちょっと前着。急斜面に張り付いた空中の集落は、しかしながら道ばた、畑のあちこちに住む方の手仕事が感じられるような、美しい集落だった。
ふと見下ろすと、見下ろす谷底からは目がくらむような高さで、何となく舗装道路のはずの足下が心配になってしまう。よくこんな所に人が住み着いたものである。
ここから更に峠の牛廻越まで標高差約200m。谷底からかなり登ったはずの迫西川からでさえ高く見上げる尾根をくるっと回り込み、最後の1軒しか残っていない湯ノ野を通過して尾根の反対側へ出る。そこには手前の行く手のすとんと窪んだ牛廻越を稜線とで挟み、ど迫力で立ちはだかる牛廻山があった。しかし、例によって谷底を見るのも怖いほど空中の道なので、あまりきょろきょろしながら走るわけにはいかない。
次第に近づく牛廻越の窪みは、急斜面の岩場と急斜面に生える木々の姿が逞しく、ちょっと他では見かけない迫力のある峠だ。
15:35、牛廻越着。遠くから眺めると迫力があった牛廻越は、しかしながら近場では意外にさりげないのが何だかあっけない。時間もかなり押しているし、この先下りとは言え、さっきみたいな登り返しがあるとたちまち見込みより時間がかかってしまう。
おにぎりを口に入れて水で腹に押し込み、下り始めることにした。
空中の細道が、今度は順当に谷底近くに降りると、標高が下がって季節が進み、再び新緑の渓谷に下りが続いた。
午後の赤みを増した太陽光線で、新緑はますます輝くように明るい色を増している。その新緑に包まれた道を下っていると、「緑に染まる」という単語が自然に頭に浮かぶ。
だいぶ長い間下り続けて農村集落が始まり、最後は唐突に小又川トンネルに。
その出口が国道371の合流点だった。この時点で16:20過ぎ。
あとは一目散に下流へ下るだけである。合流点をそのまま通過して下流方面へ向かうと、意外にもまだ下りが続く。それもそのはず、谷は拡がったが、まだ標高400m強なのだ。
次第に景色が赤くなる谷間に、下り道が続く。この時間、気分的にも登り返さない方が有り難い。ようやく現れた国道看板の「田辺」の文字を眺めながら、ひたすら次の分岐の栃谷へ向けて下り続けた。その甲斐あって、17:00少し前に栃谷まであと5分ぐらいの龍神村役場前を通過。一応さっき決めた予定にぎりぎりで乗っていると言える。このまま頑張れば、あと2時間以内には田辺には着けるだろう。
役場前を通過する時、バスの停留所と17:10の文字が見えた。
バス停を通過して200mほど過ぎる間に、「あの停留所は紀伊田辺駅行きではないのか」という疑問がふと頭に浮かんだ。この先、田辺まで最後の虎ヶ峰峠はたかだか標高差200m強だが、下りでアップダウンか通行止めがあるとけっこうしんどい。峠道の入口で突如「崩落通行止」の標識が出ていないとも限らないのである。
とりあえずバスの行き先だけ確認しても悪くない。いざとなったら輪行時間は10分あれば余裕である。
戻ってバス停の看板を見ると、果たして「田辺行」だった。そうなると、驚くほど自動的に身体が輪行作業を始めてしまうのである。等ととぼけている内に、あれよあれよという間に輪行作業が完了。すぐにマイクロバスがやってきた。
自転車を持ち込もうとした私に、バスの運ちゃんが「南部経由の大回りですよ」と言った。紀伊田辺駅着は19時前とのこと。むむむ。走った方が早いかも。でもまあ、いきなり地名を言われても、土地勘が無いのでどう大回りかさっぱりわからないのである。
バスの中からきょろきょろしながら、地名と周囲の風景を地図と照合する。時々行き止まりの集落に立ち寄りながら、乗客が一人しかいないバスは国道425の細道を粛々と下って行く。途中の南部川村に抜ける切目辻トンネルでは、狭いトンネルから出てくる車を待って、バスがトンネルに入っていった。またいつか訪れてみたい細道と農村風景が次々現れ、山間の赤い風景が次第に開けた平野の風景になり、薄暗くなってきた南部の駅前を経由、紀伊田辺駅着は18:40。早めで良かったが、やはり走った方が早かったかも。
今夜の宿、扇ヶ浜YHも供食が無い。ここが供食が無いのはだいぶ前からとのこと。YH自体は、昔ながらのシンプルな設備ながらなかなか落ち着けるYHだ。
記 2005.5/6