紀伊半島Tour05
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熊野市→(県道34・761)七色ダム→(国道169)大里トンネル |
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いつも通り5時にちゃんと目が覚めて、いつものように落ち着いてだらだらしないで準備すると、ちゃんといつものように6時過ぎに宿を出発できるのである。それでもコンビニが遠くにあったりすると、たちまちコンビニ発が20分ぐらいになってしまう。更に道ばたでメールチェックなどしてしまい、あっと言う間に6時半になってしまった。
この時間にしてすでに空気が生暖かい。ほわんと明るいオレンジ色の空に、今日も暑くなるのだろうと思った。
熊野市の町外れから始まった田圃では、今が田植えの真っ最中のようだ。ある田圃には糸みたいな稲がひょろひょろと植わっていて、ある田圃は泥水がたぷたぷに満水状態である。
宇井から谷間が狭くなってぐいぐいっと10%級が少し続く。汗が噴き出して上着を脱ぐ必要を感じさせる辺りで、再び瀬戸の集落が拡がった。
棚田や農家は野積みの石垣で水平面が作られている。苔生した石垣の間には所々小さな草花が咲いていて、いかにも手積みらしい不揃いな石垣と共に、生命とか田圃のエネルギーみたいな力強さが感じられる。
その間を、ほぼ直登状態で県道34の細道は登ってゆく。直登とはいえ、集落の中は斜度は緩く、きょろきょろ周囲の風景や農家の庭先を見物しながら進むことができる。
熊野市から続いた農村地帯は瀬戸で終わり、集落の上手から杉林と短いつづら折り返しで新大峪トンネルへの峠道が始まった。
狭い谷底に杉や雑木林の森がしばらく続いた。途中では、新大峪トンネルより更に200mぐらい登った位置で、トンネルを抜ける旧道が分岐してゆく。その旧道は細道ながら、普通に車が通っている跡が認められる。ううむ、たかだか200m登れば旧道トンネルを抜けられるのだ。
でもさっき出発時にもたついて時間を食ってしまった。この後、今日のメインイベントはボリュームが読めないくねくね細道の国道425である。それにこの辺りの旧道トンネルは廃道化していることが多いのである。旧道の車の跡は何だか大型車っぽいので、ひょっとしたら林業関係の車が途中まで登っているだけかもしれない。
などとうじうじ考えていると、間もなく地図通りに道が拡がって、7:55、新大峪トンネル着。
トンネルの向こう側には、独特の力強さを感じさせる、丸みを帯びた熊野の山々が拡がっていた。周囲には1000mの山なんて無いのだが、何か海側とは明らかに違う山の空気に少し緊張する。
トンネル出口の脇には、「公園」と称する狭い平場にベンチが置かれていた。これだけで「公園」は虫が良いんじゃないの、と一瞬思うが、ベンチの横には湧き水の泉が設けられていた。ここぞとばかりに飛びついて、朝YHで半分ぐらい入れてきた水を全部交換する。
トンネルのすぐ先で旧道に合流。細道で森の中をくねくね下ってゆくと、杉林の下の方に長原の集落と水が張られた田圃が透けて見えてきた。
そのまま一気に周囲が開け、田圃の中を進み、ほんの少し太くなって分岐する道と更に細くなってまっすぐ集落の中へ進む道を、地図で集落の方を選ぶ。山間の平場にはさっきと同じく野積み石垣が印象的な集落が続いた。
途中で少し道を間違ったのが怪我の功名で、湾曲する北山川と、巨大に聳える七色ダムを少し眺めることができた。
あのダムの上を渡る国道169は3年前に通っている。今回もその国道169の、あの七色ダムから先を遡るのだ。
七色ダムから国道169に合流、しばらくダムに堰き止められた北山川の幅が拡がっただけの七色貯水池に沿って進む。
基本的に水と山の緑と道しか無く、道の交通量も非常に少ない場所だが、そのどろんと緑色の湖水に浮かんだ釣り人の船が、景色の中で人気を感じさせてくれる。
七色貯水池の脇道からトンネルを抜け、向こうの谷間に集落が拡がると桃崎である。ここで、国道169は国道309と合流し、「熊野街道」として道幅も交通量もが2倍以上になって北上を始める。
道の番号は変わらないが、要するに全然別の道になってしまうのだ。ところが、周囲の入り組んだ狭い谷間にはさっきの七色貯水池がぐるっと回り込んで続いているので、相変わらず山と緑色の水面と道の景色が続くことになる。この辺はちょっとややこしい。
記 2005.5/6