15:20、本谷沢発。
川原近くの森に、しばらく乗って少し降りて押したり担いだり、と言う程度の下りが続く。周囲の密林は細かい広葉樹と高い下草で、両脇と上から低木が道に迫るように覆い被さる。
そろそろ乗れると思って乗車で進んでいると、倒れかけた木が道の前方を塞いでいる。その木の幹に、大きく深い熊の爪痕を見つけ、まだまだ油断できないとも思う。
道は時々森を抜け、川原に近い草原や、川原際に立ち上がる岩の上を通る。下草は時々頭上を越えるほど高く、足下が全く見えないほど道に張り出して生い茂っている。
谷全体が際限無くどんどん下り続けるようで、道も下る一方だが、この期に及んでたちの悪い道が続く。全く一筋縄では行かない峠道である。
途中の大きなヒノキクラ沢では、案内の布きれの通り、迷うことなく道を辿ることができた。
しかし、その先にはまたもや質の悪い道が更にしばらく続いた。
いずれ国道291となって合流するはずの林道延伸工事現場、砂防ダム工事による通行止め、標高差約80mの担ぎ登りの後、16:30、ついに国道291に合流。いよいよ舗装区間に戻ってきたのだ。しかし、国道とは言え、まだその実態は単なるコンクリート舗装の林道である。
ブレーキが心配なほどのコンクリート舗装下り、橋桁の変わりに鉄板が敷かれているウォッシュボードの沢などを過ぎ、山肌をくねくねと川沿いに下り続ける道を進む。森の中の林道は、葉が透けた緑色の光が何とも気分がいい。その光にはもはやごまかせないほど、夕方の、それも秋の夕方の赤い色が混じっていた。
ふと振り返ると、登川の川原の向こう、上越国境の山々が、逆光の中に壁のように立ちはだかっている。ついさっきまで、あんな上の方にいたのだ、と思った。
森から畑と田圃の中に抜けると、いよいよ清水の集落だ。写真を撮っている間に先行してもらった子連れさんと清水の外れで合流、すっかり幅の広がった直線主体の国道291を、魚野川の谷めがけて一目散に下る。
杉林、真っ黄色になって重そうに頭を垂れた魚沼コシヒカリの田圃、農村がびゅんびゅん過ぎ、魚野川対岸の魚沼丘陵が見えはじめた。去年はあの上の魚沼スカイラインから、清水峠から下る日を想像しつつ、こっちの谷を眺めていたのである。
青空の中の雲は高いにも係わらず、魚野川の谷では雨が降ったばかりのようで、道が濡れていた。のみならず、まだ水がどぼどぼ落ちている樋もある。間違い無くついさっき、通り雨が降ったばかりなのだ。子連れさんと
「今日は最後まで1時間ずれたらだめな、ばっちりの天気でしたねー」
とおしゃべりしながら、漸近線のように国道17に近づく国道291をのんびりと進み、17:25、六日町着。
のんびり進んだだけあって、水上行きの終電車は3分後出発だった。いくら子連れさんでも、3分で輪行して切符を買ってホームに降りては不可能である。
大人しく次の越後湯沢直通ほくほく線で越後湯沢に向かい、子連れさんは上毛高原から後閑行きのバスに乗ることになった。
記 2004.9/20