びふか温泉→(国道40)初野
→(道道680)三股
→(美深歌登大規模林道)大曲
→(道道120)仁宇布
→(道道49)美深
→(国道275)下幌加内
→(町道・道道72・国道40)旭川
215km

江丹別峠

旭川

近文

幌加内

政和

添牛内

朱鞠内

母子里

美深峠

美深

仁宇布

大曲

函岳

 

加須美峠

初野

びふか温泉

北海道Tour02 #9
2002.8/17 びふか温泉→旭川


 今朝も周囲はかなり濃い霧に包まれている。霧の中が明るいようなので、走っているうちに何とかなるだろうとは思う。外に出て空を見上げると、なんだか霧の上に青い色が見えるような気もした。

 昨日の下方修正で、今日の行程も下方修正する必要があると思った。
 そもそも、美深→函岳往復→仁宇布→美深→幌加内→旭川の行程は、かなり無理がある。出発直前に加わった函岳往復は、ダートアップダウン10km×2。かなりのボリュームだろうと思われる。しかし、事前調査をすればするほど、オホーツクから利尻までの函岳の大展望と、これまた絶景の加須美峠からの尾根道アプローチ「馬の背」は、計画上絶対に外せない。そこで、仁宇布行きを外して函岳から直接美深へ向かうか、いっそ美深で行程を終えるかで悩んだ。
 結局、函岳から加須美峠へ戻った段階の時間でいろいろ可能性を探るという、かなりアバウトな結論になった。

 6:10、びふか温泉発。
 霧の中を走るうち、だんだん空の青は濃くなってきたのは良い傾向だが、一方で自転車やら腕に結露するぐらいに霧の密度は高い。雨具を着ようかどうか迷っているうち、美深大橋を渡って2本目、ツーリングマップルにも出ていた「加須美峠」の看板を確認。その通りに左に入る。

 初野の牧草地を山側に進むと、霧が晴れた。谷に入り、6:50、舗装区間終点にたどり着いた。
 いよいよ今回の最大の山場、道北スーパー林道こと「美深歌登大規模林道」である。ダートの入口には、「歌登62km 函岳27km 加須美峠17km」という「行くしかない」気持ちを盛り上げる看板と、「熊出没 注意してください」というシャレになってない看板が並んでいる。例によってダートの頼みの綱、熊除け鈴を取り出して、自転車に取り付ける。

 森の中のダートは、どっちかというと深めの砂利ではあったが、坂自体は昨日のピヤシリよりも緩く、砂利も浅い箇所を選んで何とか乗って行ける。
 沢に沿ったダートが、いつものようにつづら折れで高度を上げる道になり、ある程度登ったところで、長い直線の連続する緩いアップダウンが始まった。この辺の山は台地みたいな形のようで、ある程度登ったら、あとは緩いアップダウンが繰り返されるようだ。
 長い直線と緩いアップダウンがしばらく森の中に続く。両脇は森だが、頭上は道の上だけ開けている。直線の見通しの良さもあり、一種独特の明るい開けた表情がある。だらだらと少し登るとまただらだらと下り、一向に登った感じがしない。加須美峠は一応標高750mぐらいの峠なので確実に登っていかないといけないはずである。17kmという異常に長いアプローチの理由を理解した。

 麓から見えた雲なのか、途中からついにガスが出てきた。なかなか濃い霧だ。開けるはずの展望が全く利かない。静かな道をただ黙々と登るようになって間もなく、8:40、加須美峠に到着。
 峠に着くと、案の定函岳への道は霧の中だ。50m先も見えない。こうなったら函岳へ行っても展望は絶望的だろう。時間的にはまだ早い。歌登側は16kmのダート下りなので、1時間ぐらいで歌登側に降りることができれば10時ぐらい。大雑把に言って仁宇布11:00、美深12:00というストーリーが可能だろう。とすると、もしかしたら旭川まで走れるかもしれない。昨日みたいな始末の悪いずぶずぶ深砂利ダートのおそれはある。でも、こっちで行ってみよう。

 ちょっとおにぎりを食べてから、8:45、加須美峠発。
 背丈以上もある笹原の中の緩い下りを、霧の中へ下り始める。笹原の脇道には必ず「熊出没注意 筍取り危険」の看板が立っていた。ちょっと砂利が深くなったのもあって、鈴が聞こえてから熊が逃げやすいようにゆっくりと、それでもあまりゆっくりすぎても怖いので、まあ適当にブレーキを掛けたり緩めたりして下った。
 昨日ほどではないが、けっこう道が荒れている場所もある。ちょっと目を離して窪みに前輪がはまると、前輪が止まって投げ出されてしまいそうになる。なかなか気が抜けない。あまり急なカーブは無いが、霧が霧雨になって道を濡らしているのも走りにくい要因だった。

 延々と山の中の緩い下りが続いたあと、霧が薄くなった。谷に沿って川を渡り、今度はその川に沿った笹原の中の1本道になった。適度に木が生えた笹原は、道一杯まで笹が生えており、熊が本当に出そうで怖い。ただ、下りの斜度は更に緩くなり、やがて道も晴れて直線主体の道の線形は見渡しが良く、少しは安心できるようになってきた。

 更に延々と長い笹原の中の道が続いた後、唐突に舗装区間が現れたときはうれしかった。短い舗装区間があって、一度ダートに戻り、更に道道120の旧道と合流して再び舗装となった。そして9:50、大曲着。道道120号に牽牛橋の脇で合流。ついに道北スーパー林道の終点まで辿り着いた、と思った。
 全国のスーパー林道建設の経緯についてはいろいろと反対運動があったが、私の場合は、いろいろと連れられてツーリングに出かけるうち、気が付くと山深い絶景の長大コースに、かつての「スーパー林道」がけっこう多いのに気が付いた、と言う程度の問題意識だった。
 「自然破壊」「意味のない建設」というのが反対の大きな理由だったと思うが、この道北スーパー林道について言えば、あまり自然破壊にはなっていないように思える。また、年がら年中崩落が止まらない、と言う箇所もなかったように見られた。ただ、物好きのダート愛好者は別にして、あまり一般的な意味合いでの観光資源にはなっているかどうかはわからない。

 牽牛橋からすぐの天の川トンネル駐車場でちょっと休憩。けっこういいペースである。
 駐車場から見える川は、今までの林道に沿っていた徳志別川だ。2年前に道道120を通ったとき、なんて深い山奥から流れてくる川だ、と思っていた。そうか、あんなところを流れてくるのか。そう、あの時は道道120自体なんて山奥の道なんだ、と思っていたのだが、今回は逆に道道120に出てほっとしているのが何か面白い。

 とりあえず11時仁宇布、12時美深だと、旭川自走到着18時過ぎ、19:00の特急で札幌行き、というストーリーに乗ってくるはずだ。とにかく走ってみて、次は美深で考えよう、と思った。旭川まで向かうとなると、あまりぐずぐずしていられない。なにしろ仁宇布へ出発。

 国鉄美幸線の未成線トンネルを転用した天の川トンネルを抜け、フーレップ川に沿って遡る。道道120は道こそ広くて立派だが、走っているのはまるっきりオホーツクの山中で、特にこの天の川トンネルから仁宇布まで、20km以上の間、集落すらない。道路の両側には色々な高さの山、どこまでも続く森林が続く。
 だらだら登りで西尾峠を越え、少し下ると、山に囲まれた盆地に拡がる牧草地が現れた。仁宇布である。静かで緑が美しい集落だが、なにしろ美深まではもうほとんど下りだ。一気に行ってしまわないと。
 11:05、仁宇布通過。時間的にはこれだったらいける。にぎわうトロッコを横目に下り続ける。

 狭い谷間の下りが続き、11:45、美深着。下りだったので目論見よりも時間が稼げている。私にしちゃあ上出来だ。
 さあ、ここで旭川へ向かうかどうか決定だ。もともと走りたかった幌加内経由の国道275だ。行けるならぜひ行きたい。天気はちょっと雲っぽいぐらいの晴れにまで回復しており、悪くない状態だ。時間的に言うと、1年前の美深発はこれよりも1時間早かったが、朱鞠内、政和で合計1時間弱ぐらいの寄り道をしている。この時は旭川YH18:15着だった。休憩時間を入れても、今回もこれぐらいには着けるだろう。
 とすると、19:00の札幌行きには間に合う。万が一これに間に合わないと、21:20札幌着で21:58札幌発と、ほとんど余裕はないが、まあぎりぎり何とかなる。となれば、もう行くしかない。

 12:00、美深発。西側の谷に入り込み、しばらく山間の牧草地の中を幅の広目の道で抜ける。
 泉の外れ辺りから唐突に一直線の登りが始まり、美深峠まではだらだら直登が続いた。丘や山・谷間を、盛土やら切り通し・長い橋でダイナミックに直線で突っ切り、均等な勾配で登って行く。途中の何箇所かの橋では、例によって眼下から彼方の奥羽幌(?)の山々に続く、道路も鉄道も集落も無いエリアに拡がる、見渡す濃緑の大樹海が見事だった。
 風景自体は悪くないが、美深峠はそれ程標高差も無く、斜度は緩いはずなのに、一直線の長い登りが連続して、なかなかつらい道だ。まあそれでもそういつまでも峠道は続かず、峠を越えた後は母子里に降りる。

 山間にいきなり拡がるオアシスのような盆地、母子里の眠るように静かな牧草地は今日も相変わらずだ。ちょっと足を止めて辺りを見回すと、雲の合間でたまたま強くなっている陽差し、涼しい微風が夏らしく気持ちいい。道ばたの茂みからはキリギリスの声が、遠くの山の方からエゾゼミの合唱が聞こえてくる。

 母子里を過ぎると、朱鞠内湖の外周道路までしばらく登りが続く。朱鞠内湖は、確か昭和10年代だったかに強制労働で作られた、発電用の人造湖だ。10年ぐらい前までは立ち枯れの木々が独特の荒涼とした雰囲気を醸していたが、その立ち枯れの木々もすっかり朽ち果てたようで、今はもうすっかり普通の湖になった。
 湖外周の道路は、森の中や時々湖を眺める位置で、緩い小刻みのアップダウンを繰り返す、走りやすい道だ。湖の見える場所では、向こう岸からやはり奥羽幌の山々へと大樹海が続く風景が眺められるのが楽しい。

 朱鞠内湖の南岸から、国道は朱鞠内へと降りる。ちょうど右手に迫ってきた奥羽幌の山々、左の名寄盆地との境の山々に挟まれた谷に降りてきたことになる。13:15、朱鞠内着。国道の両側に商店が数軒、静かで小さな集落でちょっと休憩。

 美深峠から旭川市まで続く幌加内町は、ソバ生産量日本第一位の地として知られる。量的にどういう第一位かは忘れたが、確かダントツで1位じゃなかったかと思う。そんなわけで、朱鞠内から南下するに連れ、少しずつ標高を下げながら次第に広くなる谷には、やたらとソバ畑が目立つ。もともと北海道にはソバ畑が多いのだが、特に幌加内町では、牧草地以外の農地が、もうほとんどソバ畑であるような印象がある。夏のソバ畑の無数の小さな白い花は、蕎麦という身近なの食べ物の印象からは意外なほど美しい。

 大分下った政和辺りでは、それまでのそう広くない谷から放り出されるように、ソバ畑一杯の盆地が拡がる。多少傾きかけ、赤みを帯び始めた日差しに照らされ、目の前一杯に微妙で複雑な陰を描くソバ畑は、灰緑のビロードのようだ。
 この風景が楽しみだったのだ。畑を見渡す道路脇の丘でちょっと自転車を停める。遠くでエゾゼミの声が聞こえ、涼しいくらいのそよ風に吹かれていると、いろいろ焦ってこっちの道に足を向けて、本当に良かったと思う。時間的に考えると、このままもう旭川へ行くしかない。旭川に着いても多分6時過ぎかそれぐらい、風呂に入る時間もラーメンを食べる時間も無いだろう。でも、また今回もこの風景に会えた、それで満足だった。

 何度かの段丘を下りながら、盆地一杯のソバ畑が続いた。やがて今までより多少大きな集落が現れ、それが小さな町になった。15:40、幌加内着。広い直線の道に低い建物が張り付く、まるで西部劇に出てくる町を連想させるような町には、蕎麦屋が何軒かあり、余裕があったら絶対立ち寄るのに、と思わされた。でも今日は何よりも旭川に向かわないといけない。
 ちょっと水の補給だけして、15:50、幌加内発。

 幌加内の盆地の外れから国道275を外れ、旭川への江丹別峠へ向かう。だらだらの短い峠ではあるが、そろそろ売り切れてきた足にはやっぱりつらい。木々の中を多少埃っぽい道が淡々と登る峠道だったが、木々の隙間に時々見える、幌加内方面の午後の陽差しに照らされた盆地一杯の蕎麦畑が、楽しみだった。

 「旭川市」の標識を見ながらぐるっと」峠を回り込んで、下りが始まった。とうとう旭川市だ。
 こっち側でも、峠道の木々の間から、山間の丘陵一面に拡がった蕎麦畑の風景がちらっと見える。途中で見えた看板によると、ソバの試験栽培地とのこと。牧草地みたいな広がりも別の谷に見えた。いつかはこの辺で1日ぐらい過ごしても、退屈しないだろうと思う。

 夕日に照らされた江丹別の蕎麦畑の風景の中を、だらだら下り道が続く。再び谷が狭くなり、道道72に入って小さな丘を越えた途端、急に目の前に夕方の赤い光に包まれて紫色の影になった市街地が視界一杯に拡がった。今まで山奥の風景だったのに。旭川、いや、近文の街並みと言う方が正しいのか。奥の方には森になっている丘がある。自営隊近文演習場だ。

 18:05、旭川着。
 この時間だと風呂は絶望的なので、駅地下のラーメン屋「蜂屋」に狙いを定め、速攻で輪行作業を終えた。ところが列に並んで切符を買うのに時間を食い、乗車準備完了が18:45。駅員さんに聞くと、「蜂屋」は空いている場合で注文から出てくるまで約10分。5分で食べてホームに駆け上がって19:00の列車に乗車するストーリーはちょっと危険すぎる。

 結局ラーメンもあきらめることになった。

 風呂に入れなかったので、超裏技「列車WC内水タオル身体拭き」で、何とか必要最低限程度に汗を拭く。こういう時(ってあんまり無いけど)にオムツ換えがある広いWCはありがたい。発車と同時に全力で加速し、駅間でほとんど速度を下げず、駅直前で非常ブレーキのような急ブレーキで停車する、特急スーパーホワイトアローの男らしい走りっぷりに惚れ惚れしつつ、札幌着は20:20。

 札幌ではすがたに・こあき夫妻のお見送りを受けた
 3年前の朝、札幌を出発する時のおなじみのメンバーが、また札幌駅のホームに揃っているのがなんともうれしい。おまけにその2人が6月末に結婚されて、ご夫婦で見えている。思い出が今日につながっている、私とつながっている人たちが旅先にいる。FCYCLEって本当に素敵だと思った。
 寒い札幌の夜にわざわざ見送りに来てくれたすがたにさんは、風邪を押して来てくれたようで、軽い咳が止まらない。「高地さんもがんばらばないとねえ」というこあきさんの鋭い突っ込みには、ただ「そうですねえ」というしかない。こあきさんは、突っ込ませると天才的な鋭い突っ込みを連発するので、なるべく敵に回したくない。5月の東京飲み会に乱入してくれたときなんか、伝説的な突っ込みを連発していた。
 お2人にクラシックとおつまみを頂き、急行はまなすの寝台に乗り込んで、札幌を出発。

 翌朝は青森の手前、蟹田辺りで目が覚めた。ぼうっとしながら眺める夜明けの車窓風景は、もう間違いなく内地のものである。青森到着直前のおなじみの電子客車オルゴールとともに、今年も私の夏が終わった。

記 2002.8/24

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Last Update 2003.12/31
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