浜頓別→(国道275号)中頓別
→(道道120号)仁宇布
→(道道49号)幌内
→(道道60号)下川
→(国道239号)西興部
→(道道137号)札久留
→(道道61号)サクルー原野
202km

サクルー原野

札久留

西興部

下川

幌内

仁宇布

大曲

歌登

中頓別

浜頓別

北海道Tour00 #3
2000.8/12 浜頓別→サクルー原野


 5時頃、目が覚めて見上げた空にうっすらと水色が見えた。いろいろと用意をして再び外を見ると、ばっちり陽が射している。かなりの晴天のようだ。

 8:15、トシカの宿を出発。まるでクーラーの吹出口の前のように涼しい浜頓別の町を後に、針葉樹林の中を抜ける国道275号を中頓別へ向かう。

 しばらく高い針葉樹林に両側を囲まれてわずかな登りが続いたが、すぐに林が切れ、牧草地の丘がうねる光景が目の前に拡がった。大きく波打つ丘の草地の輝く黄緑と、木々の濃い緑が層になって続いているのが見事だ。これが浜頓別の牧草地なのか。オホーツク沿岸の国道からは想像できない、素晴らしい風景だ。
 道路は大きくカーブして、周囲の丘を見渡しながら丘陵地をダイナミックに下り始めた。下った先の、中頓別方面の高い山々、谷の農地が朝の太陽に照らされて正面に見える。
 もう我慢できなくなって、88高地を目指すことにした。

 88高地は牧草地の中の高台で、昨日見たトシカの宿のチャリダー友の会に初心者の条件の一つとして、「88高地に自転車で行ったことがあること」というのがあったのだ。のみならず、やはり宿にあったIWASHIさんのニューサイの文章でも、写真入りで紹介されていた。
 国道を逸れ、牧草地の中、舗装農道を進むと、すぐに周囲の風景は牧草地と広葉樹林だけになる。青い空、朝の光、涼しい空気の中、緑の丘や林がゆっくりと盛り上がって行く光景は、本当にたまらない。これが北海道ツーリングだ、と心から思った。
 やがて88高地に向かう農道に出たが、砂利が深めなので、荷物を積んだ私の自転車では登るのがつらい。つらいだけではなくいつものゴマフアブに包囲され(虫除けを持ってくるのを忘れていた)、進退窮まり、早々に退散してしまった。これも次回以降の課題にしようと思った。

 牧草地の丘陵から、緑に溢れる深い河岸段丘の谷に一気に下り、国道275に合流。9:45、中頓別着。ここから歌登、仁宇布と経由し、道道だけで下川へ向かう。今日のハイライトの道だ。

 低い山に囲まれた緩やかな丘陵の牧草地や、シラカバをはじめとする原生林の谷。一面の緑と青空に囲まれ、道道120号は登ったり下ったり、仁宇布まで延々と同じような風景が繰り返し続いた。
 同じような風景とはいえ、道北の山間部のちょっともの寂しく静かな風 景は全く飽きることがない。ゆっくりと波打つ丘に拡がる牧草地、点在する林、比較的狭い谷間ではあるものの何か得体の知れない静けさの漂う原生林。小さな雲が浮かぶ程度の青空の下、走れるペースで谷間の牧草地を登り、牧草地が原生林になって更に登って小さな分水嶺を越えると、また谷間の牧草地が現れた。
 目の前の緑の燃えさかる静かな風景を見ていると、どうしてもこの地方の冬の厳しさ・長さ、短い春・夏・秋、異常低温・ガス・天候不良を思い出す。この静かで穏やかで優しい表情も、厳しい気象の裏返しなのだ。
 風景は静かだが、風の音や川のせせらぎ、鳥の声やエゾゼミの蝉時雨など、音は絶え間ない。セミの他にも、道路際にはトンボや様々なチョウ、バッタやキリギリスなど、本当にたくさんの昆虫を見ることができた。

 延々と続く道道はもはやすべて舗装道路で、特に山間の区間は路側帯も広く、まるで高速道路のようだ。国道よりもよほど立派である。ふと、こんな道道もつい最近まではダートだったのかもしれない、と思った。道路は立派だが、やはりまだ新しい区間なのか、自動車がほとんど全く来ないのが走っていて気持ちよかった。いずれ旭川・紋別方面の交通の一部は、この谷間のルートにシフトしてしまうのかな、とも思った。
 牽牛橋・天の川トンネル・織姫橋なんていう、なんだか取って付けたような名前もあって、ますますこの道道が国道に昇格する日を思わせた。
 道路沿いには時々かなり荒れたコンクリート橋や、原生林の中にバラストが見える。牧草地の中を、低い築堤がよぎることも、道道がバラストの路盤をオーバークロスすることもある。建設が凍結された、国鉄美幸線の計画部分なのだろうと思った。7・8割方完成された工事が中断して何10年、と言った雰囲気で、そろそろ構造物が自然の中に飲み込まれつつあった。

 西尾峠を越え、目の前に盆地一杯の牧草地が拡がり、14:00、仁宇布着。かつて国鉄の赤字路線として有名だった美幸線の終着だ。かつての終着駅、と言うと特殊なイメージを持ってしまうが、なんとも静かな気持ちのいい盆地だ。道北もここまで来ると、もう周囲の山々はかなり高い。標高300m程度の仁宇布は美深からはけっこう標高差があるはずで、美幸線というのはなかなかの勾配路線だったのだな、と思う。
 少し休憩し、青空と白樺並木の向こうに続く道を、先を急ぐことにした。

 周囲の山が高くなった分、多少山深い雰囲気が増すが、基本的に今までと同じような風景の中を小さな峠を2つ超え、だらだらした下りを原生林・植林・牧草地と下ると、ソバ畑が現れた。ようやく名寄地方の谷に降りてきたのだ。16:15、下川着。
 ここから西興部までは去年通った国道だ。熱中症1歩手前で通った記憶と、今日の涼しい夕方の風景では、またすこし風景の表情というか、印象は異なる。

 17:50、西興部発。
 瀬戸牛峠を越えた時点で18:00すぎ。あと20km足らずの道のりだ。気持ち的にやや落ち着いて、夕暮れの牧草地の中をのんびり走る。

 19:05、サクルー荘着。いかにも道北の何気ない農村風景の中の、静かないい宿だ。宿主の早織さんは女性の名前のような名字だが、巨漢である。離農を改造した昔ながらの宿は9年前と全く変わっていない。滝上のこの辺の静かな風景を味わいに、近くへ言ったら是非訪れたい宿である。

記 2000.8/12

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Last Update 2004.1/1
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