北海道Tour25夏#4-3
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札友内→津別峠
(以上#4-1)
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駐車場で自転車を降りると、Carradiseサドルバッグが無くなっているではないか。無いぞ、本当に無い。
しまった、落としたんだ。すぐ来た道を戻り始める。
津別市街、豊里、美都と、道端に気を付けながら脚を進めても見つからない。あんなもん後ろにしか放り出されないはずだし、道に落っこちてたらすぐ判るはずだ。それが全然、全く見当たらないのだ。
向こうからやって来る車を停めては、鞄が路上か道端に無かったかどうか聞いてはみた。しかし、誰も見かけなかったとのこと。停まってくださった方は地元の方の他、レンタカーで旅行中の方。外国の方が多かったのには、改めて道内旅行者の変化を感じさせられた。
それどころじゃない。Carradiseサドルバッグに入っているのは工具全部、2本あるインフレータの1本、予備チューブとタイヤと電源系、そして携行食とアルファ米。このままだと、間違いなくこの先の旅程に影響がある。
大変な事態になってしまった。どうしよう。
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美都の中程まで進んだ辺りで、後ろから来た車が「乗ります?」と仰ってくださった。さっき車を停めさせていただいた、地元のお母さんと小さなお子さん2方だった。ここは有り難くお世話になることにした。
ワゴン車の後部に自転車がそのままだと入らない。以前、ワゴン車に前輪を外し逆さにして乗せたことがあった。でも、周囲は津別市街からのけっこう離れた、拡がる畑のど真ん中。今日も暑くなり始める時間に差し掛かり、森から蝉の声が聞こえる。至ってのんびり静かである。こんなところで誰も自転車なんて盗らないであろうことが確信できたので、道端のちょっとした草地に自転車を置き、待っていて貰うことにした。鍵を掛けてバッグを外し、2号車、少しだから待っててね。
ゆっくりゆっくり進めてくださる車から、道端、特に草むらや茂みを、ずっと注意深く探索した。しかし上里の一番奥、さっきポロを仕舞った津別峠の登り口まで戻っても、サドルバッグは見つけられなかった。
残りの希望は美都への帰り道、反対側の道端である。むしろ走ってきたのはこっち側だから、こっちで見つかる方が話としては自然だ。しかし、やはりサドルバッグは見あたらない。
所々で深い茂みの向こうが落ち込んでいた。あそこに落ちたんだったら、のぞき込んだって見つかるもんじゃないだろう。さっきまで一緒に旅していたサドルバッグの荷物が、誰にも発見されず、草むらの中で長い年月と共に風化してゆくのを想像し、胸が潰れるような気分になった。その度に、いや、下ってくる間そんなに路上でうろちょろ移動していないから、落ちたんだったら後ろ方向に落ちているはずだ、と思い直した。
「もしかしたら、誰か交番に届けてくださっているかもしれませんね」
と地元の方が慰めてくれた。その通りだ。町へ戻って交番に行って、無かったら届け出ておこう。
間違いなく、さっきマジックテープ緊結を横着した自分が悪い。走っている間に緩むなんて、かつて経験してわかりきっているはずだった。先々週奥只見湖で問題無かったので、油断してしまっていた。慢心と言ってもいい。もう2度と会えないかもしれない荷物、工具袋やCarradiseサドルバッグを思い出し、とても寂しくなった。
この後はどういう旅になるのかも考え始める必要がある。インフレータが1本残っているのでタイヤに空気は入れられる。しかし人里離れた場所でメカトラがあれば、一発アウトだ。一眼レフ系の電池も充電できなくなった。ということは、輪行主体で予定の宿を巡って走れるところがあれば地味に自転車に乗って、予約した飛行機で旭川空港から帰ることになるんだろうな。
車はいよいよ美都に近づいていた。自転車を置いてきた場所が見え始めた。もうこれだけ確認できたら、思い残すことは無い。
「もう少し下手も捜しますか」
とのお申し出に
「いや、もう十分です。交番に行ってきます」
と、確か道道588と国道240の交差点だったかな、と交番の場所を思い出していた。
草の影に、見覚えがある色が見えたような気がした。と思って40mぐらい通り過ぎてから。悔いが無いよう確認しておくため、戻っていただくようお願いした。
バックで車を戻していただく… と、あった!あった!!草の影に、忘れもしないCarradiseサドルバッグが!
自転車を置いた場所から100mも無い。そして鞄が見つかったのは、道端の草の陰だ。恐らく、道のど真ん中に落としてすぐ、どなたかが移しておいてくださったのだ。そう言えば、いかにも置かれたように行儀良く老いてあったようにも思える。
地元のお母さんとお子さんを見送ってから、荷物を自転車に括り付けた。今度は念入りに、ちゃんと3箇所で。嬉しいというより信じられない。
再び津別へ。やや興奮していることが自分でも感じられた。何しろ、とにかく荷物が自分の元に戻ってきて良かった。これでまた旅が続けられる。
今日はこの先、チミケップをを経由できるだろうか。まだ11時過ぎ。17時頃には生田原に自走到着可能な時間だ。何ならチミケップ湖は外して、直接北見へ向かってもいい。
でも、何だか興奮している。身体が全然落ち着かないように思える。こういう時に限って、こんな精神状態で焦って北見や留辺蘂へ向かうと、ろくな事が起こらないのかもしれない。
あまり悩まず、今日は安全策でもう輪行に切り替えることにした。
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津別へ戻ったら、まずバスターミナルへ。
役場と共に新装なったバスターミナルでは、しかし目当ての北見行きがしばらく無い。これだと生田原着が遅くなりそうだ。最悪それでも何とかはなるが、美幌から列車だとどうか。何かの時のために昨日調べたお昼の列車があったはずだ。スマホで確認すると、12:48遠軽行きで生田原14:08着。今日の出来事を考えると、早めに生田原に着く方がいい。理想的かもしれない。
というわけで、久しぶりに自走で美幌に向かうことにした。
11:35津別発。国道240で美幌へ。国道240は、初めて津別峠を訪れた1995年以来30年振りだ。途中1回、段丘を無駄に登って下ってがあったことと、やや車が多く、その後津別から道道588が天国のように思えたことだけは憶えている。
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追い風に乗り美幌まで18km。津別・美幌と言えば、北海道でも暑い網走の一番暑い土地だけあり、下ると共に国道上はどんどん暑く、いや、熱くなった。懸案の段丘は、美幌手前にあった。登り切った道端の自販機に脚を停め、冷たい飲み物で身体を冷やすと、汗がどばっと吹き出てきて驚いた。いやいや毎度の現象ではある。
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今思えば、津別川対岸の道道217の方が近道だったかもしれない。道道271もかつて通ったことがあり、悪い道じゃないことは分かっている。距離はどっこいどっこいか分岐移動を含むとこちらの方がちょっとだけ増えるが、国道240と比べて谷底の直線基調、途中に登りが無く、車も少なかったと思われる。
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12:10、美幌着。12:48の列車まで40分弱、輪行時間はたっぷりある。待合室は暑くても、こういう時に輪行の手間が少ないのはとてもいい。
記 2025/10/20
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