四国Tour23#9
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最終日。例え大雨で全輪行が決定していても4時起きは変わらない。昨夜からずっと、音がするぐらいの雨が降っている。雨の音を聞きながらのそのそと身体を動かしているうちに、外がゆっくり明るくなりはじめたようだ。
6時に宿主さんがいらっしゃった。実は同窓の大先輩、60数年前と40年前のお話しとお茶であっという間に出発前の時間が楽しく過ぎていった。
船の待合小屋に7時には着いておくため、ちょっと前に宿を出た。徒歩せいぜい3分だし幸い雨は弱くなっていたが粒は大きく、びしょ濡れという程でもない程度には濡れた。
7:15、矢ヶ浜発。客が乗り込んだらすぐ船が動き出すため、見送りに来ていただいた宿主さんとは船の窓の中から手を振ってお別れするしか無かったのが心残りだった。また今度は自転車で訪れよう。
雨の宇和海を、昨日回ってきた各港や戸島を逆回りに各駅停車し、ゆきかぜはぐんぐん脚を進めてゆく。陸地の道路を眺めていると、いかにその速度が速いかよくわかるのが凄い。
8:10、宇和島南港着。1台待っていたタクシーは他のお客さんに取られてしまった。宇和島駅発は8:41、「岬の民宿 なにわ」の宿主さんは歩いても10分ぐらいだよ、大丈夫と仰っていたが、この際電話でタクシーを呼ぶ。この期に及んでもうタク輪には何のハードルも無い。座席が濡れないよう、盛運汽船の事務所で新聞紙を頂いておく。
8:25、宇和島着。改札すぐ向こうの1番線に、もうN2000系の特急宇和海8が着いている。
今回の四国が何故宇和島終着なのか。決まってる、松山まで特急宇和海に全区間乗るためだ。2017年にはやはり狙い定めて2000系宇和海に乗り、もう次回はなんちゃって振子車の2600系になってるんだろうな等と考えていた。しかし四国の厳しい線形にコストダウンのためのなんちゃって振子は歯が立たず、翌年には再び本格的な制御付自然振子機構を備えた2700系が登場した。そして今日までに、特急宇和海の2000系は同系列後期形のN2000系に替わっていたのだ。
特急宇和海は改札に近い最後尾車両が自由席。しかも改札のすぐ向こうに自転車を置きやすい最後尾が空いているのが見える。松山まで座席裏に自転車を置けるじゃあないか。早く乗らねば。
焦って切符を自販機で買うのに少々難儀して、折角買った切符をフロントバッグの中で1回見失ったりもして、対応した駅員さんが落ちついていて「バッグの奥はどうですか」とアドバイスしてくださり、見つかって本当に良かった。
焦って乗った自由席の最後尾は、しかし振子式車両特有の下部が狭い車体断面のため、座席後ろには自転車は全部入らない。これなら焦ることも無かったな。まあ、仕方無く扉の脇に固定しておく。N2000系は出入口が広くて助かる。
8:41宇和島発。さあ始まるぞーと期待しまくって発車した特急宇和海、序盤の一見最高速度が遅い区間の宇和島→八幡浜間からもう速い速い。昨日バスで通った国道56に並行しつつ付かず離れずのアップダウンをものともせず、急曲線でも一切減速すること無く「なんでここでこのスピードなの?」と思うぐらいの速度で、カーブの内側に車体が倒れるんじゃあないかと思う位に車体を傾け、どこもかしこも突っ走る。山深いローカル線でよくある、森の木が覆いかかる狭いカーブで車体を目一杯傾けるもんだから、木の枝と葉が車体に擦れてその度ざーっというのも凄い。
そして大洲から先の内子新線区間。
以前撮った動画(リンク先ページの下の方参照)
通りだ。内子駅発車後の急加速、気動車なので速度が上がる程加速が良い登り区間、そして更に下りに任せてスピード出しっぱなしが続く伊予市までの下り区間。その間制御付振子動作のため座っている乗車感覚は何も変わらないまま車窓風景が上へ下へ動き、有難味を更に増している。最後の伊予市松山間は平地に降りてフルスピードでぶっ飛ばすし、松山到着直前の運転停車もここならではの縦列停車(しかも特急同士)のせいと思えば十二分に楽しむべき要素だ。最後まで密度が濃く、期待に違わぬ見事な熱い走りなのだった。
大きな満足感の後で大雨の道後温泉に行くのは面倒な気がして、タクシーで松山空港に直行することに。
記 2023/6/17