北海道Tour23#10
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10:55、十和里着。見覚えのある交差点を左へ曲がり、いよいよ本日のハイライト、岩尾内湖区間だ。
すぐに年期が入って黒ずんだコンクリートのダムが立ちはだかるように現れた。2017年以来6年振りの訪問なので、やや緊張する。壁みたいに立ちはだかっている佇まい、その脇の岩場に貼り付いてダムへ登ってゆく道を見上げ、こちらからの訪問だと心が折れそうになることを改めて思い出す。しかし、登ってしまえばそれなりに登れてしまうのも毎度の事だというのもわかっている。まあとにかく、今回も標高差60mの7%へ。
ゆっくりゆっくりえっちらおっちら登る間に、いつものようにやはり汗だくになった。そして登り切ると、懐かしい岩尾内湖がいつものように拡がった。いや、拡がりはいつも通りでも、今日の岩尾内湖は奥まで空気が澄んでいる。もうしばらく、雨が降るような心配は無いことが確信できた。
岩尾内大橋の真ん中で岩尾内湖を見渡し、対岸へ渡ると湖岸アップダウン区間である。管理事務所を横目に眺めてみると、いつも取り付く島が無い玄関が、今日は開いている。中に入れるようだ、というより入っても良いよ、というような友好的な雰囲気が目新しい。6年振りの訪問だし、こういう表情が伺えたことが無い施設なので、何の気無しに少し立ち寄ってみることにした。
何かを期待していた訳じゃない。初めて訪れた1989年から、ここは屋外の水栓すら設けられていない。ツーリストにとって絶望的に事務的な事務所である、と毎回思っていた。しかし、事務所が事務的なのは当たり前のことだし、国土交通省様の建物は、税金を投入して造っているのだ。一介のツーリストが、何かダム管理業務以外の何かを希望するような余地は無い。納税者ならそんなことは当然承知している。
等と毎回皮肉っぽく絶望して通り過ぎるのに毎回とりあえず様子を伺ってみるのは、何か有り難いもので次回何か少しでも旅に役立つようなものが見つかるといいな、と思っているからである。何も温浴施設があったらいいなとか観覧車が欲しいとか、そういうことを言っている訳じゃないのだ。
しかし1989年以来、通過する度毎回期待を裏切られてきた事務所の中に、何と!今回は自販機を発見できた!ここで水を飲めないことを、長い間大変不満に思っていたのが、34年目にして遂に解決できたことになる。画期的な大発見と言っていい。
上機嫌で水をボトルに満タンに入れて出発。すぐに路上のど真ん中に、バリケードとガードマンの方が登場。手を振って停められ、この先の湖岸区間が、何と通行止めとのことを説明された。
私が向かう茂尻方面へは、一旦さっきの十和里まで下り、逆方向の朝日へ降りてから登り返さないといけない。そちら方面が通れるのかはわからないとのこと。気軽に言ってくれるね。それならそれで十和里か坂の下に何か掲示しとけよとも思うものの、原因が昨夜の嵐ならそんなのまだ間に合わないということも理解できる。
茂尻方面へ、岩尾内湖を経由せず朝日から登る道は、以前一度通ったことはある。道として何か問題があるわけじゃない。通って楽しいのはこちらの岩尾内湖経由の道道70・道道101なので、毎回こちらを経由しているのだ。
何はともあれ、11:25、問答無用で折り返しとなったのだった。時間的にはまだ遅れているという訳じゃないものの、もう早出貯金は完全に無くなった。とにかく引き返そう。急ぎすぎて焦って転倒することだけは避けねば。こういう時こそ落ちついて、急がば回れだ。
11:35、再び十和里を通過、単純に行って戻って40分ロスしたことになる。痛い。いや、まだ午前中、まだ大丈夫。
ダムから開けた谷間を朝日へ、一方的な緩い下り基調をだだっと下ってゆく。こういう下りは嫌いじゃないんだが、地形図だと近くに思える朝日がなかなか近づかない。下りながら時間が過ぎてゆく。いや、とにかく焦ってはいけない。
11:55、朝日着。市街半ばの分岐から看板に従い、茂尻方面へ。再び登り基調に替わった道を、ちょっと焦りつつ、しかしやっと再び脚を進めている気になって、谷閧フ奥へしずしずと進んでゆく。やや低い雲が空を覆い曇り始めてきたものの、天気はまだ何の問題も無さそうだ。谷閧フ空間はこぢんまりと至ってのんびり静かな風景だ。一度は通っているはずなのに、風景にさっぱり記憶が無い。しかし一度通っている道だ。あまり極端に悪い印象も無いので、そんなにあやしいような道じゃあないのだ。多分。とりあえず安心して粛々と前へ進もう。
分岐から10分弱ぐらい、南朝日まで走ってみたところで、向こうから車が何台か、何故か続けてやって来るのに気が付いた。茂尻方面から下ってくる車だ。それが、明らかに過去のこの道の訪問の印象より多い。しかも続けて何台か続けてである。
最初は単に休みなので車が多いだけなのかもしれないと思っていた。しかし、突如考えが浮かんだ。
こちらから向かった車が、茂尻の先於鬼登峠かどこかで引き返してるんじゃあないのか。
もしそうなら、このまま進むと遅かれ早かれ折り返しになる。普段なら考えすぎだと思うが、今日はそういう可能性が有り得る。現に岩尾内湖岸で即席みたいな通行止めで引き返す羽目になっているし、さっき道道49で路上の倒木を見たばかりだし。於鬼登峠は道道49に負けず劣らず山深い。有り得るという以上の可能性を考えるのが自然かもしれない。
そうなってから折り返すとどういうことになるのか。士別へ降り、旭川へは国道40を使うしかない。いや、士別へ行っちゃったらもう大型車の多い国道40なんか走らずに輪行したい。しかし宗谷本線の近況を思い出すに付け、士別駅にさえ着けばあまり待たずに旭川へ向かう列車が来るという期待はできない。というより、今から朝日に戻って何とか士別へ辿りついても、午後一杯宗谷本線に列車が無くて美瑛到着が遅れ、夕食時刻に間に合わなくても不思議じゃないと思う。
いや、今が夕食時刻に間に合わせる最後のチャンスかもしれない。突然不安にかられた。
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ということは、朝日からまたタク輪か何かで一刻も早く士別駅に向かうべきなのかもしれない。そもそも士別から宗谷本線で輪行がちゃんと繋がるのかどうかが先だ。というわけで、まずは士別から輪行する場合の時刻を調べてみると、士別13:56→宗谷本線快速なよろ→14:59旭川15:33→富良野線各停→1606美瑛という、比較的穏当な時刻と乗り継ぎで列車が繋がった。この段階でまだ朝日→士別のバスは調べていない。あるかどうかわからないし、朝日へ行きさえすれば、最悪士別から呼んででもタク輪が可能だと思ったからだ。
とりあえず可能性が繋がった。というより、これが今一番確かな可能性であるようにすら思えたので、朝日へ引き返すことにした。朝日から士別までの輪行については、何か問題があると思っていなかった。全く調べていないのに。
12:15、朝日着。町中を自転車で走っていた夏休みの高校生っぽい少年にバス待合所の場所を聞き、バス待合所で時刻を確認してみた。12:40に士別駅方面へのバスがあるではないか。輪行時間25分。自転車を輪行して、荷物パッキングまでこなした過去最短の時間だ。でも、今回はバス内でバッグをまとめることが可能かもしれない。それなら作業は輪行だけになるから、無駄の無い最高のタイミングとも言える。じゃ、これでやってみましょう!
記 2024/2/3
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