北海道Tour19#7
2019/8/14(水)中川→浜鬼志別-1

中川→上問寒 (以上#7-1)
(以下#7-2) →豊幌 (以上#7-2)
(以下#7-3) →有明 (以上#7-3)
(以下#7-4) →川尻 (以上#7-4)
(以下#7-5) →丸山 (以上#7-5)
(以下#7-6) →浜鬼志別  150km  RYDE WITH GPS

A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路
赤は本日の経路 濃い灰色は既済経路と航路

 空が明るくなってきた。薄い雲が空に拡がっていて、昨日の夕方同様雲の隙間に青空が出ている。
 天気予報は12時まで晴れ。猿払村で15時の桝から後が曇りとなっているものの、行程上はおろか道北全域に 雨マークは全く無い。太陽はまだ雲に隠れているため辺りに陽差し的な明るさは無いものの、好調の波に乗ってきたぜ!と期待に満ちた夜明けである。

 ホテルの軒下から自転車をエントランスの庇下に運び、荷物を付けて熊鈴を2つ付ける。平地の山裾なのに熊鈴が必要なところが、さすがの道北まっただ中だ。日焼け止めを掌でべたべた塗ったくり、ムシペールを身体中に直吹きして、仕上は自販機缶コーヒー。今朝も元気に出発だ。ちょうど雲もどんどん切れ始めていた。

 5:50、中川発。
 珍しくセイコーマートのある町中を通らず、今まで通ったことが無い宗谷本線裏手の道でパスしてみた。どうせこの時間はまだ商店がことごとく営業開始前だし、こっちは緑が多くで気分がいい。青空の出発、これが夏の北海道だ。

 町の北側で道道583に復帰。昨日南下方向で向かい風だった道を、今朝は北上方向で問寒別を目指す。有り難いことに風向きも強さも昨日と変わらず、昨日苦労した分今朝は絶好調の追い風アシストだ。

北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道中川郡中川町歌内 道道583 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 途中で天塩川土手の細道へ寄り道してみた。昨日、曲がりくねる天塩川に沿った、堤防上の自転車道的な道が道道583と所々で交差離合しているのに目を付けていたのだ。

北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道中川郡中川町歌内 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 道道583から離れて大きくカーブしてゆく土手の道。空間の上半分は電柱が無いため完全に開けていて、土手であることで右側の牧草地、左側の河岸広葉樹林を見下ろしつつ見渡す位置にある。

 圧倒的な開放感が新鮮だ。開放感というより、自由な気分と言った方が適切かもしれない。この道、過去何度か道道588を通った時には意識したことが無かったものの、最近舗装されたというわけでもなさそうではある。でも天塩川の向こう側にも、堤防外側の牧草地にやや大きな線形の細道がに国道40から歌内大橋へ続いている。この周辺にはこういう不思議な雰囲気の細道が、いくつかあるのかもしれない。

 昨日道道583から写真を撮った牧場が、反対側から見えた。道道583を経由するより各駅停車的に回り道になるものの、まだ6時台だしどうせ今日も計画距離は150km未満である。こんな道を通れるなら、いくらでも回り道したい。こういう余裕が旅の気分や印象を変えてくれるのだ、等と気分はうきうきである。

北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道中川郡中川町歌内 道道583 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 歌内からは少しだけ山間側、昨日越えた小さい丘を今日も越えてゆく。

 夕陽に照らされ青空とともに鮮やかだったソバ畑は、今朝は陽差しが翳ってやや地味な印象だ。

北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道中川郡中川町中川町歌内 道道583 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道天塩郡幌延町問寒別 道道583 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 問寒別から上問寒への谷間では、昨日北側の道を通ったので、今朝は過去何度か訪れている西側の道、中川から同じ名前で続く道道583へ。

 山裾に近い位置で地形なりに適度に曲がっていた北側の細道と違い、こちらは真っ平で適度な広さの谷間の中に一直線に道が続いてゆく。低山に囲まれ開けた牧草地、十分以上にのんびりとした空間感覚が、標高の低さを感じさせる。
 これがもう少し北側、沼川から稚内では、周囲の起伏が更に少なくなって風景の抑揚が薄れてしまう。まあそれはそれで陸地先端部の実感が感じられはするのだが。

 雲が高くなり、空に青い部分が拡がり、辺りが陽差しに明るく照らされ始めた。道には朝の作業に向かうらしい軽トラが目立つ。昨日の北側の道より車は多いものの、農作業関係車両は気分的に歓迎だ。

 大型のバスが来た、と思ったら、幌延町スクールバスしらかば号と書いてあった。そう言えば今日はもう水曜日。道北も最北部のこの辺では、既に小中学校の2学期が始まっていることを思い出した。

 7:00、上問寒八線通過。ここから道道645と785、豊幌へ内陸の丘陵を北上してゆく。この道は、2012年に豊幌からここ上問寒へ南下してきている。その時はかなり薄暗い曇りだった。特に峠部分の豊幌トンネルを抜けてから上問寒まで、狭い谷間に深い森がひたすら続いた記憶がある。それ以上詳細は覚えていない。ひしひしと迫り来る森の圧迫に、何も考えないようにして必死に通り過ぎてしまったのだ。そしてその後、上問寒から先の知駒峠越えは、全区間濃霧と雨の中となった。私の道道645豊幌方面の印象は、この時の不安な圧迫感が基本となっていて、更に手持ち地形図ではこの道が未開通なのがその印象を盛り上げている。
 その他2017年には、上問寒から豊幌方面の道道785に分岐せず、道道645のまま南幌延へ向かった。この日は晴れだった。上問寒から豊幌まで道道645・785を北上するのは今日が始めてであり、満を持した絶好の晴天になりつつあるのだ。

 上問寒からしばらく開放的な山間の牧場地帯が続く。

 途中、雰囲気を見つつ牧草地の行き止まりへ往復してもいいかなと思っていたが、谷間を谷底から見渡している限り、そう広くない谷間にはあまり新たな展開も無さそうに思え、今回は先へ進むことにした。

 この先の不気味な印象の森林区間へ気が急いていた、というより怖い物見たさで楽しみだったのだ。やはりちょっとどきどきするような道は嫌いではない。

 山間の谷間に拡がる牧草地が終わると、道はおもむろに狭い森の谷間へ入り込んだ。

 今日は路上に陽差しが当たっているものの、道端の茂みは高く、早くも道端や道のど真ん中に熊の糞だらけだ。恐らく昨日のものっぽい、まだ湿っている巨大な奴もあった。サイズからして内地のとは違うのが流石だ。

 大丈夫、車は時々やって来ているから、熊が路上に出てくる可能性は低くなっている。はずだ。

 道道785への分岐までは記憶より距離があった。ここから先、南幌延への道道645は登りだったはず。

 こちらも登りが始まった。と言っても斜度はかなり緩く、ちょっと登っては平坦、というのがその後延々と繰り返され、一向に高度は上がっていない。地形図を見ても、この道は描かれていないので、あとどれぐらい続くのかがわからない。深い森は圧迫感と共に道を取り囲んでいる。

 奥へ進むと共に、空に雲が増え始めた。これで薄暗いんだから怖かったはずだよ、と2012年の訪問を思い出す。

 この道も何年か前は長らく崩落で通れないこともあった。再び訪れてみると、何もかも山深く、納得の印象である。標高は低いのに。

 峠部分は豊幌トンネル、入口が装飾過剰気味の新しめのトンネルだ。

 向こうに抜けてやや開けた山腹区間からの谷間の森に降りきって、また熊が出そうな気分になった。

 しかし豊幌側の下りは意外なほど短く、道道84に合流したときは嬉しかった。

 安心している道道84だって、浜頓別の内陸から猿払村では通っていて不安になるほど周囲の茂みは深い。標高が低いのに凄まじく山深いのは、道北内陸の共通点かもしれない。しかし道道84に出てしまえば、後は本流まで下り一方だ。

 谷には牧草地が現れ、牧場が断続し始めた。そして空の中に青空だけじゃなく陽差しが現れ、直射日光がかっと当りを照らし始めた。

 陽差しが出るとすぐに暑くなるのが厄介ではあるものの、希望通りの展開である。やはりこれが夏のツーリングだ。


 9:10、本流着。

 沼川へ向かう一番順当な道は道道121だ。でも今日は道道121の1本西、豊富町営大規模牧草地へ向かう。私的道北名所のここは、晴れると道北随一とも言える絶景ポイントだ。去年は天気が冴えなくてとても行く気がしなかったのだが、今日は天気は全く問題無い。

 道道121の分岐の少し先で道道84から分岐した大規模牧草地への道は、道道121より少しだけ枯れた雰囲気がいかにも農道然としている。谷間から丘陵の裾を巻いて丘の上まで見通す一直線。登りボリュームに少しがくっと来るものの、おれは何日か前開陽台と津別峠展望台を登り切ったんだぞ、と思いながらのろのろ登ると、意外に斜度は緩い。

北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道天塩郡豊富町豊幌 豊富町営大規模草地牧場 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 まあ視界が良いから坂が見えている部分が長いんであって、この辺の登りなんてそういうものだし、そもそも偉そうなこと言っててもかなり遅いけどね。

北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道天塩郡豊富町豊幌 豊富町営大規模草地牧場 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 途中で「レストハウス」なる放置気味の看板が登場。行く手の少し先、丘の上に建物が見えた。あの建物がそうか。遠目にも見るからに廃墟だし、既に過去2回の訪問で、豊富町営大規模牧草地には管理事務所にすら自販機も無いことを知っている。まあ一応建物の近くまで行ってはみても、やはり自販機すら見つけることはできなかった。

 元レストハウスの周囲は広場っぽい外構の跡になっている。周辺には花壇やあずまや、更にバーベキューハウスや小動物園という文字が認められた。いろいろ期待されて造られた施設なのかもしれない。今となってはもう強者どもが夢の跡状態だ。この絶景ポイントに何か食べられるような施設があると嬉しいことは否定はしないものの、まあ盛大に商売に失敗したものだ。

北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道天塩郡豊富町豊幌 豊富町営大規模草地牧場 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 路上には、バイクが時々やって来ていた。空をバックに丘陵の草原に臨み、感極まったように静かに立ち尽くすソロのライダーは、私がやるように写真を撮ったりしていた。しかし、エンジン音をふかしながら道の真ん中に停車しているバイク団体にはやや閉口した。まあしかし、流石にツーリングマップルで有名になっただけある聖地ならではの現象かもしれない。何だかんだ言いつつ彼らもみんなもはや中高年であり、バイクだって見るからに大型で250ccクラスなど一人もいない。

北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道天塩郡豊富町豊幌 豊富町営大規模草地牧場 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 丘の上空にはちょうどまとまった雲がやって来ていて陽差しを隠し始めていた。何となく待っていれば雲が行ってしまうかも、というぐらいに雲が動き続けているので、光線が出てくるまでしばし待ったり、いい加減待ちくたびれてまたのろのろ進み始めたりを繰り返していた。でも、やはり期待するほど都合良く陽差しが全面的には現れない。

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北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道天塩郡豊富町豊幌 豊富町営大規模草地牧場 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道天塩郡豊富町豊幌 豊富町営大規模草地牧場 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道天塩郡豊富町豊幌 豊富町営大規模草地牧場 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 今日は今日の旅をしろという神様のお達しかもしれない。去年は一面濃厚な霧の中で、ここに寄る気にすらならなかったのだ。今目の前に拡がる風景と空間、丘と緑、空に雲が動いてゆく空間感覚を忘れないように覚えておけば、それが今年の訪問なのだ。

北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道天塩郡豊富町豊幌 豊富町営大規模草地牧場 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道天塩郡豊富町豊幌 豊富町営大規模草地牧場 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道天塩郡豊富町豊幌 豊富町営大規模草地牧場 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道天塩郡豊富町豊幌 豊富町営大規模草地牧場 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 道道121に戻って有明へ。

 有明から沼川へは再び脇道を経由しておく。

 今脇道を通っておくと、去年のように天気が不安なときには何の後悔も無く道道121を通ることができる。やれるときにできることをしておかねば。しかし今できることは明日やる、というのもそれはそれで大人の選択というものだとも思うし、自分でも毎日やっている。

 道道121は最初に訪れた1997年に比べて拡幅が進み、もはやかなりの高規格道路になっていると言っていい。道幅や路側帯が余裕たっぷり、直線基調で地形の間を優雅に抜けたり越えたりしてゆく正に今風の幹線道道という印象だ。

 交通量はかなり少ないものの、脇道に比べるとやはりこの辺を通り過ぎる車はこの道を通る、と言う程度に車が通る。

 こちらの脇道は道道121と付かず離れず、むしろ記憶の中のこの辺の道っぽいというか、牧草地と緩やかな丘陵を通るのにイメージぴったりの道幅、のんびり伸びやかな路上空間がある。

 11:30、沼川着。

 沼川はセイコーマートは無いものの、A-COOPがある。旧天北線沿線では数少ない、自転車ツーリング用食料が入手可能な集落なのだ。ここで何か軽食や物資補給をしておく、というのが私がこの辺を通った時の基本的な行動だ。数日前、Tさんがここ沼川で食堂に入ったという。今まで沼川に食堂があったことを知らなかったので、一度沼川で是非とも訪問せねば、と思っていた。今、程良くお昼前。お店に入って食事するのに、そして待たずに店に入れるであろう時間として大変申し分無い。

 道端に現れたおばさんに食堂について伺うと、何と食堂は神社の森の向こうの「りんご食堂」と、道道138道端のラーメン屋とのことだった。そうか、2軒もあるのか。今まで全く気が付かなかったな。そして後で過去の自分の訪問記録を読むと、2015年の段階でちゃんとお店は自分の写真に写っていたのだった。
 2択のうち、可愛らしい名前の「りんご食堂」にも興味が沸いたものの、今は道端のラーメン屋さんへ向かわねばと思った。ラーメンの方がツーリング中の昼食気分に合うような気がしていたのだ。
 というわけで道道138を曲淵方面へ向かうと、教えていただいた通りに食堂「サングリーン」を発見。何も考える余地も無くそのままお店へ入ってチャーシューメンをお願いした。
 気が付くと店内はむっと暑いものの、チャーシューメンは麺もお汁もチャーシューもオーソドックスで真面目で丁寧な味わいだった。手っ取り早く言うと大変に美味しいのであった。

 12:05、沼川発。道道1199で上増幌へ向かい始めると、目に見えてさっきより向かい風が強くなっていた。思えば、いつもこの辺では向かい風に悩まされていたかもしれない。

北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道稚内市声問村上豊別 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道稚内市声問村上豊別 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道稚内市声問村上豊別 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 周囲が丘陵地帯から平地に移行しつつあるからではないかと思い、ずっと北上してきて最北の地に辿り着けている気分にさせてくれるのも毎度のこと。

北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道稚内市宗谷村上増幌 道道1119 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道稚内市上増幌 道道1119 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道稚内市上増幌 道道1119 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 基本的には下り基調ながら、かなり強い向かい風に難儀して意外に時間が掛かり、13:10、下増幌着。

 下増幌には宗谷丘陵の南端からオホーツク沿岸の東浦へ抜ける道道1185の分岐がある。これから宗谷丘陵を目指す場合、そちらに向かって途中から道道889で宗谷丘陵を目指すと、道道889は一度通ったことがある向きだし、帰りの国道238は全区間去年通っている。
 一方、このまま宗谷湾の奥同238沿いの川尻を目指し、宗谷岬の清浜辺りから宗谷丘陵へ向かえば、少なくとも道道889の向きは初めてだし、それ以外にこの先雄や岬手前まで去年通っている道ではあるものの、やはり逆向きだったから、ツーリング上目新しいような気がする。気分はツーリングでは大変重要なのだ。
 まあ何にしてもこういう日こそ宗谷丘陵に向かわねば。などと思いながら、やや受動的にそのまま宗谷湾沿いを目指すことにした。

 また、陽差しが凄く熱くなってきていてる。道北、晴れるとむしろ暑いのだということを、改めて思い出させてくれた。去年は寒くて暗い道北だった。

 宗谷湾沿いの川尻まではあと3km。平地を囲む低山の表情は豊かではあるものの間近という距離ではなく、沼川までの丘陵区間と比べて地形の変化による空間の振幅に乏しい。風景のやや退屈な場所で向かい風がますます強いと、次第に気が遠くなってくる。最後に森をくぐって遂に海岸に到着し、国道238に合流。


 国道238では、まず海の青さと目の前に拡がる空間で目が覚めた。
 そして風は完全に向かい風に変わった。宗谷岬で風向きが180°変わる場合が多いから、今日は浜鬼志別までずっと、多分全区間向かい風なのだろうな。何となくがくっと来て脚は重い。交通量も増えた。それでも強い陽差しで明るく青い海の開放感と、生き生き生い茂る岸辺の緑が、気分を新たにしてくれる。

北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道稚内市宗谷村富磯 国道138 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 国道238から、宗谷丘陵へ続く笹原、そしてユーラスエナジーパワーの宗谷岬丘陵発電所の風車群が、とてもよく見えるのには驚いた。思えばこの辺、晴れた日に北上したことは無かった。自分の中で宗谷岬の印象があまり良くないのも、実は冴えない天気のせいかもしれない。向かい風は強くても、そういう風景と上磯、そうや、清浜の漁村が遠くから少しづつ近づいて過ぎてゆくのが救いだった。

 どういうわけか、風向きは時々追い風に変わったりした。恐らく岸壁にところどころ開いた谷が、強い風の方向をかき回しているのだ。まあそれぐらいに風が強いことは確かだった。

 セイコーマートそうやへ逃げ込んで、立ち止まるとほっとした。脱いだヘルメットとサンバイザーが飛ばされ、改めて風の強さもよくわかる。

北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道稚内市宗谷村富磯 国道138 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 14:00、清浜発。

 国道238から道道889で宗谷丘陵へ。丘陵への登りはどうせ70〜80mで一段落する。斜度だってせいぜい最大7%程度。わかっていても、坂の上から露骨に吹き付ける向かい風は楽にならない。何だか厳しい登りだった。

 ゆっくりと、谷底から丘の裾へ茂みの中の道が進んで周囲が見渡せ始めると、それからはやや見上げ気味にぐるっと周囲が180°開けた。丘と風車が一望になったところで少し脚を停めてみた。どうせ展望ポイントで一杯脚が停まるだろうと思って時間は見込んでいる。

北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道稚内市宗谷岬 宗谷丘陵 道道889 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 丘に囲まれた大きな谷、その上は空へ続いてゆく空間が大きく伸びやかに感じられる。伸びやかなのは眺めだけで、これだけ地形の彫りも茂みも深いと、実際に車道無しでこの丘陵を伸びやかに感じながら動き回るのは不可能だ。笹の茂みの細道には吸血昆虫がうじゃうじゃ待ち構えているだろうし。熊もいるだろう、多分。

北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道稚内市宗谷岬 宗谷丘陵 道道889 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 今日は遠くの丘からぎゅーんぎゅーんと音が谷間に響いている。風が強くて風車が勢いよく回っているのだ。日本一の風力発電所なんだからここで風が強いのは当たり前のことで、むしろ風が無い方が商売上がったりなのだ。今日は風だけじゃなくて陽差しも強い。空の眩しさにくしゃみが出る程で、直射日光がじりじり熱い。陽差しが出るとこれだけ暑いのに、宗谷丘陵で陽差しが出るぐらいに晴れたのは、思い出すと過去1回しか無いような気がする。いろいろとなかなか難しい場所である。今日はとりあえず晴れて良かった。旅程前半は道東で深刻に雨と曇りが続いていたのに。捨てる神在れば拾う神あり、である。

 一通り眺め回して満足し、丘陵稜線部の牧草地へ脚を進めていった。

北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道稚内市宗谷岬 宗谷丘陵 道道889 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 オホーツク海を遠望する展望台を過ぎた辺りで、突如陽差しが雲に隠れ始めた。猿払村、つまりオホーツク側の天気予報で15時桝からの曇りが、順当に始まったのだった。

 曇り始めたとは言え、相変わらず宗谷丘陵稜線部の起伏はダイナミックだ。ひときわ高い円山を眺めながら見渡す展望と自分のいる空間は少し動いただけで刻一刻と変わってゆき、風車群が間近に遠くに現れては過ぎてゆく。宗谷岬肉牛牧場、北側へ下ってゆく丘陵、向こうの日本海。次々に目を奪われる眺めがいろいろな方向に現れて、絶好調の眺めである。

北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道稚内市宗谷岬 宗谷丘陵 道道889 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道稚内市宗谷岬 宗谷丘陵 道道889 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 等と思っている間に空は一気に薄い雲に覆われ陽差しが完全に隠れ、雲は薄くても薄暗くなってしまった。

北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道稚内市宗谷岬 宗谷丘陵 道道889 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 遠景を隠すような霞みは出ていないものの、やはり空が曇って辺りが薄暗いと、緑輝く明るい丘陵は一気に牙をむき、圧迫感とともに迫り来るように感じられる。

Post from RICOH THETA. #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 間近の風車群とぐいんぐいんという回転音に包囲され、道道884が谷間へ下ると、周囲は牧草地と風車から手つかずの原生林と笹の茂みに変わった。宗谷丘陵の牧草地地帯が終わったのだ。

北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道稚内市宗谷岬 宗谷丘陵 道道889 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 道道1187まで、かなり彫りの深い起伏の地形が延々と果てしなく続いた。2014年にはこの道を逆方向から訪れているので知っちゃあいたが、オホーツク海沿岸から少し内陸の位置だというのに風景は底知れない密林と笹の茂み、空、その中に直線や大きく整った曲線を描いて続いてゆく広めの道とフェンス、白線だけ。道の外に畑や牧草地など、一見自然っぽくあっても実は人の手が入っているようなものは何一つ無い。やや薄暗い空の下、生命力を迸らせながら生存競争を続けてゆく自然と、自然に睨み付けられながらやや頼りなげに、それでもびしっとまっただ中を貫いてゆく道は、それだけで心強く感じられた。

 当たり前のように熊の看板が所々でみられたものの、不安になる頃に車が廻りの空気を突いて通過して周囲に人間の営みを主張してくれる、という位の交通量が続いた。道を南下する間、宗谷湾沿いで予想していたとおり風向きは正反対に変わっていて、終始向かい風だった。

 この辺、手持ちの1/5万地形図にこの道道889は描かれていない。際限無く感じられるアップダウンを数えたり、GPS画面の地形と手持ち地形図の等高線や川の形、形を比べて、進行状況を確認するのがいい加減じれったい。

 道道1187に合流したときは嬉しかった。東浦のオホーツク海岸まで10km強、やはり熊か何か出てきそうな雰囲気が漂う深い森が長く続いた。道北は標高は低いものの、基本的に山深いということを思い知った。

北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道稚内市宗谷村苗太路 国道238 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 苗太路で国道238に合流。毎度の事だが、オホーツク海岸は更に向かい風が強い。曇り空で鈍い灰色の海を眺めつつ、えっちらおっちらのろのろと、身体を削られるような気すらする。そして風は冷たい。

北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道宗谷郡猿払村東浦 国道238 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 合流してすぐ、もう数km先の知来別が見え始めたのが心の救いだった。そして知来別を過ぎると、やはり数km先の浜鬼志別がもう見え始めていた。見えてもすぐ着く訳じゃないんだけどね。

北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道宗谷郡猿払村知来別 国道238 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道宗谷郡猿払村知来別 国道238 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 17:15、浜鬼志別セイコーマート着。明日の朝食物資を仕入れ、宿までもうあと2km。

北海道Tour19#7 2019/8/14(水)中川→浜鬼志別 北海道宗谷郡猿払村浜鬼志別 国道238 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 漁港を見下ろして丘の上へ登り、17:30、ホテルさるふつ着。寒かった。そして以外に時間が掛かってしまった。すぐ暖かいお風呂に入れるのが大変有り難い。これで8月中旬なのである。

 夕食は宿泊セットにホタテ塩焼きを追加。火が入ったせいなのかかやや小さめではあり、これぐらいだと、漁協売店の屋外でいっぱい戴けた気がする。

 しばらく南の海上でうろちょろしていた台風10号が、いよいよやって来ているとのことだった。明後日9日目の16日が晴れのち雨、17日の午前中に北海道を通過するようだ。18日はもうオホーツク海上の彼方遠くに消え去ってしまっているようで、その日も天気予報も至って絶好調だ。少なくとも旭川空港から帰るのにはあまり問題無さそうである。その代わり、10日目は美瑛籠城でほぼ決定だ。
 問題は16日がどうなるかだ。何とか旭川盆地まで全自走で辿り着けると、ツーリングとして綺麗に収まるのだが。

記 2019/12/25

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Last Update 2020/2/2
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