13:45、津和崎港を通過し、いよいよ南下開始。
県道218は青い海を見下ろしながら、米山の集落の中を登り続けた。道は比較的広く安定しているものの、山肌がかなり急斜面なので、道の際に近づいて海を見下ろすのが怖ろしい。にも拘わらず、道沿いには民家や畑がびっしり貼り付いている。
日差しは真っ青な空の真上から照りつけ、森からは鳥の声が響き、空中には黒いアゲハやクマバチが飛んでいる。照り返しが強く、道を登っていると汗をかく。ただ木陰も多く、海風のせいか大変涼しく快適だ。
米山教会は一見して建設年が新しそうだったので、この際通過してしまう。この頃になると教会はもうあまり珍しくなくなって、比較的新しそうなら割愛するようになっていた。
米山の南端から、県道218の高度は中通島東岸の中腹〜稜線近く、標高100m前後で安定した。
怖い程切り立った斜面、青い海と青い空、森の緑。目に入る眺めがことごとく濃厚な色で鮮やかで、強い日差しが一杯だ。
遠景は霞み気味ではあるものの、これだけ日差しが強いと海と空の青が薄く水色になってゆくやや急な色の変化が目新しく見える。
遠くの断崖にも見下ろす入り江にも、大きな岩の塊が立ち上がっている。斜めや縦に地層らしい筋が入っているのが更に逞しい。海上にはぽつんと小さい島が霞んでいる。小さいながらも切り立つ岩、生い茂る木々の勢いは、見るからに人の営みを拒む無人島である。
走りながら風景に見入っているとつい道を飛び出してしまいそうだ。怖ろしくて道の端を近寄りたくない。脚を停めても、道の端に居るとなんだか腰から下が不安定におぼつかない気がする。それぐらいに切り立った斜面である。
なかなかの絶景中、稜線には送電線が彼方へ続き、風力発電も所々に建っている。また、道の周囲は山の中腹ながら、意外な頻度で集落が断続している。ここは生活の場なのだ。
一本松で、県道218は東岸から稜線を越えて西岸へ移った。地形図には稜線手前の分岐から、赤波江教会がある赤波江の集落へ直接行けそうな道が描かれていた。しかしこの道は途中が破線となっていて、ルートラボでは拾えず、更に空撮では完全に森が覆い尽くしていた。
現地では、分岐のやや手前から、地形図で破線になっている辺りがかなり切り立った斜面の森になっているのが見えた。あそこに道があるとは思えない。分岐ではやや細い道が分岐はしていたものの、そのまま西岸へ向かうことにした。
東岸から西岸へ移ると、風景の表情が少し変わった。いや、切り立った斜面の森と断崖、青く静かな海はあまり変わらないのだが、海上の遠景に続く断崖と島々の眺め、光線の方向、海流によるものか波の感じが変わり、風景の表情が何だか変わるように思えるのかもしれない。
東岸からしばらく高度は安定しているものの、景色が素晴らしいのと何だか高さが怖ろしく、20km台前半以上で走る気にはならない。しかしのろのろながらとても楽しく、やはり20kmともなると位置は確実に少しづつ進んでいた。
真浦では海岸へ降りる分岐を通過。計画時には、ローラー作戦で海岸も稜線越えも、ピストン区間は全部行こう、等と考えていたのに。島ノ首ではさっき直接アプローチを断念した赤波江教会への分岐が現れたものの、既に私は教会への興味が薄れていて、目の前の激坂を80m登って稜線を越えて向こう側へ降りる気にはなれなかった。一応スマホで赤波江教会の写真や建設年なども調べて、比較的新しい教会であることも確認しておく。
江袋でも海岸へ豪快に下ってゆく分岐を通過。もうなりふり構わないリストラツーリングである。まあ、今ここまで来れているなら、一昨日行けなかった奈摩西側の半島の林道に脚を伸ばせるかもしれない。林道訪問に懸けてみたい、という大義名分があるにはある。
記 2019/6/8
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