五島列島Tour19#2
2019/4/28(日)
奈留島 泊→泊-1

泊→汐池 (以上#2奈留島-1)
(以下#2奈留島-2) →矢神→水ノ浦→夏井 (以上#2奈留島-2)
(以下#2奈留島-3) →皺ノ浦→泊
52km  ルートラボ

赤は本日の経路 濃い灰色は既済経路と航路

 5時でやっと、外が東京の4時頃ぐらいの明るさだ。日の動きが東京比約1時間遅れだった昨日に引き続き、朝もやはり1時間ぐらい明るくなるのが遅い。この感覚に慣れてしまうと、東京で困るような気がする。

五島列島Tour19#2 2019/4/28(日)福江島→奈留島 長崎県五島市江上町 富久屋旅館前 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 荷積みにちょっと時間が掛かり、7:35、富久屋旅館発。福江港ターミナルはすぐ近くだということは地図で見てはいたものの、奈留島へのフェリーオーシャンは8時。もう少し早く出発したかったな。しかし、福江ターミナルはほんとにすぐ近くで、自転車だと5分もかからなかった。

 ターミナルの建物内には、船会社の窓口がずらっと並んでいて壮観だ。まずは五島旅客船の切符売り場へ。フェリーオーシャンの切符は、乗船券と下船券というものがミシン目でくっついている。下船の時にも切符を渡す必要があるようだ。更に私の場合、自転車積載用に荷渡し券が必要だった。荷渡し券の券面に、自分で送り人(=私)と受取人(=「本人」)の住所氏名、荷物内容を手書きして、発売・発券となる。
 切符を買ったら出発まで15分。手短に売店を物色しておくと、ちょうどイメージばっちりの魚肉練り系揚げ物屋「浜口水産」があったので、ばらもん揚の白黒、海ぼうず(鰯のメンチカツ)、あご天と目に付いたものを仕入れておく。四国のじゃこ天などと同じく日持ちするので、携帯食にはうってつけなのだ。どれも魚の出汁味にほんのりナチュラルに甘い味付けが大変親しみやすい味で、大好きになってしまった。特に海ぼうず。フェリーオーシャンで食べて、もっと買っとけばよかったと思った。

 次はいよいよ、初めての自転車のフェリー積載だ。どきどきしていたら、桟橋の脇から車載用の渡り板を自転車に乗ったまま渡り、船内の係員さんに自転車を引き渡すだけ。

 私はフロントバッグを外し、共に船内へ。この段階で7:50。大変スムーズに進んだのであった。

 8:00、フェリーオーシャンで福江発。
 3階建ての船内の3階、展望席の先頭に。隣り合わせた方がNPO法人の観光ガイドの方とのことで、五島のことや奈留島のことをいろいろ教えていただくことができた。奈留島は水が少ない、久賀島は平地は狭いが水があるので人が住み着いた、等々。五島各島は地形図で眺めた印象が強く、各島の集落について大きく印象を改めさせられる出来事だった。
 奈留島については、奈留高校の愛唱歌である荒井由実「瞳を閉じて」を、もし学生さんがいたらアカペラで歌ってくれるかもしれない、というお話しも伺った。楽しみである。また、昼食場所として奈留の食堂「もり」を教えていただいた。

 8:50、奈留島奈留ターミナル着。下船県を渡したときに
「最初に走り出して下さい」
と言われていたとおりに、フェリーオーシャンの船尾の壁がばかっと開いて桟橋への橋になったところでそのまま自走で上陸完了。あまりにあっけないので、振り向いてフェリーオーシャンを眺めてみたり、乗客がぞろぞろ下船中の奈留ターミナルを見回してみる。
 天気予報は今日も晴れだったはずが、青空は見えるものの未だ薄曇りで、日差しが隠れている。涼しいというより薄ら寒く、半袖2枚で心配になってきた。明日の曇りに向かって、天気の進行が早まっているのかもしれない。まあ、もともと連休中の西日本は雨っぽいとは思っていた。計画段階や出発前には半分ぐらい雨でも仕方ない、位の覚悟はしていたのだ。
 若松への船便が出発する13:50まで、手持ち時間は5時間。その間に奈留島の予定コースをこなさなければならない。時間的には大丈夫、のんびりと、しかしあまり気は抜かずに進めばいいだけだ。

五島列島Tour19#2 2019/4/28(日)奈留島 長崎県五島市奈留町浦 フェリーオーシャンで奈留港到着 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 上陸してそのまま泊の湾内を、漁村の民家が断続する海岸際を南下してゆく。

五島列島Tour19#2 2019/4/28(日)奈留島 長崎県五島市奈留町泊口ノ夏井 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 口の夏井から半島を越え、湾内から奈留島東岸に出る道は、稜線自体はせいぜい標高60mぐらいではあるものの、地形図のうやむやな等高線に激坂を覚悟はしていた。その実態は、やはり軽く15%以上のコンクリート舗装だった。

裏側の東岸側は高台の森の中を、打って変わって緩々と下る林道風の細道。密林の間からは時々海と、少しは日差しっぽい雲の隙間が、まああれだけ一気に登ればね、というぐらいに伺えた。

 最高地点に「千丈敷→」という看板があったので何かなと思っていると、そのうち海上の小島へ続く道のような広場のような岩畳が登場。一見であれが千丈敷だとわかった。

五島列島Tour19#2 2019/4/28(日)奈留島 長崎県五島市奈留町泊 奈留千畳敷 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 こちらの林道も次第に海岸際へ下り始め、千丈敷と奈木崎の半島に挟まれた程良い広さの砂浜へ。看板には鼠ヶ島の海水浴場と描いてある。しかし、海水浴より1日ぼうっとしていたいような場所ではある。今日はやや曇り気味で、やや肌寒くはあるものの。

五島列島Tour19#2 2019/4/28(日)奈留島 長崎県五島市奈留町泊 鼠ヶ島海水浴場 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA
五島列島Tour19#2 2019/4/28(日)奈留島 長崎県五島市奈留町泊奈木 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 奈木港から奈留島東岸を東風泊へ北上してゆく。

五島列島Tour19#2 2019/4/28(日)奈留島 長崎県五島市奈留町泊 東風泊湾 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 東風泊湾沿いの高く聳える切り立った断崖、その一番下にコンクリート防波堤が貼り付いている。空が曇りのせいか、やや重い色の海と高く切り立つ断崖岩肌の印象は荒々しいものの、しばらく追い風の快走が続いている。今日の奈留島コースは概略北上→南下が3回繰り返される。進行方向が反対になると大変だろうな。

 東風泊湾北側の漁村、東風泊で断崖下の道が遂に無くなって、道は岬越えに移行。
 海岸際の道が内陸方面に曲がった途端に、唐突に細道の凄い坂が始まっていた。予習してコース概要はチェック済みだし、覚悟もしていたし、たかだか90mちょっと。淡々とこなすだけである。登り途中では入り江に隠れた椿原の集落へ下る分岐があるが、もう立寄る予定のピストンGPSトラックなどは無視してどんどん登り続ける。東風泊湾のやや厳しい風景が、つらかったかもしれない。

 登るだけ登ったら、またすぐに再び海岸の永這へ急降下。下り斜度もかなり厳しい。登りの標高せいぜい100m未満とは言え、行程断面にややメリハリ効き過ぎのスパルタンな道である。

 永這から再び防波堤の中の海岸沿いを汐池へ。
 汐池から再び登り返し、山の西側、船廻湾へ向かう。奈留島コースが、東岸から2つある大きな湾のうちの1つめに移ることになる。

 漁港の先端から、岬方面へ向かって茂みの中へ、幅2m程の舗装路が延びていた。地形図では実線で描かれていた道だ。見えている範囲数mについては極端に路面が荒れている、ということは無い。ひょっとしたら、岬の向こう側数km、地形図で描かれている終点まで行けるのかもしれない。まあしかし、ここには深入りしないでおくことにする。どうせ行き着く先は茂みの中の廃村だし、今私は予定コースを粛々とこなす必要がある。

五島列島Tour19#2 2019/4/28(日)奈留島 長崎県五島市奈留町泊郷汐池 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 汐池の池を回り込むと、おもむろに船廻への稜線越えが始まった。

 もう珍しくもないものの、ここがまた厳しい坂でぐいぐい登り続ける。明らかに10%以上基準で道を造っているのだ、と思った。これが今私のこなすべき行程である。

 最後まで森の中、余り展望は開けず、最高地点は126m。本日の奈留島行程の最高地点である。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 峠の下手からは別の林道が延びていた。地図を見ると「草摘峠」という峠に出る道のようだ。まあしかし、まだ先があるのでアドリブ訪問はやめておこう。

 船廻は船廻湾の一番奥にある集落だ。外海に面する東岸の漁村と比べて、内海の湾に面するせいか、民家の生け垣、その間を通り抜けてゆく道、波が殆ど無い海、そして海の向こうには対岸の営みが見える。相変わらず空は曇っているものの、風景が全体的に里っぽく人なつこい表情だ。

 まずは船廻湾の海岸沿いに矢神へピストン往復である。船廻湾の外側、開けた海を眺めて海岸線を北上。矢神まではずっと海岸沿いだ。奈留島の道は平坦部と稜線越えの急坂の違いが極端だ。

五島列島Tour19#2 2019/4/28(日)奈留島 長崎県五島市奈留町船廻矢神 船廻湾 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 矢神の集落をくるっと回って折り返し、来た道を戻って船廻へ。

 ちょっと商店自販機休憩してから、柿浦で細長い半島根元のくびれ部分を横断して松山へ。

 横断部は平地になっているので、向こう側の相ノ浦湾には大変あっけなく出ることができた。

五島列島Tour19#2 2019/4/28(日)奈留島 長崎県五島市奈留町船廻柿浦 船廻湾 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 相ノ浦湾では、まず東岸を海岸沿いに水ノ浦へピストン往復である。

 途中の阿古木は、キリシタンの隠れ里だったらしい。向こう岸には、これから向かう夏井と遠命寺トンネルへ登る道が見える。意外に近くなのに、陸地の道は細長い相ノ浦湾の一番奥まで戻ってあっち側をこの辺まで来ないといけない。船なら狭い海上を向こう岸へひとっ飛びだ。
 まあしかし、海は海で船が沈んだら一発アウトだ。今日は曇りであるものの、雨も風も無く穏やかな日だから、海を渡ったらすぐだなどという発想が出てくるのかもしれない。

五島列島Tour19#2 2019/4/28(日)奈留島 長崎県五島市奈留町船廻水ノ浦 相浦湾 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 水ノ浦で折り返し、来た道を阿古木、松山へ戻り、更に相ノ浦湾の一番奥へ。

 さっきから湾の奥の陸地に、やや大きな公共施設のような建物が見えていた。湾の奥の岸がちょうど地形図の切れ目で、次の次の地図を見るとやはりそこは奈留島中心部、奈留の外れだった。その向こうはもうフェリーターミナルがある泊である。まあ、そういう距離感覚の島なのであった。

 道なりに奈留をぐるっと回り込み、最後の半島の相ノ浦湾西岸を北上、夏井へ向かう。

 まだ民家が続いている町外れの道端に手頃な商店を発見。例によって缶コーヒー小休止していると、お店のおばさんが、
「今日の人出は凄い。バスが2台も来た。江上天主堂も管理の人がいるんじゃないのかな」
と教えてくれた。そうか、奈留島にも確か有名な教会があったな。江上では教会に立ち寄らなければ。重要文化財で世界遺産の江上天主堂を、私はやっとこの時意識したのだった。


 夏井から道はまた登り始める。

 稜線越えではなく標高50mちょっとの奈留島最長の遠命寺トンネルまでではあっても、県道だろうがトンネル登りだろうがいきなり10%登りが始まるのは、ここまでのどの道とも変わらない。もはや奈留島での坂道の決まりみたいなものだ。

 トンネルを抜けてやや寂しい集落の江上へ下り、まずは海岸沿いを北上。奈留島西岸を大串郷皺ノ浦へピストン往復しておく。

 北岸との間の陸地がくびれている西江上では、向こう岸との間に、ダムを下から見上げるような高い堤防が見えた。どういう目的の構造物なのかはわからない。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
五島列島Tour19#2 2019/4/28(日)奈留島 長崎県五島市奈留町大串郷皺ノ浦 大串湾 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 皺ノ浦の漁村と静かな海を眺めて、西岸を奈留へ戻るとする。いよいよ奈留島コースの最終段階だ。

 12:05、江上着。江上天主堂の看板はさっき遠命寺トンネルから下って来た時に見つけてはいたのだが、江上天主堂が何かを私は理解していないために私には教会っぽい建物が目に入らず、そのうち教会があるだろうと思って皺ノ浦方面へ進んでいた。そして当然、教会は皺の浦まで現れなかったのだった。

 江上天主堂は、遠命寺トンネルが西岸へ降りた場所のすぐ南側だった。木造の小さな教会は住民がきびなご漁で貯めた資金で、住民が切り開いた山裾に建てられたとのこと。

五島列島Tour19#2 2019/4/28(日)奈留島 長崎県五島市奈留町大串郷江上 江上天主堂 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 茂みの森手前の小さい駐車場には、さっき奈留の外れで商店のおばさんが教えてくれたようなバスは影も形も無く、教会には管理人の方もいなくて今日は中には入れないようだった。
 まあいい。静かに佇む建物に会えただけでも楽しかった。

 海岸沿いに進んだ小田から、奈留の手前の宿輪まで一登り。

 最高地点は87mではあるものの、やはり毎度の如く斜度は10%以上基準だ。つくづく奈留島は海岸際と山越え登りのパートの違いが極端に分かれている。

五島列島Tour19#2 2019/4/28(日)奈留島 長崎県五島市奈留町大串郷木河原 #theta360 - Spherical Image - RICOH THETA

 途中、崖下に降りてゆく分岐があり、鋼製フェンスの門扉が閉まっていた。往路のフェリーオーシャンで教えてもらった、遠命寺トンネル掘削時の残土置場だった。山盛りの土が木立の向こうにちらちら見えた。

 宿輪の湾から海岸を田尻へ。天気が冴えないので、その先の立岩・鈴ノ浦へのピストン往復、同じく奈留へ戻ってからの浦向ピストン往復はもう省略することにした。海岸や漁村はこの後8日間、厭きるほど見ることができるだろう。その時間、昼食を落ちついて食べればいい。

 田尻から奈留へ60mぐらい、最後のひと登り。途中、丘のてっぺんに学校らしき建物が見えた。さっき相ノ浦湾から奈留を回り込んだときには見かけなかった、奈留高校かもしれないと思った。丘を登ってみると、見えた建物は奈留高校ではなく小中高一貫校の一つ奈留中学校だったが、その隣に奈留高校はあった。
 奈留高校では松任谷由実が荒井由実時代に書いた「瞳を閉じて」が愛唱歌になっている。「瞳を閉じて」はNHKアーカイブズのかつてのテーマ曲であり、奈留高校の生徒さんが荒井由実に曲を作ってもらうまでの話もNHKアーカイブズで紹介されていた。「空から日本を見てみよう+」で思い出したこの話は有名らしく、私が予習もせずにいろいろな方に教えていただいて、江上天主堂や奈留高校を訪問できるのは、大変分不相応に恵まれていることと言える。

 奈留高校はやはりというか、さすが奈留島の学校だけあって20%は軽く超えそうなとんでもない坂の上に門がある。しかし門の中は完全に平坦で、開いていた門のすぐ近くに歌碑はあった。荒井由実の直筆とのこと、なかなか読みやすいいい字で歌詞が描かれていた。

 12:45、奈留着。
 さっきフェリーオーシャンで教えて貰った「もり食堂」を、路上のおばさんに道順を聞いて訪ねてみた。注文したのはちゃんぽん大盛り800円。東京で食べる某チェーンのちゃんぽんよりさりげなくちゃんぽんらしいというか、いや、あちらはあちらでチャンポンのイメージを凝縮して昇華しているというか、とにかくちゃんぽんを食べてお腹いっぱいになれ、奈留島での〆として大変満足できた。

 13:15、奈留ターミナル着。30分も早着できたので浦向ピストン往復ぐらいできるとも思ったものの、もう昼食を食べてしまったし、空はますます暗くなっていたので、じたばたせずにしばし休憩することにした。
 大きな汽笛を鳴らして、13:45前にフェリーオーシャンがやって来た。フェリーオーシャン、私が奈留島を回っている間に、中通島の若松港、福江港を1往復しているのだ。五島の船の中でも、働き者の船である。

記 2019/5/22

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Last Update 2019/6/24
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