県道49で海岸から再び台地へ。
増田町、高田町、吉田町と畑の細道から内陸の農村へ、山裾で山と山の間をすり抜け田圃と畑が拡がる平野へ。
福江郊外まで戻って来たので東側に福江の市街地が眺められ、さっき真下で見上げた鬼岳は、後方からもう一度横に近い方向となって、それなりの距離感覚で眺められるようになっていた。
次は猪掛峠である。県道27を渡って旧道っぽい道へ。集落からの入口取付だけぐいっと登るだけで、あとはしばらく緩々の斜度で峠まで標高差約100m。杉の植林と広葉樹の中、車皆無の静かな道である。林道の看板を見かけたように思うものの、トンネル開通前はこちらが県道だったのだと思わせる道幅と風格がある。
猪掛峠というだけあり、山側にずっと続く猪よけ柵がやや物々しい。しかし、明るい木漏れ日の中、カワトンボやサナエトンボ、モンキアゲハやナガサキアゲハを始め様々なチョウが路上を舞う、賑やかで楽しい道だ。
13:40、猪掛峠着。
峠の向こうはやはり濃密な森の静かな緩々斜度の下りながら、雰囲気はがらっと変わって頭上が開けた明るい道である。周囲の山々も眺められ、谷間の空間感覚に福江とは違う内陸部を感じさせられる。
14:05、雨通宿着。
大曲まで谷間の静かな道を経由し、大曲から国道384で島北側の海岸へ。
国道としてはのんびりとしている谷間の道ではあるものの、流石に国道だけあって交通量はやや増える。そうでなくても、今日はめまぐるしく景色が変わる。これが島のツーリングというものかもしれない。
既に14時だというのに、まだ光はお昼のような雰囲気だ。事前に予想していたとおり、明らかに1時間ぐらい日の動きが遅いのだと思われた。
谷間の川が拡がった河務から県道162へ。さっきまで谷間を川沿いに進んでいたはずだが、池かやや広めの川のように見える水面は、地形図を見てみるともう海なのである。そういえば、水面がそこはかとなく、海と言われれば海の色っぽいようにも見える。
県道162は、唐船ノ浦の湾沿いに権現岳の裾を回り込んでゆく。杉木立の隙間から、ちらちら青い色が見えないことは無いぐらいに、海の雰囲気が伺える。静かではあるものの、地形図で期待していたほど眺めの良い道ではない。
向こうの岸辺には大きな建物が見えるような気がする。それは何だかリゾート系のホテルであるような気もする。それぐらいの規模のホテルなら、何かレストラン的な食堂があってしかるべきだろうと思うと、何か食べたくなってきた。まあ、まだ決定的に空腹で動けないわけじゃないので、単なる条件反射である。実際にはまだ水も充分にある。心配も問題も無い。
道が進んで向きを変えるにつれ、その風景は同じ湾の反対側の岸、岐宿の市街地ではないかということを、私は理解するようになった。私の行く手には単なる漁村しか無さそうである。それ自体には何の不思議も無い。地形図で小さな黒い四角が点々と散らばっている通りである。
行き場の無い期待の反動から増幅される空腹感に、さっき鬼岳で五島うどん食べときゃあ良かったなと思ったが、後の祭りなのだった。幸いさっきから多くの集落には自販機があるようなので、当面は水やら何やらでごまかして凌ぎ、今後の教訓にしよう。
森の中から盆地のような開に出た。ここから福江島北部半島唐船ノ浦の半島部、行き止まり細道ローラー作戦である。
記 2019/5/17
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