紀伊半島Tour15#1 2015/5/2 周参見→清水-1

周参見→(県道38他)下地 (以上#1-1)
(以下#1-2) →(林道将軍川線)垣内 (以上#1-2)
(以下#1-3) →(林道将軍川線)関場 (以上#1-3)
(以下#1-4) →(県道37)向山口→(国道371)清水
 69km ルートラボ

ニューサイ写真 RICOH GR GR18.3mm1:2.8 A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路 濃い灰色は既済経路
 

 品川6:27→のぞみ151→8:53新大阪 特急くろしお3で周参見11:51着。
 自転車組み立て後、少し駅の周囲を物色し、一番めぼしそうな駅前の食堂で昼食とする。地元の顔なじみらしいお客さん2人が食べていた焼肉定食っぽいものを頼むと、\1300もするという。代わりにアジフライ抵触が目に入ったので、そちらをお願いする。\700とのことでアジフライは美味しかったがやや小さめだったかもしれない。しかも店内は何となく油っぽいべたつきを感じさせる。まあメインディッシュ以外の付け物が異様に豊富だったので許さねば。

 12:40、周参見発。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 海岸部から続く平地はすぐに狭くなり、緑の渓谷が始まった。5月上旬とは言え、もう日差しがじりじり厳しく暑い。さすがの大阪30℃予報。こちらはもう少し気温が高いはずだ。しかし路上には適度に木陰があって有り難い。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

 谷底の道はまもなく対向1車線程度に細くなる。茂みに沿って、モンキアゲハという関東では見かけない日本最大級の大型アゲハチョウと、透明な羽根のカワトンボがすいすいひらひら飛んでいる。普通茶色の羽の個体もいるのだが、透明な羽根の個体がやたら多いのが特徴的だ。

 細道は茂みのような新緑の森をぐいぐい登ってゆく。と思っていると、唐突に山中で道が広くなって新道区間が開始。こちらはGPSのトラック通りに旧道へ。確か何の無理も無くこちらで描けたはずなので、問題無く行けるだろう。

 さすがに南国だけあり、この時期の紀伊半島は森の密度が濃い。密度というか濃度というか、とにかく濃度という言葉が先に頭に浮かぶ。もう濃い色の常緑っぽい広葉樹、その中に薄い緑色の花なのか、細かい要素の部分もみられる。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 谷底を見下ろすと、水の透明度がもの凄い。紀伊半島で毎回そう思うのはわかっていた。紀伊半島を訪れていなかった6年間、他の地域でもこの透明度は見かけた気がしていたが、改めてこの透明度を目の当たりにすると、やはり他の地域での最上級がごく普通の川で見ることができるのが紀伊半島の凄さだと思う。早くも来て良かった、と思う。何故もっと早く来なかったんだ、とも思う。

 道ばたにも湧き水や石清水が多くみられる。標高が低いこの辺り、進んで飲むことはちょっとためらわれるものの、山自体も低山ばかりで、地図で見る限りこの上の山肌に集落は無い。どうしても水が飲みたくなったときに、万が一の給水ポイントに困ることは無いだろうと思われる。

 谷を遡ると共に細道は次第に高度を上げてゆくが、密林の密度は濃くなったり薄くなったり。上流側に開けた場所があり、集落が点在し始めるのだ。海岸部の集落と上流側の集落があまり関係無いようでありするのが紀伊半島らしい。

 等と思いながら、獅子目隧道へ。

 獅子目隧道の先、佐本深谷辺りは2003年に一度通っている。ここも内陸部ながら山間としては意外に開けた印象の谷間であり、下流にさっきのような山深い渓谷があるのは意外だ。

 途中で、山道と廃道を経由して国道371に出るコース(とても道とは言えない)が分岐する。2003年に甘く見て入り込んでしまった、印象深い道だ。あれから10年以上経っている。分岐の入口にはその後道が開通している気配は無い。今日はもちろんそちらへ向かうつもりも無い。

 谷間が狭くなり、洞谷隧道への分岐に到着。一応県道どうしの分岐であるものの、ここまでの谷間よりやや人気が無いのはあまり馴染みが無い。

 洞谷隧道を抜け、下る途中山中で広めの道が分岐。「林道将軍川線へ」という看板が立っている。この道は、地図で見て知っていた。

 将軍川林道へ合流する新道がこれだ。もううこんな所まで来てしまったかと思うものの、12時半スタートでそろそろ2時間。まあ順当な行程である。将軍川林道へは、こちらもこれから一度谷底へ下って向かう予定である。計画段階では登り返しを避けてショートカットの新道へ向かうかどうかちょっと迷ったし、最終的には時間が押したら躊躇せずショートカットしようとも考えていた。しかし、今の時間なら問答無用で谷底経由、将軍川林道ののオーソドックスなルートを押さえることができる。実際にはいろいろ思い出す前に分岐をそのまま通過し、緑の谷間を一目散に下っていた。こちらの方がずっと楽しそうだ。

 14:30、下地着。県道の合流点は見るからに静かな農村の中。決して廃村ではなく、むしろ小綺麗な集落であり、その中を上手に向かって行く道には生活道の雰囲気が漂う。しかしこの道こそ、紛れもない林道将軍川線である。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 集落というより、断続する民家の塊毎に地名が蒸野平、中村、上地と小刻みに替わる。

 それら民家の軒先を掠め、前庭の石垣と納屋の間に緩い登りが続く。

 しばらく細道の表情は生活道そのもので明らかに古くからの道でもあり、林道○○線というあまり人気を感じない道の名前からはやや違和感がある。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 畑の外れで道が森に突入、斜度ががつんと急に10%ぐらいに変わった。いや、10%以上あるかもしれない。こちらもインナーローでゆっくり登ってゆく。

 麓がだらだらで急にがつんと登り始めるのは、紀伊半島内陸の道に共通した特徴だ。どこも地形がそんな感じなのだろう。

 杉の木立をしばらく登り続け、汗が吹き出して目の脇辺りに溜まり始めた辺りで、前方の森の切れ間で唐突に細道に合流していた。

 さっき獅子目トンネルの向こうで分岐した道のなれの果てである。山中を切り開き、緩い曲線で回り込んでここに合流するのだ。ということは、地図での位置も確認できた。斜度が急になってからまだ全然進んでいないこともわかった。そして、下地への下って登ってがここでようやく±0になったことになる。後悔はしていない、あんなにのんびりした道を通れたのだから。

 登りの途中、日置川12kmという看板を見かけてちょっと驚いた。日置川はもっと遠いはず、将軍川の間違いではないかと思う。

 或いは日置川村の境なのか、または合川ダムに流れ込む将軍川を便宜上そう呼んでいるのか、又は合川ダムの上流部を日置川と呼んでいるならそれぐらいの距離感だろう。

 などと考察しても、坂は縮む訳も無い。幸いさっきの合流点で道の斜度は一段落して、やや緩くなっていた。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 15:25、最高地点着。
 最高地点は切り通しのような岩の間。岩の壁が峠らしい表情を醸しているものの、ここに峠の名前は無い。この道がこれから向かう谷間を地図で見る限り、両側を峠的な尾根に挟まれた谷間に集落が点在している。
 紀伊半島には、こういう「どこからも峠を越えないと辿り着けない集落」が山間にしばしば見られる。そのいくつかはかつての隠し里とも言われる。何本かある紀伊半島横断系の道でも最南のこの道は林道で、県道指定も国道指定も無い。しかし、この道は古くからの集落と下界を結ぶ、新興道路が多い林道の中では林道らしくない林道なのかもしれない。 この峠部分の雰囲気からは、この道が担ってきた下界との出入口という役割を、十分に感じさせてくれるように思われる。

 将軍川林道は、峠部分から少し高度を下げて谷底に到達し、その後狭い谷底の森を延々とだらだら下ってゆく。

 濃厚な森の谷底では、谷全体がどれぐらい深いのかはよくわからない。地図では両側の山々はたかだか500〜600mなので、それほど深い谷でもないのではないかとも思う。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 今日のような明るい晴れの日、ましてやこの新緑の季節。上から差し込む木漏れ日がきらきら、大変鮮やかだ。

 Web上の訪問記録で、長い下りだということがわかっていたので、GPS画面の道の形と地形図を見比べ「どれほど長いんだろう」と思いながら、緩い下りに身を任せていたが、確かに延々と緩い下りは続いた。

 谷底区間の終盤、森の向こうに畑が、続いて廃屋が断続。

 廃屋だけではなく、地形図に竹垣内、垣内と地名が書いてある辺りでは人気が感じられる民家が現れた。

 谷底の支流を橋で渡ると、森の中をようやく道が再び登り始めた。いよいよ将軍川林道西側の登りに突入したのだった。

 森の登り坂から辺りが開けると、目の前に突然新しい幅広の橋が登場。

 そのまま2〜30mほど進んだところで、これが西側の特徴、新道区間だと気が付いた。ここまでずっと細道が続いた将軍川林道にあって、新道は最近のふるさと林道にありがちな高規格道路であり、突如山中で始まって山中で旧道と再合流するのがあまりにも唐突だ。ちなみに紀伊半島では、道を拡幅する場合に屈曲する山肌に張り付く道をトレースするのではなく、まるっきり新規にルートで道を造ってしまう場合が多いようだ。周参見から登ってきた県道★も、途中の★から★辺りがそうだった。例え林道であってもこういう拡幅をするのが紀伊半島の道らしい。
 と気が付いたところで反射的に右を見ると、旧道が新道の脇に、独立して並行して山肌を登っている。これも事前のWeb情報どおり。
 手持ち地形図が古いこともあるが、地形図ではこの道があと100m程登って稜線を越えている。途中には集落もあり、この道は問題無く通れるという話も目にしている。時計を見ると15:50、ぎりぎり15時台。宿の夕食は18時半、まだ2時間以上。これなら夕食には十分間に合うだろう。
 天気はいいし、この際旧道に行ってみるか。

 新道から別れると、道は斜面の畑の中を進み、上露の集落へ。さっきの谷底の集落は廃屋が目に付いたが、こちらは集落全体が小綺麗に手入れされ、生活の息吹が感じられる。谷底の集落より山腹の集落の方が余程活気があるのは面白い現象だ。峠裏側の山間の里というところが何かわざわざ人が来にくい所に住み着いているような、隠れ里のような。いかにも紀伊半島らしい。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 集落上手からは、谷間に掛かる新道の橋が見下ろせる。地形図で見ると、橋の向こうはすぐトンネルだ。現在の所山中の部分的にしか作られていない新道ながら、谷間を渡り山を貫き、こちらと下界を結んでいるのである。
 こちらの道は集落から再び森の中へ。地図とGPS画面を見ながら、現在位置を確認しながらのんびり高度を上げてゆくと、時々周囲が開け、あの辺りが峠か、と思う。

 稜線部通過は★16:45。さっきの東側に比べると、くるっと回り込んで稜線を越えるタイプのごく普通っぽい林道峠だ。地形図には稜線上の少し東側に★峠と描かれている。それなら車道のこちらを★峠と称してもいいような気はする。そうならないのは、あちらも山道ながらそれなり以上に由緒正しい道なのかもしれない、あるいは。

 林道は山腹に張り付き、きりきりとけっこう急な斜度を下ってゆく。ブレーキを握る手にけっこう力が入っているのに、油断するとすぐ速度が上がってしまうぐらいに急な下りだ。

 さっきの登りも意外に急だったし、この道ではこれが標準斜度として造られたのだろう。それなのに、眺めている分には大変のどかな細道に見える。視覚が坂に麻痺してしまっているのだ。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 何回かの大きなつづら折れの途中、茂みの下に見えた道がこちらに合流した。後で見直すと、それがさっき分岐した新道の合流点だった。さっきの分岐ではあんなに広い道だったのに、再合流点はこっちの旧道と大して変わらない細道なのだったである。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 この新道のそんな話をどこかで読んだ気もする。ここまでずっと癒やし系の細道が続いた将軍川林道の、もうひとつの印象的な特徴がこの唐突な新道と言えるだろう。ただ、時間も行程の余裕もある今回は、旧道をのんびり通れて良かったと思う。

 谷の向こうには、同じような高さで並ぶ紀伊半島南部の山並みが見えた。杉の濃い緑、新緑の明るい緑に覆われた山々はまだ明るい。もうすっかり日が長くなっているのだ。

 下りきって登場した温井地は、県道から奥まっているのに開けていて、意外に人気がある集落だ。この先すぐの日置川の狭い谷間、県道★の静かな風景を覚えているので、やや意外な気がする。


 17:00、関場着。日置川に合流というより、関場の集落を過ぎた森の中で、日置川に道が合流した。それぐらい、合流点は単純に道が合流するだけの場所だった。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 日置川では、曲がりくねった谷間が川岸からすぐ切り立った低山に囲まれ、森の中に集落が断続する。川の透明度もさることながら、この川岸の佇まいが何とも魅力的だ。

 2003年の訪問で、日置川沿いに森の山裾に続くこの県道37に訪れ、静かな細道と木立の向こうに見える澄んだ川面に魅せられてしまった。川が美しい紀伊半島でも、古座川と並んで私の好きな川だ、と思っている。今日のコースも、最初の計画では特急の停まる周参見から紀伊日置まで一駅戻り、日置川を遡ってから西へ向かって将軍川林道に入る案から検討を始めてみた。結局この案は、午後出発にはボリュームがありすぎて断念した。しかし、それぐらい再訪したかった道である。

 急斜面の裾に張り付いた道は、上流へ向かっているものの、ほぼ平坦と言っていい。下滝、殿山発電所、真砂と進み、この道独特の銀色に塗られた鉄骨トラスの橋で日置川を渡って対岸へ。

 記憶通りに道は川岸を次第に登り始めた。川岸に詰まった等高線が読みにくく、どの辺までどれぐらいの坂が続くかはわかりにくいが、確かあと80mぐらい登ることになっているのを事前にルートラボで確認していた。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 どうせ川岸、そんなに登っても意味無いじゃんと思っていたら、前方に合川ダムが登場。結構高く聳えている。あそこまで登るのか、と納得。
 2006年にこの道を訪問したときは、行程詰め込みすぎの計画ミスで、日置川沿いのラスト10kmが完全にナイトランになってしまった。このため、地図でわかりにくかった一登りが予期せぬ状態で現れ、登り総量の予備知識が無い状態でこの登りをこなさなければならず、大変心細かったものだ。

 何とか数字で登り量を納得していても、登る必要が無くなるわけではないし、斜度も緩くなる訳は無い。しかも最高地点の民家にはやや大きめの犬が2匹網の中に繋がれて、わんわんこちらに向かってしばらく吠えていた。そう長くはないものの、気持ち的にしんどい登りである。
 しかし、登り終了手前の展望箇所で現れた合川ダムの威容は見事なものだった。

 17:40、向山口で細道国道371の直角カーブに合流。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 合流点を曲がってすぐ渡る合川大橋も、これまたかなりの細道だ。「大型車風向不可」の看板も出ている。県道より道が細い国道は紀伊半島や四国では珍しくもないが、基本的には静かさと共にやや違和感のある状況ではある。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 その細道の状態で、★の集落から合川貯水池沿いに再び森の中へ、国道371は進んでゆく。もうすぐの筈なんだけどまだなのか、と思い始めたところでGPS画面に宿のポイント情報が現れた。

 17:50、清水「おおとう山遊館」着。
 小学校跡地に建つ★公営の宿泊施設だ。基本的には釣り客が多い宿のようで、特にこの時期のお客さんはほとんど釣り客のようだ。

 

 18時半から食堂で夕食となった。その最中、19時になってもまだ薄明るい。さすがに関西地方、この時期からもう夕方が遅いのだ。

 数日前の天気予報によると、連休中はずっと晴れということだった。この時期は普通西日本全体で雨が多く、折角連休に紀伊半島や四国を訪れても、雨に降られることが過去には多かったので、今年はまたとないチャンスだと思っていた。ところが、出発直前になって突如5月5日に雨マークが付いた。そして夕食中、天気予報に気を付けていると、雨は全体的に前倒し拡大傾向のようだ。明日5月3日の午後から5月4日の午後に雨が降るようなのだ。予報の変化を悔しがっても、突如大きな低気圧が現れるのはこの時期毎度の事。天気図で低気圧の位置と規模を見れば、これで何か影響が無いと思う方がどうかしている程の大規模な低気圧なのだった。
 とりあえず明日は、夕方の宿到着を早めることを前提に行程を組まねばならなくなってきた。幸い、後半の大回りコース700m峠を諦め、ショートカットの国道425の未済区間を進めば、15時過ぎには宿に着ける。未済区間を潰すことで、下方修正に意義が生まれるのだ。
 問題は翌日だが、この低気圧を見ていると何だか望み薄のような気がする。ということは、今あれこれ悩むより、とりあえず覚悟して明日再び天気予報を見て、慎重に結論を出すしか無い。

 そこまで決めたらもう寝るだけだ。まだ19:30、さっき真っ暗になったばかりだが。

記 2016/4/26

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Last Update 2014/2/22
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