西興部→(国道239)下川
(以上#6-1)
(以下#6-2)
→(道道60)上幌内→(道道49)仁宇布
(以上#6-2)
(以下#6-3)
→(道道49・国道275)美深
(以上#6-3) 100km
ルートラボ
(以下#6-4)
天塩中川→ポンピラアクアリズイング 3km
ルートラボ
夜中、窓の外に雷がぴかぴか大音響で鳴り、凄い音で豪雨が降っていたのを寝ぼけて聞いていた。ひょっとして天気予報の「9時まで雨」ってこういう状況なのか。
4時に起きると、なんと夜明けの空がからっと晴れていた。澄んだ空には小さな雲が浮かんでいるだけだ。やったやった、これなら行ける。しかし出発準備中、薄い雲が空を覆い始めたと思ったら、それはいつの間にか空一杯に拡がり、濃く暗い色になった。
今日の宿は、道北の天塩中川だ。天気予報はと言えば、オホーツク沿岸方面は1日雨、下川町と美深町は一応曇り時々雨。15時過ぎからは降水確率がぐっと下がっているものの、今日一番山が深くなる幌内越峠〜仁宇布〜上徳志別は、どちらかというとオホーツク沿岸の天気に影響される傾向が強い。このため、山深い下川〜仁宇布〜歌登までは、場所と時間の両面から雨に見舞われる危険がある。
昨日と同じく、過去には雨の日にこの区間を通ったことはある。しかし、晴れの日でさえ早朝や夕方には何だか森や山の圧迫感を感じるほど山深いこの区間、雨は避けられるものならなるべく避けたい。一昨年など、山入口の辺毛内で雷雨だったのに、歌登に降りてみたら曇りで路面すら乾き始めていた。つまり天気予報が予測する各地域市街より、山間の天気は悪いということだ。ましてや今年は雷を伴う大雨が全道、特に旭川で報じられている。平野部の旭川でそうなのだから、道北中部の山間は更に大雨だとしか思えない。
今日の行程を昨日と同じく全輪行に変更するとしたら、終着は宗谷本線沿いの天塩中川なので、北上移動は宗谷本線一拓である。西興部から宗谷本線の名寄までは名士バスが通っていて、何もこんな早朝に出発しなくても天塩中川には夕方前の言い時間に到着できる。しかし今雨が降っていなければ、少なくとも今出発して、名寄までは自走するのが適切だろう。下川までなら元名寄本線の駅だったバス停に小屋が整備されていて、途中何が降っても最低限屋根の下で輪行作業が可能だ。
つまり、今日何をするにしても、今ここ西興部が走れそうな天気なら、少なくとも予定通り出発するのがいい、ということになる。下川までで大雨で走れなくなったら、その段階で名寄までのバス輪行に切り替えればいいのだ。ちなみに下川から先の逃げ場所は仁宇布だけ。歌登では午後には音威子府行きのバスが無く、長距離タクシー輪行が必要になってしまう。不可能ではないが、極力避けたい事態だ。
5:40、西興部「ホテル森夢」発。天気は5時頃より悪化していて、空は一面低い曇り。行く手の山が、早くも真っ黒な雲に覆われているのが見えた。
まだここでは何も降っていないにも拘わらず、向こうから来るトラックのワイパーが動いている。恐らくすぐ向こうでもう雨が降っているのだろう。そして途中の電光掲示板には「紋別北部 大雨警報 発表中」の文字が。
上興部の道の駅「花夢」手前で小雨が降り始めた。雨具を着込むのも兼ねてバス停の小屋に避難し、一息付く。少し走ったので、早朝感じたような寒気はもう身体から消えていて、少し汗までかいていた。今日も快調な朝が始まったところなのだ、自分の中では。そんな状態で空はもう真っ暗で、時々雷まで聞こえる。
天北峠方面から車がやってきて、道の駅の駐車場に停まったので、峠の向こうの状況をヒアリングしてみた。作業着を着たその方は、天北峠への途中の分岐から林道に入り、森を点検してきたらしい。「山の中は雷が近くで鳴って危ない。天北峠方面は知らない」とのことだった。
峠まではこの先6km弱、標高差130mしかない。そして今日は天塩中川まで辿り着かないといけない。過去には西興部より南の滝上から天塩中川まで走れていたので、今日はその日よりは余裕はあるが、しかしあまりぐずぐずしている余裕は無い。輪行に切り替える必要があるなら早めに決める方がいいが、名寄行きのバスは8時台。そして、走っている内に雨が止むことだってある。
とにかく、今は多少の雨は我慢し、天北峠を越えてみよう。
天北峠手前で、予想、いや、期待通り雨がすっと上がった。
そして峠を下り始めると、面白いように急に雲が明るくなり、下ると共に青空が現れ始めた。
路面はまだぬらぬらの真っ黒、露骨に通り雨が降った直後のようだが、その雨は既に全部降り切ったようだった。
谷間が拡がった一の橋では路面が乾き、その先二の橋、三の橋と進むにつれ低い雲が消えた。あまりぐずぐずしないでよかった。
いつもやや退屈な二の橋、三の橋の谷間がしっとりと、しかし朝日に照らされ、眩しく輝くような農村風景が続いていた。当たり前の朝の風景が、何か大変に有り難い。
いや、この辺りはもともとのんびりと静かな風景なのだ。いつもここを通る時に気が急く自分が悪いのだ。落ち着いて旅の風景を楽しまねば、と反省。
7:15、下川着。
朝の日差しが、正確に東西向きの通りの路面を明るく照らしている。上興部ですこしだけ雨宿りはしたものの、早出が効いて到着時刻は申し分無い。天北峠より大雨から逃げ切った安心感で少し落ち着きたくなり、セイコーマートでちゃちゃっと物資補給しておく。気分だけでなく、仁宇布に向かうなら、この先多分お昼前の仁宇布まで商店はおろか自販機すら一つも無いのだ。
今のところ雲は高い。天気は予報より好転しているように見える。もしこの先雨が降るなら、行程を輪行に替えるエスケープポイントは、ここ下川か仁宇布だけだ。しかし、今日は仁宇布までは行ってみよう。そしてここでの出発時刻が、終着天塩中川の到着時刻に直結するのだ、私のペースは上げようと思っても全然上がらないから。
7:30、下川発。信号も無い分岐を曲がり、濁流のサンル川を渡って、道道60遡上を開始。
サンルダムの工事を見下ろしながら新道へ登ると、顔に水滴を感じ始めた。しかし、辺りには霧は全く無く、空も基本的に晴れていて漂う雲も高い。空の中に水の粒が漂っているぐらいなのだろう。
途中工事現場ゲートのガードマンさんに呼び止められた。この道で、3日前に熊が目撃されたという話を聞く。それは危険だ、やはり下川に戻るか。しかし、北海道に来てもう6日、ようやくやってきた晴れのサイクリングのチャンスである。ここで折り返すのは大変残念だ。熊鈴を鳴らしていればそう心配することも無いらしく、私の熊鈴は新得産の大変高性能(=やかましい)な熊鈴でもある。そのまま進むことにした。
サンル大橋から、青空と共にダム水没区間を見渡してみる。
数年前まで「この橋を渡れるようになるのはいつなのだろう」と思いながら通っていた旧道と共に、もうダム湖外周の岸辺っぽい辺りが堤のように整備が進んでいるのがよく見えた。
対岸へ渡って、山裾の新道区間から再び谷間中央の旧道へ合流。
深い森と開けた牧草地が断続する谷間を、のんびりと進んでゆく。
雲がやや早めだが、日差しは現れていて、木々や草の緑が明るい。そして道北ももう下川より北に来れば、この時間でも涼しい。至って平和で爽やかな道道60だ。これこそ北海道のツーリングに期待する状況だ。
特にこの道では、ここ数年いい具合で晴れることが多いような気がする。実は道北への往復に専らこの道を使うため、毎回2度通ることが晴れの日に通れる大きな理由だが、いや、中標津では3日間チャンスを作っても、近年なかなか晴れの開陽台に出会えていない。良い道が好条件で通れるのは、大変有り難いことだ。
キタキツネももう普通に道ばたに出没するのみならず、森区間の道ばたにかなり大きな糞を発見。夜か早朝か或いは日中なのか、明らかに道道60の路上にも熊はうろついているのだ。
サンル牧場の最北部からカラマツの森に入り、そのまま次第に斜度が上がって峠区間となる。と言っても峠らしい斜度は最初だけ、辺りが開けて笹原と原生林に変わる辺りから斜度がかなり緩くなり、峠部分に至っては平坦区間が2〜300mも続く。
9:40、幌内越峠通過。滝上出発の標準時刻より1時間以上も早い。さすが西興部出発だ。
ピヤシリ山林道の入口となっている広場を過ぎると、その向こうは雄武町の幌内川の谷間へ、おもむろに80m以上下ってゆく。開けた谷間に続く山々の濃厚な森林を見渡すと、こちら側へ入った途端、空に低い雲が急に増えたことに気が付いた。日も翳っている。そうか、雄武町はオホーツク海側だもんな。しかし空の低い場所に雲が増えているだけで、まだ危険を感じさせるようなものではない。
上幌内で道道49号へ。次は今日最大の登り、美深松山峠区間だ。
標高差は240m程度だが、峠毎に無人地帯が20km以上続くオホーツク山中でも際だって山深く、取付と峠手前の斜度は7〜8%と厳しい峠だ。そのためか、緩々の幌内越峠に比べて登っていて暑い。そろそろ10時だからかもしれない。噴き出す汗の臭いや身体の熱に、10時なりの暑さで元気になっているゴマフアブが尚更集まってくる。
取付の深い森から一旦斜度が収まる辺りから、雷が鳴り始めた。空模様の推移を伺っていると、峠手前の開けた山間では、雲が濃く更に低くなり、雷の音がかなり近くなった。8%の直登を見上げつつ、峠のすぐ上の雲の中、稲妻がのたうち回っているのもよく見える。
さっきから鳴っている雷で何となく予感はしていたものの、峠の向こうではこちらから稜線の向こうに見えている状態より天気が悪いのかもしれない。少なくとも、この山中から逃げ出さねばならないような事態に陥りつつあることを理解できる程に、天気は急に悪化しつつあるようだ。とにかく一刻も早く早く峠を越えて、仁宇布に下ろう。
峠から下り始めると、予想通り雲が更に低く濃く、次から次へと動きが速い。下る途中、美深松山湿原への分岐辺りでは、今通り雨が上がったばかりのように、路面が真っ暗のぬらぬらに変わった。かなりの勢いの雨だったと思われる。
そして通り雨が一時的に上がったからと言って油断できる状況ではないことは、廻りの低い雲と空の暗さを見れば一目瞭然だった。もう空の表情自体ががらっと変わり、何だか襲いかかってきそうなのだ。そして下るにつれどんどん辺りは暗く、気温は低くなってきた。
10:40、何とか仁宇布着。交差点のコイブ前に自転車を停めたところで、中粒ぐらいの雨が降り始めた。コイブは営業していなかったので、少し奥、トロッコの仮設テントに避難させていただく。
雨はしばらく中粒ぐらいで降っていた。テントから出て見上げる西尾峠方面の雲は、周囲に比べるといくらか明るい。歌登の天気予報は終日曇りだった。天気予報はもちろん歌登市街の予報であり、市街で晴れでも道道120で雷雨であることは珍しくも何ともない。西尾峠を越えたら、少なくとも多少雨に降られるかもしれない。しかし基本的には回復の方向で推移してくれるはずだと思われる。ならばこのまま行かねば。西尾峠から歌登までずっと雨に降られたことだってあるのだ、過去には。
等と缶コーヒーを飲みながら考えている内に、雨は弱まってきた。行くなら今だ。10:55、仁宇布発。
交差点を過ぎて歌登方面に進むと、すぐに前から車がやってきた。ちょうどいい、この先の情報を仕入れねば。車の人が言うには、
「歌登までずっと大雨だよ。もの凄い雨。雷が凄い。ありゃー危ないよ。自転車?止めた方がいいよ」
とのこと。そう言えば、北側の山々全体が、さっき見たより明らかに霞んでいる。そして横の山を見上げると、今まで手前の山に隠れて見えなかった雲がかなり黒ずんでいて、どんどんこちらに拡がっている真っ最中だ。この先どうするのかというより、こいつはヤバイぞ。
いや、まだ間に合う。早く撤退しよう。すぐ美深に降りれば助かる。
道道60を下り始め、仁宇布の交差点を過ぎると、すぐ雨が降ってきた。さっきみたいな中粒ぐらいの、しかし動きが速い嫌な雨だ。振り返ると、少し向こうの山肌辺りが雨で霞んでいる。降り始めた雨はこちらに拡がってくるのは早かったが、谷間を下り始めると動きの速い方向と谷間の方向は違うようで、高広PA辺りで何とか再び雨雲の範囲からは脱出。
その後も時々後ろを振り返りつつ、なる早で谷間を急降下。
逃げ切れたと本当に安心できたのは、美深盆地手前の班渓発電所辺りだった。
11:50、美深着。
美深駅で稚内方面行きの列車を確認すると、13:02に稚内行きがある。あと1時間10分、ゆっくり輪行して蕎麦を食う時間には十分だ。相変わらず暗めの曇りなのは変わらないし、これで今日の後半は輪行確定だ。
次は蕎麦だ。町中で目に入った蕎麦屋へ入ると、流石蕎麦処の美深、大変美味しい蕎麦を戴くことができた。その間、店にいる間に外に停めておいた自転車は、知らないうちに雨に濡れてしまっていた。しかも濡れ方から想像するに、短い間でもそこそこ以上の勢いで降ったようだ。
しかし、駅で輪行作業を始めると、何と上空の雲が切れて青空が現れ、何だか爽やかな風まで吹き始めた。晴れてしまったぞ。判断を誤ったのか、おれは。悔しくなり、空を見渡してみると、美深盆地の中は部分的に晴れているというのに、天塩川下流側で谷間が急に狭くなる恩根内方面には、かなりこってりした灰色の雲がかなり低く溜まっている。のみならず盆地周囲の山々にも、ぐるっと山裾から山側だけに雲がまとわりついている。つまり、平地は晴れのように見えても、ちょっと山方面に向かうと雨であるらしい。
それなら、谷底だけ走っていれば雨だけは回避できるかもしれない。何も輪行してしまうほどのことは無く、国道40を北上すればよかったかもしれない、とは思ったものの、もう自転車は袋の中。今更再び組み立てる気はしない。そして山方面の黒く低い雲を見ていたら、どうせオホーツク山中を走れないのだ、という実感も得られた。かと言って国道40なんてあまり走りたくない。
美深を出発した宗谷本線の各駅停車は、あまり雨に降られること無く、比較的明るい空の下を北上していった。夏の北海道らしく、各駅停車の乗客は鉄っぽい方が多く、今日は自転車は私だけだった。チャリダー達は今日は谷間を走っているのだろう、きっと。車窓からは、谷間を囲む山々に、100mぐらい上空からもう濃い灰色の低い雲がたっぷりまとわりついているのが見えた。きっとあの中はかなり天気が不安定なのだろう、と思えた。
となると、やはり国道40を走るか走らないかが、輪行するかしないかの選択の分岐なのだ。自分の場合はどうか。何も国道40をそんなに嫌うことは無い。今日だって、少なくとも音威子府→佐久の20km余りでは国道40を走るようなコースになっていた。でも、美深→音威子府は交通量がやや多く、そして国道40で絶対に雨が降らないという確信も無い。
取り留めない気持ちに苛まれている間にも、時間はいつものように経過し、普通列車は適切に正確に自分の仕事を進めていた。14:28、天塩中川着。
ホームに降りると、雲はやや多く風が強いいものの、青空から明るい日差しが射していた。またもや走れば良かったかもしれない、と思った。しかし、最初晴れていた空には、輪行中にすぐ雲が広がった。そして強めの風が吹き始め、少し離れたセイコーマート補給中、南の雲がどす黒くなってどんどん拡がりはじめた。やばい、逃げ切らねば。結局今日は国道40を走っても、終始こんな感じだったかもしれない。
それにしても、道東だけでなく道北も、一昨年の2013年以上に変な天気であることに、ようやく私は気付き始めていた。
15:30、ポンピラアクアリズイング着。
明日の予報はは朝から曇り。予定コースは、日本海沿岸の道道106から抜海、宗谷丘陵の道道1117を経由し、オホーツク海を猿払村まで下る。オホーツク沿岸、特に午後から夕方の天気予報は冴えないが、何とか1日走れそうな気がする。最後のオホーツク沿岸で、あまり遅い時間にならない方が良さそうだ。
そして、上記のの日本海沿岸経由大回りのパターン1の他、日本海へ出ずに、最初から内陸を北上するパターン2も考えてはいた。
どちらのパターンも未済経路を含み、特にパターン2はサロベツ原野東の台地の脇道未済経路を多くこなすことができる。中川は内陸方面へ向かいやすいので、明日朝起きてもし天気が良ければ、この機会にパターン2に行っておきたい。しかし天気予報と、ここ数日の天気の推移を見るにつけ、何だか内陸は望み薄のような気もする。特にニュースで報じられている旭川方面のゲリラ豪雨は、今回山間で出会ってきた天気の急変と全く同じ現象のようで、気圧配置を見ても、道内内陸のどこでゲリラ豪雨に見舞われても全く不思議じゃないように思われた。
記 2015/12/19
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