北海道Tour15#4 2015/8/9
開陽→チミケップ湖-1

開陽→(道道150)養老牛→(道道885他)萩野 (以上#4-1)
(以下#4-2) →(国道243)仁多→(農道他)弟子屈→(道道717)
札友内→(国道243)屈斜路→(農道)ウランコシ
(以上#4-2)
(以下#4-3) →(道道588・林道)津別 (以上#4-3)
(以下#4-4) →(国道240)本岐→(道道494)チミケップ湖
 134km  ルートラボ

ニューサイ写真 RICOH GR GR18.3mm1:2.8 A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路 濃い灰色は既済経路

 起きてしばらく経ち、明るくなったが、窓の外は濃い霧だ。空の薄暗さと霧の濃さから、1時間か2時間経っても多分晴れないだろう。ここでこの霧なら、開陽台もまず霧の中だ。立ち寄っても何も見えないだろう。数日前まで晴れの猛暑だったらしいし、もう天気の大きな周期がこんな感じで、何か企んでもあまり事態は変わらないのだろう。
 それより、身体全体になんだか少し、自分の身体じゃない別の物質のような違和感がある。もっと言えば、昨日の202kmの明らかな疲れが残っていた。諸般の事情で寝れなかった影響が如実に出たな、と愚痴を言っても疲れは解消しないし、今日の行程に何か前向きな変化が起こるわけでもない。今日のところは何とか確実にチミケップ湖に辿り着き、あとは1泊3万弱のチミケップホテルで最大限にコストに見合う休息を取らなければ。
 身体が疲れていると、何を腹に押し込むのにも、昨日以上の量の水が必要だ。ちょっとおにぎりを食べてはぱくぱくむしゃむしゃ、時間を掛けて飲み込んでゆく。でも今食べないと、出発してすぐに走れなくなってしまうのだ。

 5:35、民宿地平線発。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 霧が濃いだけでなく、路面が真っ黒ぬらぬらで、ほぼ雨一歩手前だ。もう最初から開陽台は諦めて、上手の町道北19ではなく、下手の道道150から西へ向かう。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 途中の牧草地から見上げる開陽台は、やはり完全に雲の中。そもそも周囲の遠景全てが全然ダメなのだった。それでも開陽台は行けば必ず何らか感じられる場所ではあるし、コンディションが最悪でも開陽台へ向かった年も過去にはあった。でも、今年は止めておこう。3日チャンスを設けた今年の中標津だったが、結局昨日の1回しか訪問できなかったことになる。しかも、昨日も結局雨と霧で何も見えなかった。
 俣落からは昨日と全く逆向きの登り。なんだかんだで100mの登りである。よりによって昨日下って開陽に帰ってきた、コース最大級の下りが登り返しで再登場するわけで、思えば勿体無かったな。なんでこんな地形になっているんだろう。疲れていると思い浮かぶのは初期設定への行き場の無い愚痴ばかりだ。

 まだまだ早朝、挫ける時間ではない。体力温存で十分ギヤを落とすと、台地直登の坂でも全く問題無く登れる。身体が動き始めているのか、朝心配したほど何もできないわけじゃない。そして北進へ登ると、少し空気が晴れてきた。これも毎度のパターンである。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 これなら開陽台でも展望は利いたかもしれないとは思っても、開陽台はこの辺より多少標高が高く、山裾に近い。目の前で霧は薄めに推移していても、多分開陽台ではまだまだ霧が濃いのかもしれない。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 冴えない天気の大きな原因が近年の地球温暖化だとするなら、今後夏の中標津はもうこんな感じなのかもしれない。折角中標津を走っているのに、そして今日はもう根釧台地から北見エリアに行ってしまうのに、大好きなはずの風景を眺めながら、煮え切らない気分が続く。

 6:55、養老牛着。
 開陽から走ってくるとそれなりに身体は温まっていて、もう起きたばかりのような違和感は身体には無い。世の中もそれなりに活発に動いていると錯覚してしまうが、普段でさえシャッターが閉まりっぱなしの長川商店は、尚更ひっそりしている。いかんせんまだ6時台。ボトルの水もまだまだ十分、自販機でコーヒーでも飲めば他に用は無い。とっとと先に進もう。

 西別岳登山口を過ぎると中標津・標茶町界が登場。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 昨日と全く同じ道、進行方向は逆方向で、わずか10数時間前に眺めたばかりの、牧草地とカラマツの防風林が次々に登場する。

 本来は武佐岳から西別岳に続く知床山脈の山々が北側に見えているはずだが、今日は低い雲に覆われて、こちらからは全く見えない。それでも養老牛を挟んだ道道150〜885の風景には、何か特別のきりっと締まった印象がある。あるいはそれは、台地と山裾の境界故の雰囲気なのかもしれない。

 中虹別の牧場と西別川を渡るアップダウンを過ぎ、国道243に合流する手前で短い農道へ。もう少し先で結局国道243に合流するまで間、車がほとんどど来ない静かさを味わえる。農道を経由せず国道243の丘で、津別峠に向かう前に根釧台地の地平線を振り返りたい気もする。しかし、今日の濃い霧ではそれは叶わない。

 もう根釧台地の縁部分。入り込んだ農道では、国道243で丘を経由するのと変わらないぐらいには登らされ、今朝この時間帯では静かすぎ、茂みには熊が出そうな雰囲気も感じられた。


 萩野で国道243へ出ると一気にペースが上がり、平滑な路面のなせる技か、交通量故の路上の気流故か、やはり単に走るだけなら国道は走りやすいのを実感できた。

 根釧台地と弟子屈の間、小さな峠への登りが始まる辺りでは、再び周囲の霧が水滴に変わり始めた。丘の上に雲がかかっているとおりの現象だ。ところが、向こう側の仁多に下ると一気に辺りが澄んできた。根釧台地と弟子屈では、やはり天気が変わるのである。

 スノーシェッドを抜けて広々とした空間が新鮮な仁多からは、国道243を離れて町道へ。根釧台地から弟子屈へ下るパターンの印象を楽しいものに変えてしまった、近年の私的幹線ルートだ。

 今回は更に弟子屈市街へ下らずに、北側の新ルートで美留和方面に向かおうと思っていた。しかしさっきあまりに素っ気ない長川商店の自販機に出会ってしまい、何かどうしても人の営みに出会いたい気分になっていた。結局いつもの通りに弟子屈へ寄ることにした。

 牧草地、畑、森の中を標高差200m。

 北海道ではそこそこまとまった下りに感じられるボリュームを一気に下り、8:50、弟子屈着。

 国道243を横断すると、摩周駅裏側に出る。摩周駅は出入口が線路の反対側にしか無く、こちら側には線路の柵だけがあり、駅も町並みも取り付く島が無い。

 

 その摩周駅に、単行の普通列車が停車している。1両に2ヶ所しかないドアは、学生さん団体の輪行袋で溢れそうな状態で、誰も乗降できないであろう状態だ。これはまずい。どういう置き方をしても、最低限お客さんが通行できる部分は残しておかないといけない。今の場合は自転車が多すぎるので、そもそも移動する列車を分散分散するべきレベルだと思う。自転車を列車内のどこにどのように置くべきなのか、もともと彼らは知らないのだろう。
 輪行の実態はここまで来てしまっている。ツーリスト全体が何とかしていく必要があると思う。

 しかし、距離は近いがあちらは線路の中、こちらは路上で全く別の世界の出来事になってしまっている。目の前の現実としては、手持ちの時間で前に進まねばならない。

 町の反対側で上手に乗り上げ、セイコーマートで小休止。サラダやヨーグルトは早朝既に食べているので、実際には缶コーヒーと補給食補充で事が足りるのは有り難い。
 9:05、弟子屈発。

 札友内の台地に登ると、すぐに空が明るくなり、何と路面があっという間に乾き始めた。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 国道243に再合流して牧草地から山裾の森に差し掛かると、日差しすら登場。やはり弟子屈辺りで如実に天気が変わったのであった。

 湖畔の畑を眺めながら、今回いつもお世話になっている鱒やには泊まれなかったなあと思う。鱒や自体は場所も居心地も食事も大好きであり、全く不満は無いのだが、立ち寄れない大きな理由は根釧台地で最初に太平洋岸へ向かってしまうコース取りだ。太平洋岸で1泊、根釧台地202kmを挟んで民宿地平線で連泊、津別峠もチミケップ湖も経由して道北へ向かうと、10日の行程全体中どうしても4日目に北見に抜けておく必要があるのだ。当初予定の弟子屈迂回を変更していつもの経路で鱒やの近くを通ると、ますます鱒やの橘さんに申し訳が立たないような気になった。

 屈斜路では遂に青空が登場。国道から山寄りの農道に入ると、緑の畑が輝くようだ。これが夏の北海道ツーリングだ。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 結局、根釧台地から出ないと青空には出会えなかったんだ、と思った。

 日差しが出ると一気に気温も上がる。空港に着いてから丸々3日間、低温に身体がすっかり慣れていたためか、強力な直射日光と照り返しで、身体全体の水分の温度が上がる感覚すらある。頭も胴体もすぐにオーバーヒートしてしまいそうだ。

 たまらなくなってポロシャツを脱ぎ、Tシャツ一丁になる。きっと津別峠の向こうはもっと暑いのだろう。とはいえ日差しに輝く緑色は北海道の夏そのもの、これが見たかったんだよな。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 湖岸の畑を、暑さにかまけてペースを落とし、ゆっくり進んでゆく。この辺りでは国道243ももともとそう交通量は多くない。畑の向こうに車が取り過ぎてゆく眺めが、こちらの低山や溢れそうな湖面の屈斜路湖と同じく、何だか夢の風景のようにのんびりと静かだ。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 釧路空港を3日前に出発してから、ようやく夏の北海道に着いたような気がしていた。まあそう考えると、急行八甲田と連絡線で北海道に向かっていた頃と、北海道アクセス事情はあまり変わっていないような気になる。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8
 

 津別峠分岐のウランコシで地図交換をしていると、後ろから来たワゴン車が「プップー」。まさかの、というか待ってました!何と鱒やの橘さん登場である。今回は町の自然調査係でこの辺りを車で定期巡回していたとのこと。何も事前調査係じゃなくても毎日この辺りを徘徊していそうな橘さんだが、いや、この広い道東で、そうそう知人にばったり遭遇するものではない。大変有り難いことだ。
 鱒やに泊まらなかったのに橘さんに会えたのが、最後の最後で道東からの嬉しい贈り物だったような気がしていた。ならばもう心残り無く、津別峠を目指すしかない。橘さんに手を振って、10:35、ウランコシ発。


 そう長くない取付の直登区間では8%ぐらいの坂が続き、既に汗だらだらだ。何とか耐えて森に辿り着いても、やはり7〜8%の厳しい坂がしばらく続く。時々振り返ってみるとけっこうな下りが見え、自分でも4サイドでこんな坂登るもんじゃないよと思う。

 しかし、曲がりなりにも毎年この峠を登っているのだ。シフトチェンジのタイミングを逸した去年の教訓を活かし、つづら折れの折り返し辺りからもうインナーローに落としてしまう。また、この峠で、私は虫がいたとか森が綺麗だとか時々言い訳を作って脚を着くことも覚えてしまっている。

 汗がだらだら流れるものの、水に不足は無いし、木漏れ日の森は照り返しからは開放されて、下界の畑よりはかなり涼しいと思える。

 昨日の寝不足はあるが、展望台まであと600m前後、これなら今回は確実に登れるという気がしてきた。

 そして標高400mぐらいまで耐えれば、その先は森から涼しい風が吹いてきて温度の負荷が少なくなり、更に斜度にも緩急が出てシフトアップまで可能になる。石の上にも3年。いや、捨てる神あれば拾う神あり。いや、渡る世間に鬼は無し。あまり適切ではない例えを探しつつ、どっちでもいい思考に自分が何だか可笑しくなる。やはり楽しい津別峠である。

 身体が楽になったなと思っていたら、いつの間にか空が再び曇り始めていた。標高450〜600mで森の頭上が開けたものの、終始薄曇りで日差しが時々現れる程度。

 峠まで最後の折り返しから再び一登り。峠へ続く稜線はすぐそこなのに、視覚的にも如実にわかる程、何だか一気に斜度が上がるのだ。再びインナーロー(ちなみに28×28)を投入し、ゆっくりゆっくりではあるが着実に登ってゆく。これも毎度の事だ。

 12:10、津別峠着。睡眠不足の影響は心配していたほどじゃない。そして去年よりだいぶ調子良く登れている。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8 パノラマ合成

 少し水を飲んでおにぎりを補給後、12:15、津別峠発。

 インナーローでふるさと林道へ。10%超の直線は、何より見上げる風景が視覚的に大変厳しく、自分でもよく登っているな、と可笑しさすら感じる。

 RICOH GRU GR18.3mm1:2.8

 脚の方はゆっくりながら意外に回るので、どうしても厳しくなるまで汗をだらだら流しながら何とか少しづつ登ってゆく。時々ワゴン車が下や上からやって来て脚を着きそうになるものの、今回は何とか残り距離1/3の5%区間まで辿り着けた。

 イここまで来れば、フロントをセンターに戻して15km/hで走ることができる。尤もここにしても、帰りの下では意外に速度が上がる斜度だ。

 12:45、展望台着。今年もここまで来れたことが嬉しく、まずは諸々の好条件やツーリングの神様に感謝。
 裏手の広場からは、屈斜路湖が眼下に拡がっているはずの場所一杯に、かなり厚めの雲海を見下ろすことができた。この展望台にはうっすら日差しが出ているのに、そしてさっき屈斜路湖岸では青空さえ眺めることができたのに、雲が広がってしまったのだ。

 PENTAX K-5 SIGMA10-20mm1:3.5EXDC パノラマ合成
 

 西側、つまり北見側は結構晴れていて、雌阿寒岳や津別方面の山並み、大雪まで雲から頭を出している。暑さによるものか、何となく霞っぽいようにも見えるものの、とにかく大雪まで見えるならそこそこ以上に晴れている。今日はチミケップ湖泊、明日は西興部泊。少なくとも明日いっぱい、日中は暑さと何らかの形で関わらなければいけないだろう。そして、今回の道東の霧と雲に、ようやく納得がいった気がした。これだけ厚い雲がずっと広がっているのだ、道東には。

 PENTAX K-5 SIGMA10-20mm1:3.5EXDC パノラマ合成

 今日は早朝の開陽台を省略したので、約1時間行程に余裕がある。今日の展望台には、私の他に車で登ってきた人々が時々いるだけだ。屈斜路湖側の雲海を見る限り下界は曇りなので、展望台まで狭い道を登ってこようとは思わないのかもしれない。例え曇りではあっても、この天上で雲海を見下ろしながらだらだらと過ごせることが、とても贅沢なことのように思えてくる。自転車で登れたことで、有難みもひとしおだ。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 汗が収まってみると外の風がやや肌寒い。ならば建物の中でおにぎりでも食べてのんびりすればいいのだ。そしてちょっと眠くなってきた。構わない、居眠りしてしまえ。幸せだ。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 階下から上がってきた子供の声で目が覚めた。10分しか経ってない。普段会社で昼寝するのと変わらない。もう1回外で写真でも撮って、そろそろ下り始めよう。

 13:35、展望台発。

 登った道の風景が次々登場して通り過ぎてゆくのはいつもの通り。忘れ物などしていたら大変だと、下り始めて気が付くのも毎度のこと。

 しかし、展望台下の穏当区間から急下り区間に移行すると、そんなことも気にならなくなってしまう。これも毎度のことだ。

 津別峠下から道道588を下り始めると、さっき峠から眺めたとおり、津別側は雲が屈斜路湖側より明らかに高く、辺りが明るい。

 周囲を見下ろしていた木々の外側はいつの間にか谷間の森に替わり、山腹トラバースから折り返して谷底への急降下に替わる頃には、更にだいぶ気温が上がっていた。

 そして上里の谷間に降りると、もう完全に風が熱い。まあそれでも気温そのものは25〜7℃ぐらいか、今まで道東にいたから暑いと思うのであり、関東平野とは比べものにならない涼しさのはずだ。

 周囲にカラマツの森、時々牧草地と農家が登場し始め、上里小学校跡、美都、そして豊郷。記憶通り津別峠展望台から普通に下って、津別の町外れまで1時間。

 既に空はすっかり晴れていた。14:45、津別着。


 

 津別峠展望台で50分もうだうだしたばかりではあるが、津別でもセイコーマートに立ち寄っておく。明日早朝の出発前〜訓子府辺りに降りるまでの食料を仕入れておかねばならない。それとは別に、毎日野菜とヨーグルト、みかんジュースをどこかで摂っておく必要があり、さっきの弟子屈では未済だった。そしてセイコーマートでは、フライドチキンやフライドポテトなど、塩分系カロリーの補給も可能だ。店先の駐車場が広く通りから奥まっているこの店舗では、落ち着いていろいろ食べることができる。行程的にも上里からずっと北上で下って来て、折り返して南下に向かう津別。セイコーマートがあるなら、様々な観点から補給ポイントには申し分無い。

 店で所用の品を一通り急ぎで仕入れ、店先でむしゃむしゃ食べ始める。去年声を掛けてくれたツーリング少年は元気でいるだろうか。そう言えばこのセイコーマートでバイトしてるって言ってたな。と思い出し、はっと気が付いた。さっきレジで会計してくれた少年がその人ではないか。
 果たしてその通りだった。先方も私の事を、「なんかこの人見たことがあるかもしれない」と覚えてくれていて、再会は実にスムーズだった。アルバイト中なのであまり話し込むことはできなかったが、その後1年間に、網走も津別峠も順調にチャレンジしてみた、とのことだった。とても嬉しい再会である。今日は嬉しい再会が2件、道東の神様のプレゼントだったかもしれない。ツーリングの神様やら道東の神様やら、神様で一杯なようだが、それでいいのだ。日本は八百万の神様の国なのである。

 15:30、津別発。

 本岐まで8km、しばし国道240を南下する。8kmというと、驚く程には近くじゃないし、かといって行程上の一区間の認識には足りない。10kmぐらいあると思っていると短かった、それぐらいの心構えがいいかもしれない。
 15時を過ぎて、日差しには赤い色が混じり始めている。その日差しは、津別を離れると空に再び雲が増え始め、次第に薄くなっていった。今はそこそこ青空が見えているが、チミケップ湖ではまた空一杯の曇りなのかもしれない。等と思って脚を回していると、すぐに谷間が狭くなって本岐に到着。

 本岐からチミケップ湖へは、道道494で12km。低山に挟まれたケミチャップ川の狭い谷間に畑と茂みが続く。

 景色は開けず、途中山方面以外に特に分岐があるわけでもなく、農家は数えるほど。途中の観光牧場にも自販機などは無い。せめてここに自販機があったら、と思うこともある。

 最後のダート区間まで、抑揚の無い風景が微妙な登りを更に単調にしている。

 まあこれがこの道の表情だ。毎度の訪問で距離感覚はわかっているし、今日は暑くないのが有り難い。

 16:50、チミケップ湖着。湖畔に着いてみると、やはりこの山中では雲が濃い。晴れた日には濃紺と水色に見える湖面は、今日は灰色の雲を移して鉛か水銀のような色だ。

 湖岸をそのまま進み、一旦ホテルの前まで行くが、思い直してそのまま奧へ進みいつものキャンプ場へ。

 運良く湖岸の樹の下の定位置が空いていた。自転車を停めて夕陽を少し待ってみるものの、やはり湖上の雲は厚い。日差しのニュアンスさえなかなか現れてくれないのだった。しかも、風がそろそろ冷たくなってきた。夕食まで1時間弱、もうホテルに戻って次の行動を進める方がいいかもしれない。

 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 17:15、チミケップホテル着。

 部屋に入って少し休んでいると、外に夕陽が出ているではないか。あと30分あの湖畔にいれば良かった。大変恨めしい一方、世の中ってこんな物かもしれないとも思う。

乗り換え地点 パターン1 パターン2 パターン3 パターン4
北見発

JR石北本線 

遠軽着
7:12
特急
オホーツク2

8:07
9:12
特快
きたみ

10:14
  10:19
特急
オホーツク4

11:14
  13:24
普通
遠軽行

14:53
14:19
特急
オホーツク6

15:14
遠軽発

北見バス 

紋別着
09:11



10:36
11:11



12:35
12:35



14:00
  15:40



17:05
紋別発

北紋バス 

興部着
11:30



12:15
12:45



13:29
13:49



14:30
15:47



16:32
16:15



16:56
18:15



18:56
興部発

名士バス 

西興部着
12:15



12:35
  14:50



15:17
  17:10



17:37
19:35



20:02

 天気予報をチェックしてみると、紋別地方で何と明日12〜15時の桝以降が雨になっている。しかも降水確率60%。明日の予定は、去年全輪行となったチミケップ湖→遠軽→滝上→西興部。チミケップ湖から走り始めれば、過去実績から考えて遠軽は大体11時過ぎに出発できるはず。つまり12〜15時以降が雨ということは、あの山深い上原峠登り〜紋別市山中、そして滝上から西興部も雨に見舞われるということだ。この区間の雨がどんなに恐ろしいかは、過去2〜3回体験してすっかり懲りている。もし雨が降るなら、この区間を避ける必要がある。しかしこの区間、紋別〜滝上〜西興部を通る鉄道やバスは皆無なので、遠軽から海岸の紋別、興部を経由して、バスを2回乗り継がなければならない。バスは極端に便数が少なく、西興部に夕方の普通の時間に着くには遠軽11時台発一拓だ。

 つまり、輪行時間を見込んで遠軽には10時半に着いていたい。そのためには、明日早朝出発すればいいだけだ。遠軽まで4時間あれば着けるだろう。チミケップ湖で早朝に写真を撮りたいから、チミケップ湖発は6時半だ。しかし、途中で何かトラブルがあるかもしれない。そして危ない橋を渡っても遠軽までしか走れないし、チミケップ湖の山中から降りた訓子府以降、遠軽まで全部国道だ。明日の主目的、上原峠〜狐沢橋〜西立牛峠を走れるわけじゃない。そして、雨が早まる可能性だってあるのだ。いや、天気の前倒し進行は夏なら当たり前だ。

 そんなことを考えていたら、いっそのこと去年と同じくチミケップホテルから全輪行にしてしまえ、と思えてきた。自分でも何でそこまで諦める必要があるのかと思うものの、何回もこのコースを走って辿り着いた方法だとも思う。最初からこの区間を避けて計画しておけばいいだけなのだが、この山奥区間はとても魅力的な道なので、計画段階としてはやはりコースに入れないわけにはいかない。

 行程全体の起承転結とは別に、とりあえず今の現実として、2年連続で3万弱を投入しつつ結局翌日全輪行となってしまうという事態に、私は直面していた。そして明日輪行するなら、今がホテルに北見への送迎車を頼む最後のチャンスだ。いや、もう夕食前。既に時遅しかも知れない。少なくとも明日朝にはもう送迎車はお願いできない。北見からタクシーを召還する、去年を上回る大技のお出ましである。
 悩んだものの、明日の行動についてはとりあえず天気の好転に掛けてみることにした。頼む、お天気様よ、何とか機嫌を直してくれ。

 18:00、ころっと気分を切り替えて、夕食のフランス料理だ。数時間前まで汗だくで津別峠展望台にセイコーマートだったのに、今はボーイさんが恭しくしずしずと、お皿の真ん中にちょこっとお上品に載った料理を運んでくれる。去年と違い、この違和感が大変楽しい。2年連続の経験で、こういうのも北海道Tourの引出しの一つになったのかもしれない、とも思った。

 夕食後にも天気予報は好転しないのみならず、降水確率は60%とやや悪化した。明日早朝に予報が好転していなければ、北見からタクシーを呼ばなければならない。北見には9時過ぎの列車に乗る必要があるので、片道1時間と考えると、最低限7時にはタクシーを呼ぶ必要がある。それはフロントにお願いしよう、1泊3万のホテルなのだから。

記 2015/11/29

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Last Update 2016/3/7
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