2014/5/31 徳本峠#1-4

新島々→(国道158)島々→二俣 (以上#1-1)
→岩魚留小屋 (以上#1-2)
→徳本峠小屋
(以上#1-3)
徳本峠小屋  19.6km   RIDE WITH GPS

峠の広場は登山者とテントで一杯 RICOH GR GR18.3mm1:2.8 徳本峠到着 赤は本日の経路

 12:55、徳本峠到着。まずは登山者で大賑わいの峠を乗り越え、有名ないきなり眼前に拡がる北アルプスを眺めます。

北アルプス登場!12:58 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 期待通り、青空の中に残雪の山々が聳え立っていました。澄んだ空気の向こう、その姿は間近にすら感じられますが、一方で今日ずっと辿ってきた島々からの森、沢の実体感と、目の前の空、景色が明瞭であればあるほど感じられる空気の透明感は対照的で、ようやく標高2134mを実感します。

徳本峠から北アルプス方面を望む 赤は本日の経路

 再び我に返ると、辺りは人で一杯。峠の広場で休む人、私と同じように山々の景色に見入る人。「すっげー」「手前が明神岳、前穂高岳。その奧が奥穂高岳、天狗岩、西穂高岳。ちらっと見えるのが笠ヶ岳だよ」「へー、こんな位置で見えるんだ」などという解説、があちこちから聞こえてくるのも大変に有り難い。
▼動画32秒 峠の広場 展望360°
 今朝二俣の先でお会いした地元のお二方をはじめ、途中随所でお会いした皆さんとも再会。写真も撮っていただきました。

 まもなくとしさんも到着、徳本峠小屋で到着手続きをしてから待望のビール祝杯に。と、さすが標高2000m以上、たった500mlでもうへろへろに酔っ払ってしまいました。自分はよっぱーでも辺りは相変わらず明るい真っ昼間、峠は聳える山々に囲まれて天上の楽園。次から次へと登ってくる登山者の皆さんを眺め、時々また北アルプスを眺める幸福な時間。改めて、今日の余裕ある行程だからこその楽しさと、かなりの晴れであることの有り難さを噛みしめます。

14:34 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 青空の中で酔っ払って、北アルプスやこっちの山を眺めたり、次々登ってきて上高地へ下ってゆく登山者達を眺めたり。見ていると、想像以上に登山客が多いのを理解します。これだけの人々が、バスに乗らずに伝統のルートで徳本峠を越えて目指すウェストン祭というのは、やはりかなり重みのある催しだとも感じました。そういえば、としさんが登り途中で環境省の方に「上高地では自転車に乗らないで楽しんで欲しい」旨話しかけられたとのことでしたが、環境省の方もわざわざ徳本峠ルートでウェストン祭に出席されるということなのでしょう。

実は16:16 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 上機嫌で15:30過ぎまで外にいると、いつの間にかやや風が吹いていて、思いの外冷え込んできました。さっきまであんなに暖かだったのですが、「少なくとも15時までには到着して下さい」という特区号峠小屋の張り紙を思い出しました。
 というわけで小屋に戻り、17時の夕食まで少し昼寝することに。次に高地タイマーで目覚めたのは16:45。経過時間なりに雲が去り、陽差しの向きと色が変わって、靄が晴れた夕暮れ前の北アルプスを、もう1回眺めることができました。

夕食直前 17:04 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 時間通りに夕食は17時から。今日の徳本峠小屋は定員一杯の30人宿泊、夕食の人出も壮観でした。美味しくバランスの取れた食事に、スタッフの皆さんがご飯、味噌汁のお代わりに廻って下さって、あっという間に満腹に。

  18:33 RICOH GR GR18.3mm1:2.8
  18:56 RICOH GR GR18.3mm1:2.8
  19:03 RICOH GR GR18.3mm1:2.8

 食後はフリースを着て、夕暮れの北アルプス鑑賞です。

 晴れ渡った空の下、やはりさっきとは光線が変わって、山々の姿はまた表情を変えて登場してくれました。完全に一つの面だと思っていた明神、前穂が、奧穂を始めとする山々の前にあることが一目でわかります(ちなみに山の名は受け売り)。また、稜線の向こうに霞んでいた笠ヶ岳も、くっきり濃いシルエットに変わって、裾まで見えています。
 夕陽はこちらからは既に山影の中。直接見えませんが、この時間夕陽は刻一刻と急速に沈み、空と景色の色、空気の感触を刻一刻と変えてゆきます。ほわんと明るい空の下側が次第にオレンジ色に変わって、モノトーンに沈んだ山影のディティールが浮き上がって岩の縞模様が現れ、空の中の斜光線(通称天使の階段)が現れては消える度、次第に角度が水平に近くなっていきます。

 辺りの風はどんどん冷たくなってきています。峠の広場にはテントが何帳か。こちらもお昼過ぎから広場には顔を出しているので、テントの主の皆さんは大体知っているのですが、こんな素敵な場所で夕陽を眺め、景色の中で夜を迎えられるのが大変羨ましい。まあ山小屋の食事も大変美味しく楽しく、屋根の下安心して眠れることはこの上無く有り難いことです。
 何にしても、安心・満足して今日を振り返りつつ、この天上に身を置けている有り難さよ。

 思えば先人の皆さんの開発されたノウハウ上に、今日の余裕ある計画・行動はなり立っています。今日自転車に乗れたのは、新島々から二俣までの10km、1時間余りだけ。残りの7時間、自転車は10kgまるまる単に荷物だっただけでした。そしてここにはお昼過ぎにもう到着、あまつさえ昼寝付き。しかしこの緩さ、余裕こそが、今日の楽しさの理由なのだと思います。
 時間の余裕を持って計画すれば、途中で必要以上に急いだり焦ったりする必要は無い。適切な装備と判断が、安全、楽しさを実現してくれます。そしてこのコースは、あえて伝統のルートを上高地を目指すものとして、島々を早朝に出発して可能な限り余裕を持った行程で途中の道を一杯じっくり楽しみ、徳本峠小屋で(または上高地で)泊まるのが多分一番楽しいのだと思います。それなら、絶景を目の前にして、残り時間を気にしつつ次へ急がないといけない詰め込み計画は、意味が無いのかもしれません。
 そもそもツーリングというもの自体に、実はそういう性格が含まれているのかもしれません。この楽しさは、ツーリングの楽しさでもある。全然自転車に乗っていないのに。

 北アルプス夕暮れショーを眺め、午後のビールでまだ重い頭でそんなことを思っていると、身体も冷え始めているのに気が付きました。

 

 夕焼けが完全に赤くなり、再び北アルプスの山影がモノトーンに沈み始めたところで、小屋に撤収。向こう側の山はもう完全に影の中、下界方面は霞みに隠れていました。
 一度寝たところでもう一度夜空をチェックしに外に出てみましたが、生憎空に薄もやがかかったのか、満天の星には出会えませんでした。

記 2014/6/8

#2-1へ進む    #1-3へ戻る    自転車ツーリングの記録へ    Topへ

Last Update 2020/3/20
ご意見などございましたら、E-Mailにてお寄せ下さい。
Copyright(c) 2002-14 Daisuke Takachi All rights reserved.