旭川→(国道12他)旭西橋→(旭川サイクリングロード)江神橋
→(道道98・715)共和→(道道72)下幌加内
(以上#7-1)
→(町道)沼牛→(道道48)幌加内
→(国道275)添牛内→(国道239)霧立峠
(以下#7-3)
→(国道239他)古丹別
→(道道437・町道他)興津→(国道232)羽幌
(以下#7-4)
→(国道232)遠別→(農道他)天塩 201km
下りきった下幌加内は一面のソバ畑。緩やかに起伏する丘一杯に薄緑の花がやはり満開で、遠くの丘には白樺林の白い幹が目立つ。▼動画3分2秒
一面の優しく穏やかな色の花は、いつもながら夢見るように静かで美しい。しかし空はどんよりと、やはり辛うじて里に落ちてこないぐらいに雲が低い。この先が思いやられる。
国道275がもうすぐ近くだが、こういう静かな景色の中ではなるべく静かな細道を走りたい。既知の道やら未済の道を切り接ぎながら、ソバ畑の中を町道で下幌加内から沼牛へ。沼牛からは道道48に合流、相変わらず静かな道で幌加内へ。
8:20、幌加内着。国道275沿いに小さい町が続いてはいるが、南北に50km以上も続く幌加内町の中央部でありながら、いまどきセイコーマートの一つも無いのがとても珍しい。ソバ生産量日本一だけあり、さっきの江丹別のようにここも何と無く興味が沸くようなちょっと鄙びた佇まいの蕎麦屋が美味しそうだが、いかんせんここでもまだ8時台。
こうなると自販機で缶コーヒーなど飲み、町中の小中学校で水を補給する以外にやることは無い。
町外れの蕎麦粉精製工場を眺めつつ、そのまま国道275を北上する。
道北南部の平地は意外にも水田が多い。この上幌加内も、蕎麦畑だけではなく田圃が目立つ。国道275は雨煙別までそういう田圃の中に続いた後、狭くなってのたうち始める谷間と雨竜川とともに、白樺林の目立つ広葉樹林の中を更に遡り、少しづつ高度を上げてゆく。
幌加内盆地ではまだ明るかった空も、盆地の北外れで雲が山々にぶつかるためか、雨が降り始めてしまった。
雨は道が真っ黒にならないぐらいで降ったり止んだり。谷間が少し拡がると雨が止み、山が近づくと雨に捕まって、雨具を着て少し走って、雨が弱くなって雨具を脱ぎ、しばらくするとまた雨具を着る羽目になる、という状態で、またもや煮え切らない。
でも、こういう状態でまだ時々雲の隙間に青空が見える。霧立峠さえ越えれば天気が変わるかもしれない。
9:05、道の駅ほろかない着。当社比でなかなか順調なペースだ。昨日丸々休めただけのことはある。
幌加内の町では何もありつけなかったので、ここが旭川以来久しぶりのまともな補給ポイントということになる。とはいえ時刻はまだ9時過ぎ。もう少し後ならここで蕎麦を食べたい気にもなるが、今のところは何か予備知識と食べたいもののイメージが具体的に結実するあては無い。とりあえず手っ取り早くいつものソフトをいただくことにする。
しかし、そういう漫然とした曖昧な態度で「ソフト下さい」と言うと、出てきたのは名物(?)の熊笹ソフト。私は基本的に何が何でもバニラ派なのである。完全に「しまった!!」状態、食欲の行き場を見失ってしまったような気がした。しかし、そんなことで落ち込むのも馬鹿馬鹿しい話である。気を取り直して食べてみると、抹茶なんかより全然お上品な、牛乳クリームの味を壊さない優しい味付けである。
昔、北海道を冬に旅行していたとき、JRで隣に座ったおじさんと「朱鞠内に行くんです」という話になり、朱鞠内湖(雨竜第1ダム)建設記録の「笹の墓標」という本を薦められ、入手してみた。それは戦中の、凄惨を極めた強制連行・タコ部屋労働の建設記録であり、一見静かな旅先の景色にも、想像できない歴史が秘められていることを教えてくれた本になった。
笹の味のソフトに、そんなことを一瞬思い出す。同じ幌加内で同じ笹。今まで幌加内の私的象徴としてソバの花と白樺があったが、この幌加内オールスターズに、今回笹が加わったような気がする。
9:35、道の駅ほろかない発。
谷間に拡がる政和の盆地の南端から、そのまま国道275を北上。広々としたソバ畑に山裾の白樺林を眺めつつ、盆地中央の政和の集落を通過。盆地北端から段丘を登り、添牛内の台地へと移行する。
段丘の登りの途中に、眼下に政和のソバ畑を見渡す展望ポイントの土手がある。毎回通るのが楽しみなその場所で、今回も政和方面を振り返ってみるが、いかんせんどんよりと低く暗い雲に覆われた盆地がやや重苦しい雰囲気で拡がっているだけなのだった。
今日はほんとにこの先晴れるのか。いや、霧立峠さえ越えればこっちのものだ。こうなったらささっと行ってしまえ。
低い雲が今にも落っこちてきそうなのに青空も見えるというビミョーな状況はその先も続いたが、添牛内到着手前、前方が白く霞んでいるのが見えてきた。いよいよ平地にも雨が降ってきたのだった。
幌加内や政和より少しずつ標高が上がっているのだ。雨の降る標高に達したのだろう。
10:10、添牛内着。国道275から国道239への分岐は、この交通量の少ない2本の国道の分岐点にしては気の利いたジャンクション状になっている。
カーブ坂道をぐいっと登って、道なりに西へ向かうと、正面の早雲内川の狭い谷間に、真っ白い濃い雲が溜まっているのが見えた。先が思いやられる国道239への入り口なのだった。しかし、相変わらず青空も見える。
この霧立峠、北海道の峠の例によって、というより北海道の峠の中でも際だっただらだら峠である。標高240mスタートで380mの峠まで140mしか登らないこちら側もさることながら、苫前側は標高差たったの380m下りに、何と50kmもかけるのである。途中登り返しは皆無どころか、アップダウンすらかなり少なく、見事ですらある。今日の行程は、この霧立峠の下りをどれだけお手軽にこなして、早めに日本海沿岸に到達できるかがポイントだと考えていた。
ちなみに、朱鞠内湖から遠別へ直接抜ける道道688さえ開通してくれれば、道北へ行くのにこんなにワンパターンの大回りをしなくてもいいのである。この道に併行して、道北山間でおなじみの旧国鉄未成線、名雨線の建設跡があるらしいから、トンネルでも何でも使えるものならつかえばいいのに、とも思うが、いや、やはりこれだけ広大な無人地帯。手つかずのまま置いておくべきなのだろう。
そんな無人地帯を掠めるのが、この霧立峠の国道239なのである。
標高300mを過ぎた辺りから、辺りの真っ白い霧が遂に雨に変わった。ごつごつと異形の岩山、そして谷間から岩肌まで駆け上がって覆い尽くす密林、その間を幅広い国道は大きなカーブを描いて通り抜けてゆくが、さっさと峠を越えてしまいたい。まあ、道だけじゃなくてこちらが遅いのにも、なかなか峠を越えられない原因はあるとは思う。
記 2009/10/2
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