東士幌では道をやや内陸側へスライド。これだけ下りが続くと、もう辺りの景色はすっかり平野まっただ中である。
こうなると平野部の縁ぎりぎりで展望を狙うより、真ん中寄りの通りのいい道を選ぶ方が、広々した十勝らしさが味わえるように思われた。
というわけで道をスライドするごとに、辺りは更に平野のまっただ中へ。
稲穂からは十勝平原広域農道、この道、2002年に士幌で国道241で転倒し、少しずつ暗くなる曇り空の下、擦過傷の血を絆創膏で強引に止めて(あまり止まらなかったが)急いだ道である。思えばあのときは、けっこう深い怪我の痛みと不安と、迫り来る夕方のタイムリミットで、気持ち的に一杯一杯だった。
そのため景色をあまりよく覚えていないが、道東自動車道のアンダークロスが見えてきて、全体的にとりとめの無い平地の景色だったという印象を思いだした。
十勝平原広域農道は最後に富岡で道道73に合流。あれだけ続いた一直線道路が、最後はいきなりかくっと曲がって、やや埃っぽい準幹線道道に突き当たるのもあっさりしすぎだが、このように何かとあっけらかんと身も蓋も無いのが北海道の道の特徴でもあるように思う。
ここから道道73で十勝川温泉に出て、十勝川と根室本線を渡り、十勝平野南側をお昼過ぎまで南下すれば、折り返して夕方新得到着がちょうど良いぐらい、というのが今日の目論見である。今のところとりあえず順調だ。
道道73に合流する交差点では道の反対側の歩道が少し広めになっていて、車道との間に分離帯が設けられていた。そうか、これがツーリングマップルに細い破線で書いてあった十勝大平原自転車道なのだ。道道の脇を自転車道に整備するパターンの自転車道なのだろう。
そこで遠慮無く十勝大平原自転車道に突入してみたが、これがぱっとしない道だった。まず車道との分離が今一つで、間に細い歩道は入っているものの、車の脇を走っている気分で一杯になる。自転車道というより、ほんとに単に道道の歩道が広いだけの道だ。おまけに細い道の路面は、細かい凸凹や割れで最悪。朝の糠南林道の方が余程走りやすい。道ばたの茂みからもマイマイガがひらひら飛んできている。
大層な名前の割に、実態は居候そのものの十勝大平原自転車道は、最後に道道73と別れ、何かの公園外れに到着した。「音更サイクリングターミナル」なんてのもあるようだが、施設の趣旨はどうあれ今日の私の自転車ツーリングにはあまり関係無さそうだし、公園にも特に用事は無い。そのまま道道73に戻り、10:20、十勝川温泉着。
平地で幹線国道に併行しているからか、道道73にはけっこう車が多い。その道沿いのセイコーマートにもマイマイガは押し寄せてきていて、店の前やら壁やら窓の中やら、ちょっとした防虫灯も全然無駄みたいである。まあ気味悪くても何でも、ここで何か食べておかないと、この先まだしばらく何も無いのだ。
休憩しているうちに雲の中は明るくなり、例によって今日も急に気温が上がり始めていた。10:40、十勝川温泉発。
十勝川中央橋を渡り、稲志別までの河岸の平地を経て、今日2つ目の目玉の十勝南東部の台地へ向かう。
十勝南部から十勝南東部に続くこの辺りの台地には、ここ何年か十勝を訪れると必ず経由するようにしているが、丘の上の展望と程良い広がりの静かな畑がとても美しく、いつも外すことが無い。と同時に、畑地帯にはほとんど日陰が無く、集落はあるが商店や自販機や学校は無いので、水や食料に注意が必要な場所だ。
このまま進むと入り込む、台地の具合のいい辺りを経由して具合良く南下する十勝中央広域農道が、例によって手持ちの1/5万と、ツーリングマップルで道の形が全然違う。1/5万で細道乗り換えで描かれているコースを、道を何本かくっつけて1本にして拡幅、広域農道に仕立て上げているようだ。稲志別の農道分岐で現れたこの農道の行き先は「とかち帯広空港」。そうか、丘陵を無駄に登って降りて、それでもこの道へ行く方が近いのだ、車だと。
少し谷間に入り込んで、来るか来るかと思っていると、やはり登りが開始。広域農道だけあって、拡幅に際してあまり勾配緩和は行われないようで、7〜8%ぐらいの直登である。標高差80mぐらいの丘だが、ほぼ全部直登なのとじりじり照りつける日差しで、かなり堪える登りだ。今日ももう11時前。暑く苦しい時間帯である。
しかし、何とか丘の上まで登り切ると、そこには期待通りに丘の田園風景が待っていてくれた。 ▼豊岡にて 展望240°(Quicktime VR) 画像上でマウスをドラッグしてください
波打つ丘に畑のパッチワークが広がり、落ち込む谷間を見渡し、遠景には大雪の山々。
近めの距離感、空間感覚で360°展開するパノラマは素晴らしい。雲はやや多めで低いが、この真っ昼間の暑さに耐えて登り切ったご褒美だ。 ▼豊岡にて 展望240°(Quicktime VR) 画像上でマウスをドラッグしてください
豊岡、日新、古舞と丘の上には緩く小さなアップダウンが続く。▼動画3分3秒
トウキビ、ジャガイモ、麦と様々な畑の中、牧場の中、森の脇などを、ちょい坂や木陰、涼しい風に一喜一憂しつつ通過。
最後に森を下って小さく登り返してから、ややイレギュラー気味なカーブを描いて再び十勝平野へ下ってしまう。
こうして北から南へ縁を通っていると、十勝平野の実態は平野というより盆地に近いことが実感できる。だって一番低いのが真ん中の十勝川で、十勝川に向かって縁から平滑な地形が下ってきて、山に囲まれたお皿を形成しているのである。南西部で一番海に近づく豊似や広尾だって盆地の縁にあるのだ。
記 2009/9/26
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