オーレン小屋→夏沢峠→硫黄岳
(以下#2-2)
→夏沢峠
(以下#2-3)
→本沢温泉
(以下#2-4)
→稲子小屋口→(林道八ヶ岳線他)野辺山
→(国道141)清里
37km
目が覚めると5時。朝食は5時半からとのことなので、さっさと起きなくては。atsさんはさすがで、もう目覚めているのみならず日の出を眺めに外に出てきたとのこと。気温は予想以上に下がっていて、何と最低-4℃。0℃ぐらいまでは下がると聞いちゃあいたのですが、ちょっと下がりすぎかも。試しに窓を開けようとすると、サッシは全く動かず、断熱無しのアルミ枠とガラス面の結露は凍結してがびがび、ガラス面には木の根っこみたいというか稲妻状態というか、氷の結晶がエッジもくっきり延びていました。
ちょっと寒そうだったのもあり、たっぷりの朝食が腹の中で落ち着くまで、NUTSさんにストレッチ講座など受けつつ部屋で過ごします。それにしても寒い。夕べのお風呂でNUTSさんが聞いたという「硫黄岳頂上付近で樹氷を見た」という情報が実感できます。しかし、それにしても樹氷とは、もう雪が降っていたのか。
頃合いを見計らって外に出ると、空は昨日の曇りの面影が全く残っていない激晴れです。やった!最高の硫黄岳が眺められそうです。
しかし。外に置いておいた自転車達には、かわいそうなくらいにがびがびに霜が降りています。革サドルにサドルカバー掛けといて良かった。看板のステンレス面にも氷の結晶がまたもや木の根っこ状態。何だか-4℃どころの寒さじゃないのでは、という気もします。
7:20、オーレン小屋発。出発すると、もはや鳥の声も無くしーんとした山の中。夏沢峠まではもうほんの少しですが、昨日先へ進むごとにダート→山道度を上げてきたその最後の夏沢鉱泉からオーレン小屋までの道が、それでも何とかダート度が高かったと思えるぐらいの、完全な山道です。
時々他の登山客の声がして、我々を追い抜いてゆきます。自転車を押したり、木の根っこなどで持ち上げたりする我々に「大変でしょう」と声を掛けてくれるのは、いつもの山サイ通り。まあこの早朝に、こんなに寒い山の中にいるのはお互い様ではないか、という気もします。
寒いといえば、今回私は手袋を持ってくるのを忘れてしまったのでした。それでも0℃ぐらいなら担ぎなので何とかなるだろうと思ってはいたのですが、フリースの袖の中に手を入れたり出したりしている私を見かねて、atsさんが軍手を貸して下さったのでした(ありがとうございました)。
程無く森の奥から低い発電機のエンジン音が聞こえてきて、7:55、夏沢峠着。
気温は予想よりだいぶ低いものの、雲一つ無い空は濃厚に真っ青。硫黄岳登山には何の問題もありません。
峠の向こう側はすとんと落ち込んでいて、八ヶ岳裾野から拡がってゆく佐久の眺めが見事で、言葉を失います。早くも来て良かった状態。ですが、この先高度が上がると更にとんでもないことになるのは自明です。ここは夏沢ヒュッテの裏手に自転車を停めさせていただき、徒歩で硫黄岳へ脚を進めます。
8:05、夏沢峠発。すぐに森林限界を超え、茅野側の展望も拡がります。
水色の屋根はさっきまでいたヒュッテ夏沢。一方茅野側には、オーレン小屋が意外な程すぐそこに見えます。
けっこう急な登りなのに意外に登っていないものだ、と少しがっかりですが、薄く平べったい石の川原のような道は、確か硫黄岳まで半分ぐらいの地点から始まっていたような。あと半分。
一方で南アルプスはおろか、遙か彼方の中央アルプスや北アルプスまで殆ど雲に遮られずにクリアに眺められる、驚異の展望が次第に拡がってきました。
ケルンが現れると頂上間近。前方には山頂らしき辺りも伺えるようになってきました。
この頃になると、少し進めば右を見ても左を見ても新たに拡がる下界に周りの山々の景色に、3人とも大喜び。しょっちゅう足が停まります。
NUTSさん情報の樹氷の正体も、ここで発見できました。枯れ草が霜で凍り付いて、樹氷みたいな感じになっていたのでした。これなら雪無しでも、何とか「樹氷」という表現が妥当なのかもしれない、という気にはなります。
登山道のすぐ脇から爆裂火口原が大きく深く落ち込む箇所もど迫力。火口原のみならず、その下の裾野、更に下界の佐久方面まで一つの視界に収まってしまうのです。もう怖いのか感動的なのかよくわかりません。
9:10、硫黄岳着。西側の茅野方面への展望もますます迫力を増しています。中央アルプスから冠雪した北アルプスまで、完全に雲が無い状態でクリアに見渡せるのは驚異的です。まさかこれほどとは、全く想像していませんでした。今日は大当たりです。
atsさんが各山々をぐるっと解説して下さいますが、指さす方向が実にわかりやすく、見覚えのある白馬の山々もそのまま見えます。3人とも白馬には3週間後に行く予定ですが、「もう北アルプス見ちゃったね」等と言う言葉がつい出ます。
山頂部の向こう側、茅野方面には権現岳、阿弥陀岳、赤岳、横岳と続く八ヶ岳を正面に眺められる場所があります。前回おにぎりポイントを探して山頂を一回りしたあげくここに腰を据えたのですが、今回もここに少し腰を据えることにします。ここが一番のはず。
前回の自分の写真で景色そのものは覚えてはいましたが、この空中を歩きたくなる程間近にくっきりはっきり見えてしまう目の前の景色、そして岩も緑も空も濃厚で鮮やかな色彩。横岳から空中歩廊のような稜線を歩いてこちら側と行き来する登山者達が、何だか「蜘蛛の糸」の景色のように見えます。
▼硫黄岳山頂から南八ヶ岳 展望180°(Quicktime VR) 画像上でマウスをドラッグしてください
実際に各山々の稜線を巡ったことがある、atsさんからの解説も詳しく楽しく興味津々。いっそ今日はあちらへ行ってしまいたい、あの上を歩きたい、という思いが募りますが、ここは心を鬼にして爆裂火口原の反対側へ。
というか、この時点で滞在予定時間の20分間をすでにオーバーしていましたが、もはや誰も下ろうなんて思いません。この景色は凄い。
記 2010/1/4