幾寅→(国道38)新得→(町道)下佐幌→(国道274)十勝清水
(以下#4-2)
192km
外に出ると、夜の内に雨が降ったのか、辺りはしっとり濡れていた。のみならず、荷積みを終える直前、遂にぽつぽつ来始めてしまった。見上げると、空は重たそうな厚い雲でどんより薄暗い。
雨はすぐ止んだ。が、これから向かう十勝地方の天気予報は曇り後晴れだったが、少なくとも国境越えの狩勝峠までは覚悟しないといけない。晴れたら北落合へ寄り道したかったが、もはやそれも単なるハイリスクローリターンである。一刻も早く十勝へとんずらしよう。
6:10、幾寅発。空知川の谷間、昨日下りに乗じてけっこう快調だった国道38、まあ疲れない程度のペースでてれてれ登る。朝っぱらからこんなところで疲れてしまう必要は無い。だだっ広い道が地図の通りに何度か折れ曲がって、落合に近づくに連れ、じわじわ登り斜度が増すが、まだそれでもかなり緩い部類だ。
落合では昨日横目に眺めた秋田屋旅館の跡地を再確認。やはり建物は見事に無くなっていて、解体ガラが撤去されずにまだその後に溜まっていた。壊されたばかりのようである。
その落合から、いよいよ雨が降ってきた。不安的中で、雨の狩勝峠越えになるのだろう、きっと。
次第に狭くなってきていた空知川の谷間は、落合から先、両側から近づいてきた山に挟まれて更に一気に狭くなる。谷間の川は空知川からペイユルシエベ川という名前に変わるが、基本的に遡り続けるのは同じ谷だ。
遡るというほどでもなかった斜度は、落合を出たところで一度わっと、途中でもう一度じわっと斜度が微増。ようやく道が何とか峠っぽい体裁になってきたところで、峠も見え始めてきた。峠手前の谷間にも旧根室本線の狩勝信号所が登場。
昭和44年新狩勝トンネルの開通で、旧狩勝トンネルを含む根室本線の落合・新得間は廃線となった。それ以来この狩勝峠手前の山間に、旧狩勝信号所の広がりはは国道38からよく見える状態で残っているのである。
しかし、今回の狩勝信号場は、ほぼ完全に茂みに埋もれていた。以前5月に訪れたとき確認できたコンクリート遺構の部分が完全に隠れているのもあって、記憶にある姿より、どんどん風化が進んでいるようにも見える。そりゃそうだ、初めてその姿をまじまじと眺めた1986年からは20年以上。前回からでも3年も建っているのだ。でも、あるいは夏で草や笹が生い茂っているのかもしれない。
狩勝信号場を眺めて少し足を停めていると、雨が強くなってきた。風まで吹き始めている。早く登ってしまえと言う峠の神様のお達しかもしれない。
7:45、狩勝峠着。峠の茶屋「あくつ」はまだ営業していない。ガまみれの自販機で、でもせっかくなのでお茶でも買って飲んで、そそくさと下ってしまうことにした。
峠下の覆道へ入ると、まあ当然のように雨から逃れることができる。雨と風で寒かったのが、何となく暖かくありがたい。路側帯にはおびただしいガの死骸が砂利と土埃と煤にまみれて、いや、完全にぐちゃぐちゃ一体となって溜まっている。こんなところでは特に転びたくない。気を付けて下らないと。
覆道が終わって外に出ると、雨は止みつつあった。
路面はまだ濡れているし、気を付けてあまり調子に乗らないようにして、開けた山腹に続く緩いカーブ、緩い下りの大作りな道を、どんどん下ってしまう。
平坦区間へ入ると道の脇にはソバ畑が続く。いかにもソバが名産の新得らしい景色だ。
以前あったローソンは閉店したのか、何か飲食店に変わっていた。まあそりゃそうだろう。新得にはセイコーマートがあるし、ここに客が来るとすると狩勝峠を下ってくる車しか考えにくい。ここで休むより、新得で休む方が、誰にとってもつぶしが利いて都合がいいのだ。
8:20、新得到着。前述のセイコーマートで、国道反対側の去年泊まったサホロYHを眺めつつ、集中的に補給。
今日の宿は足寄まで。昨日全自走なら、今日はリハビリコースで足寄直行でもいいかなと思っていた。が、昨日は生憎輪行になってしまった。足寄直行では余裕がありすぎる。
となると、十勝清水辺りから山沿いへ足を向けたい。問題はこれからどこを経由するかだ。岩松橋→鹿追は山際の牧場の景色が良いが、去年訪れているし、この時間では大回りすぎる。となると、単純に国道38迂回の、東側の台地上の上佐幌から下佐幌へ向かい、北側から十勝清水へ向かうのが良いだろう。
9:00、新得発。町裏手の森の細道から台地へ登りきる。と、突然なだらかな緑の緩斜面が開けた。一面の畑、グリッドの防風林、一直線に下って行く道。十勝のまっただ中に放り投げられた気分だ。
▼動画32秒
畑の中をどんどん南下すると、防風林に区切られた畑が、とうきび、じゃがいも、ソバ、その他次々と替わって過ぎて行く。
空は次第に晴れ始め、狩勝国境の山々の裾が見え始めた。と思っている内に青空が見え始め、路面は乾き始めた。
▼動画43秒
下佐幌からは国道276へ。日高辺りでは首都高みたいに混んでいる国道276も、十勝清水で国道38へ車が流れてしまうので、こっち側は打って変わってのんびりくつろげる道である。ここより少し北、鹿追から士幌辺りまで、十勝平野の一番北側の道となって、十勝北部の東西連絡に使いやすい道となるのだ。
記 2007/9/7