仁宇布→(道道120)中頓別
(以下#10-2)
177km
いつも通りに4時に起きると、何だかまだ薄暗い。てれてれ荷造りを終えて2階の寝室から1階へ降りると、牧草地を見渡す食堂から見える仁宇布の谷間には、こってり厚そうな雲が溜まっている。天気予報では道北は今日一日曇りだが、何だか冴えない予感がする。晴れれば灼熱、曇れば雨で寒い。北海道の自然は厳しい。程々でいいから快適な日は無いのか、とも思う。
6:05、仁宇布発。昨日登ってきた牧草地の下りをどんどん下り、道道120に合流。いつもは北から下ってきて一息付く仁宇布、今朝はここから出発である。時間も著しく早い。
盆地に拡がる牧草地を抜け、森に差し掛かる手前、昨夜泊まった「ファームイン・トント」の経営元「松山牧場」を発見。コンクリートブロックの畜舎の中で、羊が寝起きしているのだろうと思う。
森に入ると、早速雨が降り始めた。あっという間に路面もしっとり真っ黒、早々とウインドブレーカーを着込む。
西尾峠までは標高差100mちょっと。道路脇に立った丸太に彫られた「西尾峠」の文字を横目に峠を過ぎると、ぱらぱらだった雨が急に強くなった。大雨と言っていい。この重そうな雲に山間の道、まあ予想された展開である。無人のフーレップ川沿いの谷間は森深く緑は濃く、晴れていると楽しい道なのだ。早朝の爽やかな森の道を期待して組んだ行程だったが、いかんせん天気は水物、仕方無い。着る物は着て寒くて走れないということも無いし、走れる内は黙々と下ることにする。
いつも西尾峠への登りでのろのろ進むこの谷間だが、下りだと何だかコースの印象が違う。トンネルを抜けてから少し下りが続くと思っていた天の川トンネルも、何だか今回は下り基調の中で少し登ったと思ったらトンネル入口が登場、そそくさと通過する。大雨なので、トンネルの中で雨が降っていないのが有り難い。
天の川トンネルを出ても、トンネル向こうの駐車公園で少し休憩しても、雨は止みそうにない。
しかし、大曲のちょい坂を越えて上徳志別に下ってくると、ようやく雨の勢いは弱くなった。さすがは人の営みが定着した場所だ。小雨の牧草地は雲が低くて重い景色だが、何とか少しは気分が寛いでくる。思えばここまで耐えるだけの行程であった。
一度上がりかけた雨は志美宇丹で再び降り始めた。この志美宇丹、小学校と何軒かの民家がこぢんまりと集まっている、可愛らしい佇まいでこの辺りでも印象的な集落だ。いつも通過を楽しみにしているが、着々と作られてきたバイパス新道に入り込み、集落のほんの少し外側を通過してしまった。次回は気をつけないと。
その志美宇丹の外れでもう一つちょい坂を越えると、ようやく雨が止んでくれた。
もうあとは歌登までだらだら下りではあるが、昨日から続く北風が向かい風になっていて、足を回さないと進まないのがちょっと辛い。雨が止んでも、一難去ってまた一難だ。
辺毛内辺りから牧草地の中に再び民家が、その向こうに町が現れた。9:35、歌登着。
セイコーマートで少し休憩することにした。雨に当たって少し身体も冷えているような気もしないでもないので、珍しくカップ麺などをすすりつつ、今後の行程を再確認する。
この先枝幸へ向かうか、はたまた音威子府からサロベツ原野か道道121へ向かい、道道138で浜鬼志別へ抜けるか。どちらも既知の道だし、どこへ向かってもまだしばらく天気は芳しくなさそうだ。しかし一方、昨日全然走っていないので、そこそこ走りたい気持ちはある。一方、まだ雲は低く厚い。天気のせいで何となく気が乗らないのに、とりあえず何か選ばないといけない辛い状況だ。
結局問題先送りで、枝幸へも音威子府へも向かわず、このままもう少し道道120を進み、兵安か中頓別で再度検討することにした。これだと万が一この先急に大雨になったとしても、浜頓別へ最短で辿り着ける。
10:05、歌登発。
今度の谷の川は、この道北の地に何と沖縄の沢川というようだ。沖縄からの開拓民がいたのか。かなり極端な名前に目をむくが、もし開拓民がいたとしたら、その苦労は並大抵のものではなかっただろう。
現在は開拓の跡など何も無い、鬱蒼とした険しい狭い谷間が続くだけである。あるいは人々の営みは茂みに風化してしまったのかもしれない。
そんな山間の狭い谷間で、また雨がぱらぱら来た。歌登で一度雨は止んだのと、今日はもともと曇りの予報なので、あまり深刻ではない山間にわか雨のようなものだろう。
その通りに峠部分を越え、兵知安川沿いの谷間の下りの後、兵安では完全に雨は上がってくれた。
11:10、中頓別着。昨日の下川から続くこの道北の内陸北上コース、いつも南下で使っていて気に入っていたのだが、今回のような北上もまた道の印象が全く変わって、とても面白かった。
記 2007/9/24