花咲港→(道道780)西和田→(道道142)初田牛
→(道道1127)厚床→(国道243)奥行臼
(以下#5-2) 154km
4時過ぎ。目覚めてすぐに外を伺うと、やはりどんより薄暗く、宿の向かいの倉庫から奥はさっぱり視界が効かない。霧は全く晴れていないのだった。これでは納沙布岬など行くだけ無駄だろう。単なるインターバルトレーニングになってしまう。まあそれでもいいのだが、連日の高温のためか流石に身体が疲れ始めている。これ幸いと、納沙布岬1周50kmは止めにした。
となれば、何も早出する必要は無い。
昨夜屋内に持ってきてもらったため、自転車はロシアに持って行かれていなかった。普段通りに5:40に荷物を積み始めると、宿のおばさんが出てきて朝飯ぐらい食べて行けという。他の客は釣り等でほとんど出発済だが、もうみんな4時過ぎに朝食を食べてしまったらしい。それなら今朝食をお願いしても、別に宿に迷惑を掛けるわけではない。
朝食には大きな紅鮭の切り身が出てきた。この切り身の塩味が、一言で言うと潮の味。昨夜の夕食に続き、食べたこと無いぐらいたまらなく味わい豊かなのだった。夕べの金目味噌汁も再登場、またまたお代わりさせていただく。
「若い人はみんな朝をコンビニで食べるって言うんだよねえ。あんなもんで力出ないのにねえ」とおばさんがぶつぶつつぶやいたのにはぎくっとした。自分のことを言われたようで、ちょっと胸が痛んだ。
6:30、花咲港発。昨日と同じく根室方面から道道140へ回り込もうとすると、「そっちじゃないよ〜!新しい道ができてるんだよ!」と宿のおばさん。そうそう、新しい道ができてるんだった。
新しい道は道道780、別の番号が振られている。昨日道道140から入り込んだ根室のすぐ手前よりだいぶ南の西和田で、その道のなれの果てが道道140をオーバークロスするのを昨日も見ていた。しかしおばさんに叫ばれて焦ってそっちへ向かったお陰で、花咲港でカニの売店でも探すつもりだったのをすっかり忘れていたのだった。結構登ってから気づいても、もはや後の祭りである。
西和田、昆布盛、浜松と、ここ数日間で一番涼しい空気の中を、昨日の道を逆走する。細長い根室半島のこっちは南側の1本道、道道140。北側は国道44だ。こっちは昨日通ったばかりだし、もうあっちもだいぶ訪れていないし、昨日の浜中〜姉別の雰囲気から考えると交通量はぎりぎり我慢できるぐらいじゃないかという気もした。しかし、さっきの道道780の分岐では、やはり自動的にこっちへ足が向かったのだった。
昨日の夕日の中の道は、今朝はまだ霧の中だ。浜松にいつの間にかできていた巨大な風力発電の前には、やはりいつの間にか便所付の無料駐車休憩所ができていた。「北の国から」の蛍が身を隠した落石も、今や京都議定書の影響下にあり、休憩所等という裁けたものまでできてしまっているのだ。まあちょうど景色も良いし、何か予算を確保したのかもしれない。その休憩所から本来見渡せるはずの、浜松港から落石へ続くすとんと落ち込んだ岩場も太平洋の広がりも、低温の風と共に次から次へと押し寄せる霧にすっかり隠れてしまっていた。
岸壁上の道は、落石から内陸の森に向かう。少し内陸側だけあり、ほんの少し霧が晴れ始めるのも、落石先の谷越え登りで速度が落ちたところに一斉にゴマフアブが襲いかかってくるのも、その後どこまでも深そうな独特の密林が別当賀、初田牛と延々と続くのもいつも通り。あまり変わり映えしないと言えば変わり映えしない。いや、でも延々と漠々と続く不気味な静けさこそ、この道ならではの雰囲気なのだ。ちなみに延々と漠々とというのは、根釧台地に共通したキーワードでもある。
初田牛で道道1127へ分岐、国道44の厚床方面へ。この道道1127、厚床までの短い間に軽いアップダウンが5回もある。それ以上にいつもとても風が強く、それらのダブル攻撃がちょっとつらい道だ。まあ距離はたかだか10km強と短いのでそう悩む程のことも無く、他に道が無いのでいつもここを通ってしまう。今日も昨日の逆走が増えるより、いっそ手前の別当賀辺りで国道44方面へ向かってしまえ、等とも思った。しかしまたもや、しかるべき分岐では、ことごとくこちらの道道142へ進んでしまっていた。
9:15、厚床着。ここで国道44を越えると、太平洋岸から再び根釧台地へと戻ってきたことになる。ということは、再び暑さが復活するということでもある。さっきの初田牛と比べるとかなり霧は消えていたものの、雲が厚く低く垂れ込めているのは相変わらずだ。
厚床からは国道243。多少交通量は増えるがそれもまあ毎度のことで、まだまだ許容範囲内だ。台地から低地の湿地帯へ、再び牧草地の丘を越えると又湿地帯という、根釧台地にありがちなパターンが始まった。
記 2006/9/19