北海道Tour06 #4-3
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14:30、姉別原野のレストラン「ファームデザイン」発。狙いを定めて道道988へ。
緩やかな起伏の丘に拡がる牧草地の中、姉別大和、姉別市街と更に南へ。
市街と名前は付いているが、もちろん無人駅の姉別駅前は森と牧草地の中に民家が数軒。元は小学校らしい建物と広場も人気が無く、学校が廃止になってしばらく経っていそうな雰囲気だった。
根室本線の南側へ出ると、もう海岸間近。辺りは低めの密な森に、行く手の森の間の空はもういかにも海っぽい雰囲気だ。▼動画53秒
道が下り始めると周囲は一気に開けた。海だ。太平洋だ。
海岸沿いの涼しい風、ここまでの地平線の丘陵とはまた異なるニュアンスを持つ広がりに、少し立ち尽くす。
貰人と奥の恵茶人の海岸湿地帯、更に初田牛の高く険しい岸壁へ続く海岸線、そしてちょっと軽い青い色の太平洋、同じく軽い色の空。この辺りの道東太平洋沿岸、夏の間の大半は濃霧に包まれてしまう。遠路はるばるやってきてもそう簡単には晴れてくれないのだ。それが今日は、ここまで暑さに耐えてきた甲斐があり、期待通り最高の青と緑の景色だ。今日もそろそろ赤くなっている陽差しが、その景色を更に鮮やかにしている。
15:45、貰人発。ここから今日の宿の花咲までずっと道道142、通称北太平洋シーサイドラインを辿る。▼動画1分15秒
恵茶人までの波打ち際の陸側には、牧草地と湿原が続く。放牧されている馬や牛、波打ち際のウミネコの群を間近に眺め、波の音を近くに聞く、素晴らしい状態がしばらく続く。
この鮮やかな緑も砂浜の景色も晴天ならで、いつも濃霧で何も見えなかったり、良くてどんより曇りの鉛色の景色なのだ。
恵茶人からの振幅の激しいアップダウンの後、さっき貰人から遠く眺めた台地上の初田牛へ。
その先は、背は高くないが鬱蒼と静かな無人の森が、別当賀、落石と20km弱続く。
森の途中で、突如濃い霧が辺りに漂い始めた。
この海岸部の霧、往々にしてその中はかなり気温が低い。夏の日中でも15℃以下なんて当たり前、以前8℃を経験したことがあった。
その不気味な霧も、落石で再び晴れてきた。
落石の集落の先、昆布森の岸壁上には、前回訪問の2002年には影も形もなかった巨大な風力発電が2基、ぐるぐるゆっくりと力強く回っていた。
さっきの初田牛から実はもう根室市なのだが、昆布森を過ぎるともう根室まで10km以内。今まで20km弱の間、数台しか来なかった車が増え始める。
宿到着も時間の問題、温根沼のアップダウンから西和田、花咲と、真っ赤っかに染まりつつある景色の中をのんびりのんびりと進む。思えばこの時間帯、斜光線で景色の陰影はドラマチック、緑も空も鮮やかで、景色は昼よりも印象的だ。安心しきってのんびり走るのが楽しい時間帯なのである。
最後に台地から一気に下ると、花咲港は再び濃霧の中。
18:15、花咲港「民宿一福」着。夕食は18時からだったようで、宿のおばさんにはドタキャンかと心配を掛けたようだった。
というわけで到着後即汗みどろのべたべたで夕食となったが、この夕食が凄い。金目の煮付けを始め、刺身など美味しくボリュームたっぷり。花咲ガニまで1ぱい付いていた。港の宿ということで、予約の電話で夕食の+αをお願いしたら「うちのは沢山だからその必要は無いと思うよ〜」とのことだったが、それだけのことはある。
だが、その中でも一番素晴らしかったのは、金目を出汁に使ったという味噌汁。今まで食べたことがない、豊かでまろやかな味がした。お代わりさせてもらうと、さっきのおばさんは煙草をふかしながら、「おーいおばちゃん、盛ってやってくれ」。自分だっておばちゃんだろうと思う。まあそういう元気一杯のパワフルなおばちゃんが2人でやっている宿なのだった。
風呂から上がると、おばさんが自転車を建物の中に入れてくれているところだった。
「あんた!こんな所に置いといたら、ロシアに持ってかれちゃうよ!こんなもん、鍵掛けたってダメなんだよ」
とのこと。
外は夕方からずっと濃霧で、霧に街頭が反射してほわんと明るい。この分だと、根室が晴れ続きでも霧がかかりっ放しの場合も多い納沙布岬、明日の訪問は絶望的か。
記 2006/9/18