晩成→(村道・農道・道道657)忠類→(村道)尾田
103km
夜が明けると、宿の周囲は霧に包まれていた。雨の天気予報に気を揉んでいたが、その霧の中が次第に明るくなり始めている。少なくとも大雨で忠類に辿り着けない、という事態は回避できそうだ。
「セキレイ館」は離農酪農家をほとんどそのまま使っているので、元倉庫だった建物を今もそのままとても広い倉庫として使っている。その倉庫から自転車を引っ張り出し、荷物を括り付けていると、宿の奥さんがデジカメとともに登場。
この奥さん、実はかなりのランドナー野郎(失礼)なのだ。以前1999年に学生時代からの愛車を見せて戴いたが、昨日もその愛車は倉庫の奥に丁寧に置かれていたどころか、埃一つ付いていない。今でも時々ランドナーでツーリングに出かけられるとのこと。何しろダート時代のナウマン国道を完走、最後は伝説の吉野の国道渡し船で決めた、という程のツーリストである。
その奥さんが私の自転車を撮りたいとのこと。個人資料としてお客さんのランドナーの写真を撮り貯めているそうで、光栄である。「ちょっと待ってください」と、右側を前、ギヤはアウタートップ、クランクはシートチューブに合わせると、それだけですごく喜んで戴けた。
「お願いしても、わかってすらもらえない人が多いんですよねー」
とのこと、そりゃそうだろう(笑)。
最近仕入れた泥除け無しのツーリング車も見せて戴いてお話しするうち、あっという間に出発希望時刻は遙かに過ぎてしまっていた。心を鬼にして、6:30、晩成「セキレイ館」発。
まずは丘陵越えだ。ナウマン象発掘の碑を横目に意外に続く坂を登ると、ますます霧が濃い。それだけに更に登ると雨が降っている。雨具を着て下り始めると、すぐに雨は止んだ。雨が止むと、高いカラマツの丘陵地帯に、俄然鳴き始めたエゾゼミが今日もやかましい。
当縁川支流の谷を越えると、十勝平野である。周囲には一気に牧草地が拡がった。広々と平らな牧草地や畑や防風林がどこまでも続く。
薄暗かった空が、次第に薄明るくなり始めていた。それに何だか全然雨の気配が無い。むしろ溜まった雲の下、薄明るさで暖められた熱気に暑さを感じるほどだ。
まあこの先10km強の忠類まで、雨の心配は全く無いだろう。でも、もう2〜3時間もしないうちに、十勝全域は大雨になってしまうのだ、天気予報では。
広々と十勝らしい景色が続く道は、また同時にとても北海道らしい風景だ。今回のツーリングの最終段階で、こんな風景の中を走れることがとてもうれしい。調子に乗って1本南の道道657へコースをシフトしたりする。
忠類が近づくと、何とうっすら陽射しが現れ始めた。この段階で、さすがの私もようやく天気予報を疑い始めた。今日ほんとに雨は降るのか。
忠類のコンビニで店員さんに聞いてみると、何と今朝いきなり晴れの予報に変わったとのこと。話が違うぞ。どうも雨の降り始めは夕方前後らしい。忠類でバス輪行とばかり思っていたが、まあ走れる方向である。ならば、以前からの予定を復活させてこのまま北上、新得へ向かうか。これならお昼は八千代牧場のレストランにできる。景色の良い八千代で食事ができると聞いて、だいぶ前から目を付けていたのだ。
コンビニを出ると、もう完全に雲の間に青空が登場し始めていた。
8:30、忠類発。しかし、完全に忠類からバス輪行と思っていたので、気持ちも身体も何となく取っ掛かりが悪いのは仕方無い。
周囲はいかにも十勝平野らしくだだっ広く、畑と牧草地と格子状防風林が次々登場しては後ろに過ぎて行く。目指すは十勝平野南寄り、日高山脈麓の1本道だ。
空の低く厚い雲は相変わらずだが、周囲は陽射しが出たり隠れたり。それでも風がこよなく涼しく、まあ快適に走れていた。
記 2005.9/19