下川→(国道239)西興部→(道道137)滝上
(以下#4-2) 182km
何となく早く目が覚め、うとうとしながら4時半まで引っ張る。4時だとまだ真っ暗だが、4時半だと完全に明るくなっている。その明るくなっている外は、かなり濃い霧のようだ。宿のおやじさんの「夏の空気と秋の空気がぶつかってる」という言葉を思い出した。
外へ出てみると、本来はるかに寒いはずの昨日の朱鞠内より、今朝の方が全然涼しい。Tシャツ1枚だと肌寒いぐらいだ。今日は少しは助かるかも、と思った。
濃霧の中が明るくなり始めている。あるいは8時頃までには一気に晴れてしまうパターンだろう。天気の心配は無さそうだが、今日この先滝上へ向かうのに、標高800mの上紋峠越えにしようか、それとも穏当に標高差100mも無い天北峠にしようか、少し迷っていた。
上紋峠に行くとすると、その前に下川から朝日村が標高差400mの峠越えとなる。静かで山々の景色が雄大な上紋峠は、景色そのものには文句の付けようが無いだろう。峠の標高差は約600mぐらい、その後滝上から遠軽まで小中3つの峠越え、遠軽から先は丘陵地帯横断となる。全部こなして今日の宿まで到達することは可能だろう。問題は今までの疲れに今日の疲れが加算される明日だ。チミケップ湖・津別峠展望台訪問へ向けて、露骨な疲れを残したくない。
少し考えたが、やはりここは体力温存だろう。今日だってこの先どんなに暑くなるかわからないのだ。
6:15、下川発。国道239でまず牧草地の中を東へ向かう。下川を出発した時点ではまだ頭上にたっぷりこってり白い霧が溜まっていたが、遠景はよく見え始めていた。果たして二の橋辺りから突然辺りが陽差しで明るくなり始めた。
その後はもうあれよあれよと言う間に一気に雲がどこかへ飛んでいってしまい、青空にまぶしい陽射しが青々と牧草地や周囲の山々を照らす、激晴れになってしまった。
直射日光はかなり鋭く、日焼けした肌にちりちり刺激を感じる。ただ谷の空気は冷たいのか、わずかな風が涼しく、この上無く快適だ。おまけにまだ朝なので国道なのにほとんど自動車が来ないので、道の印象はいつもよりはるかに好ましい。こっちで正解だった。
程良い広さの谷間の1本道に、鄙びた町並みが張り付く一の橋で少し休憩。
その後は谷間が狭くなり、だらだらっと坂が続いてあっけなく天北峠越えである。突如大雨に悩まされた2年前は悪夢のような道だったが、天気さえよければ実にあっけらかんとした道だ。ふと昔この道に並行していた名寄本線の普通列車で、この峠を通過した時のことを思い出した。
峠から下ると、すぐに周囲は開けて牧草地になった。基本的に昨日からこればかりだが、まあ北海道の峠なので仕方無いのだ。
奥興部のごつごつした拳骨山、なだらかな丘陵に挟まれた谷間を眺めつつ、8:05、西興部着。
町中から見上げる峠道にはちょっとめんどくさそうな印象もあるが、標高差でいえば100mも無いのだ。
登りがたいしたこと無い分すぐに藻興部川の谷間へ降り、そのまま牧草地を遡り続ける。
多少アップダウンを伴う道、ちょっとだけごつい雰囲気の山々、今までと同じく牧草地の道ではあるが、明らかに雰囲気は変わっている。低山に挟まれた、だだっ広い平坦な道北の谷間から、北見地方に入ってきたのだ、と実感する。
空にはやや雲が出始めていた。それも頭上の雲は真っ白で高いが、上紋峠方面はなんだかとろんと重そうな雲が山の中腹以上に掛かっている。またもやこっちで正解だったと思った。
西興部といえば有名な「氷のトンネル」への分岐が、札久留峠の途中にある。昔は西興部から随分離れていると思っていて、訪れたことは無い。その氷のトンネルも近年の大雨や台風の傷跡か、崩落のおそれで通行禁止との立て札が立っていた。
峠からの下りは、両側の山の隙間に、北見地方の山々が見通せるなかなかダイナミックな風景だ。高いカラマツとともに、この道の意外な収穫だ。
下りきった札久留から、道道61との併用区間だ。広々と開けた谷間、低く大人しい形の山々、畑にカラマツの防風林、紋別の山間らしい風景が続く。
滝上の町にだいぶ近づいたところで、以前泊まったサクルー荘を確認。多少訪れにくい場所ではあるが、とほ宿と言うよりかつての旅人宿の良さが一杯で、ちゃらちゃらしたところが無く落ち着いた良い宿だ。北海道を旅している気分に目一杯浸れる数少ない宿なので、いつかまた泊まってみたい。
9:35、滝上着。町外れのコンビニでちょっと休憩しているうち、すっかり空に雲が拡がっていた。
記 2005.9/17