2004.5/15
|
|
O乗継ぎの普通列車がKを過ぎ、K盆地の縁を下り出す。前日までのはっきりしない天気の残り雲が、まだ盆地のお皿に一杯漂っているのが見える。目指すM山脈方面にも、しっとり重そうな雲が腰を下ろしていた。でも今日は晴れの予報だ。前々回も急にぐいぐい晴れていったので、今日の天気にはあまり心配していない。
果たしてKで乗り換えたM線に、寝ぼけたまま1時間ほど揺られているうち、空中の雲は嘘のように消えてしまった。
8:10、H島発。
H川はここ数日続いた雨のためか、濁流が迸るほど増水していた。いつも楽しみな流れの水色が、すっかり泥水の色になっている。
しかし、H川の谷を新緑は駆け上がるような勢いで埋め尽くしていた。雲一つ無い青濃度の高い青空から鋭い太陽に照らされて、新緑は濃いような輝くような、活き活きと鮮やかな色になっている。その新緑の中、時々ホトトギスや山鳥の声が聞こえた。しかし、梅雨前ぐらいに一気に増殖するはずの昆虫類は、まだほとんど見られない。
程良く快適な気温に晴天。今日はもう行くしかない。
8:40、O通過。H川の支流、N川に乗り換え、北上が始まる。
谷は蛇行を繰り返しながら、次第に狭く、山は次第に高くなる。X道はN川からかなり高く登ったり川原に近づいたり、登り基調のアップダウンで彫りの深い谷を遡り続けた。
太陽はもう高く登っていて、稜線に遮られること無く谷の中を照らしている。その陽差しの中で、木々が光に透けて黄緑色だったり影を作っていたり、ボリューム豊かでいてふわっと軽やかだったり、増水気味のN川の流れの音と共に賑やかだ。
狭い谷間に平野部が現れた。田植え中の田圃や畑が少し続き、それが川沿いの集落に連続して、9:00、A倉通過。
過去3回通った記憶通り、ここから切り立った山々が迫ってくる谷間となる。
発電所・D峠への分岐・1台分しか無い登り坂トンネルを通過し、周囲がどんどん山深くなる。
岩のごろごろしたN川の急流、新緑の木々を間近に眺め、N山の温泉旅館を通ぎ、トンネルを抜けると、谷間一杯に水を貯めたN田湖に到着。いつもは鉱物の影響か鮮やかな水色のN田湖の水面も、今日は増水のため泥水色だ。
10:00、N田着。集落それ自体はすぐに終わり、少し山裾の森の中を抜けると、ゲートが設けられたKトンネルと、発電所が見えてきた。発電所手前には例によってワゴン車やら乗用車が10台ほど停まっている。どの車も主はもぬけの空だが、主は多分釣り客だろう。そう言えばここへ釣りに来た人の話を最近聞いた。何でも小型自転車、中には小型のバイクを持ち込む人もいるらしい。高さ2m弱ぐらいの開かずのゲートを通過するのには、乗り越える以外ちょっと想像が付かない。小型とはいえ、バイクを持ち上げるのはさぞかし重いことだろう。
記 2004.6/30