ニニウ→(道道610)富内
→(道道131)幌毛志
→(国道237)小平
→(道道80)正和
→(道道71)美宇
→(道道208)東川
→(道道1025)緑丘
→(道道71・20間道路)静内
126km

静内

20間道路

緑丘

東川

美宇

正和

小平

幌毛志

富内

福山

ニニウ

北海道Tour01 #12
2001.8/20 ニニウ→静内


 最終日だ。明日の今頃は、青森到着直前の急行はまなすの寝台車デッキ辺りで、乗り換えに気合を入れているのだろう。窓の外を見ると、真っ青な空が拡がっていた。宿の周りは木立なので見える空は限られているのだが、少なくともその範囲では雲が見えない。

 荷造りをしてから外に出て、隣の例の廃校に行ってみた。
 12日前に通ったときには宿泊客が居たはずの廃校は、もうみんな帰ってしまったようで、静かな校庭の片隅には大きなテントだけが残されていた。森の朝の空気が冷たく、校庭の草には露が降りているが、校庭に置かれている教室椅子に座り、インスタントラーメンを沸かし、コーヒーを飲んだ。時間が早いからか寒いからか、しつこいアブもヤブカも居ない草っ原で、早起きの分のんびりする。
 高い木立の中、忘れ去られたような「新入小学校」の校舎と草の生えた小さな校庭、何でもない場所なのになぜか初渡道で一番記憶に残っていた場所。ずっとここでこんな朝を迎えてみたい、と考えていたように思う。83年からの18年間の、この静かな場所の毎日、晴れの日や大雨や雪の日を想像した。
 ぼうっとしたり、昨日の食べ残しの梅干しおにぎりまで動員するうち、あっと言う間に時間が過ぎ、やがて太陽が高く昇って木々の間から鋭い陽が射してきた。いい加減にそろそろ今日も出発しないと。

 7:45、ニニウ発。
 初日と同じ鵡川沿いの森のダート道道610を、富内まで逆走する。緑の木漏れ陽に木々の間の青い空、まだ低い気温が爽やかだ。しかし、たまにやってくる自動車やオートバイの後ろには、白い砂埃がしばらく漂った。
 8:40、福山発。しつこかったおばさんのいる「樹海苑」はもう店開きしていた。自転車が国道275横切るのを見つけた例のおばさんが、店の外へ走り出すのが見えた。そそくさと通過する。たとえものすごく美味しいとしても、意地でも寄りたくなくなった。恐るべし福山。

 福山を出て、再び鵡川沿いの山の中のダートが続く。鵡川を挟んで向かい側を見上げると、1000m弱くらいはありそうな高い山の上の方、笹原の中の点在する樹木までまで見通せる。濃い青空の中の山の緑がまた鮮やかだ。
 まもなく砂利採掘所を過ぎると、しばらく鉄骨シェルターが続く箇所になる。標高差2〜300mはありそうな山の片側が、まるで崩落したようなざくっと切り取られたような岩場になっており、その一番下を道道が通っているのだ。通過していてちょっと怖さがあり、この場所があるから鵡川沿いのこの道道もそう開けないのか、などと思った。地名も「大崩」なんて書いてある。
 ここを過ぎると、すぐに富内までの舗装区間となった。

 9:40、富内発。道道131で小さな峠を越え、幌毛志から国道237で二風谷を経由し、小平まで南下する。
 二風谷ダムが数kmもの細長い平取湖を作っている脇を、国道は多少高度を上げて小さなアップダウンとともに通り過ぎる。国道を挟んでアイヌ文化博物館・アイヌ文化資料館なんて建てられており、ふと、よく知らない二風谷のアイヌ民族の話、ダム建設の話など、本多勝一さんの本を読んでから来ないといけなかったな、と思う。

 11:20、小平発。義経峠を越え、門別と新冠の山側を抜け、静内へ向かう。
 義経峠などと言うと何だか大げさに聞こえる。実態は標高差100mぐらいの丘越えである。もっとも、斜度も緩いにも係わらず、情けないぐらいに登坂速度は遅いのはいつも通りだ。国道からは比較的密な森の中だったが、峠を越えると一気に周囲は開け、静かな谷間に牧場の連続する道になった。馬の牧場が多いのがいかにも日高地方らしい。

 約50kmの間、低い山の間の狭い谷間、牧場の中を下ったり遡ったりという静かなのんびりした道が続いた。広富から正和、東川から緑丘、万世から20間道路のある御園まで、大まかに3回の峠越え・丘越えがあった。まあ、標高差100m程度とか200m程度とかあまり大したことはないのだが、正午を過ぎてようやく新冠町に入り、今日も出発の遅さを後悔していた。時間の感覚が早出に慣れてしまっているので、12時と言っても普段の11時相当の行程なのだ。おまけにダート含みで、恐ろしく平均ペースが出ていない。

 万世から始まった最後の坂は登っているうち次第に緩くなり、峠部分でフラットが続いてから一直線に下りだした。右側の空が谷間側に開けると、眼前には20間道路のある御園の谷が見えた。遠くの方、谷の真ん中には一直線に植えられた桜の木の列が。
 14:30、ついに20間道路着。
 道道71との交差点から、大きな桜の並木に挟まれ、広い道路が奥の日高山脈へと一直線に向かっている。いや、実際には道は3・4kmで終わってしまうのだが。桜並木の向こう、両側の牧草地は鮮やかな黄緑で、その向こうは山々と青空が見えていた。桜の季節は花見客でごった返すこの道も、今は至って静かで誰もいない。時々自動車が通り過ぎて行くだけだ。
 それ以外何も無いといえば何も無いのだが、この道の落ち着いた風景が以前から大好きな道だ。こんな場所で今回の旅行を締めくくれることが嬉しい。それらしい場所を探して自転車の写真を撮ったりして、最後の時間を過ごした。

 20間道路から終着の静内まであと数km。台地を下って再び道道71に合流し、周囲の牧草地や畑が住宅地に替わり、やがて静内の市街地を抜け、15:00、静内駅着。

 駅で時刻表を見ると、16:10に列車がある。しかし、この列車では札幌到着は遅いはず。寝台の切符を持っている急行はまなすの出発まで何もできないか、中途半端な時間になるはず。一方、駅前の道南バスの待合所では、15:25に札幌行きの高速バスが出るとのこと。あと25分。これなら18時過ぎには札幌に着けるだろう。輪行作業が間に合うかどうか。「なんでおれの旅行ってこんなのばっかりなんだ」とつぶやきながら、即輪行開始。

 結局、自転車と荷物のパッキングは15:20頃に終わった。まともに食事もできなかったが、バス輪行で札幌へ。

記 2001.8/22

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Last Update 2004.1/1
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