北海道Tour01 #1
2001.8/9 苫小牧→新得

苫小牧→(国道36・234他)遠浅
→(道道482)厚真
→(道道10)豊丘
→(農道・林道)似湾峠あづほ隧道
→(道道59)仁和
→(道道74)穂別
→(道道131)富内
→(道道610)ニニウ
→(道道136)占冠
133km

占冠

ニニウ

福山

富川

穂別

仁和

似湾峠

厚真

遠浅

苫小牧


 北斗星小樽号の寝台の窓の外が明るい。身体を起こして外を見ると、夜から朝に変わる白い空の中、一目でわかる駒ヶ岳の大きな影に半分以上白い雲がかかっていた。列車は今赤井川辺りというところか。

 再び起きると、長万部付近のようだった。窓には何とかなりしつこく水滴が着いている。外の木々は大きく頭を振っており、白い葉っぱの裏側が見える。どうやら大雨で、風も強いようだ。空や遠景の感じから、雲もかなり低いのではないか。
 洞爺・東室蘭と雨も風も強くなったり弱まったりで、さすがに本気で今夜宿泊予定の新得までの輪行移動を考え出した。輪行で新得まで行くとなると、このまま列車を乗り換えるだけなので、何ら面倒なことはない。それに、ちょっと昨日の出発の時時間的に余裕が無く焦ったのか、ひげ剃り・歯磨きとコンタクト用品一式と、要するに洗面関係一式を忘れてきてしまっていた。これを何とかしないといけなかった。
 そこで、下車予定の苫小牧までの乗車券を、一つ手前の登別通過後に札幌までの乗車券に区間変更した。ところが変更した時点で、何と急に雨も風も弱まってきた。というか止んでいる。空も明るくなっているような気がする。それだったら走るしかない。しかしいきなり無駄遣いをしてしまった…。

 8:23、苫小牧着。駅前のそれらしい一角に店開きする。雨は全く降っていないが、風はやはり強く、強い以上に冷たい。でも、東の日高方面の空の下の方は雲が切れていて、何だか明るい空の中に日高山脈らしい山が見えており、妙に希望だけは持てた。
 出発前にとりあえずいろいろと街中を物色する。コンタクト屋が見えたが定休日だったり、薬局を探したりして、苫小牧発は9:20。いろいろとうろついているうちに、けっこう希望の持てる曇りだったはずが、雨が降り出してきた。結局今日はこうなるのか。

 苫小牧の街中、裏道みたいな道で国道234を目指すうち、雨で地図を見にくいこともあって、間違って国道36に入ってしまった。このまま行くと全然違う方向に向かってしまうので、沼ノ端で軌道修正。事前の地図確認を怠ったおかげで、ちょっと大回りになってしまった。
 国道234は、苫東工業地帯の外れを過ぎ、灌木の樹海をほとんど交差する道も無く抜けてゆく。しかし樹海という言葉の印象からは意外にもと言うべきか、国道なので当然と言うべきか、交通量は多い。アップダウンが続くようになるうち、遠浅で「鵡川」の標識が現れた。けっこうな雨の中、自動車の間を走るのもいい加減嫌気が差してきた。車がはねた水もかかる。耐えられない。

 苫小牧から続く低地から標高差30mもない緩やかな丘陵地帯に突入する。大雨ではないが雨足がはっきり見えるぐらいの雨が続いた。厚真までは道なりに一度南下して、再び北上することになる。南へ進むと、つまり海岸に近づくと、雨も風も強くなるように思えた。
 厚真で見えた「鵡川」の標識に、何の気無しにそっちの道を選んだが、交差点の向こう、丘を巻いて登って行く道にもなんとなく見覚えがあったような気もした。あまり考えずにしばらく進むうち、沿道風景や地名から、またもや道を間違えているらしいことがわかった。地図を見ると、ちょうど細い農道か林道みたいな道が似湾峠の脇へ続いている。が、細い道は峠の手前で単線になっている。最悪担ぎになるかもしれない。しかし、タイムロスを考えると、あまりこの辺で時間を食い過ぎるわけにはいかなかった。
 それにしても今回は忘れ物、道間違いとケアレスミスが多い。自分で自分が心配になってきた。

 豊丘で似湾峠へショートカットする脇道を入る。ビニールハウスの中から出てきた農家のおばさんに道を確認すると、似湾峠まではダートになるが道は通じているとのこと。地形図上のこの道は細い道で、最後の山越えの区間は単線で描かれており、内心冷や冷やしていた。でも、どうやら最悪でも担ぐことは無さそうである。おばさんは
「元気を付けなさい」
と言って採ったばかりのトマトをくれた。水っぽくない、濃厚なトマトの味がした。

 林の中のダート路面はなかなか締まっており、ほとんど舗装に近いと言ってもいいくらい走りやすい。ちょっと目にはわからないくらいの登りが緩い登りになり、やがてちょっとしんどい位になった。砂利もいつの間にか深くなっている。が、似湾峠自体150m程度と「峠」とか「山」とかいう程大した物でもない。
 ダートを登り詰め、ちょっと下って道道59の似湾峠のトンネル手前に合流した。

 2年前のGWにも通った道道59を下りきって、12:10、仁和通過。ここから道道74へと入る。
 雨は途中から小降りになった。日高地方らしい、北海道にしては比較的狭い谷を遡り、12:40穂別通過、13:05、富内着。富内の手前から完全に雨が上がった。
 ここから先、本日最大の目的、ニニウまでのダート道道610号に入り、占冠を目指す。出発時刻が遅かったのであまり真面目には考えていないが、もし可能なら、その後狩勝を越えて新得まで自走したい、などという甘い希望もあった。

 富内を出てもなかなかダートが始まらない。前回通ったのは96年、5年の間に舗装化は確実に進行していたようだ。ようやく始まったダート区間も、以前よりも拡幅されていたようだ。しかし、雨も止んで、木漏れ陽の静かな道に心は和む。木々が切れると岩肌の露出した山の大斜面の谷底に鉄骨シェッドが続いたり、なかなか楽しい道だ。
 走っていると、去年もトマム近くでびっくりした山奥の森林大伐採などにも出くわした。手前の斜面から谷の向こうの山肌まで、広葉樹林が丸裸になっている。

 福山で国道274と交差する。国道274は十勝・釧路方面と札幌を結ぶメインルートで、深い山の中に高速道路のような立派な道が続き、交通量が異常に多い。道央から十勝のいい場所を効率よく結び、日勝峠には展望台もあり、気軽に訪れてしまうチャリダーの話も聞くが、実は「道内絶対自転車で走りたくない道」最上位クラスの道だ。今日もまるで都内の通りのように、車がおよそ絶えると言うことがない。
 道ばたで地図交換をしていると、樹海軒のおばさんが休んでいくように声を掛けてきた。
「ツーリングマップルにも載っており、みんなここで休んで行く。ラーメンも美味しく、みんなスープまで完食する」
と、営業熱心である。しかし、今日はその余裕は無い。

 福山を出てすぐ、舗装区間で道路の段差でごつっと鈍い感触があった。やばい、と思ってすぐに空気圧をチェックするが、そう一気に減った感じではない。しかし、何かかすかに擦れるような音が続いている。よく見ると、先ほど雨に濡れたホイールの一部のニップルから泡が吹き出している。空気圧をもう一度見ると、やはりさっきよりも明らかタイヤが柔らかくなっていた。間違いなくリム打ちパンクだった。
 間が悪い日だ。ここまでいろいろ続くと、何だかやる気も失せる。時間も予定より大幅にかかっており、とりあえず列車に乗れる占冠で後のことを考えようと思った。

 ニニウの手前から占冠までは、83年に初めて北海道に来た時に、占冠のレンタサイクルで通った道だ。つまり初めて自転車で走った北海道の道なのだ。当時は石勝線の列車撮影が目的で、占冠からトマムへも行ったのだが、2日間行ったトマム方面よりも、山深いこっちの方が印象に残っている。その時はこんな山深い道は一体どこへ通じているというのだろう、などと不思議に思っていた。その後、96年に今回と同じく富内から遡る形で、13年振りの宿題を解決したのだった。
 ニニウのサイクリングターミナル脇には、83年におにぎりを食べた廃校の校庭がある。何ということはない単なる廃校の校庭だが、今となっては83年の北海道旅行で一番印象に残っている場所だ。今はサイクリングターミナルの施設になっているようで、昔の佇まいは全く変えずに、綺麗に手入れされて残っている。ちょっと立ち寄ってみたが、「林間学校」とペイントされた小さな元校舎にラフティングの学生サークルが泊まりに来ているようで、あまり自転車を停めてじろじろうろうろするわけにもいかなかった。あやしいおやじになってしまう。

 基本的にはダートなのだが、やはり以前よりもはるかに舗装・拡幅の進んだ道を先に進み、16:35、占冠着。時刻表を見ると、17:06に列車があり、その後は2時間後になってしまうようだった。幸い今回はフォーク抜きではなく、より輪行時間の短い門岡式輪行袋で来ているので、30分だったら間に合う。ここから狩勝峠までは50〜60kmあるはずで、時間的にもそろそろ潮時のはずだった。
 物忘れ・道間違いの辻褄合わせ、リム打ちパンクと、なんか最後まで調子の合わない1日だった。でもまあ、よく考えると、この先60kmをこなすのには、タイムロス云々ではなく、9:20出発だと私の脚では絶対に無理である。

 18:05、サホロYH着。天気予報では、今後道東の釧路は雨続きとのこと。かなり気が重い。

記 2001.8/9

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Last Update 2003.12/31
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