喜茂別
豊郷
仁和
美笛峠
千歳
留寿都
富川
洞爺湖
洞爺
5:10。なんとなく目が覚めた、寝台の窓から真っ青な色の空が見えた。おおっ、天気予報通りだ。と思ったところで、窓の外の大きな山の形を思い出した。駒ヶ岳だ。駒ヶ岳が雲に邪魔されずに全部見えているので、最初ちょっとわからなかったのだ。
今日は空に雲が全然無い!
もう一度寝て起きると、列車は今度は噴火湾沿いを走っていた。
水平線に、函館から駒ヶ岳に始まりぐるっと回って日高山脈先端の襟喪岬まで全部見える!
何だか今日は凄ざまじい激晴のようだ。とはいえ、山々はまだあまりに真っ白すぎる。けっこう寒いかもしれない。
6:38、洞爺着。やはり空気は冷えている。東京の3月中旬だな、と思った。
早速自転車を組み始める。やっぱり今回もノーマルの状態にするまで30分くらいかかった。この状態に更にキャリアを付けないといけない。近くのセブンイレブンで朝食を取っているうち、またまた時間が過ぎてしまう。
8:15、洞爺発。海沿いなのに意味無く登りとトンネルがけっこう多い国道230号を少し戻り、豊浦から今度は道道97号を内陸部へ向かう。朝からいきなり200m登りとなる。
これを登りきると、いかにも道南らしい農村風景が拡がっていた。
緩やかにどこまでもうねる丘陵地帯に広がる畑、森、点在する農家。黒々とした土・まだ葉は付いていないが芽ぶき始めた木々・鮮やかな緑色の牧草地、周囲の山々には、顔を覗かせている地肌よりはるかに多い残雪がまだまだ残っており、正面には、どっかーんと単独でそびえる巨大な羊蹄山!雲のかかっていない羊蹄山も初めて見た。
道道97号は緩やかなアップダウンを繰り返しながら、基本的に高台の畑・牧草地、両脇の山々に挟まれた開けた農村地帯を内陸部へ進んで行く。いかにも早春という雰囲気の風景の中、のどかな田舎道を雲一つ無い青空の下、風の心配なく走れる幸せを噛みしめていた。
何はともあれ、また北海道を走っているのだ。
時々アップダウンをくり返しながら、やがて農道へ分岐して国道230号と合流。
10:30、留寿都着。留寿都の町を抜け、ルスツリゾートの脇のセイコーマートで補給にする。
セイコーマートは去年辺りから店内調理の弁当を発売開始しており、これがうまいのだ。種類はまだ少ないような気もするが、カツ丼とカツカレーがあるので私には十分だ。また、私の自転車のボトルケージは1.5lペットボトル用なので、2lよりむしろ1.5lの方が多いセイコーマートは補給にはとても都合がいい。
喜茂別手前の分岐で今度は国道276号に入り、しばらく狭い山間を広島峠・美笛峠と次々と越える。標高を上げるにしたがって、周囲の残雪が増えてきた。広島峠の先、大滝村への国道453号への分岐を越えると、谷が少し拡がって、シラカバやカラマツの林を雪溶け水で溢れそうな川が流れる、高原っぽい雰囲気になった。
やがて美笛峠の滝笛トンネルを抜けたら、遠くに洞爺湖の水面が見えた。
13:00、洞爺湖着。
洞爺湖畔を走る。アップダウンの少ない走りやすい道だ。湖の外周道路は、3・40m登ってもまた同じ分下るのだ、という妙な安心感がある。車が少ないので、静かな湖畔の一本道という印象である。
進行方向左側に見下ろす静かな湖面は青空を反射している。一方、湖の反対側には、恵庭岳に始まる残雪の山々が湖面からそそり立つようにそびえている。
完全に無風、雲一つ無い空の下、もはや洞爺湖サイクリング気分である。最高!単純に札幌の近くの有名観光地というだけで、いままでここへ来なかった愚かさが悔やまれた。欲を言えばこれで荷物が無かったらいいのに、とも思うが、まあこれは私が北海道を走るための制限事項だろう。
14:00、千歳への道道16号の分岐に到着。地元のご年配のロードレーサーに道をたずね、千歳への自転車道路を走る。千歳までの約20km、ほとんど全区間原生林の中を道道16号と自転車道路は、併走したり離れたりしつつ、平坦に近い下りで千歳へ向かう。
こんな長い距離の自転車道路をよく作ったな、と思うくらいよく続く道路だったが、幅3mちょい程度の狭さと、いかんせん隆起が多い舗装状態であまり快適とは言えず、千歳まで半分も行かないうちに車道に移った。そういえば、さっきのロードレーサーの方も、自転車道路ではなく車道の脇を走っていた。
14:45、千歳着。補給のため、市街にあるはずのモスバーガーを探す。が、千歳市街のモスバーガーは空港へ移転したとのこと。見た範囲ではセイコーマートも無かったので、目の前のセブンイレブンでカルビ丼弁当を食う。
千歳から美々までは国道36号を通る。豪快な2車線道路に大型トラックが高速でばしばし通行する道内メインラインだろう。路側帯のエリアはけっこう広めなので、多少は安心なような気もするが、あまり気分は良くない。しかし、トラックの気流に乗って、速度は上げられる。
美々からは道道10号線、牧場地帯の中の一直線道路となる。アップダウンが非常に少ないのがありがたい。けっこう横風気味だがまだ少し追い風。
そろそろ太陽光線が赤くなり出した。
16:00、早来発。小さな丘を越え、更に道道10号を厚真へ、更に道道59号で厚真から似湾峠を越え、仁和へ降りる。山の中の静かな一本道である。特別景色がいいわけじゃないのだが、苫小牧から国道235号で工業地帯を抜けることを考えると、静かな道はありがたい。
次第に太陽が傾き、自分の影が長くなっている。相変わらず雲一つ無い空は夕焼けのオレンジ色、そんなに高くない近くの山々はまさに紫色のシルエットとなっている。
夜が近いので、気持ちはちょっとあせっているが、こういう風景を見ながら「あせらない、あせらない」と心でつぶやく。あせっても、速く走れるわけじゃない。疲れるだけだ。
17:30、仁和発。辺りが暗くなってきた。太陽が沈むのも、もはや時間の問題だ。今夜の宿泊予定の豊郷「夢眠村」に連絡を入れておく。
道道74号でもう一つ丘を越え、富川への国道237号が走る隣の谷に降りる頃には、太陽は完全に沈みきっていた。
19:00、富川通過。怖れていたナイトランになるが、宿には遅れることを連絡済みなので、まあ少しは気が楽と言えば楽である。
国道235号は交通量のけっこう多い、大型車が高速で走る危険な国道という印象があったが、今夜はそう車は多くないようだ。富川から豊郷まで、谷を登ってしばらく丘の上の牧草地やら森の中を走り、また谷に降りるとそこは町になっている、というのがこの辺の基本的な構成で、町の明かりが見えるとほっとする。
しかし、さすがに日中があれだけ晴れていると、月も凄ざまじく輝いており、街灯など全く無いのに周囲は奇妙に明るい。丘の上の国道からは時々海が見えるが、まっ暗な海の中、月の方向だけ無数のさざ波が銀色に輝いており、何隻か漁船らしい船も浮かんでいるのが小さく見える。実は月が海を照らすのは初めて見る。
豊郷から「夢眠村」までは、牧場の中を3km強位、明かりの無い細い道が続く。月で明るいため、自動車の来ない静けさ・空の星・黒々とした近くの山々や森の影の風景を眺めながらゆっくりと走ることができる。
夜間走行は慣れないので意外と気分的に落ち着かなかったが、さすがにあと3kmぐらいの距離だと、暗い中でも本当に落ち着いてゆったりと、いい気分で走ることができる。
19:40、豊郷「夢眠村」着。
飯を食っているうち、どんどん眠くなってきた。明日がある。今日のツーレポ書きは、さぼるしかない。どうせしばらくPHSが使えないのだ。
記 1999.5/5
#2に進む 北海道Tour99春indexに戻る 自転車ツーリングの記録に戻る Topに戻る
Last Update 2002.12/17