弟子屈 →(国道243号)屈斜路湖
→(道道588号)津別峠
→(林道上里線)津別峠展望台
→(道道588号)津別
→(国道240号)本岐
→(道道494号)チミケップ湖
→(道道682号)最上
→(道道27号)北見
→(道道261号)弥生
→(町道)幸岡
→(国道242号)留辺蘂
128km
弟子屈
留辺蘂
北見
チミケップ湖
本岐
津別
上里
津別峠展望台
津別峠
屈斜路湖
「鱒や」は弟子屈の外れ、札友内の釧路川のほとりに建つログハウスだ。国道からちょっと奥まった牧草地の外れの茂みにあるので、夜も朝も辺りはとても静かで、特に朝は周囲の牧草地の雰囲気に包まれてとても爽やかだ。
5時から起きて何だかんだ出発の用意やら、ツーレポ書きやらやっていると、赤い朝日が窓から入ってきた。夕べの星空はとても綺麗で、満月がまぶしすぎるのが玉に瑕、という位だった。今朝も同じようにすかっと雲一つ無い青空が拡がっている。が、気温は10℃を切っていそうだ。爽やかと言うよりも寒い。
例によって朝食を速攻で詰め込んで、7:50、鱒やを出発。朝の空気に包まれた屈斜路湖岸へ続く台地をしばらく走る。下流側から走っているにも関わらず、湖岸の平地は全く平坦だ。道路の両側には畑が拡がり、右奥には屈斜路湖の外輪山、左奥には時々湖水が見えるというのんびりとした道だ。
しばらく走ると、屈斜路湖プリンスホテルを過ぎた辺り、向かって左へ津別峠への狭い坂道が分岐していた。
津別峠は、美幌の奥の津別の更にその奥の谷へと屈斜路湖岸のカルデラを越える峠だ。同じく屈斜路湖岸へ美幌方面からアプローチする美幌峠を始め、北海道の峠は基本的にだらだらした坂道が多い。が、この津別峠は内地並の標高差と斜度を持つ峠だ。少なくとも私の中では道内最急峠のうちのひとつになっている。道幅が狭いので、訪れる車もオートバイもあまり無いようだ。
前回の津別峠は、1995年に逆方向からだった。網走に夜行列車で着いて、女満別・美幌・津別というアプローチだった。「11月まで工事中 全面通行止め」というのを甘く見て(ていうか途中でそれを知った。中標津までの行程に、津別峠まで来て変更は許されなかった)、路盤まで掘り返された工事区間を通過するのに死ぬかと思う程大変だった。その工事区間の手前の激坂さも印象に残っている。しかし、その時の未工事ダート区間には、車が来ないためかシカがのんびり歩いていたりとかクワガタがのっしのっし歩いていたりとか、静かな木漏れ陽の峠道という印象があった。
屈斜路湖岸の裾野部分、開けた畑の直登りの後、すぐに木立の中のつづら折れ区間がしばらく続く。屈斜路湖岸もまあ自動車はそんなに走っていなかったが、津別峠には時々にしか自動車もオートバイも来ない。道が片側車線+α位しか無く、乗用車がやっとすれ違う位の狭さだからだろう。
日なたは早くも皮膚が焦げ付きそうに太陽光線が鋭いが、木漏れ陽の中はとても涼しい。その中を、大体9〜10%位の坂が登ってゆく。内地ではごく普通の峠だが、今回走った中で最急の知床横断道路周辺で、最急7%程度。やはり道内では津別峠は急な峠なのだ。
つづら折れが終わると、湖岸の外周道路からなんと無く見えていた、山腹のトラバース部が始まった。95年に通行禁止を突破した時に路盤まで掘り返していて重機のオペさんに怒鳴られた場所、大きな岩がが転がっていてオフロードバイクが途方に暮れていた場所など、前回印象に残っていた場所はけっこう鮮明に覚えているのが自分でも面白かった。
やがて尾根を回り込むと、道道の津別峠の頂上が見えてきた。標高754m。晴れ渡った空の視界の中、屈斜路湖や弟子屈方面、摩周岳・西別岳の展望が見事だ。知床や根室方面はさすがにちょっと水蒸気で霞んでいる。
実はここから先、「本当の津別峠」というのがある。
昔「とらべるまんの北海道」という手書き印刷のガイドブック(通称「とらべるまん」)があった。マニアックなポイントばかり紹介されており、我々貧乏旅行者のバイブルとされていた。私も「なに、持ってない!?すぐ買え!」と言われて、今は無き「しゅまりの宿」で買った。
この本には津別峠の展望台が「真下に見える屈斜路湖の湖面に今すぐ飛び込んでしまいたくなる」という表現で書かれており、昔からこの津別峠の展望台は興味があった。ただ、峠道から更に3km、標高差200mの山道を登らなければならない、とされており、前回は頂上付近から分岐する確かに狭いダートに、先を急ぐ私は訪問をあきらめたのだ。
今回、峠へ来てみたら、この展望台への道がなんと舗装されていた。展望台まで3kmという標識もある。標高差は地図では200m。
今日はもう一つの長年のあこがれの場所、チミケップ湖でのんびりするつもりだが、他にどこへ寄ろうか悩んでいる位時間が余っている。行くしかない。
展望台まではかなりムラのある坂道で、部分部分では今まで以上の激坂になっていた。やはり今までを更に上回るのろさでのろのろと登り、10:45、津別峠展望台着。
頂上の空気が爽やかである。この時間に来て良かったと思った。とらべるまんの文章の通り、展望台から真下に真っ青な屈斜路湖が見える。その奥になだらかに弟子屈に下って行く湖岸の平野、摩周岳・西別岳・知床連山、根釧台地方面の牧草地、釧路方面の空遠くの太平洋や雌阿寒岳・雄阿寒岳、石狩岳、津別・美幌方面の低いが鬱蒼とした山々など、美幌峠からの屈斜路湖の展望なんてメじゃない大パノラマなのだ。本当にジャンプして屈斜路湖に飛び込みたくなった。まあ実際には800m以上標高差があるのだが。
ここでラーメンを作ろうと思って味噌ラーメンを買ってきていたのだが、なんととらべるまんの書かれた15年前には何も無かったはずの頂上に、津別町公営の売店ができており、うどん・ソバまで食べられるのだ。この辺の事情は中標津の開陽台と少し似ている。
早速うどんを注文し、食べながら展望台からしばらく屈斜路湖方面やら阿寒方面、根釧台地を眺めてぼうっとした。
何か15年越しの宿題を果たしたような気分だった。
11:25、展望台出発。津別側アプローチもややムラのある坂で、勾配はところどころ11%にもなるようだった。95年にナミダを流しながら登った苦しさの理由がよくわかった。
下りきる辺りから、周囲の気温が恐ろしく上がってきた。風がぬるい。
津別までは低い山に囲まれた広くない谷をのんびりと下る。
低めの山にびっしりと植わったエゾスギ、比較的起伏の少ない谷間に拡がる畑や水田は、北見地方そのものの風景だ。むしろ内地っぽい風景とも言える。
12:15、津別着。町中の気温計には31.4℃とあった。やはりこの網走・北見地方は道内でも暑い地域のようではある。
昼食休憩後、今度は北海道3大秘湖の一つ、チミケップ湖へ向け、12:45、津別を出発。
先の「とらべるまんの北海道」には、このチミケップ湖が「北海道3大秘湖のひとつ」と紹介されていた。しかし、何がどう秘湖なのかというと、「別に何と言うことはない静かな小さな湖なのだが、個人的にずうっとこのままであってほしい」という表現がされており、アプローチには各方面から10km(?)のダートがあり、徒歩ではかなり厳しいとのことだった。
「とらべるまん」という本は、著者の方が北海道を旅して良かった場所が書かれていたのだが、基本的にこういうマイナーというかマニアックな場所ばかり載っており、「独断と偏見だがここがいいのだ!」という強烈な主張があった。実際、それらの場所を訪れてみると、他の道内の有名観光地には無いが北海道でしか味わえない独特の雰囲気に溢れており、手書き文字の力強さと内容の説得力が我々にはたまらなく魅力的だった。
道道の舗装が進んだ現在、ダートは多少は短くなっているようではあり、何より今回ルートの関係で結果的にこの辺で時間が余ってしまったので、今まで興味はあったが訪問するまでに至らなかったチミケップ湖訪問が、俄然具体的になってきたのだった。
津別からしばらくは大型トラックが通る阿寒湖への国道240号を南下し、谷間の色合いの濃い本岐の手前で道道に分岐。木陰が多く、狭い谷間の小さな牧場の中を走るこの道は、車がほとんど来ない。
やがて唐突にダートが始まる。坂も緩く、何より砂利が少ない、とても走りやすく涼しい木漏れ陽のダートが少し続いた。例によって蝉時雨、鳥の声が楽しい。
やがて緩い登りだった道が下り始めたかと思うと、チミケップ湖の静かな湖面が木立の向こうに見えてきた。13:50。
ぼろぼろになった木の看板で「太古の自然 チミケップ湖」とあるのが何ともそれらしい。本当に小さな湖で、池に近いと言ってもいいかもしれない。私の地元の多摩湖より小さいと思う。
雲一つ無い青空のためか、湖面はやや青いような気がする。風もなく、波は静かで、真昼の太陽が反射して光に溢れるまぶしいその風景を見ていると、単純に時間だけが過ぎて行くような気がする。ここは15年前からきっとこんななのだろう。
ずっとこのままであって欲しい、というとらべるまんの文章の意味を、理解できたと思った。
たまにしか車もオートバイも来ない静かなダートが、湖と狭い木立を隔てて外周をぐるっと回っており、その木漏れ陽の中をのんびりと進む。道は相変わらず砂利が少なく凸凹も無く、走りやすい極上のダートだ。
チミケップホテル等というしゃれたホテルが建てられていて、そこだけは、古びたアスファルト舗装になっていた。ログハウス風の小さなホテルは「完全予約制」とのことで、レストランや喫茶店も設けられているようだった。テントを持たない私は、次回はここに泊まり、チミケップ湖の朝を見てみたいと思った。
北岸近くまで来ると、ようやく腰を落ち着けられそうな広場が湖面まで拡がっているのが見えた。例によって火器でラーメンを食べ、コーヒーを飲んでしばらく木陰でぼうっと湖面を眺めた。こんなに静かでのんびりして、こじんまりと素敵な場所なのに、何故かキャンプ客は少ない。
そう高くない山に囲まれ、陽差しの降り注ぐ静かな湖。時々トンボの羽音がバチッと聞こえる。遠くでセミも鳴いている。ちょっと吹いた涼しい風に気が付くと、意外に時間が経っていた。
14:50、出発。木漏れ陽のダートをまたしばらく北見方面へ登って下り、舗装道路へ出てから小さな峠を越え、16:10、北見の外れに到着。
PHSをおそるおそる出してみると…やった、アンテナが3本!早速美幌以来の通信を開始。今回は道道ばかり走っているため、PHSの使える町が無かったのだ。通信してみると、なんと64k通信が可能なようである。
留辺蘂までは直線距離で約20km。直接国道39号が通っているが、これがまた交通量が多くて風景もつまらない道路なのだ。以前90年に通って、曇りの夕方という天気も手伝い、すっかり嫌気が差したことがある。それで、今回は丘を一つ隔てた道道261号で西に向かい、最後に国道242号で留辺蘂の農村地帯の丘を越え、留辺蘂に向かうことにした。
北見郊外の内地のような水田地帯から北海道らしい丘陵の牧草地へと変わる風景が、次第に夕方の赤い光に染まって行く中を、のんびりと留辺蘂に向かった。この時間にのんびり走るのは本当に楽しい。
夕焼けに包まれた草むらにはカンタンの声が響きわたっている。もういよいよ秋だなあ、と思った。
18:05、留辺蘂YH着。宿泊客は5人。大きな公営YHだが、かわいそうなくらいに客がいない。まあ、この方が落ち着ける。
記 2000.8/18
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Last Update 2004.1/2