古丹→(国道243号)虹別 |
落石
厚床
別海
中標津
俣落
初田牛
虹別
養老牛
弟子屈
古丹
農場のトラクターの音で目が覚めた。
屈斜路湖の湖畔、古丹の牧場の脇という素晴らしいシチュエーションだけあって、今朝は涼しい。それでもまあ24・5℃というところか。5時くらいの空はまだ雲が多かったのが、6時になるともはや雲は空の隅の方にしかなく、林の間から強烈な太陽光線が射してきていた。
7:00、のんき舎発。朝食は8時からとのこと、それでは遅すぎる。どうせ下りだけなので、9km下った国道の分岐のところにあったはずのセイコーマートにねらいを定めていた。国道243号線は弟子屈まで、川沿いに畑・牧草地やら林の間を抜け、わずかながらもひたすら下って行く。
登ってくるチャリダーとすれ違う。こっちの方のチャリダーは今まで全員MTBだ。チャリダーも大体朝は早い。まあ思えば自分も朝は早いのだが、よく走るよ、本当。
セイコーマートで「あれ食べよ!」とおにぎりで朝食にする。弟子屈の国道沿いで朝からカレーが食えるなんて、思えば昔は考えられなかった。と思いながら、次々やって来るライダーを眺めて時間が経つ。今年はライダーもだいぶ減った。3年前の1/3ぐらいになってしまっていると思う。
8:10、弟子屈発。
町外れから根釧原野の台地へ登り坂が始まる。標高差はそんなに無いが、だらだらしたいやらしい登りがしばらく続く。坂をある程度登った辺り、周囲の展望が開けて右側に西別岳の裾野が一望できる辺りで、しだいに空気が冷えてくるのがわかる。さすがに今日は昨日ほど暑さには悩まされないだろう。もっともまだ8時台だ。油断はできない。
そのまま登り、スノーシェッドを越えてまもなく峠だ。ここからは目の前に中標津・別海・標茶方面の地平線、西別岳・斜里岳・遠く羅臼岳、後ろには屈斜路湖周辺の山々やら阿寒など、見事な展望が開ける。昨日の下方修正で1日遅れになってしまったが、ようやくまた中標津へやってきた、という思いで胸がいっぱいになる。
外人のおじさんチャリダーが向こうから登ってきた。自転車はトレックのガード付きクロスバイク。片言で辺り触りのないレベルの会話をして、「Good luck! Have a nice day!」と、まるで中学生の英語の教科書みたいに別れて坂を下る。
もう道道885号の虹別の分岐が見えている。
虹別から、道道885号・505号・150号を通り、中標津へ向かう。番号で言うと3本に別れてはいるが、実は根釧台地の一番山寄りの1本道だ。ここへ来るといつも通る、大好きな道である。別に牧場の中に特別な風景があるわけではなく、結構な向かい風やら雨やらに悩まされる事も多い。全体的にはわずかな登り・下りだが時々川越えの大きな下り登りもある。しかし、牧草地・牧場・防風林を突っ切ってどこまでも一本道が伸びて行く、それがなんとも魅力的なのだ。自動車はほとんど通らないが、ここ数年でオートバイやらチャリダーはけっこう通るようになった。
養老牛までほとんど大きな起伏が無く、わずかに登りといった道が続く。右側には西別岳・少し離れて斜里岳などが並んで見える。天気は晴だが、今日は空の脇の方に雲がけっこう出ている。もともと温度の低いエリアなので、風が吹くと少しは涼しく感じる。しかし、明らかに次第に気温が上がってきていた。
9:30、養老牛着。清里峠への分岐にある中沢商店で、この周辺の農家が協同で商品化したと言う「北進台」のアイスを食う。日影でぼうっとしていると、時間がまだ早いせいか涼しい風が吹いて来る。風は涼しいが、直射日光は強烈この上無い。
9:50発、ちょっと走って10:20、牧舎着。牧舎と言うのはとある牧場がやっている喫茶店で、オリジナルブランドの牛乳やアイスも出している。この辺にはどうせまた戻ってくるつもりなのだが、ここでもアイスを食っておく。
10:40、牧舎を出発。台地を降りて、中標津へ南下する。いくつもの防風林と牧草地を通りぬけ、標高を下げて行くと、明らかに気温が上がってくるのがわかる。11:30、中標津着。今日もすでに、暑さでふらふらになっていた。
何年かぶりに訪れた中標津の町には、何とモスバーガーが出来ており、迷わずここで昼食にした。店内で、すこしうとうとしてしまった。今までの疲れが出ているのか。
表通りに面したスポーツ屋で、帽子を買う。思えば、帽子は夏ツーリングの必需品のはずだった。ここ数年の冷夏で、すっかり忘れていた。
12:30、中標津発。中標津の町外れの丘を登り、別海まで約20km。大小いくつもの起伏のある国道沿いには牧草地と森が続く。とはいえ、あまり急な坂はなく、ペースさえ間違わなければそこそこ楽に走れる道だ。別海まで半分ぐらい過ぎた辺りで、風の中に涼しい感触が混ざり出した。北海道全体を襲うこの超激暑の中、根室だけは天気は晴なのに気温は最高26℃だと言う。
13:30、別海着。ちょっと長めに休憩して14:10、別海発。
別海の町を出て雪印の工場を過ぎた辺りから、なんとなく空気が涼しいものになってきた。いよいよ根室エリアに近づいてきた事が実感される。
別海から厚床まで、道路の起伏は多少急になり、周囲は牧草地と言うより、むしろ湿地帯になる。低い湿地のどこまでもどこまでも続く草原と潅木、その中を電線と道路だけが突っ切って行く。昔はここを標津線と言うローカル線が走っていた。延々と続く湿地、牧草地の風景、時々思い出したように停車する小さな集落、のどかというよりもちょっと異様な厳しさというか寂しさがあった。風景のニュアンス自体は、今も変わらない。
15:30、厚床着。ここからは落石へ向かって、太平洋側の道道を行く。
まだ暑いものの、中標津に比べると、気温は確実に優しい物に変わっていた。
道道1127号は、初田牛までは起伏と風の多い牧草地の中をジグザグに進む。
初田牛に着く直前、海岸の方の空に灰色の低いガスがかかっているのが見えた。この釧路〜根室の海岸には、こういうガスがよく発生する。たとえ周囲がどんなに高温であっても、このガスの中は気温は20〜10℃位になる事もあり、この地方の気候の不安定さの原因となっているのだ。1986年、最初の北海道ツーリングで、阿寒を越えて弟子屈→厚岸と日焼けで水ぶくれができるぐらいの高温・激晴だったのが、このガスの中はすざまじい低音で、凍え上がりながら着いた宿ではストーブが炊かれており、「北海道、怖るべし!」と心から思ったものだ。
初田牛から先は、道路は海岸から立ち上がっている、高台の潅木林の中を走る。シラカバなどの広葉樹、杉などの針葉樹が、高く生えずに3・4mぐらいの高さで生えているのだ。幹なんかぐねぐね異様に曲がっており、こけが生えているのでシラカバも全然白くない。見慣れない木々の姿に、気候の厳しさと、底知れない森の深さ、踏み込んではいけない領域のようなテンションを感じる。
根室本線に沿った平坦な道路を、快調に飛ばす。初田牛を過ぎた辺りからすでに、周囲の空気は完全に冷たいものになっていた。感覚として、暑かったあの美幌やら興部・弟子屈辺りのセイコーマートの店内よりやや涼しい印象があるので、24・5℃というところか。太陽は相変わらず照りつけているのだが。
17:05、落石「カジカの宿」着。落石はすっかりガスに包まれていた。気温は20℃という感じ。昨日の下方修正があり、予定していた根室・ノサップ岬周回はあきらめた。
記 1999.8/13
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Last Update 2004.1/2