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最終日。
最終日。天気予報は昨日と変わらず、午前中晴れ。13時から曇りだが、その時間はもう空港で飯でも食っているだろう。知ったこっちゃあ無い。外も早朝から空一杯に青空が拡がっている。今日は風も無い。最終日、絶好のサイクリング日和になりそうだ。
最終日のコースとして、以前何度か使った根釧台地130km×2/3は悪くない。でも今日は、昨日考えたようにまず道道150で西に向かい、あとは行けるところまで適当に行って折り返し、南側を帰ってくる周回コースにしてみようと思う。計根別南側の大成まで脚を延ばしてみたいとも思うものの、上標津か計根別辺りが関の山じゃないかとも思う。
一筆書きのサイズより、昨日訪れた上標津から旭新養老牛辺りの風景が心に残っていた。今まで通ったことはあれど、あまり腰を据えて訪問したことは無かった場所だ。しかしそういう訪れたことが無かった場所に、思わぬ素晴らしい風景があった。今もう一度、見ておかねば、という気になっているのだ。
6:55、開陽民宿地平線発。石川さんがいつものように宿の前に出て、見送ってくださった。またお世話になります。
町道北19からは開陽台がよく見えた 考えるまでも無く、この青空なら開陽台に行かねば。
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7:15、開陽台着。
きりっと涼しい空気と明るい朝の空と共に、静かに根釧台地が拡がっている。昨日、夕方の開陽台も良かったが、今朝の開陽台もとてもいい。嵐だった一昨日、無理して訪れずに良かったとも思う。
未だ7時台だとか昨日の夕方と違って陽差しが強いとか、今朝も遠景が冴え渡っているとか、もうどうでもいい。きりっと涼しい空気の中で、平べったく拡がる根釧台地と、上半分に拡がる空気、空。彼方へ消えているそれらは、抽象的な距離じゃなくて、実体感を伴う物質として自分の前にある。そんなこと地球上のどこでも同じなのだが、その触感と視覚が一致しているところに、開陽台の素晴らしさがある。
感動の後付け分析はさておき、昨日に続きまたもや目の前の根釧台地と空にただただ圧倒され、しばらく眺めていた。幸いまだ他に客があまりいない。ぼうっとするには都合が良い。
8:25、開陽台発。
このまま今日は道道150へ向かうつもりだった。しかし、このまま道道150へ向かうと昨日通った道とまるっきり同じだ。それどころか一昨日も通っているから、3日間同じ道を通ることになってしまう。道道150・885は大好きな道なので、それはそれで構わない。
道道150が北進に向かってゆく、俣落の分岐でもう一度考え直してみた。このまま北進へ向かわずに真っ直ぐ進むと、昨日眺めた上標津から東養老牛のまっただ中を、昨日の道を横断するように通ることができる。そこからから計根別の北辺りに直接出れば、当初考えていた俣落から空港へ帰る一回りコースに何の支障も無い。急いでも望み薄な大成方面より、初めて訪れる景色を知らない道で、のんびり目一杯風景に脚を停めるチャンスでもある。
あっさり決まった。道道150へは向かわず、このまま真っ直ぐだ。
防風林と牧草地が繰り返し現れる道を進むと、大きな谷でクランク状に曲がり、次の段丘を登っていった。
所々に拡がる開放感たっぷりの風景は圧倒的ではある。しかし、うーん、ここは結構最近通ったかもしれない。風景も展開も記憶がある。
そろそろ9時半だ。開陽台8時半発として、空港に12時半に着くには、あと1時間ちょっとで折り返す必要がある。まあ、1時間でまだここかよ、という気はしないでもないものの、まだ先に進もう。
上標津で北東へ向きを変え、山裾の旭新養老牛へ向かうことにした。旭新養老牛から少し南、旭新という集落に狙いを定めていた。旭新養老牛自体は道道150で毎年通っている。道道150の私的ハイライトの牧草地が拡がる、私にとって根釧台地でも重要な場所の一つだ。1986年以来何度も通っているし、思い出も一杯ある。その旭新養老牛の地名構成要素、旭新なのだ。訪れないわけにはいかない。
道のところどころで手入れの良い牧草地が防風林に囲まれ、背景には武佐岳の裾が伸びやかに続いてゆく。この道、実は1996年に養老牛温泉から下ってきたことがあるはずの道でもある。それなのに、風景には全く記憶が無い。眺めたつもりが、下りに任せて一気に通り過ぎちゃったのかもしれない。
北に進んで旭新に近づくと、風景はこれまでにも増して記憶に無く、更に広々と整って見事だ。昨日と同じように地形の起伏が、平らなだけじゃない牧草地や、格子状防風林の直行グリッドを傾けている。それら変化がある要素が、遠くの山々を意外な見え方で見せてくれている。昨日通った1本西の道といい、この辺りの眺めが素晴らしい理由が少し分かったように思えた。
10:00、旭新養老牛着。30分でここまで来れた。まだあと30分はふらふらできる。そのまま少し北、養老牛温泉方面へ脚を延ばしてみた。と言っても温泉までは行かず、道道150から見える牧草地の奥辺り止まりである。
2005年以来久しぶりの道で、脚を停めて見渡すいつもの牧草地。いつも道道150から眺めている、憧れの風景のまっただ中。とはいえ来てみるとごく普通にこの辺りらしい雰囲気の、牧場の道なのだ。如何に道道150からの見え方が優れているかよく理解できたし、何だか2005年の自分と話してみたいような気になれた。ここに来れたこと自体には、とても満足できている。今はもう少し、脚と自分の時間を先に進めることにした。
旭新養老牛から下る途中、狙い定めて南養老牛へ。というより調子に乗って、狙っていた分岐を少し行きすぎてしまった。昨日通った道から分岐していた農道に目を付けていたのだ。谷を越えてゆく道は、川沿い段丘の森の中を通り抜けてゆく。
鬱蒼としつつ寂しいような雰囲気がちょっと怖ろしい予定経路の最後の段丘に乗り上げると、山中牧場の看板を発見。いつも養老牛にソフトの看板が出ていて「今日は寄れねえなあ」と残念だったので、立ち寄っていくことにした。
車にバイク、何組かのお客さんに混ざってベンチに座り、ソフトを頂く。そろそろ10時半。いい潮時かもしれない。地図とスマホを見て今後の身の振り方を考えた。すると、都合良く計根別から空港へ向かうGPSトラックがあるではないか。そういえば、大成から空港に向かうつもりで描いた記憶がある。この道なら空港まで行けるし、計根別から俣落まで未済経路っぽい。これで行こう。
10:35、南養老牛山中牧場発。下り始めて、昨日通った道であることに気が付き、もう1本西の道道505へ。しかしこの道、養老牛のながかわ商店から計根別近くへ下る道であり、過去には何度か通ったことがある。景色を見ていたら昨日見たような気もし始め、立ち止まって地図を確認したりもした。昨日は通っていないが、ばりばり既知の道であることは間違いない。
そんなことをしながら、下りなのであっという間に11:05、計根別着。今日はあと1時間ちょっと走ればもう中標津空港だし、昨日寄ったばかりでもあり、セイコーマートは通過することにした。
町の反対側外れからGPSトラックに狙い定めて入り込む。意外なことに、道はしばらく起伏が少ない谷間に続いた。中標津牧草地グリッドの横(というか何というか)方向の道は、大体にして安定した台地上だったり、谷間をまともに大きく下って登ってで横切ることが多い。こういう谷間の道は珍しい。
しばらく道は牧草地や牧場に面していたが、進んでゆくと周囲が森に替わった。それもやや背が低く茂みっぽい、鬱蒼としてやや気味悪い雰囲気だ。こういうところも根釧台地には珍しいタイプの道である。
第二俣落で再び台地上に牧草地が拡がった後、やや大きめの谷を2、3回横断しつつ、道は北側へ少しづつスライドしていった。
谷間から段丘に登る度、北側の西別岳〜武佐岳が意外な程よく見えた。往路の上標津〜旭新に劣らず良い道だ。
最後は俣落の防風林グリッドから唐突に、12:10、中標津空港着。最終日に事故など無く戻って来れて良かった。
帰りの飛行機の窓から、しばらく根釧台地が見えていた。どの辺かな、などと思っていると、ところどころに茶色の土が不自然に、広い範囲で露出しているのが見えた。地滑りかもしれない。間違いなく、一昨日の嵐が原因だろう。またもや、自分が嵐から逃れられたのはとても幸運だったこと、自分の旅が首の皮1枚で成立していたことを知らされた気分になった。
記 2025/11/10
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