紀伊半島Tour24#3
2024/4/29(月)下北山→新鹿-

区間1 (以上#3-1)
(以下#3-2) 区間2 (以上#3-2)
(以下#3-3) 区間3 (以上#3-3)
(以下#3-4) 区間4 (以上#3-4)
(以下#3-5) 区間5
km

A地点からC経由でB地点へ 赤は本日の経路
ニューサイ写真 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 北山川が屈曲した深い谷底にある下北山。宿の窓から空は見えにくく、夜明けも天気もわかりにくい。4時に起きてしばらくのんびりぼうっとして目を覚ましていても周囲はなかなか明るくならず、そろそろかなと5時から外に出て、おもむろに荷積みを開始。
 空は昨日の青空とは全く違い、どんより厚い雲が空一杯で薄暗い。天気予報曇りの、雨に近い方だと思えた。今日は昨日の検討通り、新鹿終了と考えておくべきだろう。北海道での4サイドと違い、フロント+サドルバッグ装備だと、荷積みがすぐ終わってしまう。荷物が少ないことは良いことだとつくづく思う。

 

 朝食は7時から。他の何組かのお客さんも、初めてその姿を見ることができた。朝食だけ頼んでいる方が多いようで、人数は結構多い。まあそうだろうな、他の場所ではあんなに宿が取りにくかったから。朝食は秋刀魚のみりん干しが大変美味しいのがいかにも紀伊半島らしい。久しぶりに南伊豆のお店で注文しようと思った。

 7:25、きなりの郷発。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 昨日通った、町外側の北山川沿いを通る国道169ではなく、数mだけ高台にある下北山町中の1本道へ脚を向ける。この旧道らしき道では、人々は家から外に出て仕事や掃除を始めていて、朝の気分が楽しい。

 初めて通る道だと思っていたら、既に2006年通っていて、やはり朝の営みを始めている様子に感動していたようだ。

 町の向こうで国道169に合流。山が切り立つ狭い谷間一杯に川幅が拡がってダム湖の様相となった北山川沿い、谷間と共にくねくねのたうつ1本道を下流方向へ。

 静かな水面が曇りのせいかますます静かに微動無く見える。時々釣り人の船がその水面に波を立て、ゆっくり進んでいる。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 湖岸の道は、前半ではあまり目立った登り下り無くすいすい進んでゆく。

 

 曇りではあるが新緑が明るく、ところどころで拡がる水上の空間は感動的だ。何故水のボリュームだけで人は感動するのか不思議に思うことがあった。今回、それは水に対する恐れの裏返しなのではないかと気が付いた。空が薄暗いのと、新緑が瑞々しく生命の印象が強いせいかもしれない。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 曲がりくねった谷間の屈曲が急な場所で、道は対岸へ渡り、またすぐにこちら側へ戻ってくる場所がある。地図を見ていないと何だか湖上に浮かぶ島を渡っている気がするのが楽しい。

 後半では北山川支流の大又川の谷間となり、登り基調となる。岬状部分を越えるための、一見意味が無さそうな登り下りが現れたりする。そして、登り始めてこういう場所があったかもしれない、などと思い出す。地図を眺めても一連の湖岸道路として見てしまっていて、現地では景色により身体の記憶が再生されるのかもしれない。幸いこれから面倒臭いアップダウンだったことを思出せると、焦っても仕方ないと諦めつつのんびりした気分で臨むことはできる。

 ところで今日この道は、なかなか良い道じゃないかと思うぐらいに全体的に交通量が少ない。この車の少なさは、国道169の下北山のすぐ上、大規模な土砂崩れによる通行止めで下北山で行き止まりになっていることが原因のひとつとして間違いないだろう。
 前回訪問の2005年以来、19年間この道を再訪したいと思ったことは無かった。それは車が多いと思ったからだ。もともと今日は国道425で池原・坂本貯水池を経由し尾鷲に下るつもりだったが、4月に池原ダム区間で発生した崩落による国道425の全面通行止めにより、こちらに来ざるを得なかったのだ。しかし、今日はそういうタイミングでこちらに来れて良かったかもしれない。

 

 国道169は最後にトンネルを抜けて、少し広めの谷間に降りた。8:20、桃崎着。ひとまず北山川はここから向きを変え、昨日訪れた瀞峡方面へ下ってゆく。私の行程はそちらじゃなく、もう少し大又川を遡ってから、トンネルを抜けて海岸沿いの新鹿へ下ってしまう。この雲行きだと、新鹿まで降られなければラッキーという気になってきた。多分新鹿で行程終了だろう。
 交差点には、以前確かセーブオンが建っていて、紀伊半島内陸で大変珍しいコンビニとなっていた。ところが今回、それらしきお店は、跡形も無くなっていた。或いはかなり以前のセーブオン合併時に無くなったのかもしれない。とりあえず、フロントバッグの中に昨日熊野市で仕入れたバームクーヘンとパウンドケーキが未だ4つもある。この先新鹿に下って一段落するまで、更に食料が必要となるような行程でもない。何も起こらなければ。

 桃崎からは国道309が、これから向かうべき10kmぐらい先の飛鳥へ続いている。GPSトラックで選んでいるのは、その対岸の細道だ。

 

 大又川の岸辺、のんびりした集落、田圃、岸辺の森に静かな細道が続いてゆく。雨予報という大義名分が免罪符の短い行程を、のんびりてれてれ流している安心感が楽しい。

 しかし3〜4km進み、こちら側の平地が狭くなるのであちら側に渡って国道309に合流する、その手前辺りから、行く手の山が霞んでいるのが見え始めた。未だ上の方だけではあるものの、この先八丁坂トンネルでは降られるのかもしれない。やはり降られるのか。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 国道309では交通量が増え、事前にストリートビューで予習していたよりやや慌ただしい雰囲気が続いた。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 9:00、飛鳥で国道309と国道42との交差点をショートカットする林道へ。多少登りがあるものの、国道309もこの先丘の低いところをちょろっと登るので、どうせ登るなら静かな方がいい。

 分岐を過ぎると、空気中の湿気は霧雨と呼ぶ方が適切な位に濃くなった。そして林道から移った国道42を2〜300mぐらいクランク経由する辺りから、どう考えても雨だ、と言えるぐらいの雨が降り始めた。

 これ以上強くならないでー、と思いながら雨具を省略して八丁坂トンネルへ登り始めるものの、登り始めてすぐ立ち止まって雨具を着込むぐらいに雨はけっこう強くなった。無駄な抵抗だった。

 八丁坂トンネルから海岸の新鹿へは、350mの下りということはわかっている。地形図にはくねくねの細道が描かれているし、新鹿終了なら時間はたっぷりある。

 

 それでも雨と雲の中の下りはしんどく、長く感じられた。道の外側に落差の激しい急斜面が落ち込んでいるし、細道がくねくね曲がっているし、所々で路面に苔が生えている。あまり速度を上げず、気を付けて下ってゆくしかないのだ。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 100mも下らないうちに雨脚はざーざー降りからしとしと降りぐらいに弱くなってくれた。それに脚を停め停め辺りを見回すと、落ち込む谷底そのものの眺め以外、最近行ってない西伊豆の仁科峠南側、県道52細道区間に酷似した雰囲気の風景だ。何だか意外に懐かしい。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8
 

 焦って下ったってブレーキシューでホイールが真っ黒になるだけだ。もう雨なんだから新鹿終着とすると、12時の普通列車に間に合えばいい。こういうときこそ落ちついてのんびりすればいい。

 

 そろそろと気を付けて下り続けるうち、霞の向こう、見下ろす谷底に新鹿の拡がりがうっすら現れ始めた。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 その見下ろし加減で、改めてここの道がなかなかの急斜面に貼り付いていることがよく理解できる。やはり、できることなら早いこと下りきってしまいたい。

 その後もきりきりした下りは続き、やっと谷底の森に降り、あとは広葉樹林の中を一目散に下ってゆく。

 RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 農家が現れ断続し始め、集落といえるぐらいになったところで道幅が拡がった。

 高速道路の高いコンクリート橋をくぐって昨日眺めた新鹿の町に降りてゆく。

 紀勢本線を渡って、昨日の朝通った、いや確かここは砂浜を通った国道311を経由し、新鹿駅方面の看板を捜す。駅まで最後の道は生活道路どころか、単なる住宅と住宅の隙間みたいな細道になった。しかし歩いていた地元のおばさんによると、「この辺はこんな感じの道ばっかりですよ」とのこと。

   RICOH GRV GR18.3mm1:2.8

 そして駅前の案内板によると、この道少なくとも一部が熊野古道だったとのこと。

 10:05、新鹿着。すぐに再び雨が降ってきた。ひっそり静かな駅前広場の中にぽつんと建つ無人駅の建物で自転車を解体し、12時まで列車を待つことにした。一度東京に帰って、次は5/2の早朝出発のため5/1に奈良県の橿原神宮に前泊する。

記 2024/6/3

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Last Update 2024/6/9
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